タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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170 第2次世界大戦-37

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 オランダに近い北ドイツ平原西端部にある国際連盟管理(ドイツ占領)地域の都市で発生したオランダの憲兵部隊と日本連邦軍(陸上自衛隊)部隊との衝突(乱闘騒ぎ)

 それ自体の処理は簡単であった。

 幸いな事に死者や重傷者の居ない純然たる騒乱(喧嘩沙汰)であり、当然ながらも銃器などが用いられていないのだ。

 であれば、正に喧嘩両成敗で終わる話となる。

 少なくとも同盟関係にある国家同士の軍としては、である。

 オランダ人憲兵とその同僚も、伊国系日本人自衛官とその同僚も、等しく同盟国軍と騒動を起こしたと言う責で上長からの叱責と反省文の提出で終わるのだ。

 軍としては、である。

 それとは別の理屈が動くのはオランダ人憲兵だ。

 軍秩序の問題とは別に、未遂とは言え婦女暴行を試みたのだ。

 それで終わる程に世の中は甘くない。

 法秩序の守り手たるべき職務に相応しからざると言う評価と共にオランダの法に則った罰則(ペナルティー)が適用される事となる。

 ()()()()()

 ここに補助線が1つ入る。

 突如として侵攻して来たドイツの被害者としてのオランダ人の一般意識である。

 もっと言えば、ドイツ人への報復欲求だ。

 オランダの国土を滅茶苦茶にしたドイツ人が滅茶苦茶な目に遭う事に何の問題があると言うのか、と言う感情だ。

 この世論に、オランダ政府は苦慮する事となる。

 無論、女性や人権を重視する弁護士は批判の声を上げたが、大半のオランダ国民が国土を荒らし家財を奪ったドイツ軍を、家族を殺したドイツを憎悪し尽くしていた。

 そして、件のオランダ人憲兵は兄弟を、ドイツ軍によって殺されていた(オランダ陸軍将校としてドイツと戦っていた)のだ。

 この状況での政治は、簡単なモノでは無かった(事実上の政治的爆弾であった)

 

 

――日本

 国力の差と言う意味では、日本とオランダは比べ物にならなかった。

 だが、だからと言って日本の要求を一方的に突き付けられる程に外交、国家間の関係は単純なものでは無かった。

 1つには、オランダが日本にとって軽視できぬ資源貿易相手国だというのがある。

 口の悪い人間(英国系日本人&ブリテン人)に言わせれば、オランダの本体などとも揶揄されるオランダ領東インド(インドネシア)だ。

 日本に近く、そして格安で石油やゴム資源などを輸出してくれる国家なのだ。

 その機嫌を損ねたくないと日本政府が思うのも当然であった。

 とは言え、オランダの行為を無視する事は政治的に難しかった。

 それは国外(国際)的な理由でもあり、同時に国内に由来する理由でもあった。

 国外と言う意味においては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う戦後の秩序体制を見据えた宣伝(政治的物語)にミソを付ける事になるというモノであった。

 建前であっても正義なり秩序なりと言うモノは重要であるとの認識あればこそであり、だからこそフランスも、ドイツ人に対する感情的報復は抑制する様にしていたのだ。

 無論、宣伝や情報工作その他で短期的には誤魔化す事が出来るが、長期的には必ず露呈するモノだと言うのが日本政府と、そのシンクタンクの歴史観であった。

 この点に関して、雑な所のあるグアム共和国軍(在日米軍)情報分析部門も全く同意していた。

 そして同時に、一般大衆と言う存在は自分にとって都合の良い歴史観(妄想とファンタジーの混合物)が事実として認識し、定着する事があるとも理解していた。

 この1年の憂さ晴らしで、10年100年と恨まれては面倒くさい。

 何より、今はまだ欠片しか見えない人権を重視するリベラル(リベラルと自称するナニカ)な人達の飯のタネを作るなんて鬱陶しい。

 有り体に言えば、そういう話であった。

 最近の日本政府は、日本と言う国家が嘗ての米国の国際的立場(国際秩序の管理役)に近い事を渋々とは認めて(受け入れて)いた。

 国際連盟の常任理事国であり、覇権国家群(ジャパンアングロ)の筆頭。

 恨まれる立場である、と。

 自分よりも裕福と言うだけで、人は他人を恨めるのだ。

 そして恨んだ人間は、その発散としてテロなどを行うだろうと判断していた。

 だからこそ日本は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 何かをしても恨まれるし、何をしなくても恨まれるのであれば、何もしない方がマシだ。

