外が曇っているという不安を抱きながら、私は千景君にお昼の事を相談した。相談した結果、昼食は彼が作る事になった。千景君って料理出来たっけ?話してなかったよね?
「千景君、料理出来るの?」
「出来るといっても、始めたばかりですが……」
「そうなんだ……手伝おうか?」
「大丈夫ですよ、先輩はゆっくりしてて下さい」
「じゃあ……隣で作ってる所……見ていい?」
それならいいですよ、と彼は顔を赤くしながら言った。何で顔を赤くしてるんだろう……。私、何かしちゃったかな?何かしたなら謝らないといけない。私は何かしたか、思い出そうとしたが、思い当たる節が無かった。
彼が作る昼食は、サンドイッチだった。卵とツナとハムチーズレタスの3種類を作ると言った。どんな風になるんだろう、どういう風に料理をするんだろう。私の胸の中は期待と楽しみで一杯だった。
完成には50分掛かった。私は途中で千景君を手伝った。千景君は料理を初めてからそんなに経ってない。ゆっくりしていいって言われたけど、上げてくれたなら手伝わないといけない。ここで彼に任せてばっかりは駄目だ。
「手伝わせちゃってすみません。手は切ってないですよね?」
「手は大丈夫だよ。私もごめんね、邪魔しちゃって……迷惑だったよね?」
「そんなことないですよ怪我が無くてよかったです。とりあえず、お昼にしましょうか」
「うん」
私と千景君は昼食を済ませた後、彼の部屋に戻り、話をした。午後はどうするか、何時に帰るかを話した。天気が怪しいけど、大丈夫かな?天気予報見ておけばよかったかな……。
「……外曇ってきたな。燐子先輩、洗濯物取り込んで来ますので、下に降りますね」
「うん……大丈夫?」
「平気ですよ。すぐ終わりますから、待ってて下さいね」
そう言って、彼は下に降りた。私は心配になり、スマホで天気予報を調べた。一昨日から台風が来てるって言ってたような気がする。さっきまで晴れてたけど、昼になってから曇りになった。今日は夕方から……雨!?しかも大雨だ。じゃあ明日は……。
「1日中雨……帰れるかな?」
「お待たせしました。先輩、スマホ見てますけど、何かありました?」
「あ、千景君。天気予報見てたんだ。見たら、夕方から雨で、明日も一日中雨なんだ。しかも台風近づいてるってって……」
「それはマズいな。どうします?今日は早めに帰ります?」
早めに帰る、その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられる思いになった。もう少し彼と一緒にいたい、帰りたくない、そんな気持ちが湧いてきた。
どうしよう、そうなるとお母さんに相談しようかな?迎えに来てもらうっていう手もある。でも、私は迷っている。彼と一緒にいるか、このまま帰るか、私は迷っていた。
▼▼▼▼
燐子先輩、どうしたんだ?急に静かになったが、早めに帰るって言ったのマズかったか?台風が近づいているのは事実だ。明日は一日中雨、今日は土曜、明日は日曜。ここまではいいが、どうすればいいんだ?
「ちょっと家に電話して相談するね」
「分かりました」
燐子先輩はバッグからスマホを取り出し、家に電話をした。今は待つしかない、燐子先輩がどうするかで後が決まる。もし帰る以外になったらどうする?そうなると……先輩を……。
ーー泊めることになるのか?
いや、それはないか。いきなり先輩を泊めるなんて、そんな都合のいい事ある訳無いよな。家に初めて上げて、泊めるとかそんな事は無い。漫画でもアニメでもないんだから……。
「うん……今、千景君の家にいる。うん……うん……え!?それは流石に……」
迷惑じゃないかな、燐子先輩は困惑気味に言った。相談……だよな……?迷惑じゃないかなって辺りで何か起きそうなんだが、気のせいだよな?気のせいであってくれ。
その後、燐子先輩は通話を終えた。相談は終わったか、燐子先輩は何を話すんだ……。気になるけど、聞かないと何も始まらない。俺は先輩にどうするかを聞くことにした。
「燐子先輩、どうしますか?」
「そのことなんだけどね……お母さんがね……泊まっていいよって……言ったんだ」
「……はい?」
ちょっと待て、この人は今何て言ったんだ?泊まっていっていい?そう言ったんだよな?親御さん、何てことを言うんだよ、娘さんにそんなことを言うって相当だろ。燐子先輩のお母さんに会う時になったら、何て言えばいいんだよ?
