タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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148 第2次世界大戦-15

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 文字通り、世界対自分となったドイツであったが、その指導者であるアドルフ・ヒトラーにせよ指導者層にせよ、まだまだ諦めていなかった。

 少なくとも戦線は開戦前よりも外側にあり、航空戦も互角 ―― 少なくともフランス軍機やポーランド軍機とは互角である事が、その自信の根拠となっていた。

 日本連邦統合軍機(ミートボール・ファイター)を相手にする事は不可能であるが、逆に言えば、日本がヨーロッパに全力で仕掛けて来るまでに戦争を終わらせれば良いと言う事なのだ。

 少なくともヒトラーはそう考えていた。

 現場の人間は日本が本腰を入れてきている事を肌感覚で理解していたし、その報告を上げていたのだが、その情報が現場から上に上がると共に少しずつ希望的観測によって着色されていった。

 結果、ヒトラーやその周辺の人間には、事実ではあるが全く違う解釈となった情報のみが上がる結果となっていた。

 普通であれば、外交その他のルートでの情報が入って来て認識の誤りも修正されるものであったが、日本の場合、完全に没交渉であり、接触するルートすら殆ど無いが為、不可能であったのだ。

 フランスやブリテン、或いはアメリカであればそれなりの交渉の窓口()があったが、日本とは全くなかった。

 これは日本の態度にも問題があった。

 日本はドイツ戦争をフランスやポーランド、国際連盟とドイツの戦争であると認識しており、そこで日本が積極的に外交で動く必要性を認識出来なかったと言うのが大きい。

 日本の外務省も、国際連盟加盟国との折衝 ―― エチオピアなどのドイツ戦争への陸戦部隊の派遣を含めた協力を約束している国家との折衝で外交力を消費しており、又、その活躍が日本国内でのニュースなどで扱われる為、ドイツの事は二の次としていたのだ。

 それを日本国民(有権者)も支持していた。

 そもそも日本人にとって国家総力戦であたる戦争とは、国家が解体されるまで行われるものだと認識していたのだ。

 誇り高いドイツ人であればベルリン炎上(ラグナロク)まで抵抗するんだろうな、と何となく認識してもいたのだ。

 コレでは外交などが惹起する筈も無かった。

 結果、ドイツの指導者層は軍の情報に頼って日本との距離を測る事となっていたのだ。

 これでは真っ当な対応が出来る筈も無かった。

 そんなドイツ指導者層に、誤解の余地のない日本の本気を伝える出来事が発生した。

 海だった。

 

 

――大西洋の嵐

 アメリカ、ブリテンの両国が空母を含んだ機動部隊を展開させて追っているドイツ艦隊(タイフーン戦隊)

 2国だけでは無い。

 フランスも小規模ながらも、高速戦艦を含む艦隊を派遣している。

 当然、日本も戦艦(護衛艦)を含め、遣欧総軍隷下の部隊が第44.2任務部隊(TF-44.2)として展開している。

 その他、大西洋に面している国際連盟加盟国も捜索に艦船を派遣していた。

 日本が消費した燃料その他の諸経費を持つと宣言し、その上で発見した艦には金一封を出すと国際連盟安全保障理事会で宣言した結果だった。

 どの国の艦艇や船であれ、目の色を変えて探していた。

 だがそれでもドイツの通商破壊艦の行方はまだつかみ切れて居なかった。

 当然であろう。

 公式には通商破壊任務に就いたモンスーン戦隊であったが、襲った船舶は開戦から1月で10隻を超えていなかった。

 別に獲物に接触できなかった訳では無い。

 敢て、存在のアピールの為に適度に襲い、船舶を拿捕し船舶を処分させるなどもした。

 だが無理な戦果拡大は狙わなかったのだ。

 これはモンスーン戦隊司令部が、自らの置かれた状況を冷静に把握し、現状に於いては戦力の維持こそが最大の貢献になると認識した結果であった。

 正しい認識としか言いようがない。

 G4から戦艦が6隻、空母5隻*1が出張ってきているのだ。

 装甲艦2隻、仮設巡洋艦1隻と言う()()()で出来る事などある筈も無かった。

 だが、モンスーン戦隊を小規模であると言い切れるのも、G4が本格的な戦力を派遣していればこそでもあった。

 それ故に、中米南米諸国の派遣戦力は必死になってモンスーン戦隊を探す事になる。

 

 

――ソ連

 国際連盟加盟国の中で唯一と言ってよい、ドイツに対して好意的中立を守っていたのがソ連である。

 その態度は別段に、ドイツへの友誼と義侠心に基づいたものでは無かった。

 ドイツ戦争が大規模化したとしても、先の世界大戦(Word War Ⅰ)の如く、国境線が動く程度で終わると踏んだ事が理由であった。

 100兆円を提供する用意があると宣言した日本であったが、ソ連は戦意を疑っていたのだ。

 ドイツに対する威嚇(ブラフ)であると判断していたのだ。

 国際連盟の主要国とは言いづらいソ連は、G4の動きを正確に把握できていなかったのだ。

 だからこその好意的中立。

 最終的に和睦が結ばれる際、ドイツは好意的中立を維持したソ連を頼るだろう。

 そうなれば国際連盟とドイツとの交渉を仲介する国家として、ソ連は世界で存在を誇示できる ―― そう皮算用をしていたのだ。

 だがそれは水泡に帰す。

 1つは、フランスとポーランドと言うドイツ戦争に於いて最前線に立つ(戦線が国境線を越えて押し込まれている)国家が、国際連盟安全保障理事会にてドイツとの和睦を禁止する議案を提出、コレが全会一致で採択されたのだ。

