図書委員の奏でる旋律と綴られし恋歌   作:ネム狼

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旋律はここに終わりを迎える


物語と旋律は奏で綴りて完成する

 昼休みに氷川先輩から話があるって言われたが、何の話なんだ?何かをやらかしたような記憶は無いし、風紀を乱すようなこともしていない。もし、怒られるようなことだとしたら……。そんなことを考えるだけでも、背筋が凍り付く。

 

「しかも場所は図書室って、委員会が終わってからになるよな?」

 

 そんな独り言のようなことを言っていると、激しい音がした。振り向くと、燐子先輩が息を切らしていた。俺はすぐさま、先輩の元に向かった。どうしたんだ、こんなに息を切らして……。

 

「はぁ……はぁ……」

「燐子先輩、どうしたんですか!?」

「千景君……何でも……ないよ……」

「何でもないって、息切らしてる時点で説得力ないですよ!」

 

 俺は先輩を支えながら椅子に座らせた。何で燐子先輩がここにいる?氷川先輩はどうしたんだ?いや、氷川先輩の約束もそうだけど、今は燐子先輩が先だ。

 

 先輩の背中を擦る。支えよう、ここには俺と先輩だけだ。だから、俺が何とかしないといけない。俺は落ち着くまで先輩の側にいた。辛そうな表情だ、見ているのが辛い。

 

「先輩、大丈夫ですか?」

「うん……ありがとう……」

「よかった。そうだ、氷川先輩見ませんでした?」

「氷川さん?み、見てないよ!」

 

 何でこんなに焦ってる?見ませんでしたって聞いただけなのに、焦るなんて……。何か怪しいな。俺は先輩に本当なのかを聞くことにした。

 

 案の定、燐子先輩は見ていたと言った。どこにいるのかを聞いたが、用事が出来たので帰ったと言った。燐子先輩が息を切らしていたのはこのためだったのか。

 

「氷川さんがね……千景君に呼んでおいてすみませんだって……」

「そうでしたか、用事が出来たのなら仕方ないですね」

 

 俺は溜め息を吐いた。呼び出しておいて置いていくなんて、何かあったのか。それは気にしなくていいか。氷川先輩、風紀委員だしRoseliaの練習もあるしで忙しいからな。複雑だが、仕方ないか。

 

「千景君って……好きな人いるの……?」

「な、何ですか突然!?」

「千景君好きな人……いるのかなって思って……」

「好きな人っていうか、気になる人はいます」

 

 燐子先輩に好きな人がいるかを聞かれ、俺は動揺した。唐突過ぎるだろ、いきなり聞かれたらビックリする。目の前の人が好きな人で気になる人だ。こんなことを聞くなんて、先輩どうしたんだ?

 

 俺は燐子先輩に気になる人ならいると言った。好きなんて言えない。側にいるって決意したのに、また躓くのか、また退くのか。

 

「誰なの?氷川さん……?友希那さん?今井さん?あこちゃん?それとも……」

「待って下さい、待って!近いです!あと、あこちゃんはアウトになりますし、Roseliaの皆さんは違いますよ!」

「じゃあ誰なの?」

「言いますけど、誰にもいいませんか?」

「うん、言わない。私と千景君の……秘密にする」

 

 俺と先輩の秘密って、それ言われたら良いってなる。今はそんなことを言ってる場合じゃない。ここまでくると、後戻りは出来ない。ここで言うのか、俺は深呼吸をしながら言った。

 

 

▼▼▼▼

 

 

「その人は一個上の先輩で、面倒見が良くてお世話になっているんです。本が好きで、笑顔が綺麗で、可愛いなって思える人なんです」

 

 千景君は私の方を向きながら明るく言った。その気になる人を私は知っている。本が好き、いつもお世話になっている、これだけでも分かってしまう。口に出したいけど、そんなことをしたら彼に失礼だ。

 

