図書委員の奏でる旋律と綴られし恋歌   作:ネム狼

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二週間ぶりの更新になります
タイトル名迷った結果こうなったけど気にしないで下さい


後輩はキザになり、先輩は無意識にときめく

 NFOはそろそろレイドイベントが迫ろうとしていた。そう、もうすぐ連休が迫っているんだ。ゴールデンウィークになると必ずレイドイベントが来る、これはソシャゲにおいてはお約束であり恒例でもある。

 

 もちろん今回はRin-Rinさんと聖堕天使あこ姫さんにも協力を呼び掛けた。準備は万端だが、あとはレベル上げと装備、必要なアイテム等を揃えていくだけ、徹夜しない程度にやっておけば大丈夫だろう。

 

 それもいいけど、まだ貯まってる本があるからそっちも消化しないといけない。父さんは司書だから連休であっても図書館に行かなきゃいけないし、母さんは暇だとゲームやるからなぁ。因みに母さんもNFOをやっている。もちろんフレンド登録も済ませている。名前はひろちーだ。

 

 レイドもやらなきゃいけない、貯まってる本も消化しなきゃいけない、連休は休みたくても趣味でやることがある。下手をしたら社畜並みになってしまう。まあこればかりは自業自得か。

 

「そういえば白金先輩は連休は何をしているんだろ。聞いてみるか?」

 

 気になるけど聞かない方がいいかもしれない。先輩にだって知られたくない事があるし、それを考えたらまずいか。ていうか聞こうにも俺、先輩の連絡先知らないんだった。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 もうすぐ連休、ロゼリアの練習やライブ、NFOでのレイドイベント、私は連休なのに随分と忙しいような気がする、そう感じるのは私だけかな?

 

 図書室で受付をしているけれど、隣には椎名君がいる。椎名君と一緒になることが多いけど、気のせいだろうか?そういえば椎名君は連休の予定ってどうなってるんだろう?聞いてみようかな。

 

「椎名君は……連休の予定って……どうしてるの?」

「連休ですか?大抵は読書くらいになりますかね。それくらいしかありませんね」

「そう……なんだ……」

 

 読書くらいしかない、椎名君はそう言った。椎名君って読書以外に何かないのかな?趣味とかなら何か聞けるかもしれない。よし、聞いてみよう!

 

「椎名君は……何か趣味は……ないの?」

「趣味ですか?そうだな……」

 

 椎名君は顎に手を当てた。何だろう、なんでか知らないけど様になってる。椎名君なら探偵とかも似合いそうだ。もし機会があったら探偵の衣装を作ってコスプレさせようかな。あと、大正浪漫や黒服とかも似合うかもしれない。椎名君ってコスプレの素質ありそうなんだけど、どうだろう……。

 

「先輩、白金先輩!」

「な、何!?」

「どうしたんですか?なんか考えに耽ってたような感じしてましたが」

「な、何でもないよ?」

 

 何故に疑問形なんですか、と椎名君は半笑いで言った。恥ずかしい!椎名君にみっともない所見せちゃった!どうしよう、椎名君引いてるかな?私は耳が赤くなっている感じがした。

 

「話戻しますが、趣味でしたらゲームがありますかね」

「珍しい、てっきり……読書だけかと思ってた」

「俺は本の虫じゃないですよ。といっても積みゲーはありませんがね」

 

 私はオンラインゲームが好きだ。じゃあ椎名君はNFOはやってるのかな?でも椎名君にはそんなイメージはない、彼には申し訳ないけど、やってるような感じがしない。

 

 他に何かないかな、私は椎名君の趣味のことを更に知りたくなった。聞きたいけど、どう聞いたらいいんだろう……。さっきは聞けたのに、なんで今になって迷っちゃうんだろう。

 

 そんなことを考えていたら昼休み終了まで十分を切っていた。そろそろ戻らなきゃいけない時間だ。知りたかったけど、聞けなかったのが残念だ。また今度聞こうかな。

 

「もう時間ですね」

「そう……だね。教室に戻ろうか」

 

 私と椎名君は受付から出て図書室を出ようとした。その時、私はあることを思い出した。そういえば聞いてなかったな。この前のライブの時、私はどうだったかを聞いていない。聞くなら今しかない!

