星屑の大海に手向ける「藍色」の艦   作:ソルジャーODST

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月のアナハイム・エレクトロニクスを目指す『インディゴ』はある宙域にたどり着く。

そこは一年戦争和平の立役者達が戦争を終わらせるために戦い、戦争の継続を願うものがそれを阻止せんと戦った場所だった。


「藍色」は月を見て、過去を思い出す

「周囲にストレンジャー確認できず。現状速度を維持したまま月のフォン・ブラウンへ向かいます」

「よろしい。この宙域はデブリが多い。デカいものもある。そちらへの警戒も怠るな。操舵手頼むぞ」

「お任せください艦長。速度このまま、目標フォン・ブラウン」

 

私達が乗る『インディゴ』はコンペイトウに連邦軍輸送艦隊を送り届けたのち、今度は月のフォン・ブラウン市へと向かうように指示を受けた。正確にはアナハイム・エレクトロニクスのフォン・ブラウン工場になのだが。我々はそこで今後量産予定の可変MS数機を受領する予定だ。実戦テストも兼ねた先行配備なのだろうな。

 

「艦長、私はアレには乗りませんよ?ジェガンで十分です。というか可変機なんて今さら乗りこなせませんよ」

「君なら乗りこなせるだろうに……。大尉、君にはジェガンのマイナーチェンジ機をとの指示だ。D型というらしい」

「あらま。上もわかってらっしゃる。これでもGM系ばかり乗ってきましたからね。なんだかんだで愛着がありますよ」

「今度の新型もジェガンの兄弟機と言って過言ではないと聞いているがね」

 

まったく大尉は可変機に対しての忌避感が強いと言うかなんというか。曲がりなりにも本艦のエースである。それにここまで生き延びてきたのは伊達では無い。技量も相応にあるし何より運がいい。MSパイロットとしては文句は無いだろう。唯一の欠点はGM系MSにこだわることか。話によれば受領予定機は、可変MSの欠点の一つ「高コスト」に対しての回答として既存MSとの部品の共通・共有化を示したそうだ。専用の生産ラインを作るよりも、既存の生産ラインを利用した方がコストは低くなる。私のようなそういうことに疎い人間でも分かりやすい回答だと思う。「現行の既存MSパーツ」はアナハイムが生産を行っているRGM-89ジェガンを利用したようだ。その点からもジェガンの兄弟機、引いてはGM系の系譜とも言えると思う。それでもダメとはな。

 

「ジェガンはかなりいいですよ。ジムⅡからの乗り換えでしたけど、いい反応をする機体です。ジムⅡだと少し物足りなかったんですよ」

「君の反応速度はかなり上がったらしいからな。あのひよっこが立派になったモノだ」

「艦長だって、昔はよく慌てていたじゃないですか。それが今じゃ、『不動の艦長』なんて言われてるって聞きましたよ」

「やめてくれ、恥ずかしい。君たちパイロットと違って異名などという物はいらないよ」

 

『不動』などと言われても内心では動じているし、表に出ないようにしているだけだ。「艦長が動じることは、艦が動じるのと同義だ。決して動じる様をクルーに見せてはいけない」とは『インディゴ』の初代艦長から教えられた言葉だ。確かにその通りだと思う。一年戦争の時に艦長は動じた姿を私達クルーに一切見せなかった。だが、終わった後にいつもこう言うのだ。「あの時は肝を冷やした」と。それがようやく私も真似できるようになってきただけだ。私の場合、副長ではなく大尉にこぼすのだが。

 

「まあいい。大尉、君に配備される予定の機体には追加の武装があるそうだ。まとめて配備されると聞いている」

「なんですかそれ。フルアーマーとかですかね。嫌ですよ重くなるのは」

「追加武装でミサイルランチャーとバズーカ。対艦仕様だそうだ。増えた重量に対してブースターも追加することで機動性を確保し、使用後のミサイルランチャー等はパージすることができるらしい。その際の姿勢制御の変化が無いように調整されているとも聞いているぞ」

「今さら対艦仕様機なんて必要ですかね?」

 

そこは私も思っていたことだ。まあ、対艦仕様というよりは純粋に機体の強化装備として活用してみろという意味だろうか。どこまで使えるかは大尉次第だな。

 

