タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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176 新秩序への道-01

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 ベルリンの掌握によって、事実上終結したドイツ戦争。

 とは言うが、簡単には終わらない。

 ヒトラーを筆頭としたドイツの政府首脳陣が軒並み死亡している為、降伏の手続きが出来なかったのだ。

 この為、既に捕虜になっていたドイツ軍高級将校(将官級将校)をドイツ臨時代表とする事となった。

 とは言えドイツ臨時代表の仕事は、降伏文書に調印する事と、戦後のドイツ処理に於ける責任を背負うと言うものであり、その不名誉さ故に伝統的ドイツ軍将官は軒並み固辞をする有様であった。

 結果、ベルリン陥落から2週間もの間、公式にはドイツ戦争は継続した事となる。

 最終的には、イタリア(南部)戦線で降伏した西方総軍C軍集団の司令官が総統代行に就任し、降伏文書に調印する事となる。

 元は歩兵(山岳)師団の師団長であったが、C軍集団の司令部が壊滅後にヒトラーとの親密さ故に昇格した人物であり、イタリア軍の攻勢に対して最後まで組織的抵抗を図った戦術家であった。

 その功績ゆえの国民的知名度*1と、非主流派(ユンカー)ながらもドイツ軍将兵の間では人気のある人物故に選ばれた事であった。

 残骸だらけのベルリンで行われた調印式の様子は、日本の手でスイスの国際連盟に生中継された。

 感慨深く、降伏調印式を見る国際連盟加盟国代表。

 ソ連代表は、次なるドイツ(国際連盟の敵)と自国が成らぬようにと決意を改めていた。

 イタリア代表は、かつての盟友国の末路に感慨深いモノを抱いていた。

 戦争に距離を取っていた中南米の国々の代表は、この中継自体に国際連盟筆頭国家群(ジャパンアングロ)との差を改めて感じていた。

 そして、それ以外の国家 ―― ドイツ戦争に関わった全ての国家にとっては、本番が始まると言う意識があった。

 外交(戦争)が始まるのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

――ドイツ解体協議

 国際連盟の総会の場で改めてドイツの解体が宣言された。

 民族の自治と言う概念はあれども、世界大戦(WW 1914-1918)と今次戦争の惨禍を基に見た場合に、無条件でその理想を述べるのは如何なものであるか、と言う事である。

 G4(ジャパンアングロ)に対して臣従している訳では無いソ連が、控えめな反論を行いはした。

 だが、そのソ連とて民族国家と言う訳では無く、その支配下にウクライナを筆頭とした様々な民族国家の集合体である為、強い調子で批判する事は出来なかった。*2

 余り強く主張した結果、ではソ連も連邦に参加している国家の独立を認めるのですかと返されては堪らないからである。

 シベリアと言う領土規模と人口以上に重要な、豊富な資源地帯を喪失しているソ連に、G4への嫌がらせ程度の為に国土を失うと言う事は耐えられる事では無かった。

 仮想敵国と言う表現も生易しい関係にある日本(シベリア共和国)とフィンランドは勿論、ドイツ戦争を通して日本やブリテンからの豊富な支援を受けていたポーランドもソ連にとっては脅威的な国家であるのだ。

 この状況下で、国土が減る危険な行為(外交)など出来る筈も無かった。

 そもそもの話として、ソ連は国際連盟の主要国(常任理事国)では無いのだ。

 この為、その発言力も弱く、賛同する国家も居なかった。

 とは言え、その聞こえの良い主張は世界中の理想趣味者に届く事となり、その手の人間にとっての理想国家としてソ連の名前は広がる事となる。

 雑事は別にして、現状、ドイツの国土は4つに分割されていた。

 最大領域を掌握しているフランス管理域。

 東側のポーランド管理域。

 南部のイタリア管理域。

 そして北部の国際連盟(日本・ブリテン)管理域である。

 フランスとポーランドは共に、自国軍で掌握した領土の自国領編入を要求していた。

 対して日本とイタリアは、フランスかポーランドへの管理権の移管を主張していた。

 前者は兎も角、後者は灰燼と化したドイツ領の管理などと言う無駄金は払いたくないと言うのが本音であった。

 勝者が権利を放棄する。

 受け取る別の勝者が居る。

 であれば問題は簡単に解決する ―― それ程に問題は簡単で無かった。

 ドイツからの戦争賠償の問題に直結するからである。

 フランスとポーランドが強く反対していた。

 戦争に深く係わった国家が賠償請求権を放棄すれば、そのまま放棄しない国家への反発に繋がるからである。

 ドイツの国土分割は、戦災への賠償と言う側面もあったからである。

 戦勝国が賠償請求権を放棄した結果、ドイツと言う国家が生き残り、この先、又、ドイツ戦争の様な惨禍が発生しては問題であると主張したのだ。

 フランスにせよポーランドにせよ、ドイツから賠償を得る事が目的では無い。

 危険極まりない隣国を排除しよう(消滅させよう)と言うのが戦争目的なのだ。

 である以上、賠償を要求しないと言う態度は認められるものでは無かった。

 日本は面倒くさい事に巻き込まれたと顔を真っ青にしていた。

 そして事、この時点となってブリテンの全力で逃げに入った姿勢の意味 ―― 奸智に気付いた日本代表は、国際連盟の会議の最中にブリテン代表と食事会を行い、その席で遠回しに後で覚えておけ(意趣返しを覚悟しておけ)と告げるのであった。*3

