タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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178 新秩序への道-03

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 旧ドイツの資産分割による、国際連盟加盟国の参戦国に対する戦費支払いに関して、問題となったのは余りにもドイツが貧しいと言う事であった。

 工業力で言えば日本は勿論、アメリカにも遠く及ばず。

 科学力も言うに及ばず。

 又、ブリテンやフランスの様な海外領土も殆ど無いのだ。

 だからこそ、ドイツ人の王道楽土(レーベンスラウム)を望み、国家拡大政策に奔走したとも言えるだろう。

 兎も角として、戦費などの賠償に回せる資産は少なかった。

 それが旧ドイツ領の分割、その正当化にも繋がるのだからフランスなどからすれば痛し痒しと言う所であった。

 そんなドイツにとって、唯一と言って良いレベルで換金性が高いのがチャイナ資産であった。

 青島を含んでの山東半島。

 そして中国から買い取った資源権益である。

 チャイナ民国は、それらの権益の返還を要求した。

 だが、戦争への貢献も無い国家のたわごとであるとばかりに無視される事となった。

 当初は鉱山などだけでも武力にて解放しようとも画策したのだが、それはアメリカが国際連盟安全保障理事会の要請を受けると言う形で抑止する事となった。

 アメリカ海兵隊が展開していた。

 展開力に優れ、同時に組織の役割と言う意味で存続の危機に瀕していたアメリカ海兵隊は、二つ返事の勢いでチャイナの各地に展開し勇名をはせる事となっていく。

 ユーラシア安全の守護者。

 後にアメリカが担う、綽名の始まりでもあった。*1

 最終的に、それらの資源権益は適切な価格で売却され、或いは賠償金代わりとして主要参戦国に分配される事となる。

 問題は、山東半島であった。

 突如として中系日本人が、山東半島は日本が占領したものであるので、そのまま日本が掌握し、日本連邦の邦国として再発進するべきであると主張を開始したのだ。

 より詳しく言えば、中系日本人が移住し、その自治国が欲しいと言う要求であった。

 

 

――日本/内政問題

 タイムスリップに巻き込まれた結果、中系日本人となった人は現在で80万人規模となっていた。

 若い世代を中心に、タイムスリップの原因もあって差別を受けない為の日本人化を強く進めていた。

 その努力は、コリア系日本人と並んで、日本人よりも日本人らしいと言う評価が為されている辺り、実っているとも言えた。*2

 だが、今、唐突に山東半島と言う故郷に近い土地を得られるかもしれないと言う可能性は、その中系日本人に大きなインパクトを与える事になったのだ。

 永久に眠るのであれば曾祖父の地が良い。

 ある種、当然の感情であった。

 とは言え、大きな感情を動かす事となったのは60代以上の、嘗ての中華人民共和国を覚えている世代の一部だけであったが。

 それ以下の世代は、日本人化を熱心に続けた結果、かつての祖国を忘れる様になっていた。

 又、政治的な問題もあった。

 中系日本人がチャイナと近い場所で自治権を得た国家を作る事の政治的なリスク ―― 情報漏洩の窓口に成り兼ねないと言う問題である。

 日本政府は、このリスクに対してかなり神経質になっていた。

 タイムスリップ前の時代での被害、中華人民共和国が行っていた情報戦の威力を正しく認識していたし、又、今の日本の力の源泉である技術力の漏洩に対して警戒していたと言う事も大きかった。

 とは言え総体としての中系日本人は()()()()()()()()()であり、日本への高い帰属意識と忠誠心を示しているが為、このリスクを公言する事のリスクも日本政府は認識していた。

 結果として日本政府は、内々で中系日本人の互助会に対し、事態が不快化しない為の協力を要請する事となった。

 結果、中系日本人互助会は内部の山東邦国主義(仮名)の内偵を実施し、その内情を把握した。

 状況の緊迫度合から手段を選ばぬ事となり警察、及び情報機関の協力の下で強引なモノも使われた。

 一部の、かつて韓系日本人が夢見た極彩色な欲望を持った人間は、様々な手段で排除された。*3

 只、故郷の地に帰りたいと言う願望を持った古老に関しては、別途、山東半島を得た国家と交渉し、特別墓地を作ると言う事で解決する事となった。

 

 

