タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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201 南米ラプソディー -4

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 南米で始まった軍拡競争に対し、国際連盟は勿論ながらもG4(ジャパンアングロ)すらも余り深い関心を示す事は無かった。

 侵略戦争をすればぶん殴る。

 ドイツ戦争でソレ(国際連盟の共同防衛)を実証してまだ5年と経ていないのだ。

 しかも戦争は、ドイツが哀れになる程に一方的に行われ、そしてドイツと言う民族国家は消滅したのだ。

 この様な侵略国家の末路を見て、どこのバカが戦争をするというのか。

 楽観的な所の強い日本やアメリカは勿論、我が道を往く(よそ様の所では無い)フランス、果ては猜疑心の強いブリテンすらもそう考えているのだ。

 国際連盟が能動的に事態に関わろうとしないのも当然であった。

 そもそも、戦車を導入しましたと言っても、所詮は3桁(100両)単位なのだ。

 G4(ジャパンアングロ)などからすれば、戦争を本気でする積りならば1桁、勝つ積りならば2桁足りない数字なのだ。

 コップの中の嵐(政治的なガス抜き)以上の事にはならぬだろうと考えるのも当然と言えるだろう。

 無論、大きな戦争の火種にしない為の協議は、国際連盟安全保障理事会で行ってはいたし、G4(ジャパンアングロ)の協議会でも地域の軍事バランスを崩す様な武器の売却は行わない様に示し合わせてはいた。

 だが、極論として言えば、その程度の反応であったのだ。

 それよりもG4(ジャパンアングロ)には、それぞれに優先するべき課題があった。

 言うまでもなく海外県(植民地)の火種の消えない、涙目の治安維持活動に邁進しているフランス。

 自国だけで十分(ヒキコモリたい)と思っているが、何の因果か極東から東ユーラシア大陸は仕方ないにしてもアフリカとヨーロッパ亜大陸まで領域が広がってしまい、その安全と繁栄の為に周辺国との折衝に外交力を奪われている日本。

 チャイナの地を支配下に収めたが、簡単に感情を爆発させる(スナック感覚で暴動を繰り返す)チャイナ人をあやす羽目になって少し後悔している(モンロー主義リターンな気分の)アメリカ。

 G4(ジャパンアングロ)で比較的余力を残して居るのはブリテンであるのだが、此方は此方で中東開発 ―― イスラム教の現代的な着地点の模索*1に苦労しており、正直、利益関係の薄い南米に構っている暇は無かったのだ。

 

 

 

 

 

――ボリビア/アルゼンチン 軍事協定

 アルゼンチンへの接近は太平洋戦争(1879 チリ-ボリビア戦争)奪われたボリビア(太平洋への道)の回復が主目的であったが、同時に、現実的選択肢として戦争を想定はしていなかった。

 ボリビア政府にとって重要な事は国家の主敵の設定、即ち()()()()()だ。

 これは現在、ボリビアを統治している軍事政権が国民の信任を失いつつある事が原因であった。

 鉱山労働者などとの労働争議が小規模ながらも武力行使に繋がるなどしており、この沈静化(誤魔化し)を狙ったのだ。

 ある意味で徹頭徹尾、国内向けの話であった。

 又、軍事政権であるが故に、軍事力の拡大は好む所もあった。

 太平洋戦争(1879 チリ-ボリビア戦争)の敗北もであるが、1930年代のチャコ戦争の敗北もボリビア軍にとって恥辱であり、ソレを癒せるのは大砲を持った戦車の列だけと言えた。

 パラグアイ軍よりも大兵力を集めたのに敗北したチャコ戦争。

 ()()()()()()()()()()()()()

 ボリビア政府はアルゼンチンがチリと戦争をする際、自動参戦をする事を対価として戦車を無償供与、乃至は安価に提供する様に要求するのであった。

 否、戦車だけではない。

 歩兵に機動力を与える為、装甲車両やトラック、そして航空機の提供まで提供希望一覧(おねだり帳)に載せるのであった。

 チリの側面に圧力を掛ける事の出来る位置にあるボリビアが友好国(準同盟国)となるのは、アルゼンチンにとっては極めて有難い話であった。

 だからこそ、ボリビアが接触して来た時、喜色を浮かべてアルゼンチンは受け入れた。

 だが、基本的な交渉は成立しても、その先 ―― 具体的な装備の売却となった時、ボリビアの要求を見たアルゼンチン政府は頭を抱える事になったのだ。

 特に航空機はジェット戦闘機の提供要求が載っていたのだ。

 アルゼンチン軍でもまだ、装備の行われていない世界最先端であるのだ。*2

 ボリビアとの交渉の席に臨席していたアルゼンチン軍関係者が、ボリビアの正気を疑うのも当然の話と言える。

 故に、アルゼンチンはライセンス生産しているレシプロ戦闘機の提供を申し出るのであった。

 格安で保守部品まで含めると言う大盤振る舞いであったが、此方はボリビアが反発した。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そう言う事であった。

