タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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208 イラク事変 -04

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 無法なクウェート国侵略を先導(扇動)したイラク王国軍の若手将校たちは己らの勝利を確信していた。

 クウェート国に入ってから幾つかの集落を掌握し検分したが、その何れもが豊かであった。

 イラクの都会ですら見た事も無いモノが多かった。

 放棄されていたピカピカの自動車(メイドインジャパン)

 井戸に据え付けられたポンプ。

 使い方も判らない電話機。

 家々に繋がった電線。

 小さな集落ですらコレなのだから、クウェート国の首都たるクウェート市を落とせばどれ程の利益を得られるのか想像も出来ないと言うモノであった。

 莫大な富をイラク王国に齎す事になるだろう。

 そうなれば、自分たちはイラク王国で栄達する事になるだろう。

 夢を見ていた。

 とは言え、だ。

 ソレは、ジャハラー市郊外で戦力が衝突するまでの短い夢(儚い希望)であったが。

 

 

――ジャハラー市防衛戦/開幕前

 クウェート侵略軍は、クウェート国とイラク王国の国境やや北側 ―― 2つの国を繋ぐ大動脈めいた道路から侵入、侵攻していた。

 狙ったのはクウェート市だ。

 途中で戦力を分け、クウェート湾の北側に位置する日本連邦統合軍の駐屯地を狙う事は無かった。

 万が一に日本連邦統合軍側が抵抗した場合、面倒になるという判断であった。

 クウェート侵略軍を操るイラク王国軍若手将校たちは、コレを高度な戦略的思考などと嘯いていた。

 純朴(欲望に素直)な所のあるイラク南部部族の私兵たちは、その説明に納得していた。

 クウェート侵略軍に参加している私兵は学と言うモノが乏しいが、それでも一人前には先進国(日本連邦)と言うモノを理解しているが故に、その駐屯地にあるお宝(Made in Japan)略奪欲(スケベ心)を隠さなかった。

 だが、終わった後で奪いに行けば抵抗は弱いと言われては納得するのであった。

 学は無くとも命は惜しい。

 そういう話であった。

 そして、イラク王国軍若手将校たち。

 実際にはG4(ジャパンアングロ)筆頭たる日本の軍事力を恐れての事であった。

 略奪に際して戦果(一番美味しい所)を求めれば、先頭に立つ必要がある。

 その状況で万が一に日本の力(日本連邦統合軍)が全力で発揮されては身の危険がアブナイ。

 そういう話(自己保身心)であった。

 兎も角。

 戦車を先頭に立て、ジャハラー市を狙うクウェート侵略軍。

 この時点で、ブリテン製の中古巡航戦車(前ドイツ戦争級戦車)は100台となっていた。

 道路があるとは言え、砂漠の中を走って来たのだ。

 半分もたどり着いただけ立派だと言えるかもしれない。

 そして自動車化された歩兵と(ラクダ)兵、併せて約20,000が随伴していた。

 兵力と言う意味ではほぼクウェート国軍と同数であったが、クウェート側が後方部隊も含めた数であるのに対し、クウェート侵略軍(イラク王国軍)側はほぼ全てが戦闘要員であったのだ。

 圧倒的な戦力差。

 但しソレは将兵の数だけを見た場合の話であった。

 戦車、装甲戦闘車両の数では圧倒しており、特に致命的な差となっているのは航空戦力であった。

 全く航空機を持たないクウェート侵略軍*1に対して、クウェート国側は20機近い戦闘機を保有していた。

 そしてブリテンと日本、そしてフランスである。

 ブリテンはクウェート国内に航空戦力を配備してはいなかったが中東全域で200機を超える戦闘機及び攻撃機が配置されていた。

 対して日本。

 この現時点でクウェート国内に残されていた戦闘可能な機体は5機のYF-12(試作攻撃機)だけであったが、海を渡ったエチオピア帝国にはAC-2(対地攻撃機)が展開しており、エチオピア帝国の了解の下で転用される事となっていた。

 そして海上自衛隊の航空護衛艦(軽空母)かが*2を旗艦とする航空護衛隊群が居た。

 かがは8機のF-35Bと13機の大型UAVを搭載していた。

 その他にも、欧州から即応可能な20機を超える戦闘機部隊が移動してくる予定であった。

 数、その総数と言う意味では100機を超えないが、その戦闘力は隔絶していると言っても良いだろう。

 そしてフランスだ。

 国際連盟の安全保障理事会で対応が決議された際にフランス代表は、クウェート国代表に対して中東のフランス海外県(植民地)に存在する航空戦力約500機の投入を約束していた。

