タイムスリップ令和ジャパン   作:QgkJwfXtqk

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44.1938-3 イタリアの衝撃

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 G4、日本に付くと決断したムッソリーニであったが、その行動は実に慎重であった。

 リビアの油田情報が事前にドイツやソ連などに漏れぬよう、自身と側近だけに情報の共有を留めた上で国際連盟大使に、日本との間で個別交渉の場を設ける様に指示する。

 表向きの題目は貿易の拡大と、イタリアと日本との友好関係の増進とした。

 この題目であれば、事前に情報を得た国々の目にはイタリアがシベリア独立戦争でやや悪化した日本との関係改善に乗り出した程度に見えるという計算があった。

 そこまで事前の情報漏えいを警戒する相手は、当然と言うか、友好関係にあった(・・・)ドイツとソ連であった。

 日本との交渉への妨害を警戒しているのだ。

 同盟とまではいかずとも、事実上の連帯をしていた関係を脱しようとするのだ。

 しかも、交渉の手札とするのはドイツもソ連も重工業化に伴い喉から手が出る程に欲しい資源、原油なのだ。

 である以上、ドイツもソ連も何をしでかすか判らないとムッソリーニが警戒するのも当然であった。

 

 

――国際連盟・日本/イタリア

 題目として、イタリア領東アフリカとクウェートで経済活動を行っている日本企業との交易に関する協定であった。

 日本企業が現地で必要とする食料などは当初、周辺のブリテン植民地より購入していた。

 だが最近になって武力による独立運動を行う手合い(※1)が増え、治安は悪化の一途を辿り、周辺からの輸入に頼るようになっていた。

 そこにイタリアが食い込もうとした ―― そう、日本も世界も判断していた。

 故に、比較的呑気に日本は会議に臨み、そして精神的な衝撃を受ける事となる。

 交渉の場には、極秘にスイスへと入国してきていたムッソリーニが居たのだから。

 その口から語られたのは、リビアの油田を介したイタリアと日本の関係深化である。

 イタリアは日本への政治的、外交的な奇襲に成功した。

 

 

――日本

 日本にとって、資源の輸入先が広がる事は良い事であった。

 同時に、潜在的な敵国であるソ連やドイツの有力な友好国が減るのは歓迎すべき事態であった。

 又、イタリアの望んでいる日本連邦とシベリア開発へのアクセスは、日本とイタリアの経済力の格差からすれば大きな問題には成らなかった。

 それよりはイタリアの経済に低関税でアクセスできることの方が旨みが大きかった。

 問題としては、イタリアからの軍事的な要請 ―― ドイツから圧力を受ける事に成った場合の支援に関しては、日本はある意味で諦観を持って受け入れていた。

 既にフランスには1個機甲旅団が駐屯し、何故かブリテンにも教導隊枠で1個装甲連隊が居るのだ。

 更に1個旅団程度であれば、欧州に1個師団を配置したと思えば良いのだと開き直っていた(※2)。

 

 

――ブリテン

 リビアに良質な油田があると言う事はブリテンにとって福音であった。

 これは中東に於いて武力を伴った独立運動が散発的に発生する様になり、安定して石油をブリテン本島へと送り込む事が難しくなった事が理由であった。

 中東に比べリビアの治安は安定している為、安定して供給を受けられる事が想定された。

 この為、日本とイタリアの交渉を後押しすると共に、日本に対してはブリテンに対してある程度の売却を要請する事となる。

 このブリテンの姿勢に、フランスも1口乗る事となる。

 日本としては、当座の石油資源の輸入量は確保していた為、商いとしてリビア油田は見る ―― 資源を産出した上で手頃な売り込み先があるのであれば問題は無いと、受け入れていた。

 

 

――ドイツ

 ヒトラーは激怒した。

 かかるイタリアの恥ずべき裏切り行為は看過し得ないと大激怒した。

 だが、現状でイタリアに懲罰戦争を仕掛けるにしても国境を接しておらず、出来る事は無かった。

 それどころか、中東への極秘裏に行っている武器売却に関してはイタリア領東アフリカを介さねばならぬ関係上、イタリアの機嫌を取らねばならなかった。

 ヒトラーは珈琲を暴飲し、サラダを暴食して怒りを発散していた。

 その上で、中欧を掌握した後のイタリア侵攻計画を立てる様にドイツ陸軍へと命令する事となった。

 

 

