先輩と後輩の恋愛をお楽しみに
本というのはいいものだ。
本とは恋愛やミステリー、哲学等様々なジャンルがある。そのジャンルによって面白かったり、感動したりと作品の評価が決まってくる。
「やっと読み終わった。どのくらいかかったのやら……」
俺は本を閉じ、机に本を置いてふぅ、と一息吐いた。
俺の名前は
母さんは千尋の千を父さんは景久の景、ここから組み合わせた結果、俺の下の名前は千景になったそうだ。それも相まってか俺の容姿は女性みたい、しかも女顔と来た。そのせいか俺は男女問わず人気があるらしい。
しかし、人気があるのは俺はあまり嫌なんだけどな。何故かと言うと人気が高いと自由に過ごせなくなるからだ。全く、一人にしてほしいものだ。
あと、俺の所属している学校は花咲川学園で高校一年だ。昔は女子校だったそうだが、だいぶ前から共学になったらしい。一体いつから共学になったんだろう、気になるが、知らない方がいいかもしれない。
肩まで伸びたセミロングの黒髪を一つに縛る。因みに俺の目の色は赤だ。黒髪に赤の瞳、カッコいいと言われがちだが、実際は中二病なの?と言われている。解せぬ。
さて、読み終わった本を返しに行こうか。俺は図書委員だが、まだ活動時間ではない。あの人は先に来ているだろうか、今なにをしているのだろうか。俺の頭の中はあの人はどうしているのかということでいっぱいだった。
――唐突だが、俺には気になっている人がいる。
その人は俺と同じ図書委員で学年が一個上の先輩だ。ピアノを習っているらしく、さらにバンドにも入っているらしい。そのバンドは確かガールズバンドだったか?
それにしても眠いな。昨日何ページか読んでたから寝るのが遅かったんだ。なにせ、寝た時間が深夜の二時だからな。深夜は学生が起きていい時間じゃない。この前なんてゲームをやっていたら朝になっていたっていうこともあった。
これからは時間に気を付けよう。気を付けようっと言ってもどうせまた遅くなるだろうな。
そんなことを思っていたら図書室に到着した。さあ、活動開始だ。
俺は扉を開け、図書室に入った。読み終わった本をカウンターに置き、担当の人に返すことを伝えた。
とりあえず本を整理するか。俺は本棚に近づき、返却された本を持ち、棚に戻し始めた。あれ、あの人は……。もう来てたのか。
「こんにちは白金先輩」
「あ……こんにちは。椎名……君」
俺の気になっている人とは、返却された本を棚に戻している人、もとい白金燐子先輩だ。
「お疲れ様です。もう来てたんですね」
「うん……。私も授業が……終わって……すぐに……来たからね」
「そうですか。棚に本戻すの手伝いますよ」
「ありがとう……椎名君」
白金先輩は微笑みながら言った。いつ見てもいい笑顔だ。
白金先輩は内気な性格をしているが、男子に人気があるらしい。白金先輩は綺麗で美人、しかも優しい。それが理由ならまだわかる。しかし、白金先輩目当てには本当の理由がある。
その理由はというと、胸だ。
白金先輩はよく見ると胸が大きいんだ。身体目当てを理由に白金先輩に近づく男子が何人かいるが、俺はそんなことを理由に白金先輩に近づいた訳ではない。そんなことをするのは精々変態くらいしかいないと俺は思っている。
「ん……しょ」
本棚を見ると、白金先輩が背伸びをして返却された本を上の棚に納めようとしていた。あれ、白金先輩って背低いよな?届かないんじゃないのか?
俺は白金先輩に近づき、納めようとしていた本を棚に入れた。あまり白金先輩には無理をしてほしくない。先輩を助けるのは後輩である俺がやらないと!
