荒野のコトブキ飛行隊 漂流の翼   作:明日をユメミル

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第5話

取り敢えずオウニ商会の預りとなった菅野は、医務室で手当てを受けてから、愛機の紫電改が仕舞われている格納庫へと足を運ぶ。

 

 

「……………」

 

 

目の前には、新品同様に整備された隼に隠れるように、ボロボロの紫電改がポツンと置かれていた。

菅野が何時も乗っているA-15号機ではなく予備のA-1号機ではあるが、それなりの愛着はある。

その分、今の菅野からはどこか哀しみが感じられる。

 

 

 

「それアンタの紫電改か?」

 

 

そこへ、偶々格納庫で作業していたナツオが現れ、菅野に話し掛ける。

 

 

「あぁ……何だオメェは?」

 

「ナツオだ。ここの整備班の責任者だ。」

 

「テメェみたいな子供が班長か?」

 

「失礼だな!ちゃんと成人してらぁ!」

 

「おぅそうか。で、どうだ?俺の紫電改は直りそうか?」

 

 

菅野の問いにナツオは真剣な表情となる。

 

 

「この船に積んでる部品じゃ無理だ。修理はラハマの町に着いて部品を発注してからになるな。」

 

「そうか。」

 

「それにしてもこの機体の整備した奴は、何も分かっちゃいねぇなぁ。」

 

「どう言う事だよ?」

 

「一応コイツのチェックしたけど、あちこちその場凌ぎの整備しか施されてねぇし、ガソリンも純度が異様に悪いのが入ってたんだ。こんなんじゃ機体の性能は半分も出てねぇんじゃねぇか?」

 

 

ナツオの言う通り、菅野がこの世界に来た時点で日本の敗北は時間の問題となっており、特に戦闘機を満足に動かすだけの燃料も資材も不足していたので、戦闘機の整備も騙し騙しのような状態であり、それは菅野の紫電改も例外ではなかった。

 

 

「あぁ……まぁ確かに、コイツはちゃんと整備すれば零戦よりも遥かに優秀な性能は出せただろうぜ。まぁ、資材も燃料も無い状態じゃ文句は言えねぇけどな。」

 

「カンノって言ったか?私は整備員として、このボロボロの紫電改を見ると整備員としての血が騒ぐんだ。コイツをまた飛ばせるようにするには時間が少し掛かるが、ここはカンノの紫電改は私達に任せてくれねぇか?」

 

 

 

ナツオの表情は真剣そのものであり、菅野は何処か信頼感を感じ、黙って頷く。

 

 

その直後、菅野の腹が鳴った

 

 

 

「そういえばまだメシ食って無かったな…」

 

「メシならこの上に酒場があるから行けよ。あそこなら酒からメシまで何でも出るからよ。」

 

「すまねぇな。」

 

 

 

菅野は格納庫から出ると、階段をのぼって西部劇に出てくるような雰囲気の酒場へとたどり着き、門をくぐる。

 

 

「いらっしゃい。」

 

「あれ?貴方はもしかして……」

 

 

中にはウエイトレスの『リリコ』とカウンター奥で仕事をしていたマスターの『ジョニー』が出迎える。

 

 

「菅野直だコノヤロウ。マスター、何か適当に見繕ってくれや。」

 

「はい。」

 

 

菅野は一番奥の席へと向かう。

するとそこには、レオナと以下数人の女性たちが居た。レオナは菅野が居る事に気がつくと、顔を向けてくる。

 

 

 

「レオナか…何してるんだよコノヤロウ?」

 

「見ての通り食事だ。カンノも食事か?」

 

「あぁ…て言うかソイツら誰なんだよコノヤロウ。」

 

「私の部下だ。ザラとエンマとキリエ、ケイトだ。後一人居るんだが、まだ入院してるんだ。」

 

「成る程な。俺は菅野直だバカヤロウ!よろしくなコノヤロウ!」

 

 

いつもの口調で軽く自己紹介をする。

 

 

「貴方が噂の紫電改のパイロットね?私はザラ。よろしくね。」

 

「お初にお目に掛かります。エンマと申します。以後お見知り置きを。」

 

「私の名はケイト。」

 

「おぅ!よろしくなコノヤロウ!……おい!テメェはなんて名前だバカヤロウ!」

 

 

大好物のパンケーキに夢中になっているキリエに菅野が怒鳴る。

 

 

「おい聞いてるのかコノヤロウ!!」

 

「何だようるさいな!!」

 

「うるさいとは何だバカヤロウ!ちゃんと挨拶くらいしやがれバカヤロウ!!」

 

「今私はパンケーキ食べてるの!!邪魔しないで!」

 

「何だとコノヤロウ!!」

 

「何だよ!!」

 

 

早速喧嘩状態となる二人にレオナ達は『またか』と言った表情となる。

 

 

「全く……これじゃキリエが一人増えたようだな。」

 

「えぇ。益々煩くなりそうですわ。」

 

「でも、賑やかになっていいんじゃない?」

 

「ケイトは別にどうでもいい。」

 

 

皆それぞれの思いを抱きながら、菅野を出迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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