タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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143 第2次世界大戦-10

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 総統の勅命(総統閣下の馬鹿野郎)によって、用意の整わないままにフランス本土侵攻を強いられる事となったドイツ西方総軍は、師団長級以上の将官を集めて総員に(ロート)作戦の真なる狙いを告げた。

 ある種のヤケクソ、或いは生贄に対する贖罪であった。

 時間を稼ぐための攻撃。

 成功は目標としていない。

 フランス、国際連盟の動きを阻害する為だけの全滅をも想定した攻撃。

 その重い現実を前に口を噤める程に西方総軍司令部は冷徹ではいられなかったのだ。

 只、であるからこそ西方総軍の上級指揮官達は(ドイツ)の置かれた状況を正しく認識し、献身を発揮する事となる。

 

 

――フランス侵攻作戦(ロート)

 無限軌道(キャタピラ)の力技で整備の整わぬインフラを踏破し、取りあえず装甲部隊だけは前線にかき集める事に成功した西方総軍。

 その動きをフランスは正しく把握していた。

 只、その意図を正しく把握する事は出来なかったが。

 自分たちこそが攻撃側であると言う認識に立脚し物事を見ていたのだ。

 であるが故に、このドイツ側の動きも防衛体制の強化にしか見えなかった。

 前線部隊に気の緩みは無かったが、上層部はマインツ市への空輸作戦や解放作戦に注視し過ぎていた。

 又、近日を予定しているイタリアのドイツ領侵攻作戦(トォオーノ)が発動すればフランスへと能動的に動くだけの余力がドイツには無いだろうと言う判断もあった。

 合理的な判断と言えるだろう。

 問題は、相手であるドイツが総統命令によって合理性を捨てた行動に出たと言う事であった。

 そして前線にあった兵力の差を失念していたと言う事だろう。

 ドイツ側はアルザス・ロレーヌ総軍との戦闘での消耗と、マインツ市の包囲に戦力を割かねばならぬ関係から、攻撃に出た西方総軍の総兵力は約87万、各師団合わせて46個もの大戦力であった。

 対するフランス側は、アルザス・ロレーヌ総軍が敵中に孤立し、その救援に部隊を割いている為、西方総軍に指向出来た戦力は32万に満たない規模であった。

 師団数で言えば17個師団。

 ドイツとの戦力比は2倍を超えていた。

 2倍を超える戦力が遮二無二、損害を考えずに突進してくると言う事をフランス上層部は少し甘く見ていた。

 特に先頭に配置された重戦車群 ―― 69.8tにも達するⅥ号戦車と、67tにも達するⅣ号戦車の改良型であるⅦ号戦車は、速度こそ遅いが、身に纏った重厚な装甲がフランスの主力戦車砲である90㎜砲の砲弾をはじき返し、進軍を止める事は無かった。

 逆に、ドイツ側のⅥ号戦車の長砲身8.8㎝砲とⅦ号戦車の10.5㎝砲は命中すればフランスのARL40重戦車の装甲を容易にぶち抜いていた。

 これは、ドイツとフランスの技術格差に起因したものでは無かった。

 逆に、装甲 ―― 製鉄技術と言う意味では、日本の影響を受けているフランスの方が優位であった。

 ただ如何せん重戦車に対する両国の認識の差がこの結果に繋がったのだ。

 フランスにとって重戦車とは、(主力)戦車の運用を支援する重装甲車両であった。

 即ち、装甲も重要であるが、ある程度は中戦車や装甲車などと一緒に機動戦が出来る能力が要求されていると言う事を意味していた。

 対してドイツにとっての重戦車は、強烈な敵戦車との交戦(抗戦)を前提とした、ある種の移動可能な防護拠点であった。

 それ故に機動性は必要最低限度に割り切られ、その分、装甲に重点が置かれていたのだ。

 言ってしまえば、フランスの重戦車は攻勢向けであり、ドイツの重戦車は守勢向けであった。

 その差が、想定とは違った攻守で行われた戦いで明確化したのだ。

 足を止めての殴り合いを強いられたフランスの重戦車は、装甲の薄さが問題として露呈した。

 前進し攻撃する事を命じられたドイツの重戦車は、被弾による撃破よりも足回りの故障などで擱座する事が相次いだ。

 ある意味、戦争と言うものは相手が居るものであり、自分勝手な事前な想定と言うものは通らないと言う事を示すようなものであった。

 

 

――フランス

 ドイツによる被害を考慮しない大攻勢に大いに慌てる事となる。

 被害を無視した攻勢を受けてしまえば、数的不利が持つ意味が重くのしかかってくるからだ。

 慌てて、後方で再編成中だった砲兵部隊を前線へと動かした。*1

 これに対してドイツも、フランス軍が遺棄した野砲をフランス砲(フロックス・アルティレリー)と名付けて持ち込み、応戦した。

 対戦車砲を優先したが為、数も揃わぬ旧式の野砲が主力であったドイツ野砲部隊にとって、弾薬も含めて鹵獲できたフランスの新鋭野砲は慈雨にも似た存在であった。

 フランスの地で、フランスの砲をもって行われる熾烈な砲撃戦は、何とも皮肉めいた戦いであった。

 とは言え、当事者たちにとっては命が懸かっている。

 皮肉でも冗談でも無い現実なのだ。

 フランスは更に、温存していたJ36(31式)戦車の投入を決断する。

 将来に起こるであろう決戦の為として、アルザスの防衛部隊には組み込まれて居なかったが、想定される未来ではなく危機的な現在への対応が優先されるべきとの常識的な判断であった。

