燐子と付き合ってから一ヶ月が経過した。季節は秋なのに、雨が降ったり、風が強かったりする時があった。秋は暖かい季節なのに、寒い時があるなんて……。
今日は特別な日だ。10月17日、今日は燐子の誕生日だ。Roseliaの人からは誕生日プレゼントは貰っているという。ケーキの杖って言ってたが、あこちゃんが頑張ったそうだ。そのため、今日は燐子とデートとなっている。
「寒い、やっぱり燐子迎えに行けばよかったかな」
燐子と付き合うことはRoseliaに伝えてある。皆からは祝福された。祝福された後、湊……いや、友希那先輩だ。友希那先輩達から名前で呼んでいいよ言われた。あこちゃんと燐子以外の人とはあまり関わりがない。なのに、名前で呼んでいいと言われたのだ。
友希那先輩曰く、燐子と付き合うのだから、今後はRoseliaと関わることになるでしょう、という理由だった。これにリサ先輩と紗夜先輩も便乗し、名前で呼んでいいと言われた。あの時は色々ありすぎた。
「千景君……お待たせ」
「ああ燐子先輩おはようございます」
「千景君……また敬語使ったね……」
「やば!ごめん燐子!まだ慣れてないだけなんだ!」
俺は燐子に言い訳をした。彼女には敬語を使わないように言われた、これも付き合う時に言われた。先輩と呼ぶのは他の人がいる時、呼び捨ては二人きりの時と友希那先輩達がいる時だけとなっている。友希那先輩達がいる時というのは、後付けだ。
今日の燐子は気合が入っている。上は藍色のカーディガン、中は黒のセーター、下はチェックのグレーのロングスカートという、燐子らしい服装だった。髪形はお団子ロングか。ここまで気合を入れるなんて、凄いなこの人は。
「今日は特別に……許します」
「いいのか?」
「うん、今日はね。でも……次はないからね?次やったら……分かってるね?」
「あ、ああ!分かった!とりあえず、行こうか」
「うん!」
そう言って、燐子は腕を絡めてきた。胸が当たってるけど、狙ってやってるのか?狙ってるとしたら策士だ。無意識とは思えない。当たってるなんて言っても、彼女は離れない。今日は燐子の好きなようにしてあげよう。
「ああそうだ燐子言い忘れてたけど、服似合ってるよ」
「千景君、それ最初に言わないと駄目だよ?」
「ごめん」
「じゃあ私も……千景君、カッコイイよ」
燐子は耳元で囁いた。だからくすぐったい。近くで囁くなよ、人前でやるなんて……本当に大胆になったな。これは俺のせいなのか?
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今日の千景君、カッコイイなぁ。黒のカーディガンと長袖のTシャツと黒のジーパン、黒一色の服装だ。髪型は私の好きなポニーテールだ。千景君のポニーテールは付き合う前から好きだ。千景君は分かってる。
「燐子最初どこ行く?」
「最初は……どうしよう。NFOのグッズ見てもいい?」
「もちろん。燐子の行きたい所なら何処でも付いて行くよ」
彼は微笑みながら言った。何処でも付いて行くなんて、本当に優しい。私がこんなことを言っても、彼は来てくれる。でも、あんまり我が儘は言わないようにしよう。言い過ぎたら、千景君が困っちゃう。
NFOのグッズを見ることにしたけど、何を買おう。種類は豊富だし、色々あるから迷ってしまう。決まらなくてもいいから、ウィンドウショッピングでもいいから、見ていこう。
「ねえ燐子」
「何?」
「これどうかな?バッグなんだけど……」
千景君が持ってきたのはNFOのグッズもといバッグだった。黒いバッグで、私が使っている魔法使いのイラストを模した、落ち着いた物だ。もしかして、買ってくれるのかな?