「先輩、大丈夫ですか?」
「椎名……君?もしかして……本を……納めて……くれたの?」
「ええ、納めましたよ。先輩が背伸びをして本を納めようとしたので、大丈夫かなって思ったんですが、届いてなかったので助けました」
さっきの白金先輩を見ていたら放っておけなかった。困っていたら助けてあげなきゃって思ったから。母さんにも言われたんだ。困っている人がいたら助けてあげなさいって。
「そう……なんだ。ありがとう椎名君」
「ど、どういたしまして……」
白金先輩は顔を赤くしてお礼を言った。どうして顔が熱くなるんだろう?ていうかなんで俺までこんな状態になるんだよ。
「と、とりあえず、本戻しましょ!」
「そ、そう……だね」
はあ、気まずいな。白金先輩のことは気になるけど、この先どうなるだろうか。先が思いやられるな。
あと言い忘れていたが、俺が白金先輩を気になった時期は入学してから一週間だ。本を借りに来た時にカウンターで受付をしている人がいた。
その受付をしていた人が白金先輩だ。俺が推理系の小説を借りるために受付をしてもらっていた時にこう言われた。
「珍しい……ですね。この本を……借りるなんて」
「え、そうなんですか?」
「はい。この本は……あまり読まない人が……いませんから」
そうなのか。だとしたら面白いかもしれない。あまり注目されない本でも実は面白いという本だってある。所謂、隠れた名作というものだ。
俺と白金先輩は本について話すようになった。おすすめの本を教え合ったり、読んだ本について語り合ったりもした。
俺は話していくうちにこう思った。もっと白金先輩のことを知りたい、白金先輩と仲良くなりたい、これがきっかけで俺は白金先輩のことが気になり始めた。
――本が好きな後輩の青春の始まりでもある。
▼▼▼▼
私には気になる人がいます。
その人は私より歳が一個下で、同じ図書委員の人です。髪が長く、顔も綺麗で最初は女の人だなと思いましたが、よく見ると男の人でした。
名前は椎名千景。女の人のような名前ですが、私はいい名前だと思っています。
「帰ったら……NFOをやらないと」
私は内気な性格をしていますが、オンラインゲームが好きで、あこちゃんとは「NeoFantasyOnline」通称NFOをやっています。
最近は新しい人と知り合い、フレンド登録もしました。
職業が魔法剣士だけど、あれは上級職だ。ということは相当やり込んでいる、所謂廃人かもしれない。廃人なのは私も同じだけど……。
「でも、その前に……図書委員の活動が……あるから、図書室に……行かなきゃ」
もう椎名君は来てるかな?彼が図書委員に入ったのはつい最近だ。入ったばかりたからまだわからないこともあるかもしれない。ここは先輩である私がしっかりしないと!
私は図書室に入り、椎名君が来ているかを確認した。まだ来てない。もしかして補習とかかな?椎名君は成績は悪くないって聞いてるけど、何をしているのかな?
私はRoseliaというバンドに所属していて、キーボードを担当している。今日は練習もあるから、椎名君と一緒にいられる時間は少ない。私にとってこの少ない時間はとても大切な時間だ。
そういえば返却された本が溜まってたんだった。私は背が低いから高い所までは届かない。手を伸ばして納められるのがやっとだ。私の手が届く範囲で戻そう。
棚に本を戻そうとした時、音がした。誰か入って来たみたいだ。私は扉の方に目を向けた。入って来たのは椎名君だった。
よく見ると椎名君は本を手に持っている。あの本は私が薦めた幻想文学の小説だ。
あ、椎名君と目が合った。目を合わせただけなのに耳が赤くなってしまう。
「こんにちは白金先輩」
「あ……こんにちは。椎名……君」
私は椎名君に挨拶をした。大丈夫かな?耳が赤くなってるの気づいてないよね?
「お疲れ様です。もう来てたんですね」
「うん……。私も授業が……終わって……すぐに……来たからね」
そう、私は授業が終わってすぐ図書室に来たんだ。同じクラスの氷川さんとはさっきまで一緒だったけど、「風紀委員の仕事が残っていますので、ライブハウスでお会いしましょう」と言って別れた。椎名君は鞄を置いて私の元に来た。手伝ってくれるのかな?