「艦長、少々訂正を。大尉に配備されるのは『ジェガンD型と強化パーツ』ではなく『ジェガンD型をベースに強化した機体』です。型番も違っており、RGM-89DとRGM-89Sです。強化パーツを受領するのではなく『強化された機体』を受領するのです」

「少佐、さすがのMS好きだな。だ、そうだぞ大尉。私の話は間違いだそうだ」

「ははは。少佐殿にはかないませんな!」

「大尉、あなたが乗る予定の機体だ。知らない方がおかしいと思うのですが」

「申し訳ございません、少佐殿。……ぶはっ!」

「ちょ、笑わないでください!あ、艦長まで!頑張って佐官の雰囲気作っているんですから!」

 

少佐は『インディゴ』の副長を務めている。先程も言ったが彼はかなりのMS好きで、本艦のメカニックマン並みの詳しさだ。そして階級が下の大尉が吹き出してしまったワケは、少佐が元々本艦で見習いクルーだったから。頑張って威厳を出そうとしているのは分かるが、本人は童顔かつ少し背が低く、どうしても背伸びしている感があってしまう。これに耐えきれず大尉は吹いてしまったようだ。私も正直危なかったのだが、『不動』で良かったと思う。

 

「悪い悪い…。いや、どうしても昔を知っているからさ。違和感がな?」

「気持ちは分かりますよ?私だって大尉より上になるなんて思いませんでしたから。どうしても違和感ありますし」

 

ふむ、大尉はなにかと彼のことを気にかけていたからな。彼は本艦で一年戦争後に二年過ごした後、艦を離れていったのだ。それがつい最近副長として配備されることとなったのである。その時は大尉と喜んだものだ。以前の仲間が帰ってくる、と。

 

「……大尉そろそろだ。私たちの懐かしい戦場だぞ」

「ああ、この航路ですか。これはまた懐かしい。ソロモンの後でしたか」

「そうだ。ソロモンで『インディゴ』を改装してな」

「改装なんてもんじゃないですよ。無理矢理カタパルトの箱を取り付けただけじゃないですかアレは。」

「まぁ、そう言うな。アレでも助かっただろう?」

「艦載機がジム・コマンド1、ジム2、ボール4にはなりましたね。『チェンバロ』の後しばらくは私だけでしたから、それよりはマシだと言えますけど」

 

サラミス前期型だった『インディゴ』の左右にある艦橋設備を取り外し、カタパルトを兼ねたカーゴベイを増設した。これは後にネルソン級と呼ばれる改装とほぼ同じだったらしい。改装が実際に行われた艦は随分と少なかったと聞く。かく言う『インディゴ』もネルソン級と呼ばれることはついぞなかったがね。

と、それは一旦置いておこう。大尉の「この航路は懐かしい」と言ったことについてだ。ソロモン攻略後、連邦軍はジオン公国の宇宙要塞ア・バオア・クーを次の攻略目標とした。ア・バオア・クーに備えて消耗した艦隊を再編、ジャブローから追加の艦艇も打ち上げて戦力を拡充しジオン公国との戦争に終止符を打とうとしていたのだ。

 

そんな時に私達が乗る『インディゴ』にある命令が届いた。その内容は…

 

『グラナダへ向かうジオン公国首相を護衛せよ』だった。




ほぼジェガンとスタークジェガンの説明回。ジェガンよくない?私は好きです。ジムも好きだけどさ。なお、機体の説明がおかしい箇所があるかも知れません。作者の知識不足でございます。

『インディゴ』ノーマルサラミス→ネルソン級new
あの溢れる魔改造感が好き。ネルソン級って言ったらコズミック・イラの250mクラスを思い出す世代であります。モントゴメリ懐かしい。

さて、このお話ですが一年戦争のメインストーリーからは外れサイドストーリーへと移ります。ええ、私の好きなサイドストーリーです。
小説版でガンダム5号機にザクⅡとリック・ドムが追従する場面はホント好き。くっそカッコイイ。挿絵もめっちゃいいのよ?

『藍色』は閃光の果てに何を観るか…


地上なら「コロニーの落ちた地で」と「LOSTWARCHRONICLE」がサイドストーリーで好きです。LOSTの方はゲーム(PS2の方)でザクⅠ使ってガンダム墜としました。ビームライフル1発を正面(装甲補正最も厚い)から食らってHP6割持ってかれたのはいい思い出です。

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