「それって本当ですか?」
「うん。お母さんが言ってたから本当かな……。ごめんね、こんなこと言っちゃって……」
「いえ、大丈夫です。燐子先輩に何かあったらマズいですし、今回は仕方ないですよ。着替えとか無いですよね?」
「言われてみれば……。どうしよう……千景君、こういう時ってどうしたらいいかな?」
どうしたら……か。俺は燐子先輩の着替えをどうしようかを考えた。母さんだと、サイズが合わない。母さんはああ見えて背が高い。父さんは……常識的に考えて駄目だし、そうなるとーー
ーー俺の着替えに……なるのか……?
いや、それは駄目だ。そもそも男物を燐子先輩に着せるってどうなんだ!?それってマズいだろ!失礼だし、口聞いてもらえなくなるかもしれないし、どうしたらいいんだ?俺は燐子先輩に着替えをどうするか聞くことにした。
「燐子先輩、着替えなんですけど……俺のしかないです」
「千景君の着替えでもいいよ」
「いいんですか!?男物ですよ!?サイズも合うか分からないし、もし合わなかったらどうするんですか?」
「私は大丈夫だよ。私は……千景君の着替えでも平気だから……」
燐子先輩は微笑みながら言った。俺のでも平気って、この人は正気か?いや、正気じゃないのは燐子先輩だけじゃない、俺も正気じゃない。俺の着替えでも平気って聞いた瞬間、嬉しいと思っている自分がいた。
俺も
「分かりました。風呂に入るときになったら、着替えは用意しますね」
「何かごめんね……ここまでさせちゃって……」
「先輩、こういう時はありがとう、ですよ
「そうだね……ありがとう、千景君」
燐子先輩は俺の手を取りながらお礼を言った。顔が近い、こんなに近づかれたら恥ずかしくなる。着替えの事は解決出来たが、後の事はどうするか。そこは先輩と相談しながらでいいか。今は昼、雨が降るのは夕方だ。雨が降ってからが正念場だ。俺の身が持つか心配だな。
▼▼▼▼
泊まる事の相談が終わった後、千景君は切り替えましょうと言った。千景君は気を遣って明るくしようとしてくれてる。何か迷惑掛けちゃったな……。彼の家に上がってからの私は暗い話ばかりをしてる、それに比べ、彼は明るくしようとしてる。
ーー先輩なのに、情けないな。私って……本当に……。
「先輩……先輩……燐子先輩!」
「な、なに……?」
「先輩、また暗くなろうとしてませんか?」
「そ、そんなことないよ!」
「本当にそうですか?」
私は涙を流しそうになった。また、千景君に心配を掛けちゃってる。隠そう、隠さなきゃ!私は彼に本当だよ、と言った。これ以上、千景君に迷惑を掛けたくない。このままだと、幻滅される。
「これ以上は聞かないようにしますね。何かあったら言って下さいよ?」
「うん……、ごめんね、また暗くなっちゃって」
「いいえ、先輩が大丈夫なら俺は充分ですよ。暗い話はここまで、今からピアノ弾きますけど、聴きます?」
「うん、聴かせて」
千景君は深呼吸をした。弾く曲はThis gametとTHERE IS A REASON、終わりの世界からの3曲だ。彼は弾きながら歌った。1曲目と2曲目はアニソンで、3曲目はアーティストとシナリオライターがコラボをして作られた曲らしい。2、3曲目の所で千景君は泣きそうになっていた。堪えながら弾いてるけど、千景君大丈夫かな?
「はぁ……はぁ……弾けた」
「千景君、涙出そうだけど……」
「え!?い、言わないで下さいよ!最悪だ、先輩に見られた」
「ふふ……」
「笑わないで下さいよ!」
私は彼に近づき、慰めるように頭を撫でた。こうして見ると、可愛く見える。背は千景君が少し上だけど、今の彼は弟みたいだ。千景君が私の弟だったら、こんな感じかな?
これから千景君の家に泊まるけど、大丈夫かな?お母さんには千景君のことは話したけど、泊まってきていいよ、なんて言われるとは思ってなかった。後輩の家に泊まるのは人生で初めてだ。何も起きなきゃいいけど……。
着替えは解決したけど、寝る時はどうするんだろう。これも千景君と相談しないといけないよね?私と千景君、二人きりだけど……本当に大丈夫かな?
大丈夫、二人なら乗り越えられるさ