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ドイツ戦争の終結は、日本の国民に対して戦争の時代が終わったのだと思わせた。
それはタイムスリップ前からの牧歌的な歴史観の影響であり、ヒトラーとナチスドイツとを世界の悪の
その意味する所は、日本が政治の季節に入ったという事であった。
タイムスリップと言う非常事態に対応する為として当時の与野党が協力して挙国一致内閣を組閣して以降、政治状況が安定し過ぎていた結果だった。
選挙は幾度となく行われ野党は幾度も看板を変えていたが、政権与党は看板を変える事無く存続し続けていたが為、いい加減に政権交代が発生するのが健全ではないか? と言う空気が、何となく国民の間に醸成されてしまったのだ。
その事に気づいた日本連邦諸国の政府は恐怖した。
何故なら、百花繚乱めいた野党各党の主張は、どれが実現しても困ってしまう類であったからだ。
内向きと言う意味では小日本主義を掲げる政党があった。
広大すぎる領域へと育ってしまった日本連邦を解体し
外向きと言う意味では国際連盟主義を掲げる政党があった。
国際連盟を重視するという外交方針自体は今の政権与党と同じであるが、その中身は別物であった。
主軸を
日本、アメリカ、ブリテン、フランスと言う世界で特権的な帝国主義めいた国家の集まりである
どちらにせよ、邦国にとっても世界にとっても大迷惑な主義主張であった。
だが、邦国や世界など知ったことではないとばかりに、日本の国内世論は動き出す。
この状況に、座視してはならぬと動き出したのは日本政府/政権与党と、日本との組織的な付き合いの長いグアム共和国であった。
――グアム共和国
グアム共和国政府には、日本に駐屯し日本と言うモノとの付き合いが長い旧在日米軍の高級将校がブレーンとして参加していた。
これは、そもそもグアム州の政界関係者に日本の知識が乏しい事が理由であった。
グアム島に近い西側陣営の経済大国として日本を知り、そして日本からの観光客を受け入れている事から比較的親日ではあったが、同時に、超大国たる米国と云う意識によって他国を、日本を積極的に知る必要性は低いと考えられていたのだ。
それが今は日本の一部となったのだ。
日本から各種支援を受け入れる必要性から、日本を良く知る人材が活用される形となっていたのだ。
だからこそ、グアム共和国政府は今の状況を座視しないと判断したのだ。
旧在日米軍の政策ブレーンが極めて深刻な顔で、日本の国民と世論とが比較的簡単に極端から極端に走る事があると告げたからである。
その言葉を素直に受け入れたグアム共和国政府。
当然だろう。
米国も共和党と民主党との間で、大統領が変われば政策が大きく変わった。
相手が自分と違う事を、相手が自分の意見に従わない事を指して
だからこそ、米国の流儀で日本の政治に干渉しようとした。
ロビー活動である。
グアム共和国政府の意向を受けて動くシンクタンクの
だが、この手の行動が大きな影響を持つ事は出来なかった。
極端な主張をする政党はある種、政治と言うよりも宗教的な情熱に突き動かされた存在だからである。
故に外部からの接触と指摘を受けた事によって、逆に自分たちの主張の正しさを確信してしまったのだから。
グアム共和国政府関係者は頭を抱えた。
ある意味で
しかも、それぞれの主張を更にヒートアップさせる事になったのだ。
又、グアム共和国への隔意を覚えさせてしまったのだ。
藪蛇であった。
とは言え、頭を抱えたままではいられない。
日本連邦の、グアム共和国存続の瀬戸際だからだ。
日本政府、政府与党、そして日本のシンクタンクへの接触を強めた。
特に重視されたのは、
日本連邦体制による日本の利益、そして
接触されたJITIも無為無策と言う訳では無く、この時点で積極的に動いていたのだ。
それでも日本の世論に強い影響を出せ切れていないのは、これが国民感情に由来する事だったからだ。
或いは、長期政権、政権与党への
何とも厄介な話と言えた。
又、JITIの活動は、特に世論誘導に関わりそうな事は法律によって厳しく規制されており、出来る事は限られている事も世論対応を難しくしていた。
内閣府や政権与党関係者とJITI、そしてグアム共和国政府の3者が頭を抱えている状況。
この難しい状況を変えたのは、第4の登場人物 ―― シベリア共和国であった。
グアム共和国に次いで日本にやって来たシベリア共和国関係者は、JITIが出来ないのであれば民間を使えばよいと述べたのであった。
そして第5のプレイヤー、クウェート国関係者を4者の協議の場に案内したのだ。
情報工作がダメなら宣伝戦をやれば良い。
そう嘯いていた。
政治の季節は、情報の戦いと言う強風を日本に呼び込む事となるのだった。
ある程度の国力が付いてきたとはいえこの小日本主義は、邦国群からすればゲロを吐きそうな主張であった。
例えばシベリア共和国。
この新興の国家からすれば、独立と言うのは宿敵と言ってよいソ連と自国だけで向き合う事を意味するから堪らない。