 結果、取り合えずはドイツであった中欧地帯は4分割される事が決定した。*4

 この決定まで既に終戦から1週間が経過していた。

 ドイツ()()の再出発、その第一歩とされた記事が日本国内で発表されるや否や、日本国内の独系日本人が日本政府に対して旧ドイツへの人道的配慮を求めて動き出すのだった。

 

 

――日本/独系日本人

 日本国内に在住していた独系日本人で、かつての祖国 ―― 独国連邦共和国の事を覚えている人間は少数派であった。

 タイムスリップ時に日本に居た独国人の大多数は仕事などよりも旅行で日本に来ていた人間が大多数だったのだから、ある意味で当然であった。

 大人として見ていた人間は少数であり、タイムスリップから20年余りが経過しているのだ。

 血統的には純粋な独国人であっても日本で育ち、或いは生まれた人間なのだ。

 であればこそ、ドイツに対して強い同胞意識は無かった。

 タイムスリップ前の歴史での事とは言え、ヒトラーとナチズムによって国家がどの様な事をしたのかを知っていたのだ。

 ある意味で当然であった。

 我々はこの世界のドイツとは違うと言う意識、それは中系日本人や韓系日本人にも似たモノであった。

 だが、流石にドイツ戦争でのドイツ人の処遇に関しては思う所が出ていた。

 陥落前のベルリンのフォトレポートや、フランスやポーランドの支配下での過酷な扱い、そして一部オランダ人によるドイツ人への暴行問題が、その切っ掛けであった。

 人道的対応の()()である。

 要求では無い。

 意識の高い、言ってしまえば木で鼻を括った様な人間が多いと知られている独系日本人であったが、日本社会に於ける自分たちの立場と言うモノは理解していた。

 圧倒的少数派であると言う自覚。

 そして過度な要求をする愚、タイムスリップ直後の在日韓国人処分を忘れている人間は居なかったのが大きい。

 そもそも、大多数の独系日本人は日本の教育システムで育った、言わばメンタル的な意味で日本人そのものなのだ。

 国に、理想主義に基づいた過大な要求をすると言う意識は乏しかった。

 そして、()()()()()日本の世論を動かす事に成功した。

 ドイツと言う国家は自業自得であるが、人道的配慮は大事であると言う認識が生まれたのだ。

 最終的に、この国内の世論あればこそ日本政府はドイツの信託統治領としての管理を積極的に行う事に同意したとも言えた。

 

 

――イタリア

 日本と同様に旧ドイツ人に対して人道的対応を行っていたのはイタリアであった。

 当然ながらも、ドイツに対する親近感などが理由では無い。

 圧政を敷くだけの利益が無いからである。

 イタリアにとって、ドイツの領土は文字通りの不良債権であった。

 戦争の際、そのインフラの悉くを潰す戦争をしているのだから当然の話であった。

 水や食料その他、悉くが枯渇しており、それを運ぶ手段すらも十分では無かったのだ。

 戦時中に日本から潤沢に与えられていた支援が、戦争終結に伴って途絶えたと言うのも大きいが、それ以上にイタリアが支援するべき対象が、東欧(旧ドイツ領)も含まれていたからであった。

 馬鹿げた量のトラック群(MLシリーズ)を与えられてはいたし、その燃料と言う意味ではイタリア領リビアによって不足は無いのだが、それでも管理するべき領域が広すぎていた。

 そして何よりも、今だ戦火の止まぬバルカン半島があるのだ。

 イタリア人は、ドイツ人に対して注意を割く余力が無いと言うのが本音であった。

 関心が無いからこそ、イタリアの管理下に入ったドイツ人は被害を受けなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

*1

 劣勢であったドイツ軍にあって、格下に見ていたイタリア軍相手であっても、一方的に敗北していないと言うだけでヒトラーは称賛し、その功績を国民啓蒙・宣伝省が盛んに宣伝していたが故の知名度であった。

 尚、賞賛された当人は、回顧録で負け戦だから必要とされたと、不本意であったと述べていた。

 

 

*2

 そもそもソ連には、ウクライナなどの近隣の国家だけではなくアフリカの信託統治領コンゴと言う民族的にも遠い国家(地域)が存在するのだ。

 大規模な派兵を行い、少なからぬ血を流している土地を、G4への嫌がらせの為に手放すなど論外であった。

 特に、金銀銅にプラチナやダイヤモンドなど豊富な地下資源の数々は、シベリアを失った痛手を癒すモノと期待されており、ソ連にとって経済的発展の為に必要な()()()()()であった。

 

 

*3

 余談ではあるが、後の意趣返しの際に述べられた「Jellied eelsが口に合わなかったのです(ブリテンの加工食品ノーサンキュー)」と言う言葉から、Jellied eels事件等と笑いと共に語られる日本とブリテンの何とも言い難い外交の一幕に繋がる事となる。

 それ以上に日本とブリテンの関係がこじれなかったのは、ブリテンが日本に詫び入れとして中東産原油の売却価格の大幅な改定等を行った事が大きかった。

 又、日本にしてもブリテンとブリテン連邦は重要な外交相手国であった為、それ以上の事を行わなかったと言うのも大きい。

 

 

*4

 バルカン半島の安定化が要求されているイタリアは、これ以上の負担は負えないとばかりに本気で抵抗していたのだが、フランスと日本がイタリアを非公式折衝で呼び出して、笑顔(ガチギレ笑顔)で拒否権は存在しないと言えば、抵抗できる筈も無かった。

 イタリア代表は全てを飲み込んだような顔、鈍い瞳でSi(アッハイ)とだけ返していた。

 

 

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