 諸外国から請われれば協力もするし、予算面でも政府開発援助(ODA)を用意はしているのだが、それは現地政府と住人との合意(コンセンサス)があればこそと言う形にしていた。

 又、そもそもとしてODAの予算は日本連邦では無く日本が用意している為、諸外国の前に日本の忠良なる日本連邦構成国が優先されるべきだとの意見が日本連邦議会で出ており、日本政府としてはその声を無視する事は出来なかった。

 結果、ODAは朝鮮(コリア)共和国を含めた日本連邦加盟国で奪い合い、残余が他所の国に回る形となっていた。*1

 総額として見れば決して座視できる額では無いのだが、纏まった()にはなりえなかった。

 無論、この状況を変える為にはODAの額と枠そのものを増やすと言う選択肢もありはしたが、財務省が必死になって反対し、同時に、将来的に日本連邦構成国が発展すれば予算枠に余力が出ると判断された結果、予算の拡充と言う処方はなおざりになっていた。

 兎も角。

 日本連邦としては、よその国の為に日本は無為な労力を割く必要はない。

 先ずは広大な日本国内(日本連邦)の開発と発展が最優先であるという訳であった。

 シベリア共和国を筆頭に、同胞として育てるべき場所は幾らでもあるのだから。*2

 その意味において、国際連盟の掲げる内政不干渉は実に便利であった。

 だが、内政不干渉とは国内で全てが完結するのであれば認められるべき話であり、今回のオランダ人憲兵がやらかした場所は日本とブリテンが占領したドイツの領土であり、オランダの国内では無いのだ。

 将来はオランダに割譲されると言う含みを持ってはいたが、今のオランダは治安維持を委託されていただけなのだ。

 内政不干渉と言う言葉(マジックワード)で処理しきれる範疇では無かった。

 しかも、この問題が国際連盟の安全保障理事会に上げられる否や、ソ連がポーランド国内で発生している捕虜やドイツ系ポーランド人への虐待問題の報告書(レポート)を上げて来たのだ。

 最早、問題は日本とオランダだけの話では無くなっていくのだ。*3

 国際連盟安全保障理事会では、現在遂行中のドイツ戦争に於ける戦争犯罪が議題として上がるのであった。

 そして、もう1つ。

 日本がこの事件に関わらざるを得ないのは内政(世論)であった。

 検閲を通過してしまった、オランダのドイツでの横暴。

 本事件の詳細 ―― 自衛官相手にも横柄な態度を隠さないオランダ人憲兵と暴言、怯えるドイツ人少女と言う生々しい動画の衝撃力は途方もなく大きかったのだ。

 戦争が悲惨な事は、戦争なのだから仕方がない。

 しかし、戦場で無いのであれば戦争当事国間であっても守られるべきルールがある筈だと、野党が国会で与党を追及したのだ。

 戦争が始まり(生臭い現実を前に)存在感を示せなかった(空疎な理想論をTVなどで述べるだけの)野党が元気を取り戻したとも言える。

 とは言え、政党支持率が1%未満の木っ端野党の言う事の影響力はそう大きく無かった。

 では何が国民世論を動かしたかと言えば、2つの感情であった。

 1つは義憤(同情心)

 震えるドイツ人少女と言う姿が、子を持つ(有権者)に他人事ではないとの感情を与えたのだ。

 そしてもう1つは憤怒である。

 ()()()()()()()()()()()()()()()? と言う怒りである。

 戦争の発端ともなったまつ型汎用哨戒艦さくらへの砲撃も含めて、オランダは日本を侮っているのではないのか? との感情である。

 日頃であれば冷静な識者(世論に迎合せぬ人間)も、調子は抑え気味ではあってもオランダを批判していた事も大きい。

 日本は、国際連盟を通じて戦時国際法を遵守したドイツとの戦争を呼び掛けていた。

 だがオランダ人の、それも法秩序を守らねばならぬ憲兵が事件を起こしたと言う事は、甘く見られているのではないか、と。

 この流れに慌てたのは駐日オランダ大使であった。

 日本への入国と限定的ながらも活動が認められていた少数のスタッフで情報収集をし、阿国系日本人(元駐日阿大使館員)とも相談して慌ててオランダ本国へと報告するのであった。

 

 

――オランダ

 オランダ政府にとって本事件は、酔っぱらったバカが莫迦をやった。

 それだけの事であった。

 相手が日本と言う事もあったが、粛々と法に基づいた処分 ―― 未遂ではあるが憲兵と言う職務から見て許されざると言う事で懲戒免職処分を実施し、相手となった日本軍将兵(自衛官たち)には適当な勲章を配って誤魔化せば良い。

