図書委員の奏でる旋律と綴られし恋歌   作:ネム狼

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デート回前半です


お互いを知り合うのは難しいことなのか

 五月二十日、とうとう約束の日が来た。いや、来てしまったと言うのが正しいか。

 

 ああ緊張する。白金先輩はどんな私服で来るのか、今日はどんな一日になるのか、俺の頭はそんな期待ばっかりでいっぱいになっていた。この状態で上手くいくのか心配になってきた。

 

 俺が来てきた私服なんて大したものじゃなかった。黒のTシャツに黒のジーンズという黒一色だ。あまりにも酷すぎる。

 

 髪に至っては前髪を微妙に切っただけだ。最近前髪が伸びたから自分で切ったけど、これでよかったのだろうか。こんな状態で来たことが白金先輩に凄く申し訳ない。

 

「はぁ、こんなんだと先輩に嫌われるよな……」

 

 自分で調べた結果がこれって酷すぎるにも程がある。しかも計画すら立ててないという。ノープランで来るなんて情けない。

 

 俺は今回のデート?が上手くいくのか心配になった。ちゃんと白金先輩をエスコート出来るのか、思い出に残る一日になるのか、そればっかりを考え、頭が重くなるくらいに深く考え込んでしまった。

 

 

 髪は一つ縛りではなく、普通に下ろして来た。今回はこれで行こうということになってきたけど、何を言われてもいい。覚悟は出来ている。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 椎名君もう来てるかな?私は楽しみ過ぎていたあまりに寝坊をしてしまった。椎名君に連絡をするのを忘れていたけど、出るときに連絡はしておいた。椎名君は大丈夫ですよと言ってくれたけど、私がこんなことするなんて彼にどう謝ったらいいんだろう。

 

 私は全力で走り、途中で息切れもしたが、必死になって椎名君の元へと向かった。今日はいつもより違ってゴシック風のドレスにしてみた。

 

 全力で走っているから身体中汗だらけだ。椎名君に嫌な思いをさせてしまう。

 

 走ってどのくらい経っただろうか。三十分程走ったのかもしれない。数歩歩いてようやく椎名君の元に辿り着いた。

 

 

――椎名君、ごめんね……。

 

 

 私は泣きそうになっていた。せっかく椎名君と約束したのに、彼を待たせるなんて、本当に私は情けない。何をやっても上手くいかない、今回も上手くいかないのかと思ってしまう。

 

「先輩、大丈夫ですか!?」

「椎名君……遅くなって……ごめんね……」

「先輩、まずはどこかに座りましょう?休憩した方がいいですよ」

 

 椎名君に肩を貸しますと言われ、私と椎名君は近くのベンチに座った。椎名君は鞄から水を出し、飲んで下さいと言われ、私は言葉に甘えて飲むことにした。

 

「落ち着きましたか?」

「う、うん。ありがとう椎名君」

「いえいえ。先輩が無事でよかったですよ」

 

 椎名君は優しい。こう思うと私は恵まれているなと思ってしまう。とりあえず謝らないといけない。私は渡された水を椎名君に返した。

 

「あ、しまった!」

「どうしたの?」

「すいません、この水……飲み掛けでした。本当にごめんなさい!」

 

 え?飲み……掛け……?ということは……まさか!

 

 

――間接……キス……だよね!?

 

 

 私は間接キスをしたことに気づき、顔が真っ赤になった感じがした。沸騰したような、そんな感じだ。私のバカ!何をしてるんだろう私は!椎名君の方を見ると彼も顔を赤くしていた。

 

「ごめんね椎名君!」

「こちらこそごめんなさい!これは俺が悪いです」

「いや、私が悪いよ!」

 

 私と椎名君は互いに向き合えずだった。恥ずかし過ぎる。遅刻に続いて間接キスまでするなんて、何をしているんだろう私は……。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 白金先輩はようやく落ち着いたようだが、遅刻の件で謝り、先輩が泣きそうになってしまった。 先輩が無事ならそれでいいんだ。俺が先輩を迎えに行けばよかったのかもしれない。

 

「椎名君、本当にごめんなさい」

「もう大丈夫ですよ先輩。理由が楽しみ過ぎたっていうのは俺も同じですから」

「え?椎名君も……なの?」

「はい、実は楽しみのあまり、眠れなかったんですよ。この通り髪は癖毛立ってるし、目の下に隈は出来てるし、この通り何とか起きれていますが……」

 

 そう、俺もこの日を楽しみにしていたんだ。白金先輩と出掛けられる、それはファンにとっては凄くレアなことだろう。だが、俺は先輩から誘われたんだ。それを不意にするということは先輩に対して失礼だ。

 

「そうなんだ……。大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。先輩をエスコート出来るように頑張りますから!」

「ありがと。そういえば椎名君、前髪切ったんだね」

「ああこれですか?前髪が伸びたので少しだけ切りました。先輩も髪型違いますね、一つ結びですよね?」

「気づいたんだね。うん、今日は……髪型……変えたんだ」

 

 気づいたのは今だった。この時の先輩は凄く可愛かった。俺はそんな白金先輩に見惚れてしまった。何だろう、今一瞬胸がキュンとしたような気がする。

 

 白金先輩はバタバタしてもちゃんと身だしなみを整えた。服装までしっかりしている。それに控えて俺は何をしているんだろう。

 

「椎名君、どうしたの?」

「な、何でもないです!」

「そ、そう……」

「そんなところです。とりあえずそろそろ出掛けましょうか」

 

 俺はベンチから立ち上がり、白金先輩に手を差し伸べて立てますか?と聞いた。白金先輩は俺の手を握って立ち上がり、大丈夫だよ、と答えた。

 

 先輩ってお嬢様みたいだな。何か場違いみたいだ。場違いでも何とか着いていけるようにしないと!

 

「椎名君、もう一つ謝らないと……いけないことがあるんだけど……いいかな?」

「謝らないといけないこと?何ですか?」

「今日ね……計画立てたんだけどね……全部忘れちゃった。頭が真っ白になっちゃって……」

 

 このデート、どうやらノープランで行かなければならなくなったらしい。

 

 

 




次回は多分テキトーになるかもです
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