 

「椎名君!」

「どうしました?何か忘れ物でも……」

「違うの。この前のライブのこと何だけど……。椎名君から見て……私どうだった……かな?」

 

 私は勇気を出して椎名君に聞いた。どんな答えでもいい、変だったとかでもいい。私は椎名君がどう感じたかを聞きたい!

 

「この前ですか、今言うんですか?」

「今じゃないと……駄目かな……」

「わかりました。じゃあ言いますね」

「いいよ。聞かせて!」

 

 椎名君はライブの時の私がどうだったかを言った。私はドキドキしながら椎名君の言葉を聞いた。

 

 

――とても綺麗で輝いていましたよ、見惚れるくらいに。

 

 

 椎名君は微笑みながら言ってくれた。私はその一言を聞いてドキッとしてしまった。椎名君、私だけじゃないよ。今の君も、言ってくれた今の君も一瞬だったけど、輝いていたよ。

 

「ま、まあそんな感じです。じゃあ俺鍵返して来ますね!あと、練習頑張って下さい!」

 

 椎名君と私は図書室を出て鍵を締め、椎名君は先に戻っていった。私は胸に手を当てて心臓がまだ鳴っていることを感じた。止まる様子は全くないようだ。

 

 どうしよう、ニヤケちゃいそうだ。こんなの氷川さんに見られたらなんて言われるか。椎名君のあの一言は凄く嬉しかった。そのせいか、溜まっていた疲れまで吹っ飛んだような感じもしたし、あの時の椎名君は若干顔が赤かったように見えた。

 

「椎名君、ありがとう」

 

 私は一人、誰もいない図書室の入り口の前で椎名君にお礼を言った。今日の練習は頑張れそうだ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 はあ、なんであんなこと言ったんだ俺は......。綺麗で輝いていましたって、キザにも程があるし自分で言ってて凄く恥ずかしかった。

 

 白金先輩、どう思ってるかな?引いてなきゃいいんだけど……。俺は暇潰しにピアノを弾くことにした。それにしてもなんで家にピアノが置いてあるんだ?まあいいか。

 

 今弾いているのは「Weight of the World」だ。とあるゲームの主題歌で、動画にピアノコレクションがあったので聞いて弾こうと思ったんだ。

 

 そのゲームはやったことはないが、世界中で売上が凄いと聞いている。弾いていればあの恥ずかしい思いは消えてくれるかもしれない。でも、あの時の白金先輩の表情は衝撃を受けたかの表情だった。

 

 もしかすると「え?何を言ってるのこの人は」って思ってるかもしれない。そう思われてたら白金先輩に嫌われてる可能性もある。いや、そう考えたくはないな。

 

 俺は弾くことに集中できないと判断し、ピアノを弾くことを止めた。駄目だ、集中できない。こんなに集中できないのは久しぶりだ。

 

「困ったな。こんなに集中できないのは久しぶりだ。しかし、白金先輩どう思ってるのか気になるな」

 

 いや、こんなことを考えるのはやめよう。こんなこと考えてたら気が散りそうだ。忘れよう、こんなマイナスなこと。だから信じよう、白金先輩が引いていないってことを祈ろう。祈るしかないんだ。

 

「そういえば、Rin-Rinさんとあこ姫さんからNFOのリアルイベント誘われてたんだったな。連休だったっか、行く準備しとかないとな」

 

 そうだ、こういう時は短編小説を読もう。恋文の短編が読んでる途中だからそれを読んで心を落ち着かせよう。そうした方がいいな。

 

 俺はこの時知らなかった。

 

 このリアルイベントで会う人が知っている人であるということを……。

 

 

 

 

 

 

 




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