 そしてもう1つ、日本の本格的な戦争参加である。

 最初に派遣された航空戦力だけで、ドイツの空を麻痺させてみせた。

 その上で、陸軍も海軍も派遣する準備を本格的に進めていると言う。

 1930年代からの影響で、ソ連と隔意はあっても比較的に好意的な外交スタンスを維持していたイタリアを介して国際連盟安全保障理事会での議事等でソレを確認したソ連は自らの行動を決めた。*2

 ドイツとの戦争 ―― 陸軍の出兵である。

 但し、歴史的背景からポーランドは、ソ連の紳士集団が入国する事を好まないだろう。

 だからソ連はそれ以外のドイツを打破する。

 ドイツ連邦帝国(サードライヒ)の柔らかな下腹部、バルカン半島を中心とした東欧領域の掌握を図る事としたのだ。

 幸い、戦力は、日本との合意によってシベリア方面から下げた200万を超える優良装備を誇る軍勢がいる。

 コンゴの掌握と治安維持に大規模な陸軍を派遣してはいるが、()()()()()()()の派遣であれば別腹と言って良い。

 少なくともスターリンはそう考えた。

 そしてソ連陸軍も、昨今で傷つけられた名誉の回復の機会であると、その指示を嬉々として受け入れる事となる。

 南征(ヴィトゲンシュテイン)作戦として、1月の戦争準備を行った後、本格的な戦争を行う事とした。

 

 

――装甲艦ヴォストーク

 鄭和(ヴォストーク)は、南大西洋でのモンスーン戦隊捜索任務に当たっていた。

 本来はソ連とコンゴを往復する船団護衛の為に、ソ連に貸し出された鄭和。

 だが、ドイツ戦争の勃発によってドイツ近海の安全確保が1万t級の装甲艦程度でどうにかなる状況を越えた為、この様な任務に転用される事となったのだ。

 ソ連の旗によって安全に南大西洋まで出て来れた鄭和は、これならばいっそ祖国(チャイナ)への旅に就きたいと言うのが艦長から一般水夫までの共通認識であった。

 だが残念ながらチャイナとソ連とで交わされた鄭和の貸出期間 ―― 契約期間がまだ残っていた為、その様な事は夢想の物語でしかなかった。

 寒いソ連から暑すぎるアフリカに来た。

 鄭和の乗組員たちは祖国チャイナを発って既に4年近い月日が流れ、鄭和で寝食をする事3年近い日々を過ごし、ほとほとに疲れ果てて居た。

 もういい加減、帰りたいと言うのが本音であった。

 だが帰れない。

 艦長は捜索任務を、将来の大航海(チャイナへの帰路)への訓練であると発破を掛けたが、乗組員の士気と言うものは決して高いものにはならなかった。

 尚、鄭和に乗船していたソ連軍連絡将校も、この鄭和の乗組員の身の上には同情していた為、多少の風紀の乱れに文句を付ける事は無かった。

 そんな鄭和がモンスーン戦隊を発見したのは、本当に()()であった。

 戦意に不足の無いG4などの主要艦隊が船舶の往来が激しい海洋交易路を中心に探していたのに対し、鄭和は、それを管理するソ連にせよチャイナにせよお付き合い感覚であったが為に船舶の往来が少ない場所を捜索と称して航海していた。

 それが功を奏した(アンラッキーとなった)のだ。

 後に、第1次南大西洋海戦と呼ばれる海戦は、無駄な戦闘は避けたいモンスーン戦隊にせよやる気のない鄭和にせよ、関わる誰もが予想しえない形で発生する。

 

 

――第1次南大西洋海戦

 仮設巡洋艦の索敵を掻い潜って忽然と現れた戦闘艦(装甲艦) ―― 2万mもの近距離から接近を図ってくる艦は、モンスーン戦隊司令部をある種のパニックに陥れた。

 モンスーン戦隊は、電波情報などでG4の捜索艦隊などの動きを把握した上で、避難航路を取り続けていたのだ。

 にも拘わらず、有力な戦闘艦が艦隊に接近してくると言う事は、モンスーン戦隊が包囲されつつあるのではと認識したのも当然の話であった。

 急ぎ回避航路を取りつつ戦闘準備を下命すると共に、貴重な艦載機を飛ばして情報の収集に当たる事となる。

 周辺の捜索と、戦闘艦の情報を集めねばならないのだ。

 戦うのであれば相手の情報も必要だからだ。

 結果は、この近海100㎞四方には、有力な敵性艦艇は無く、そして敵は1万t級のソ連海軍旗を掲げた装甲艦1隻と言う事だった。

 この時点でモンスーン戦隊司令部は実力を以って打ち払う事を決断する。

 最大戦速で突入し、最大火力で相手を沈黙せしめて離脱しようと言うのだった。

 対して鄭和。

 此方は、モンスーン戦隊を敵と認識するまでが遅かった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そう思い込んでいたからだ。