「そうですか。棚に本戻すの手伝いますよ」
「ありがとう……椎名君」
どうやら手伝ってくれるみたいだ。私と椎名君は返却された本を棚に戻し始めた。戻しているだけなのに、私にとってのこの時間はとても心地よいものだ。椎名君と一緒にいるだけなのに、私の心は幸福感で満たされていた。
――この幸福感はなんだろう、どうしてこんなに心地よいのか……。
「ん……しょ」
私は背伸びをして本を棚に納めようとしていた。あと少し、あと少しで届く。でも、届かない。私ってこんなに背低かったかな?
その時、本が納まる音がした。あれ?もしかして入ったのかな?でもよく見たら誰かの手がある。隣を振り返ると、椎名君が側にいた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「椎名……君?もしかして……本を……納めて……くれたの?」
「ええ、納めましたよ。先輩が背伸びをして本を納めようとしたので、大丈夫かなって思ったんですが、届いてなかったので助けました」
椎名君は微笑んで言った。その時、胸がドキっと鳴った。え?なんなの今の音は!?もしかして、私がドキっとしちゃったの!?こんなこと初めてだからわからないよ!
私の耳はさらに赤くなってしまった。椎名君に気づかれていないか心配で私の心臓はバクバク鳴っていた。
「そう……なんだ。ありがとう椎名君」
「ど、どういたしまして……」
椎名君の顔を見ると、椎名君まで顔を赤くしていた。どうしたんだろう、なんで顔赤いんだろう?
「と、とりあえず、本戻しましょ!」
「そ、そう……だね」
私と椎名君は本を戻す作業に戻った。やっている間、椎名君をチラっと見たけど、普通の表情だった。しかし、耳は赤くなっていたようだ。
▼▼▼▼
図書委員の活動を終えて俺は家に戻った。あの後、白金先輩とは会話も無く、最後はさようなら、と一言言っただけだった。
俺は白金先輩のことが気になっているけど、こんなことは初めてだからどうしたらいいかわからない。なにか話題はないかと頭の思考回路をフル回転して探したが、何も見つからなかった。
こんなんでいいのか?なんの進展もなくこのまま時が過ぎてしまうのか?いや、そんなことでは駄目だ!頑張らなきゃ!
「明日は話せることを探そう」
俺は電気を消して眠りに就いた。
――白金先輩のことは気になる。けれど、わからない。
――この感情は一体なんなんだ?どうしてこんなにもドキドキしてしまうのか……。
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「はあ……。なんで……あんなことに……なったのかな?」
椎名君と放課後に会えたけれど、なにも会話がなかった。そういえば椎名君は私がRoseliaに所属しているってことを知っているのかな?
私は家に帰ったが、NFOはログインだけで済ませてしまった。そう、やる気が出なかったのだ。あこちゃんにはチャットで「今日はやめておくよ」と断ってしまった。
こんなことは初めてだ。椎名君のことは気になっても何を話せばいいのかわからない。
「やっぱり……私が内気……だから……かな?」
私は内気でしかも人見知りだ。こんな自分が椎名君のことが気になるなんて、よくそんなことができたなと、気にする資格があるのか、と思ってしまう。
「……でも、もう少し……頑張ってみようかな」
次はこんなことはないようにしよう。もう少し自分を変えていかないと!
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私が椎名君を気にするようになったのは、彼が図書委員になってからだ。
椎名君と本のことについて話したり、おすすめの本を教え合ったりと色んな話をした。
もう少し話がしたい、私はそう思った。そう思っていた日に椎名君は図書委員になった。
私は心の中で喜んでしまった。椎名君のことが知りたい、と。その日から私は椎名君のことが気になり始めた。
椎名君のことを考えると胸がトクントクンと鳴ってしまう。なんだろう、この胸の高鳴りは……。
私はまだこの気持ちを知らない。この胸の高鳴りがなんなのかさえも……。
――内気な先輩の恋の物語が綴られようとしていた。
というわけで1話終了です
更新が遅くなることがあるかもですが、よろしくです
感想と評価お待ちしてます