 その程度の腹積もりであった。

 最悪、憲兵部隊の指揮官まで累が及ぶ可能性はあったが、そこは管理不行き届きと言う事で処分を飲ませれば良い。

 それだけの話であった。

 日本は素直に頭を下げれば許してくれる。

 名誉こそ重んじるが、謝罪に対して無法な対価(誠意とは金額)を要求する事が無いと言う事を、前年の汎用哨戒艦さくらへの砲撃事件を処理する際に学んでいたのだ。

 だからこそ、高を括っていた。

 楽観していたのだ。

 だが、オランダの国内世論が冷や水を掛ける事となる。

 一部の鬱屈したオランダ人の感情が、反日と言う形で吹き上がったのだ。

 技能が無いとして、オランダ領東インド(インドネシア)で現地住人よりも下に扱われた経験を持つ若いオランダ人が先頭に立ち、非文明国人である(コーカソイドを優遇しない)日本による陰謀だと声を上げたのだ。

 コレに一部の大人が乗った。

 馴染みの店で、礼儀を守って金払いの良い日本人(日本連邦統合軍)将兵が優先される事に腹を立てた人々である。

 飲み屋でも花街でも、オランダ人が後回しにされていたのだ。

 その感情の爆発であった。

 無論、中心となったのは男性であり、女性たちは巻き込まれまいと口を噤んでいた。

 そこに日本の世論が沸騰していると言う話が来たのだ。

 オランダ政府の要人たちは、取り合えず痛飲して問題解決に向けた思案を翌日に回したのだった。

 飲めば良い考えが浮かぶかもしれないと言う人間も居た。

 単純に現実逃避であった。

 そして翌日には、二日酔いが現実と共にやってくるのであった。

 

 

 

 

 

 

*1
 

 ODAの対象に朝鮮(コリア)共和国が入ったのは、朝鮮(コリア)共和国の建国と日本連邦の成立から既に20年近くの月日が経過して漸くの事であった。

 かつての在日本韓国人と朝鮮人が完全に影響力を喪失し、又、日本連邦構成国としての節度を持った態度が認められた結果でもあった。

 シベリア総軍への戦力抽出を厭わず、アメリカ-チャイナ戦争(チャイナ騒乱)では日本連邦の名を汚す事の無い戦果を掲げてみせた事が、ある意味で未来にして過去となる韓国(タイムスリップ前の朝鮮半島国家)の行為の禊となっていたのだ。

 朝鮮(コリア)共和国政府は日本連邦議会小委員会に出していた代表から、ODAの検討対象に出していた朝鮮半島の開発案複数が再検討の朱印が打たれずに第1次選考を通った(突っ返されなかった)との報告を受け、滂沱の涙を流したと言う。

 そしてジャパン系日本人の朝鮮(コリア)共和国政治顧問は、日記にただ一言書き残していた。

 至誠、天に通じる。

 

*2

 日本のこの姿勢を指してブリテンなどは、まんぷく状態に陥った肉食獣が午睡に微睡んでいる様なものであると評していた。

 ()()()()()、文字通りの日の沈まぬ大帝国たるブリテン連邦を維持する努力をしているとも言えた。

 日本に対し、たとえ劣位であっても同格(ジャパンアングロ)として対峙していける為の努力であった。

 そして、その努力の一環としてアメリカに、過度では無い形での接近をしてもいたのだ。

 ブリテンが1国で日本を牽制出来ないのであれば、アメリカを巻き込んでバランスを取ろうというのだ。

 尚、ここにフランスが入って居ない理由は、ブリテンの都合であった。

 誰が自国(ブリテン本国)の直ぐ傍に超大国(スーパーパワー)が生まれる事を歓迎するかと言う事である。

 ヨーロッパは適度に混乱している事こそがブリテンの利益なのだから。

 イタリアとポーランドに対して、少なからぬ支援を行っているのは、そういう理由と言えるだろう。

 

 

*3

 占領地での問題行動と言う意味では、東欧におけるソ連軍現地部隊の行動も問題を抱えており、褒められたモノでないと言う所では無い。

 だが、ソ連は現地住人との関係が割合に上手くいっているルーマニアには諸外国からのマスコミが入る事を認め、ルーマニア以外への入国を禁止すると言う形で情報管理を行っており、それが世間に広がる事は無かった。

 少なくともこの時点では。

 尚、ヨーロッパ亜大陸が混乱するネタの欲しいブリテンは秘密情報ユニットを投入していた事で現地の情報を得ていたが、それが出される事は無かった。

 効果的タイミングを見計らって行われるべきと判断していた為であった。

 

 

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