 その上で、要塞攻略戦を想定して開発と配備が行われていたARL40At駆逐戦車の投入を決断した。

 その名からも判る通りARL40重戦車の車体を流用した駆逐戦車だ。

 尤も、車体(シャーシ)は前後逆になっており、フロントエンジンとリアの戦闘室と言う形になっている。

 これは長大な、野砲をベースに開発された155㎜砲を運用する為の構造であった。

 更には、正面だけに限れば250㎜を超える装甲を与えられている、戦闘重量60tを超える重駆逐戦車(モンスター)だ。

 その対価として機動性は劣悪の一言であり、又、側面装甲も70㎜程度とかなり薄いものとなっていた。

 だがその欠点は、陣地に籠っての防衛戦闘であれば欠点としては看過しうるレベルの問題となる。

 J36戦車とARL40At駆逐戦車の投入は、ドイツの進軍を頓挫せしめる効果を発揮する。

 ドイツ側が攻撃に出て11日目、国境線から50㎞程押し込まれた所での事であった。

 当然としか言いようがない。

 日本製の照準装置によって、接近する前に一方的に撃ってくるJ36戦車。

 接近は出来るが、圧倒的な防御力と尋常では無い火力によって確実に潰しにくるARL40At駆逐戦車。

 砲弾の数だけドイツ戦車の残骸が戦場に転がる ―― そんな状況で、馬鹿正直に正面から仕掛ける程にドイツ軍の将兵は愚かでは無かった。

 凌ぎ切った、そうフランスが安堵した時、ドイツの(ロート)作戦第2段階が発令された。

 

 

――ドイツ

 重戦車をかき集めた機甲突撃戦術は莫大な被害、投入した戦車の8割を損耗する事態となった。

 前衛となった第1装甲軍集団第11装甲軍は、文字通りの全滅状態であった。

 攻勢作戦であった事から、その全てが遺棄された訳ではなく、4割近い車両の回収と修理は可能であったが、それにしても酷い損害であった。

 だが、この献身によって西方総軍は(ロート)作戦の第2段階を発令できる状態に持ち込む事に成功する。

 側面を気にせずに行われた第11装甲軍に突進への対応によって、フランスが有力な装甲部隊をその正面にかき集めたが為、突進した50㎞が()()()()()()()()()()()()()となったのだ。

 撃たれても撃たれても突進し、フランス将兵がドイツ装甲部隊将兵の正気を疑い、或いはレミングの行進の如くと笑った攻勢は、自殺的攻撃ではなく、勝算に基づいた作戦であったのだ。

 満を持して、それまで温存してきた中戦車 ―― Ⅴ号戦車を主要装備とする機動展開力に優れたB軍集団が、側面を第3軍集団に守られつつ展開を開始したのだ。

 目標はパリ。

 少なくとも燃料が続く限り、前進する積りであった。

 そしてB軍集団とは別に、5000人規模の特殊部隊がフランス軍を避ける形でフランス領内へと浸透していった。

 アメリカ-チャイナ戦争の戦訓を基に生み出された、後方かく乱部隊(コマンド・ユニット)だ。 

 騎馬やオートバイなどを装備し、最終的には小隊規模(100人単位)の部隊で縦横無尽に動き、フランス領内の橋や鉄道などのインフラを破壊し、或いは物資集積所を襲撃する事で、最長で一ヶ月はフランス領内を混乱させる事が期待されていた。

 生還の難しい任務であったが、頬に特徴的な傷のある指揮官は、この命令を男子一生の快事とばかりに承諾し、自ら陣頭指揮を行ってフランス領内へと潜り込んでいった。*2

 フランスはこの動きに動員途上で人員の訓練未了な部隊迄も投入し、対応していく事となる。

 

 

