図書委員の奏でる旋律と綴られし恋歌   作:ネム狼

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夏休みは始まる、それはイベントの巣窟の攻略戦でもある


海への約束、想い人の発覚直前のキャンセル

 暑い、暑すぎる。夏休みに入ったのはまだいい、だがエアコンが壊れてるのはどういうことだ?今日はエアコンの代わりに窓を開けて対処するしかないという。扇風機は持ってくのが面倒だ。だったらこれで我慢しよう。

 

 これじゃあピアノを弾く気にもならない。今月はNFOが大規模イベントを始める。俺や燐子先輩、あこちゃんはイベントに備えて絶賛強化中だ。一方の母さんは野良でプレイをやっている。たまに俺と一緒にやる時もあるが……母さん、強すぎだろ。

 

「うぅ……暑い……。ピアノ弾こうと思ったけど、駄目だな。あ、ログインしてなかったな。NFOやろっと」

 

 椅子に座り、パソコンを起動、イベまではまだ期間はあるから今日は周回だけでいいか。昨日から夏休みだが予定の方どうしようか。NFOでコラボイベがある、燐子先輩が一昨日そんなことを言ってたような気がするな。

 

 

――チャットで聞いてみるか。

 

 

 スマホの電源を付け、燐子先輩に電話を掛けた。てか出るかな?まぁ、出たら出たで話してみるか。

 

「……もしもし、千景君?」

「あ、燐子先輩。話がしたいのですが、大丈夫ですか?」

「いいよ、私も千景君とお話したかったから」

「そ、そう……ですか。俺も話したかったですよ?」

 

 何で疑問形になるの、と燐子先輩は微笑みながら言った。ああもう!緊張してるせいか疑問形になっちまった。燐子先輩に話しようとするだけなのに、何で緊張してんだ。いつも通りに話せばいいんだ、いつも通りだ、いつも通り……。

 

 高鳴る心臓を抑えながら俺は燐子先輩にNFOのことを話した。夏にはイベントがあるんだ。だが、今年はアイテムの配布がある。アイテムの配布はコード入力、しかも入手手段は海の家という。

 

「海の家……つまり海に行くってこと……だよね?」

「そうなります。それで、今年はどうしようか相談しようと思って掛けたんです」

「そうなんだ。それなら行こうよ、海に……」

 

 はい?今なんて言ったんだこの人?海に……行く?

 

 待て、それってつまり燐子先輩と海に行くってことだよな!?何で直球で言うんだよ!俺は意識してしまい、顔を赤くした。こうなったらあれだな、水着用意しないとだよな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私は千景君に海に行くということを言われた。アイテムを貰うために行くのなら私は当然行く。それはあこちゃんも同じだ。でも、よく考えたらあれだよね?千景君の水着姿を見ることになるんだよね?

 

「燐子先輩、マジで行くんですか?」

「うん……あこちゃんも行くって言ってるし、アイテムの為だよ。千景君も行くよね?」

「え、ええ……。もちろん行きます。燐子先輩、人混みとか大丈夫何ですか?」

「そこは……あれだよ。千景君やあこちゃんと一緒にいれば大丈夫だよ!」

 

 私は千景君と20分くらい電話で話をした。NFO以外でのことも話をした。予定はあこちゃんも交えて建てることにした。はぁ、大丈夫かな?私、千景君に迷惑掛けないかな?

 

「燐子先輩、今日はありがとうございました。じゃあまた後で」

「うん、またね」

 

 スマホを切り、千景君との通話を終えた。スマホを置き、私はベッドに倒れ、顔を枕に埋めて悶えた。ああ、顔が熱い。恥ずかしくなってきた。

 

 やっちゃった!やっちゃったよ!千景君を海に誘うというより、自然な流れで一緒に行くことになっちゃったよ。千景君、どんな反応してたかな……。

 

 私は恥ずかしさのあまり、足をジタバタさせた。頭の中がぐちゃぐちゃになる。普段の私ならこんなことしないのに、今日の私は何かおかしい。千景君と話してるだけなのに、心が弾んでくるし、口元緩んじゃうし、どうしちゃったんだろ私……。

 

「千景君と海かぁ……今井さんに勘ぐられそうで怖いよ」

 