 モンスーン戦隊の2隻を、何処かの国の捜索艦隊と認識していたのだ。

 呑気に、航海の安全を祈ると言う信号旗すら掲げていた。

 結果、先手を取られる事となった鄭和は、プロイセン級2隻からの猛烈な射撃を受ける事となる。

 慌てて避難行動を取る鄭和。

 戦意の低さが幸いし、抵抗するよりも先に逃げる事を選択。

 猛烈な水柱の間を抜ける様にして退避行動を実行。

 その上で、電信にて非常事態と、モンスーン戦隊発見を報告するのだった。

 最終的に鄭和は逃げ切る事に成功する。

 逃げ足が鈍ろうとも転舵を繰り返した結果、被弾は最小限度に抑える事が出来たのだ。

 艦橋その他、構造物は軒並みスクラップな有様になったが、船体への被弾が少なく、浸水が発生しなかった事が、この幸運に繋がっていた。

 その上で、モンスーン戦隊発見との報告を暗号化せずに発信した為、モンスーン戦隊側も状況を把握したのだ。

 そもそも、モンスーン戦隊側は通信妨害を仕掛けて居たのだが、鄭和に搭載されている通信機の出力が大きかった為、十分に妨害しきれなかったのだ。

 こうなってしまえば話は変わる。

 近隣の戦力が支援に来る ―― モンスーン戦隊の危険性が跳ね上がる事となった為、鄭和を撃沈する事よりも逃走する方が大事であると、戦果よりも存続であると戦隊司令部は判断し、退避を選択したのだった。

 

 

 

 

 

 

*1

 ブリテンが2隻、アメリカとフランスが1隻ずつ派遣しているのは正規空母であったが、日本が派遣しているのは純然たる空母ではなくUAV母艦(CVU)であった。

 艦名はわかさ(若狭)であった。

 基準排水量20,000tを超える堂々たる大型艦であったが、当初は東京軍縮条約との兼ね合いもあって、護衛艦ではなく特別補助艦と言う枠で整備されていた。

 当然、その頃は空母然とした全通甲板は有していなかった。

 垂直離着陸可能なヘリとUAVの運用が可能な護衛艦。

 この様な歪な艦が整備された理由は経済対策であった。

 タイムスリップ時の造船所で良くある話、とも言えた。

 タイムスリップ時に民間の造船所でフェリーとして建造が行われていたわかさは、タイムスリップによって納入先が消滅。

 それに伴い建造は凍結され、造船所は資金繰りに困って政府に泣きついた ―― その結果であった。

 日本の大型貨客船/油槽船船団と同じ流れとも言える。

 違っていたのは、わかさの元となった船は船体上部構造(ウワモノ)の建造が未着手であったと言う事である。

 この為、押し付けられる海上自衛隊が、ならせめてと要望を述べてUAV母艦として就役する様に設計を改めたのだった。

 その後、東京軍縮条約が失効すると共に巨大な艦橋や格納庫その他が撤去されて飛行甲板を拡大させ、広域哨戒任務に当たるヘリ/UAV母艦としての効率性を高める事となった。

 その経緯から諸外国では、改装軽空母と認識されている。

 尚、この改装の際にMLシリーズに採用される事となる各種の技術が実験的に採用されており、運用試験なども行っている。

 

 艦名 わかさ(わかさ型UAV母艦)

 建造数   1隻

 基準排水量 23,300t

 機銃    62口径40㎜単装砲   1基

 他     近距離防空ミサイル 1基

 艦載機   ヘリコプター/垂直離着陸型UAV他 最大12機/30機

 速力    26ノット

 主機    ディーゼル

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

*2

 イタリアによるソ連への情報漏洩 ―― 伝達であるが、イタリアの独断による行動では無かった。

 ソ連からの接触を受けた際に、G4に対して連絡を行い、了解を得ていたのだ。

 この動きに、イタリア政府内では国家の独自性を傷つける行為であり、イタリアと言う国家がまるで属国の様であると言う批判をする人間も出る事となるが、ムッソリーニはそれを説得し、黙らせる。

 国家の独自性等と言うものは、国家国民の繁栄と言うものの前ではちり芥であると判断するが故にであった。

 極端に言ってしまえばムッソリーニのファシスト党とは、イタリアの繁栄を望む集団なのだ。

 繁栄の為であると言えば、そして実際に繁栄してしまえば、ムッソリーニに反論する事は難しかった。

 イタリアに於いて、ファシスト党とムッソリーニによる独裁体制は、ある種、完全な域に到達しつつあった。

 

 

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