――ブリテン

 ブリテンは事前の協定に従って陸軍の大規模なヨーロッパ大陸への戦力派遣を行っていた。

 ブリテン海外派遣軍(British Expeditionary Force)である。

 30万規模の将兵は、10個の機械化歩兵師団と4つの戦車師団を基幹とする2個の軍団で成っている。

 ()()()()()()()が、完全な装甲化と自走化が行われており、その価値は極めて重い部隊であった。

 とは言え、戦車や装甲車、自走砲を大量に保有しているが故に、ブリテン本土から即座に全部隊が海を渡る事は難しかった。

 これは海洋移動が難しいと言う意味では無い。

 単純にブリテンの輸送力の問題であった。

 海洋利用 ―― 制海権と言う意味では完全に国際連盟側が握っており、北海に展開している海上自衛隊の手によってドイツ潜水艦部隊が完全に封殺されてはいたのだから。

 海の戦いに於いて科学力の格差と言うモノは絶対的な、ある種の断崖絶壁として存在する事となる。

 ドイツ潜水艦部隊は、開戦から1月も経ずしてヨーロッパ大陸周辺の浅い海に展開し、情報収集をするのが精々と言う所まで追い詰められる事となる。

 では何が問題となっているのかと言えば、これは輸送力に求められた。

 如何な海洋帝国ブリテンとは言え、40t級の戦車を何百台も海を渡らせる事は難しかった。

 アメリカ同様に日本のRORO船を手本にした車両運搬船の建造も進んでは居たが、その数は十分では無かったのだ。

 通常であれば日本の船団と傭船契約を行い、移動を委託する事も出来るのだが今は戦時。

 日本の輸送船団は、それこそヨーロッパへと日本の部隊を移動させる事に投入されている為、ブリテンは自力で重装備をヨーロッパ大陸へと届けなければならなかったのだ。

 結果、開戦から1月以上が経過した今でも、まだ戦闘参加は成されていなかった。

 とは言え、BEFが投入を予定している場所はオランダ、対ドイツ北部戦線と国際連盟安全保障理事会戦争補完委員会で定められており、このオランダの戦いは国際連盟側(G4)が優位な形で安定していた為、フランス北部のベルギーとの国境地帯で編成と訓練を行っていた。

 フランスはドイツの第2攻勢(赤作戦第二段階)に対応する為、このBEFのフランス本土戦闘への投入を国際連盟安全保障理事会安全保障理事会戦争補完委員会の場で要請してきたのだ。

 自国防衛の戦力が引き抜かれる事に、オランダ代表は血色を変えたが、フランスは譲らなかった。

 オランダ戦線が安定している事を指摘し、同時に、戦後のオランダ復興 ―― 戦災からの回復にフランスが全面的に協力する事を約束する事でオランダを黙らせていた。

 その粗暴なフランス代表の振る舞いをブリテン代表は文明国の仕草では無いと腹の底で笑いつつ、オランダが同意するのであればBEFのフランス展開は受け入れると述べる事となる。

 

 

――日本

 ヨーロッパ大陸での陸戦は、フランスとブリテンが居れば問題は無いと判断していた所にこの事態である。

 アルザス・ロレーヌ総軍の解放作戦と合わせて、駐フランス日本連邦統合軍部隊 ―― 第19機械化旅団もBEFと歩調を合わせてフランス戦線へと投入される事となる。

 とは言え此方は機械化されているとは言え旅団規模である為、予備部隊としての役割を担う事となる。

 これに合わせて日本は、部隊の指揮権を国際連盟軍に奪われぬ様に遣欧総軍司令部をクウェートからロンドンへと移す事となる。

 交渉事などに於いて、国力もあるが、階級(金星の数)がモノを言う部分もある為であった。

 

 

 

 

 

 

*1

 砲兵部隊は攻勢の頓挫による撤退の際に野砲などの重装備の殆どを遺棄していた為、装備さえ支給されれば再編成は容易であったのだ。

 野砲などの装備に関しては、動員中の予備役部隊向けのモノがあったのだ。

 しかも保管装備 ―― 旧式ではなく、常設部隊向けと同一の最新鋭装備である。

 この点に於いてフランスは、誠に以って列強国家であった。

 

 

*2

 このコマンド部隊、いわゆるフリーデンタール特殊戦隊として知られる事となるこの部隊の活躍は、後にはある種の冒険譚として娯楽作品などの題材とされる事となる。

 これは、同部隊によるかく乱効果拡大を狙い、ドイツ側が宣伝を行ったと言うのが1つ。

 そしてもう1つは、同部隊の一部精鋭が洒落っ気を出して厳戒態勢のパリ市へと侵入し、その象徴的なエッフェル塔、その入り口に深夜、ドイツ語で()()()()()()()()()()()()()()と言うカードを花束と一緒に置くと言う大胆不敵な行動を行った事が理由だった。

 無論、これもフランスに混乱を起こさせる為であった。

 下手な爆弾をパリ市で炸裂させるよりはこちらの方が、フランス政府と軍の面子を潰す事に繋がり、躍起になるだろうと言う判断であった。

 実際、この事件以降、フランスの軍と警察組織が活動を活発化させ、その捜査活動がフランスの物流その他の混乱を引き起こさせる事となった。

 このパリ市へと侵入した部隊は、見事にドイツへと生還しており、ヒトラーより勲章を授与された。

 

 尚、戦後になって行われた本作戦への評価は、将兵の選抜や訓練、装備に手間が掛かった割に期待したほどの戦果を挙げられていないと言うものであった。

 これは、馬やオートバイと言ったものが移動手段であった為に持ち運べた弾薬の量が余りにも少なかった事、即ち同部隊が小規模な軽歩兵部隊でしかなかった事に原因が求められる事であった。

 或いは、かつてのチャイナの如く国際法を無視して非道の類を働けば、もう少しばかりの戦果は期待出来たかもしれないが、さしものドイツ人も格上の(報復の恐れのある)相手にそれを行う程の蛮勇は無かった。

 

 

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