 理屈としては判るが、現実的ではない話であり、アルゼンチン軍関係者はゲンナリとした気分を味わうのであった。

 とは言え、ジェット戦闘機を運用する上で必要な経費、用意するインフラを説明した所、ボリビア側の経理担当が顔を真っ青にして軍上層部を説得。

 ジェット戦闘機導入の話は流れる事となるのだった。

 

 

 

 

――ペルー

 ペルーは南米が軍拡競争の時代に入った事を好機として理解していた。

 国境問題に起因した緊張状態にあるエクアドルとの関係を清算する機会であるとの認識である。

 無論、何も無い状況に於いて拳を上げると言う事は国際連盟とG4(ジャパンアングロ)に睨まれる事になるので動くべきではないのだ。

 だからこそ注意深く、準備を進めるのであった。

 その準備の一つとして、ボリビアのアルゼンチンとの関係強化に協力を申し出たのだ。

 戦争とならない為の政策として、ペルーにとっても関係に問題を抱えているチリをアルゼンチン、ボリビア、そしてペルーで包囲してしまえば良い。

 そう言う話であった。

 実際に戦争状態に入る事を好まないアルゼンチン政府/軍はペルーの提案に好意的反応を示す事となる。

 アルゼンチンの反応に気を良くしたペルー政府はそこで本題となる戦力、チリに圧力を掛ける為の力を要求する事となる。

 戦車だ。

 南米でも上位側に居る国力を持ったペルーは既に戦車自体は保有しているが、チリとエクアドルの両方と対峙する為、より戦力を拡大せねばならないと言うのがその主張理由であった。

 判る話ではあった。

 問題は、ペルーが要求したのが30t級以下の使い勝手の良い、だがチリが主力とするチャレンジャー巡航戦車を撃破可能な戦車であった事だろう。*3

 この点に関してアルゼンチンは主力戦車に関しては将来的な供給と言う事とし、現時点での話としては、ソ連で保管状態にあった軽戦車の売却話とする事で誤魔化していた。

 10t級の車体に45mm砲を搭載した軽戦車は偵察部隊向けであり、ペルー政府からすればとてもでは無いが必要十分と言えない車両であった。

 不満の強い軽戦車であったが、インフラに負担を与えないと言う意味では実に優秀であり、後方での輸送と言う意味でも、戦場での機動と言う意味でも、必要十分以上の能力を発揮し、訓練も行いやすく、維持コストも手軽い為、ペルー軍は高い評価を与える事となる。

 

 

 

 

 

――パラグアイ

 南米に吹き荒れる軍拡の嵐の中にあって、局外中立と言う事が出来ないのが多くの国に囲まれたパラグアイと言う国家の状況であった。

 但し、問題があった。

 国内の治安悪化である。

 社会主義/国家社会主義的な政策を掲げていた軍事政権に対し、国民は民主主義を求めて活動を繰り広げていた事が理由であった。

 国家に安定と繁栄をもたらす国家社会主義と政府が主張し国民の権利権限の抑制を図っていたが、世界で主導的なG4(ジャパンアングロ)は全てが民主主義国家であるのだから国民が素直に従う筈も無かった。

 特に、知識層はその傾向が強かった。

 又、経済的に結びつきの強いアルゼンチンが、パラグアイと敵対的なボリビアと軍事的関係を深めると言うのは誠にもって厄介な問題であった。

 正直、混迷と言う言葉が余りにも相応しい状況と言えるだろう。

 だからこそパラグアイは、動けないでいた。

 現実的な脅威であるボリビアへの対応として軍備を整えようとすれば、国内の政治状況が赦さない ―― 国内の治安維持に軍隊を使用すると批判されかねない状態なのだ。

 国民の支持が離れつつあるパラグアイの軍事政権にとってそれは余りにも悪手であり過ぎていた。

 この為、具体的な対応として出来たのは、大陸の盟主(管理人)たるアメリカに泣きつく事だけであった。*4

 南米の混乱は、少しずつ加速していく。

 

 

 

 

 

 

*1

 日本からの技術協力もあって行われたブリテン本島の再開発 ―― 再編成と重工業の再興によって、石油を産出する中東の価値はブリテンにとってかなり大きなモノとなっていた。

 だからこそ、日本からの未来情報によって知った将来的なイスラム教問題、原理主義の勃興その他による不安定化を許容する事は出来ないのだ。

 目的としては政治と宗教の分離であり、ある種、キリスト教の様な姿が目標となった。

 とは言え、宗教的権威がその権威を手放す事に否定的であり、そしてイスラム教の教えが生活に根付いている為に簡単に出来る事では無かったが。

 結果、ブリテンの外交資本がかなり中東に消費される羽目になるのだった。

 

 