 とは言え、即応できる数はその1割にも満たない規模(何時もの口約束はデカいフランス仕草)であったが。

 だが、それでも大きな数であった。

 総数で200機を数える規模となった航空戦力であったが、即座に攻撃に移る事は無かった。

 日本による偵察衛星と航空偵察によって、クウェート侵略軍の状態を丸裸にしてからとなった為であった。

 撃ち漏らしの残党の類が、クウェート国内で野盗化して被害が発生する事を恐れたのだ。

 UAVやYF-12、P-1や連絡機まで投入された大規模な航空偵察は3時間弱でクウェート侵略軍の状況を把握する事に成功したのだった。

 それは、クウェート侵略軍の先遣部隊がジャハラー市の外郭に設けられた防衛ラインに到達する寸前の事であった。

 この情報をクウェート基地にある日本連邦統合軍中東方面隊司令部が軍事情報へと編集し、日本、ブリテン、フランスの航空部隊に、その能力に併せて割り振る事となる。

 

 

――航空戦

 都合200機の航空戦力で行われた徹底的な爆撃は、近代的な戦闘と言うモノへの素養が乏しかったクウェート侵略軍にとって致命的な影響を与える事となった。

 とは言え、8万を超える兵力を壊滅させるには流石に規模と言うモノが不足していた。

 そして問題は、クウェート侵略軍は正規の軍事集団(上位下達型組織)とは言い難いが為に、一部の部隊が壊乱しても、その混乱が波及する事が無いという事であった。

 日本はP-1等を用いて電波情報を収集し、クウェート侵略軍の指揮統制システムを把握しようとしたのだが見つける事が出来なかったのだ。

 クウェート侵略軍は、軍組織では無かった。

 ()()()()()()()でしかなかったのだ。

 日本が高度化され過ぎていたが故の、ある意味で失敗であった。*3

 とは言え、200機からの地上攻撃による衝撃は、クウェート侵略軍の動きを鈍化させる影響力があった。

 とは言え、()()()()()()()()クウェート侵略軍の先遣部隊はジャハラー市へと襲い掛かったのだ。

 郊外で自由に航空攻撃を受けるよりも、市内に突入した方が安全になる。

 そういう判断であった。

 好んで虎口に頭を突っ込む行為と言えた。

 

 

――ジャハラー市攻防戦

 クウェート侵略軍先遣部隊による、攻撃と言うよりも避難の為として行われたジャハラー市への攻撃。

 だが、そうであるが故に必死な全域での攻撃となっていた。

 この時点でクウェート側の防衛ライン ―― 塹壕網は十分な規模とはなっていなかったが為、戦車装甲車その他を主軸とした小規模な機動打撃部隊を編成して機動防御、応戦に出る事となった。

 総予備、反撃の先鋒として温存される予定であった第10機甲師団第1戦闘団(10.1th RCT)すら小隊単位に分解して投入される有様であった。

 新鋭の44式戦車*4は、そのバカげた機動力を十分に発揮する事となる。

 その様は砂の海を征く船の如き滑らかさであった。

 走りながら発砲し、尚且つ命中させる。

 クウェート侵略軍が持ち込んでいた戦車は、その悉くが接敵すると共に消滅する有様であった。

 又、ジャハラー市侵攻の真正面に立った戦車は、34式155mm自走榴弾砲の砲弾によって撃破と言う言葉では生ぬるい惨状となり、破砕されていた。

 日本を除く覇権国家群(ジャパンアングロ)の戦車では、防御力に秀でているとされていたブリテン戦車であっても、その装甲は155mm砲の粘着榴弾(HESH)の前では紙細工と言う有様であった。

 意外なところでは、クウェート国軍が装備していた41式駆逐戦車*5も活躍していた。

 主砲はもう旧式(時代遅れ)と評されても仕方のないブリテン製6lb.砲であったが、その機動力は日本製(1級品)と言う事で故障知らずであり、縦横無尽に砂の海を駆け回り、このイラク事変が終わるまで高い稼働率を維持し続けたのだった。

 兎も角、火力としては弱いが、必要な場所に居る事の出来る車輛と言う事で、大活躍となったのだ。

 しかも、クウェート国にとっては、自国の戦力が活躍したという事で、戦後、盛んに宣伝する事となった。

 

 

――イラク王国政府

 クウェート侵略軍は、イラク王国政府の方針に逆らってクウェート国に侵攻した国賊と呼べる存在であったが、同時に、その多くにはイラク王国の有力な家々の関係者も多く含まれる()()()であった。

 イラク王国関係者の本音としては死ねば良い相手であったのだが、国内政治としては余り死なれても困る相手であった。

 この為、クウェート侵略軍部隊に対して政府特使を送って原隊復帰を命令する事となった。

 問題は、その特使がクウェート国に到着した時点でクウェート侵略軍と呼べるモノは残骸と化しており、組織の態を為していない有様だという事だろう。

 戦闘は残敵掃討の段階となっており、特使は内心の腹立たしさを抑えてクウェート国に対して助命嘆願をする羽目になるのだった。

 そこまでしても、有力な家々の関係者の多くがイラク王国の地面を自分の足で踏む事は叶わぬ結果となり、イラク王国に深刻な政治的問題を引き起こす事となるのだった。

 