 こうなってきたら水着選ばないとだよね。今度あこちゃんと水着買いに行こうかな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 夕飯を終え、ベッドの上で俺は楽譜に目を通した。楽譜は楽器店で買った物しかない。はぁ、全く集中出来ない。夜になったから少し涼しくなったが、さっきのことで全然集中出来ない。

 

「限定アイテムはまだいい。それどころか、燐子先輩やあこちゃんと海に行く羽目になるなんて、誰が予想したんだよこんなこと」

 

 まだ予定は決まってないが、あれだよな?水着買いに行かないといけないよな?あと、海用の髪飾りか。いっそのこと髪切るか?俺の髪は少し長くなってきている。

 

 俺は前髪を弄りながら考えた。でも、前に燐子先輩は俺の髪のこと褒めてくれたもんな。今のままが俺らしいって、あの時は凄く嬉しかった。髪のことで悩んでたのに、あっさりと言ってくれたんだ。そのおかげで俺は切らずにいれたんだ。

 

「思い出したら顔が熱くなってきたな。これはあれだな、部屋が暑くなっただけなんだ。うん、気のせいだ」

 

 窓を開け、熱くなった顔を涼ませることにした。少しだけだけど、涼しかった。でも、熱くなった顔は冷えることはなかった。それどころか、頭の中はごちゃごちゃになっていった。

 

 やめだやめ!考えると余計集中出来なくなる。今日もまたレベリングをするが、大丈夫だろうか。燐子先輩とはまた会うが、出来るだけ話題は出さないようにしよう。下手したらあこちゃんに質問攻めされかねない。よし、頑張ろう!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 次の日、私は練習に向かった。何だろう、嫌な予感がするんだけど、気のせいかな?主に友希那さん辺りで嫌な予感がする。話を聞いてみてからだ、それで判断しよう。

 

「おはようございます」

「おはよう燐子、話があるのだけど、いいかしら?」

 

 やっぱり!私は友希那さんの話を聞くことにした。けど、それは私の予想斜め上の話だった。嫌な予感というより、情報量が多いみたいな物だった。

 

「貴女、千景と海に行くらしいわね」

「え!?どうしてそれを……」

「あこが言っていたわ」

 

 あこちゃーん!?

 

「ごめんねりんりん、友希那さんが凄く知りたそうにしてたからさ、話しちゃった!」

「そ、そうなんだ……」

「燐子、千景と何かいいことあったの?」

「い、いいことというよりは……お出掛けみたいな……ところです」

「それはつまり、デートね」

 

 そう言った瞬間、今井さんと氷川さんが入ってきた。私はビクッとしながら二人が来たことに気づき、後ろを向いた。氷川さんはキョトンとし、今井さんは面白そうだなぁ、という顔をしていた。あ、これ聞かれるよね?

 

 

――もう逃げられないや。白状しよう。

 

 

 私は全部話すことにした。案の定、今井さんとには質問攻めされ、氷川さんと友希那さんは口元を緩ませて見守りるかのような表情をした。あこちゃんはりんりんすごーい、と語彙力は冥界に置いていったかのようなことを言った。もう、滅茶苦茶だよ……。

 

「なるほどなるほど、つまり燐子は千景のことが……」

「聞こえません!聞こえませーん!」

「白金さん、少し落ち着いて下さい」

「面白い物が聞けたところだし、練習にするわよ」

「ちょ、友希那さん!?」

 

 友希那さん、聞いておいてそれは……。私は心の中でそう言っていると、友希那さんは私の方を向いて優しい表情でこんなことを言った。

 

「今の燐子、とても輝いていたわよ。そうなったら聞かずにはいられないわ」

「友希那さん……」

 

 今の友希那さん、凄くSだ。さっき今井さんが言おうとしたことはわかっている。でも、まだ知りなくない。知るのは今の私には早い。自覚するのはまだだ。

 

 この夏休み、どうなるんだろう。何かが起きようとしている、いいことかもしれないし、悪いことかもしれない。今は練習に集中しよう。海のことは後だ。私は夏を楽しみもうという想いを隅に置き、練習に集中することにした。

 

 




熱烈なる宴はまだ始まらない
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