タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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003 アメリカの混乱

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 タイムスリップで混乱した日本。

 その次に混乱した国家は、アメリカ合衆国であった。

 グアムとの連絡が唐突に途絶したと思ったら、100年後の米軍が日本国に駐留していてコンタクトを取って来たからだ。

 

 在日米軍との交流。

 在日米軍を介しての日本との交流。

 100年先の情報を得た事はアメリカに莫大な恩恵を与える事となる。

 同時に、迷う事となる。

 100年の間、アメリカが被った被害や重責を思えば、資本主義国家の雄として立つ事は果てしなく面倒事ではないのかと思ったのだ。

 この為、100年を研究し検討するシンクタンク、センチュリー機関が創設された。

 主題はアメリカの覇権体制による損得。

 日本との関係の是非。

 そして重視されたのが、100年後のアメリカが白人国家では無くなっているという事。

 在日米軍の指揮官はプエルトリコ系であった為、この事をアメリカは深く認識するようになった。

 白人国家としてのアメリカは、そうであるが故に、苦悩する事となり、問題を棚上げする事となった。

 後の事は後で考えよう、と。

 

 尚、このセンチュリー機関の検討の中には、在日米軍による日本政府の掌握による日本の先進科学の収奪も含まれていた。

 だが検討が行われる頃には、日本国内の在日米軍施設の燃料は枯渇状態になっており、その様な作戦の実行は困難なのが実情であった。

 又、機関に参加していた在日米軍からの出向者が、感情的に難しい事、そして自衛隊の配置状況(※2)から在日米軍が何らかのアクションを起こそうにも難しいと。

 又、特に出向者が主張したのは、失敗した場合には100年先の日本は敵になる。

 今の日本のGDPはアメリカの比では無いので、短期的には問題は無いかもしれないが、長期的には凄惨な報復がなされるであろう(※3)と。

 この結果、親日路線が堅持される事となる(※4)。

 

 

――対日貿易

 タイムスリップした日本が欲した食料を供給できるのはアメリカだけであった。

 日本は輸出を要請する。

 アメリカ側も、世界大戦終結後にだぶついていた食料の輸出先となる為にこれを快諾する。

 対価として日本はエアコンや冷蔵庫などの電気製品を提案する(※1)。

 東京を訪れていたアメリカの交渉団、特に交易に関わる企業の人間はこの受諾を政府に要請し、貿易が始まる。

 

 

――対中進出

 対日交渉中、雑談の際に日本帝国の本土4島以外の領土権益の処分に関する話題が出た。

 この為、アメリカは他の国家に先駆けて日本に対して関東州と満州の権益売却に関する交渉を行う事に成功する。

 但し、対中進出に関しては、日本政府からは控えめながらも「買ってもらえるのは嬉しいけど、大丈夫ですか? 泥沼化確定していますよ??」という善意の心配を受け、在日米軍からも失敗する確率200%(100%確実に失敗して、100%大炎上大被害が出るの意味)と止められたが、世界大戦後にだぶついた国内生産力の新しい消費先 ―― 市場を求める国内経済界の声に押される形で対中進出を行う事となる。

 又、アメリカ陸海軍に新しいポストを用意出来る事も評価された。

 

 

 

 

 

(※1)

 日本で使用されていたエアコンや冷蔵庫などの白物家電、後は食糧倉庫などで使われる業務用設備。

 アメリカからすれば100年は進んだものであり、売れるし売りたいと熱望していた。

 後にアメリカ国内でリバースエンジニアリングによる模倣が図られるが、電子機器技術を筆頭とした基盤的技術の乏しさから失敗。

 この結果、開き直ったアメリカ企業は失敗した部品を日本から輸入し、アメリカ国内で組みつけて完成、販売を開始した。

 

 

(※2)

 2020年代の自衛隊と在日米軍は一体化が進んでおり、であるが故に何らかの特殊なアクションを行おうとした場合、即座に物資の集積などの準備が相手に伝わるというのが実情であった。

 

 

(※3)

 在日歴の長い出向者であったので、日本人を良く理解していた。

 本当にキレた時の日本人が躊躇や容赦の無い事をやらかす事を良く理解していた。

 又、歴史を紐解いて太平洋戦争に至る歴史を講義し説明も行った。

 出向者は、味方には死ぬほど甘いが敵となれば損得勘定抜きで動くところのある、面倒くさく非常に危険な日本人という民族の事を良く理解していた。

 それを判りやすく講義した。

 

 

(※4)

 日本が目的の無い軍備拡張を準備した時点で、アメリカは日本に対する戦争準備を行う。

 そうでないのであれば平和的な対応に終始する。

 これが基本方針であった。

 科学技術や国力が上である事が見てとれる日本に対しアメリカが警戒心をさして高めずにいたのは、日本の軍備がアメリカから見て実に慎ましい事が原因であった。

 陸上戦力が9個師団8個旅団体制(7個自動車化師団、1個機械化師団、1個機甲師団、6個機械化旅団、1個空挺旅団、1個海兵旅団)。

 航空戦力は戦闘機500機体制。

 洋上戦力が軽空母2隻、ヘリ搭載駆逐艦4隻、ミサイル駆逐艦12隻、駆逐艦20隻、フリゲート22隻。

 油断は良くないが警戒をする必要も無いほどに規模が小さい。

 そう見えていた。

 戦車は全て40t以上の重戦車で約1000両。

 戦闘機はジェット機で、しかもほぼ同数の戦闘UAVが保有されている。

 駆逐艦は最低でも5千t級で32隻。ヘリ搭載駆逐艦は名前詐欺の実質空母。軽空母は軽とは付くが基準排水量で6万t級の超大型艦である。

 しかも空母的な戦力では、揚陸艦と言う名前の5万t級艦まで2隻居る始末である。

 自衛隊の戦力を把握した時、アメリカ軍関係者は「詐欺かよ、ふざけんな!」と切れたと言う。

 尚、その後、珈琲を飲んだ後に友好路線を選んで良かったと先人の賢明さに感謝し乾杯したと言う。

 

 

 

 

 

 




2019.05.08 内容修正
2022.10.18 構成修正

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