――オランダ

 誰が手にするのか、と言う点で国際的な紛争のネタとなった山東半島。

 本来であれば、正しく支配権を得られる日本、或いはアメリカが居るのだが、その両国が共に面倒くさいと言う態度であった事が混乱を深めていた。

 さもありなん。

 日本はチャイナと国境を接する事を面倒だと思った。

 アメリカは、飛び地になって物流網と言う意味では管理が面倒くさくなるにもかかわらず、旨味が少ないと言う事を重視していた。

 フロンティア共和国や、その入り口となるアメリカ合衆国準州として管理する遼東半島の経営で満足していたのだ。

 莫大な工業力を持ったアメリカにしても、広大なフロンティア共和国は飲み込むには余りにも巨大な獲物であったのだ。

 その上、チャイナ人民共和国と言う場所(準傀儡国家)もあるのだ。

 山東半島と言った僻地を欲する必要は乏しかった。

 対してそれ以外の国家にとっては利益の大きい場所(ドイツの最新式工業設備)であったが、少しばかり遠すぎる場所であった。

 ブリテンやフランスは流石に別格の海洋戦力と輸送船団を有していたが、それ以外の国家にとっては管理するのも一苦労と言う()()であった。

 利益はある。

 だが、経費もデカい。

 中々に分配先が決まらぬのも当然であった。

 結果、そこに手を上げたのがオランダだった。

 オランダ領東インドを所有している事が、ある意味で決め手となった。

 東南アジアから極東アジアまでは、欧州からの距離と比較すれば至近距離と言えるからだ。

 その上で、オランダは日本との相互安全保障条約の締結を持ち出した。

 別段に仮想敵国が居る訳では無い。

 只、オランダの都合 ―― 国内に親日本の空気を作る為の動機付けであった。

 大抵のオランダ人は日本を強大な(格上の)国家であると認識していたが、そうでない人間も居る。

 そう言う人間への対処の為であった。

 日本とオランダの秘密外交の場で、土下座する勢いで述べた結果、オランダは日本から満額回答を引き出す事に成功した。

 素直に泣きつかれると弱いと言う、日本人の特性が突かれた形とも言えた。

 とは言え日本にとっては持ち出しは無いし、親日国に自分からなりたいと言う国家が来るのだ。

 特に不利益と言う事は無い為、オランダへの配慮*4も行われる事となった。

 かくして、3つのオランダが出来上がる事となる。

 ヨーロッパ亜大陸、故郷としてのオランダ。

 東南アジア、本体としてのオランダ。

 極東アジア、先端となるオランダ。

 本体で資源を生み出し、先端で加工して売る。

 日本までの極ハイエンドでも無く、他のG4(アングロ)程のハイエンドでも無い、そこそこの国家が買いやすい武器や設備を製造する事で生きる道を見つけたのだ。

 オランダは機を間違えなかった。

 結果、新しい黄金時代に突入していく事となる。

 

 

 

 

 

 

*1

 なし崩しな形でアメリカがユーラシア大陸東部域の治安維持を担う事になり、アメリカの政府関係者は、その手間に頭を抱える事となる。

 G4統治体制(パクス・ジャパンアングロ)の確立によって戦争が遠くなる事を夢見ていたのに、と言う事である。

 軍事費を削減し、平和を謳歌する未来をアメリカの政治家たちは夢見ていたのだ。

 とは言え、アメリカの軍関係者は胸をなでおろすのであったが。

 酷い軍縮となる危険性を脱し、国家の守護者としての軍と言う存在を確立させたからである。

 特にアメリカ海兵隊は、規模縮小と言う危機を乗り越える事となっていた。

 その分、大統領の指示で何処であろうとも簡単に投入される立場となった為、苦労は絶えない模様であったが。

 

 

*2

 本質的な所で純粋な日本人は、食い物と安全が脅かされない限りに於いて鷹揚 ―― 或いは雑な所が強い為、強面なアジアな日本人のイメージは中系日本人やコリア系日本人が作ったとも言える。

 尚、食い物が絡んだ、或いは面子が潰された場合に、火力が一番大きく執念深いのは日系日本人であったが。

 

 

*3

 日本の治安維持組織と中系日本人互助会、対する欲望を抱いた一部の中系日本人の暗闘は、後に娯楽作品の大きな題材となる事となる。

 日本列島や、山東半島。

 果てはフロンティア共和国までが舞台となったが為、国際色豊かな配役が可能となり、任侠や武侠的な映画で使われる事となる。

 又、悪役としてチャイナ民国も良く登場していた。

 逆に、チャイナ民国で作られる映画では、悪辣な日本連邦に対して祖国回復運動が行われたと言う体の内容となっていた。

 尚、消費される火薬の量では、ノリノリで間に割って入って来たアメリカ映画(ハリウッド)が一番であったが。

 

 

*4

 安全保障関係に関して言えば共同訓練の実施と、日本製の武器の売却があったが、主となるのはオランダ領極東アジア(山東半島)の開発への支援(ODA)、そして高度技術産物の一部開放であった。

 オランダは、日本の恩恵を大きく受ける形で、G4(ジャパンアングロ)に準じる高度科学を手にしていく事となる。

 

 

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