 千景君は笑顔で私に話した。その人のことを想っている、その人のことが好きなんだなってことが伝わってくる。その人は近くにいるんじゃないのか、その人は千景君のことを好きだって言える人なんだなって思える。

 

「まぁこれくらいですかね。じゃあ次は燐子先輩」

「え!?私も……話すの……?」

「もちろんです。俺も話したんだから、先輩もです。いないなら聞きませんよ?」

「私も話すから……!」

 

 私は彼に気になる人を話した。彼はちゃんと聞いてくれた。聞く度に相槌を打ってくれる。なんて彼は優しいんだろう。なんて彼はーー

 

 

ーーこんなにも……綺麗なんだろう……。

 

 

「えっとね……。私の一個下の後輩なんだ。いつも私の側にいてくれて、本が好きで、優しい人なんだ」

「優しい人か……。なんか同じですね」

「同じ?どこが同じなの?」

「優しいってところとか、本が好きとか。その辺りが同じだなって思って」

「そうなんだ……」

 

 同じだなんて、嬉しいな。嬉しいけど、今はこんなことを思ってる場合じゃない。今は夕方、告白のタイミングは今しかない。だから、急がないと。

 

「なるほど。燐子先輩はその人が気になってるんですね」

「うん。どちらかというと……好き……かな」

「好き……ですか……」

「うん。それでね、千景君に伝えたいことがあるんだ」

「伝えたいこと?」

 

 彼は首を傾げた。言おう、言うんだ。今しかない、ここで逃したら一生言えなくなる。高鳴る心臓を抑えながら、私は途切れそうな声で彼に言った。

 

「えっとね……好きなんだ……」

「へ?今なんて……」

「千景君のことが……好き……なの……」

 

 小さい声かもしれない、途切れるて消えるかもしれない。私は必死に彼に想いを告げた。聞こえてるかな?心配だ。届いていないかもしれない。私は心配になり、彼にもう一度告げた。

 

 

ーー千景君が好きなの!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 燐子先輩は大きい声で言った。今何を言ったんだこの人は……。俺のことが好きって言ったのか?本当だとしたら、喜んでいいのか?

 

「燐子先輩、それって本当なんですか?」

「本当だよ……。何度でも言うよ、私は……」

「わ、分かりました!そんなに言われたら混乱しますから!」

「ご、ごめんなさい!」

 

 俺と燐子先輩は互いに謝った。いや、何で俺が謝るんだ?釣られて謝っただけかもしれない。しかし、燐子先輩が俺のことを好きだなんて、それも本当、マジなのか?

 

 燐子先輩の顔を見ながら思った。どうやら本当だ。あんなに大きい声で言ったんだ。本当なんだな。俺は心の中で納得した。

 

「返事聞きたいんだけど……」

「待って下さい、俺も燐子先輩に言いたいことがあります」

「言いたいこと?」

「はい。俺も燐子先輩のことが好きです」

「え……」

 

 俺は燐子先輩の両肩を掴みながら言った。自分で言ってて恥ずかしくなる。先輩に告白をするって決めたんだ。恥ずかしくなるに決まってる。しかも顔は近い、顔が熱くなるけど我慢だ。

 

 俺の告白を聞いたのか、先輩は涙を流した。マズい、泣かせちまったのか!?俺は先輩を慰めることにした。マズいことだったら、告白どころじゃない。

 

「燐子先輩、どうしましたか!?」

「違うの……その……嬉しくて……」

「嬉しい?」

「うん……千景君が私のこと好きだって分かって、安心したんだ」

「燐子先輩……」

 

 そんなことを言われたら俺まで泣く。泣かないように我慢したが、出来なかった。先輩に釣られ、俺は涙を流した。駄目だ、耐えられない。

 

 

ーー燐子先輩と俺が両想いだったなんて。泣かないって言っても、耐えるなんて……無理だ。

 

 

「ん!?」

「……」

「……はぁ!燐子先輩、何をするんですか!?」

「千景君が泣きそうだったから……キスしたら治まるかなって」

 