単純な国力比で言えば7:3で劣位な相手との対峙。
悪夢としか言いようが無い。
しかもその国力は、日本からの投資と技術支援を豊富に受け、或いは日本と言う旺盛な消費欲と規模とを誇る市場に接続されている事によって維持されているモノでしかないのだ。
砂上、否、永久凍土の上の楼閣と言えた。
日本が
シベリア共和国に並んで深刻なのは日本国信託統治領北ドイツ平原州も同じであった。
敵が1国であるシベリア共和国に対して、周辺の3国が纏めて敵国 ―― 敵対的な立場を維持しているのだ。
国力の劣勢と言う意味では、より深刻であると言ってよかった。
そもそも、日本国信託統治領北ドイツ平原州は国家ではなく、国際連盟が日本に統治を委託している地域でしかないのだ。
そんな国家未満が
そして吸収された場合、それこそフランスの支配下に入った
この2国ほどでは無いが、他の邦国も多かれ少なかれパニック状態であった。
日本のODAを受けて漸く国土の本格的な開発が始まった
焼酎やアニメ、コスメその他と日本無しには生きていけない(生きていけないとは言ってない)オホーツク共和国。
チャイナの圧が怖い
日本に全BETしたんだから、もっと協力してくれと言う準邦国のエチオピア帝国。
どの国も頭を抱える主張であった。
此方に泡を喰った事になったのは日本と
グアム共和国は白人国家ではない。
構成する人種は白人のみならず黒人や黄色人種、ヒスパニック系その他から成っており、人種の
だからこそ今のガチガチの白人国家、白人による白人の為の白人の国家と言う意識の強いアメリカと相容れない部分があった。
この点は、アメリカ側でも同じであった。
タイムスリップ時の交渉に出てきた在日米軍 ―― 星条旗を縫い付けた軍服に身を包んだヒスパニック系やアジア系の将官と言う存在と言う衝撃は、中々に大きかった。
非白人国家としてのアメリカと言う存在は、簡単に飲める話では無かったのだ。
だからこそグアム特別自治州はグアム共和国でもあり、アメリカを構成する特別州であると同時に日本連邦の邦国と言う極めて特殊な立場となっていたのだ。
既にタイムスリップしてから20年以上が経過し、初期の齟齬はある程度は解消されアメリカとグアムの関係は良好なモノになっていたが、それでもグアム特別自治州/共和国はアメリカに全面帰属する事を望まなかった。
米国の歴史を知るが故にアメリカの非白人種の人権問題は深刻であったし、何より日本のカルチャーに首までどっぷり浸かった日々の結果として
これはアメリカに出向した人や、アメリカから派遣されてきた人との交流の結果でもあった。
アメリカの文化は古臭い。
100年の時間差であり、そう思うのは残念ながらも当然の話であった。
だが、日本が連邦を解体してしまえばグアムはアメリカに帰属せざるを得ない。
小さな島であるが故に、単独で存続できないのだから当然であった。
グアム共和国人からすれば勘弁してくれと言う話である。
又、ブリテン連邦の正式加盟国なのに日本連邦の準邦国ですよとシレっと支援を求めていたクウェート国も居た。
クウェート国は主要産業であった真珠の売買が日本の真珠養殖によって壊滅させられたが為に日本への心理的距離感があった。
だが日本がブリテンを介して駐屯する様になって以降、日本が駐屯地を快適にする為のインフラ設備として予算をジャバジャバと投入した事が空気を換えた。
更にはエチオピア帝国に続いて核融合発電
しかも、豊富な電力によって海水淡水化プラントが稼働し、狭いクウェート国で水不足と言う言葉は死語になったのだ。
勿論、海水淡水化プラントは日本からの
他には、適切な価格での
又、石油を売った金で日本の、日本本土の製品をかなり自由に手に入れる事が出来る事も大きかった。
自動車や冷蔵庫にクーラー、そして当然の様にアニメや漫画などと言ったサブカルチャーも含まれていたのだ。
勿論、TV放送の支援も行われていたが、民族資本の番組などが簡単に作れる筈もなく、日本製のアニメやドラマが提供されていた。
日本の
中東最大の親日国、日本連邦の非公式加盟国の名は伊達では無かった。
クウェート国は日本をバックに、繁栄の道を歩みだしていた。
その日本が
心底から勘弁してくれと言う所であった。
設立の発端はタイムスリップ前だ。
これはタイムスリップする前の頃、事実上の国営放送であった
中国や朝鮮半島の諸組織の代弁者めいて動いていたのだ。
NHKだけではなく、多くのマスコミやフリーランスの記者たちも同様であった。
世論工作だ。
とは言え、感情的になっていた当時の日本国世論が動かされる事は無かったが。
兎も角。
JITIは内閣府の管理下にあり、日本政府の立場での情報分析と広報を行っているのだ。
尚、設立時には一部のマスコミや野党から民業圧迫 ―― NHKや民間報道機関の業務を脅かすモノであると批判されもしたが、2020年代の極東情勢の分析や広報その他でマスコミやNHKが国民の信用を失っていた為、大きなムーブメントに繋がる事は無かった。
2024.10.17 バランス修正