*2

 G4(ジャパンアングロ)は当然として、イタリアやソ連などの列強とも比較するレベルでは無いとは言えアルゼンチンは自前での航空機産業を保有していた。

 アメリカが開発したレシプロ戦闘機をライセンス生産し、3桁単位で配備をする程であるのだ。

 立派なモノではあった。

 とは言え、ジェット戦闘機となると話は違う。

 アメリカは勿論、他の国々もジェットエンジンの技術公開に関しては拒否しており、完成機の輸入のみを認めると言う態度であった。

 しかも導入価格はかなり高額であった。

 当初、交渉相手と考えていたアメリカやブリテンはそれぞれ護るべき領域の広さから必要数が莫大であり、余剰となる機体は無かった。

 日本は言うまでもない。

 この為、アルゼンチン政府は食料供給と言う面で関係の深いフランスに泣きつく事となる。

 フランスは農業大国でもあるのだが、アフリカその他で軍を動かし続けているが故に安価で大量の食糧を欲していたのだ。

 又、背負う事となった東フランス(旧ドイツ領)の問題もあった。

 ドイツ戦争でインフラを破壊しつくされた為、食料の生産が十分に行えていなかったのだ。

 それでも穀物やイモ類といった主食類は十分に供給できている(飢餓/栄養失調状態は無い)のだが、肉類や果物などの供給は十分とは言えないのが現実であった。

 だからこそ、農業大国でもあるアルゼンチンが重要になるのだ。

 フランス政府には義務があった。

 旧ドイツ人をフランス人(東フランス民族)とする為、フランス人となった事を喜べる状況を与えねばならないと言う。

 だからこそ、アルゼンチンにとって交渉できる相手であるのだ。

 又、状況も良かった。

 フランスはドイツ戦争の終結の余力(部隊規模の縮小)のお陰もあって第2世代ジェット戦闘機で主要部隊の統一を図っていた為、第1世代ジェット戦闘機が訓練部隊からも退役を始めていたのだ。

 結果としてアルゼンチンは、フランスから余剰となっていた第1世代ジェット戦闘機の安価な売却の契約を結ぶ事に成功するのであった。

 とは言えボリビアとの交渉を行っている時点では、まだアルゼンチン軍の手にフランス製第1世代ジェット戦闘機は届いておらず、ごく一部のパイロットがフランス本土で訓練を受け始めた状況であった。

 

 

 

*3

 ペルーの要望書を読んだアルゼンチン軍関係者は、素で、そんなモノは無いと吐き捨てていた。

 当然と言えるだろう。

 そういう戦車が欲しいけど無いからこそ、アルゼンチンもT-34系列の戦車導入で誤魔化していたのだから。

 ソ連と共同で開発(アルゼンチンは財布を担当)している30t級主力戦車の開発は、それなりに進んではいたが、それでもまだ量産は見えておらず、アルゼンチン国民からは批判を浴びている状況であるのだ。

 余りにもお気楽なペルーの態度に腹を立てるのも当然であった。

 だがアルゼンチンの財務関係者は、これは幸いであると言い出した。

 ソ連と行っている新型30t級戦車の開発に、ペルーからも金を出させようと言うのだ。

 予算が増えれば作れる試作車両が増え、より素晴らしい戦車が作れる。

 そう言う話であった。

 この財務関係者の声にアルゼンチン政府も乗って、30t級の戦車は開発中なので、欲しければ金を出せとの書類を出す事となる。

 これが、最終的には南米標準戦車とも言われる100mm砲搭載の35t級戦車S-35戦車(ソ連名:T-49)であった。

 この話を後から聞いたソ連は、情報保全とか漏洩とかなんだろうと呆れ(哲学し)ながらも増えた開発予算を大量に飲み込んで、汎用戦車としてのT-49(S-35)戦車の開発に邁進するのであった。

 又、ソ連軍以外の採用先が多くなった事で、より数を作れる事にも繋がり、1両当たりの単価を下げる事も可能になる為、ソ連側は文句を付ける事は無かった。

 尚、ソ連は本戦車開発に並行し、西側の標準的50t級重戦車(主力戦車)の撃破が可能な重戦車開発も進めるのだった。

 

 

 

*4

 群雄割拠なチャイナの地で面倒事を背負っているアメリカであったが、同時に、他のG4(ジャパンアングロ)からすればアメリカはチャイナだけを背負っているのだ。

 美味しい空気を吸ってやがると思われていた為、G4(ジャパンアングロ)の連絡会で南米の話題を出した際、他の3国は笑顔で拍手するのだった。

 面倒事(世界の管理)にようこそ!

 そう言う事である。

 尚、日本の代表は拍手した後で、がっくりと肩を落として溜息をついていたが。

 極東と言う僻地でのんびりと繁栄するだけで良かったのに、何の因果で世界覇権たるG4(ジャパンアングロ)の一角に座り、世界の面倒を見なければならないのか、と。

 どうしてこうなった、と。

 日本とアメリカが面倒事へ嘆息する様に、過労気味のフランスは血走った目で親指を立てていた(逃がしやしないと笑っていた)

 そして、ブリテン。

 楽しいだろ? と笑っていた(ブリカスフェイス)

 陰謀論者にとって世界を支配する邪悪なG4(ジャパンアングロ)協議会であったが、その中身はこの程度の、労働者の集まりでしかないのだった。

 

 

 

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