 俺が泣きそうになった瞬間、先輩は唇を重ねた。重ねたというより、奪ったが正しい。それも、俺の初めて(ファーストキス)を奪った。

 

 だが、そうなると俺も先輩のファーストキスを奪ったことになるのか?どっちなんだ、そう思っていると、泣いていることが馬鹿らしくなってきた。

 

「燐子先輩」

「何?」

「もう一度、キスしませんか?」

「うん、もう一度しよう」

 

 俺と先輩は指を絡めながら唇を重ねた。目を瞑っているせいか、先輩の表情は分からなかった。どんな顔をしているんだろう、どんなことを思っているんだろう。気になるけど、今はそんな状況じゃない。今は先輩と両想いになれたっていう余韻に浸りたい。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私と千景君は付き合えた。図書室で出会って、図書室で告白して、まるで始まって終わりを迎えるみたいだ。そんな風に見えるけど、私からしたら付き合ってからが新たなスタート何だなと思う。

 

「燐子先輩、俺と先輩って付き合ってるんですよね?」

「付き合ってるかな……。ごめんね……未だに実感湧かなくて……」

「それは俺も同じです。何だろ、両想いだったなんて思わなくてですね……ああもう、何て言ったらいいんだ」

 

 彼は頭を掻きながら言った。そんな仕草が可愛らしい。そう思うと、私は彼に見えないように微笑んだ。

 

「先輩、今笑いましたね」

「笑ってないよ」

「いえ、今笑いました!隠しても無駄ですよ!」

「だって……千景君のさっきの仕草が可愛かったから……」

「可愛いって、燐子先輩だって可愛いでしょ」

 

 不意を突かれ、私は赤面した。いきなり言われたらどう反応したらいいか分からなくなる。たまに見せる不意打ちはズルい。私の後輩はなんてズルいんだろう。この人が彼氏だなんて思うと、いいのかって思ってしまう。

 

 

ーーそんな千景君には罰を与えよう。

 

 

「千景君、話があるんだけど……」

「何ですか?」

「私のこと……呼び捨てで呼んで」

「は?」

「だから……私のこと……名前で呼び捨てで呼んで……」

 

 私は彼に怒り気味で言った。私に不意を突いた罰だ。私は千景君に散々不意を突かれた。ここまで来たら罰を与えないといけない。その罰は、私からしたら大した罰じゃないけど、千景君には厳しい罰だと思う。

 

「それやらなきゃいけないんですか?」

「うん……これも……先輩命令だよ」

「えぇ……分かりました」

 

 千景君は深呼吸をした。何て呼ぶんだろう、今緊張してるけど、どうするんだろう。

 

「り、燐子」

「もう一度お願い、聞こえなかったよ」

「は!?マジですか!?」

「うん」

 

 私は笑顔で頷いた。実は聞こえてる。私は敢えて聞こえないと言った。もう一度呼んでほしいから嘘をついた。千景君を弄るのって結構楽しいな。

 

「燐子!これでいいでしょ!」

「うん、よろしい」

「ちょ、撫でないで下さい!」

「これからは私のこと、呼び捨てで呼んでね。あ、他の人がいる時は先輩って付けてね」

 

 私は後付けで言った。これで逃げ場はなくなった。千景君にはここで慣れてもらわないといけない。私と付き合うんだから、先輩って付けるのはなしにしないと……。

 

「えっと燐子」

「なに、千景君」

「これからもよろしく。あと、付き合ってくれて……ありがと」

「私もよろしくね。付き合ってくれて……ありがと」

 

 私と千景君は唇を重ねた。半年しか経ってないけど、ここまで来れた。友希那さん達が知ったらビックリするだろう。だから、私はここに告げよう。

 

 

ーーこれからは彼と……千景君と旋律を奏で、物語を綴っていくと……。

 

 

 

 




物語はここに終わりを迎える
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