――ソ連

 スターリンはムッソリーニの破廉恥振りに激怒した。

 痛飲した。

 酔った上で、ソ連の友邦はドイツしかないと宣言した。

 ソ連への支援として訪れていたイタリア人は粛々とソ連を去って行った。

 

 

――フランス

 フランスにとって、その柔らかな下腹部に迫る場所に居たイタリアがG4陣営の軍門に下るのは福音であった。

 この為、全力でイタリアと日本の関係が促進する様に協力を行った。

 国際連盟の会議でイタリア大使を詰るドイツ大使を諌める程に、親イタリア的態度を示す程であった。

 

 

――イタリア

 大博打に打ち克ったイタリアは、この外交的な勝利を大いに宣伝し、同時にイタリアと日本 ―― G4の友好を大きく謳う事となる。

 イタリアの生活は流入してくる日本製の物資で潤い、又、服飾や嗜好品、一部の工芸品が日本へと飛ぶように売れる様になった為、経済が活性化する事となる。

 リビアの油田権益へ日本資本の参入を許した事に関しては、この経済の活性化がイタリア人に問題意識を持たせずに済む事となった。

 イタリアは空前の好景気に沸く事となる。

 

 

 

 

 

(※1)

 当然ながらもドイツが売り付けた武器を手にしていた。

 ブリテンも、旧在日大使館系ではない過激な独立派の急速な展開に警戒し、情報を集めてはいたが、この時点でドイツの影は確認出来ていなかった。

 

 

(※2)

 陸上自衛隊としては、日本政府の決定に反抗する積りは無いが、それでも愕然となった。

 シベリア独立戦争の影響による規模拡大 ―― シベリア共和国に駐屯する2個師団の調整を漸く終えたと思った所に、この更なる1個旅団の派遣の話である。

 頭を抱える事となった。

 後方地帯への派遣や、フランスやブリテンの様な有力な友好国への駐屯ならまだしも、下手をすればドイツとの前線に立つ事になりかねない()タリアへの派遣である。

 下手な練度や装備で送り出す訳にも行かない。

 総予備とも言える第7機甲師団の戦力を一時的に下げる事とはなるが、同師団から人員と機材を分けて第13旅団を自動化旅団から機甲旅団へと改編し派遣する事となった。

 第7機甲師団に大穴を開ける事となる決定であったが、この点に関しては日本政府も了解し、早期に穴を埋めるべく予算措置をする事となる。

 又、日本に残る部隊は人員を新設部隊へととられる為、警備を主任務とする自動化部隊が大多数となる事になった。

 これら、陸上自衛隊の乾いたぞうきんを絞るが如き改編によって、最終的に、ブリテン島に本拠地を置き、中東までも担当する遣欧総軍が編制される事となる。

 尚、この遣欧総軍とシベリア総軍の司令部の人員を抽出する為、日本本土では5個の方面隊の内、2つを解体する羽目になっている。

 派遣地域の増大、部隊の増大に上級将官級から中堅士官まで自衛隊は深刻な人材不足に陥る事となり、財務省に人員教育などを目的とした予算の大幅増の請求書を送りつける事となる。

 請求書の額を見た財務省は陸上自衛隊に負けず劣らず真っ青になった。

 この様な陸上自衛隊の艱難辛苦に、グアム共和国軍(在日米軍)将官は旧知の陸上自衛隊将官に対し「世界の警察は大変だろ(グッドラック!)」と訳知り顔で親指を立てたと言う。

 不幸中の幸いは、タイムスリップの余波 ―― 経済の混乱がまだ終息しきっておらず、自衛隊への志願倍率がまだまだ高止まりしている事であった。

 

 遣欧総軍

  司令部 ― ブリテン

   第10機甲師団    クウェート駐屯

   第13機械化旅団   イタリア駐屯

   第19機械化旅団   フランス駐屯

   第102海兵機甲旅団 ブリテン駐屯(※)

 

※ブリテンが他の国には旅団を派遣するのにわが国には連隊であるかとヘソを曲げた為、第101海兵旅団から1個普通科大隊を分派させ、旅団へと格上げされる事となった。

 尚、規模の小ささに少々とブリテンからクレームが入ったが、その分としてF-5戦闘機を保有する航空隊を1個派遣する事で対応した。

 クウェートへの第10師団の機甲化と派遣に関しては、欧州総軍の戦略予備と言う側面があり、同時に悪化する中東情勢への重しとしての役割を、ブリテンに要求された事が原因であった。

 この対価として、クウェートでの日本の経済活動に対するブリテンの支援が入る事となった。

 

 

 

 

 

 


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