「これなんだけどさ、買ってあげる」
「いいの?」
「燐子、欲しそうに見てたじゃん?だから、買おうかなって思ってさ」
「……ありがとう千景君、嬉しい……」
千景君は私にバッグをプレゼントしてくれた。私は分かってる、これは誕生日プレゼントじゃない、と。何故分かっているのか、千景君は私にまだ誕生日おめでとうと言ってない。欲しそうに見ていたのは事実だ。千景君はそれに気づいて買ってくれただけだ。
その後、私と千景君は買い物をした。買い物といってもウィンドウショッピングだ。それでも楽しかった。千景君と付き合ってからは毎日が楽しい。図書委員の活動の時も楽しくやれている。二人きりの時や一緒に帰って別れる時もキスをする。前とは違う日常だ。
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時間はあっという間に過ぎた。夕方になり、俺と燐子は家に向かった。燐子が俺の家に泊まると言ったのだ。燐子が泊まるのは、台風の時以来だ。
「燐子、泊まって大丈夫なの?」
「親には言ってあるから……大丈夫だよ」
「事前に言うって早いな。準備良すぎだろ」
引くけど、燐子らしい。前の燐子は遠慮しがちだったけど、付き合ってからは容赦しなくなった。俺に対しては躊躇なくやるようになった。最後まで一緒にいられるからいいか、突っ込むのはやめよう。
あとは誕生日プレゼントを渡すだけだ。アレのために、俺は準備を始めた。アクセサリーではあるけど、探すのは苦労した。やっとの想いで見つけたんだ。喜んでくれるといいけど……。
「お邪魔します」
「どうぞ」
「千景君、部屋に入ったら……話あるんだけど……いいかな?」
「いいけど、話って何?」
俺は燐子を部屋に上げた。話って何なんだ?少しだけ嫌な予感がするが、気のせいか?
部屋に上げた瞬間、俺は燐子に押し倒された。案の定だ。もしかすると、話があるっていうのは嘘かもしれない。それは建前で本音は……。
「燐子、どうした!?」
「千景君……キスさせて」
「はぁ!?」
俺は燐子に唇を奪われた。またやりやがった、俺が泣きそうになった時も燐子は唇を奪った。そっちがその気なら、仕返しをしよう。俺は燐子に反撃をした。舌を入れてやる。
舌を入れた瞬間、燐子は離れようとした。逃がさねえ、彼女の肩を掴み、抱き寄せる。ここで蕩けさせてやろう。そうすれば、落ち着く筈だ。
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「酷いよ千景君」
「燐子も同じだろ。いきなりやるのはズルい」
「それはそうだけど……キス……したかったんだから……させてよ」
「したいなら一言言ってくれよ……」
彼に抱き締められながら、私は反論した。今は夜。私は彼に仕返しをされた。その後は互いに蕩け合った。そう、私は千景君とヤッたのだ。
ヤッたのは初めてじゃない。先月二回くらいやっている。千景君は優しくしてくれたから問題はない。けど、疲れちゃったな。彼を襲ったのを後悔する、私が招いたことだ。自業自得か。
「燐子、渡したい物あるんだけど、いいかな?」
「渡したい物?」
「えっと、これなんだけどさ」
彼が差し出した物は小さい箱だった。何だろう、何が入っているんだろう。彼から受け取り、私は開けていいかを聞いた。彼はいいよ、と優しく頷いた。
「これって……」
「アクセサリーなんだけど、指輪ってところかな」
「指輪?」
「結婚指輪じゃなくてごめん。まだ結婚は出来ないけど、雰囲気だけで、な?」
「嬉しい……ありがとう千景君」
千景君は私を抱き締めた。本当に嬉しい、まさか指輪を渡されるなんて、思ってなかった。こんなことをされたら嬉しくなる。涙が出そうだ、耐えられない。ああーー
ーー彼はなんて優しい人なんだろう。
「千景君、嵌めてくれる?」
「もちろん。燐子、指出して」
「はい……」
私は彼に指を差し出した。嵌める指は中指だ。薬指は、私と千景君が結婚するまでに残さないといけない。今は、今だけはこの時間が幸せな時間だ。
「よかった、サイズ合った」
「私の指のサイズ……いつ測ったの?」
「燐子が寝てる時に測った。何かごめん」
「いいよ……許してあげる」
私は彼の唇に優しく重ねた。千景君のことを好きになってよかった、千景君と出会えてよかった。私はなんて幸せ者なんだろう。優しい後輩と……大切な人と恋人になれて私は幸せだ。
ーー燐子、誕生日おめでとう。大好きだよ。
ーーありがとう千景君、私も大好きだよ。
これからの二人に幸あれ。そして燐子、誕生日おめでとう