 

 

 

 

 

*1

 イラク王国軍自体はブリテン製航空機を100機単位で保有していた。

 戦闘機の数的な主力はレシプロ機であったが、ごく少数ながらも第1世代型ジェット戦闘機も保有していた。

 これはブリテンによるブリテン連邦構成国への飴玉と言う側面があった。

 同時に、覇権国家群(ジャパンアングロ)の戦闘機としては性能寿命を迎えていた機材と周辺機器の再利用でもあった。

 兎も角。

 イラク王国軍の航空部隊の将兵は、将来の空軍としての独立を目標として選抜された人員で構成されていたお陰で、イラク王国軍若手将校団による扇動に乗らなかったのだ。

 

 

 

*2

 いずも型航空護衛艦はドイツとの戦争が確実化した1930年代末に、航空機運用能力強化を主眼とした大規模な近代化改装が行われていた。

 それは、飛行甲板の拡張と斜向甲板(アングルドデッキ)の造作に加えてカタパルトの設置を含む大規模なモノであった。

 重量バランスを取る為に右舷側甲板も拡充され、そこには艦橋の移設に船体の延長まで含まれていた。

 すさまじい規模での近代化改装。

 これは主力戦闘機となるF-35Bの運用能力の強化ではなく、多機能な大型(非垂直離着陸型)UAVの運用能力の付与であった。

 そこにはAEW型UAVも含まれていた。

 この規模となると、改装するよりも一から新造した方が安いのでは? と言う常識的な疑念 ―― 批判も計画が公表された際に言われていた。

 だが、海上自衛隊としては1939年次対ドイツ戦備計画で整備が予定されていた新空母、30,000t級航空護衛艦向けの新しい航空艤装その他の搭載試験を行う事も兼ねる事を考えていた為、整備計画は実行される事となった。

 かくして、いずも型航空護衛艦は基準排水量が23,000tを超える事になる。

 尚、予定されていた新空母たる39,000t級ひりゅう型多機能航空支援護衛艦の整備数が1939年次対ドイツ戦備計画の中止に伴って4隻から1隻に削減された為、この手間のかかったいずも型の改装へと消える事となった。

 

 

 

*3

 クウェート侵略軍の主力であるイラク王国軍のメンツが完全に潰れてしまう話であったが、同時に、イラク王国政府としては福音となる話であった。

 クウェートへと侵攻した軍組織が、イラク王国軍では無いという証拠となるからであった。

 

 

 

*4

 タイムスリップから30年余りを得て漸く日本国陸上自衛隊が得た10式戦車の後継、それが44式戦車であった。

 とは言え、基本的な構成としては10式戦車から極端な進歩を遂げている訳では無かった。

 50t級の重量を持ち、主砲は120mm砲を採用している。

 とは言え装甲は重量効率が劇的に向上しており、車体と砲塔の正面防御力は3割以上も強化されていた。

 又、足回りに関しては10式戦車に対してアクティブサスの限定的採用と言う形で、退化している部分もあった。

 これは、10式戦車の足回りが整備に手間が掛かり過ぎる為、120mm砲の反動を重量で殺す方向に舵を切った結果であった。

 44式戦車は、地上の戦闘機とすら呼ばれた短期決戦志向の10式戦車とは異なるコンセプトとして作られていたのだ。

 又、車内の居住性もかなり考慮されていた。

 総じて言えるのは、日本列島の外で長期間に渡って運用される事を念頭に置いているという事であった。

 この他、ATM(対戦車ミサイル)などの攻撃に対する自動迎撃装備(アクティブディフェンスシステム)が採用されていた。

 又、車両の管理システムにAIが採用されており、最悪の場合には1人で運用する事が可能となっていた。

 この時代の、他国が採用している戦車を見れば()()な能力を付与されてはいるが、これは日本が万が一にタイムスリップで元の時代に戻る事になった際の事を警戒しての事であった。

 これは主砲である120mm砲が、必要があれば短期間で大口径化 ―― 130mm砲への換装が可能な様に設計されていた事にも表れていた。

 自動給弾装置も、対応可能な様に設計されていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

*5

 クウェート国軍が41式駆逐戦車を採用したのは、日本に対するクウェート国の配慮であり、性能によるモノでは無く政治に由来した購入であった。

 だが、機械的信頼性はこのクウェート国の国難を大いに助ける事となったのだ。

 結果としてクウェート国は、戦後に41式駆逐戦車の追加購入を決定する事となるのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




2025.03.29 文章修正
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