タイムスリップ令和ジャパン   作:QgkJwfXtqk

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46.1938-5 スペイン内戦-2

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 スペイン内戦は、諸外国からの義勇部隊などの参戦はあっても盛り上がりに欠ける形で推移していた。

 内戦が勃発して1年がたち、積極的に支援を続けているのはドイツだけとなっていた。

 ドイツに並んで義勇軍を派遣していたイタリアは、日本やG4との関係改善と共に国際協調の為という題目で兵を退き、それ以外の国々は新兵器の実験やお付き合い程度の人道的な活動が主であったのだから当然かもしれない。

 当初はソ連も、社会主義を標榜する政府側を支援する動きもあったのだが、シベリア独立戦争の被害が余りにも大きすぎて、外国に支援する余力など無かった。

 そもそも、ソ連にとって数少ない友邦国であるドイツと対立する勢力 ―― 政府側に後から支援を行うと言うのも政治的に難しいものがあったのだ。

 この様に、政府側が掲げるのが社会主義で革命側が国家社会主義を掲げていた事も、G4や列強諸国が支援に積極的でない原因であった。

 社会主義と国家社会主義。

 民主主義と資本主義を標榜する国際社会としては、どちらも応援したいと思いづらい主義主張を掲げているのだから、ある意味で当然の結果であった。

 鉄火場を飯の種とするマスコミこそ大規模にスペインに入って報道合戦を繰り広げていたが、一般の大衆にとっては直近に行われていたシベリア独立戦争に比べれば規模が小さい為、今一つ関心が集まらなかった。

 又、経済的にも影響が小さいと言うのも見逃せない部分であった。

 重要な資源や農産物を産出する訳でも無いスペインは、ブリテンやフランス、イタリアなどの列強との経済的な連携が薄い為、生活に影響を受けなかった欧州諸国民は政府が莫大な税金を使ってまでスペイン内戦に介入するべきだと思えなかったのだ。

 極々一部の政党が、人権や国威などを理由に介入を訴えたが支持を集める事は出来ずにいた。

 無論、戦禍による陰惨な悲劇に対しては憤りの声を上げる者も居るのだが、それが国家的な動きを求める程の世論のうねりに育つ事は無かった。

 大小さまざまな悲劇や喜劇もあったが、おおよそ世界は冷静にスペイン内戦を見ていた。

 

 

――戦局

 政府側も革命側も、相手に決定的な打撃を与えられる程の戦力差を作る事が出来ず、この1年は一進一退といった状況が続いていた。

 この状況が変わったのは、ドイツによる義勇軍への増援が行われてからだった。

 ドイツは、スペインの戦場を中国や南米などに売りつけている兵器の宣伝の場として積極的に活用しだしたのだ。

 開発したばかりのⅢ号戦車D型やⅣ号戦車、或は戦闘機まで持ち込んでアピールを行っていた。

 これらは旧式の機材しか持たぬ政府軍を圧倒していく事となる。

 革命派の勝利は間近である。

 そう世界が思った時、ブリテンが義勇軍を派遣した。

 戦闘機部隊と、支援する陸上戦力だ。

 政府の反対を押し切って有志による参加 ―― その様な形で行われる(※1)。

 ブリテン戦闘機部隊とドイツ戦闘機部隊の戦闘は、ブリテン側有利に進む事になる。

 戦闘機の性能自体はそこまで差が無く数ではドイツが優位であったのだが、運用に於いてシベリア独立戦争の戦訓と日本のシステム化された運用方法を取り入れていたブリテンが圧倒していたのだ。

 航空優勢を握ったブリテンと政府側は、革命派とドイツの進撃を食い止める事に成功する。

 又、陸戦に於いても少数ながら持ち込まれていたバンク機動砲車が活躍する。

 起伏の多い山がちな地形で至近距離での戦闘が多発した為、バンク機動砲車の6lb.砲でⅢ号戦車D型の装甲を撃ち抜く機会が多かったのだ。

 2ヶ月を超える戦闘で、ドイツがスペインに持ち込んでいたⅢ号戦車D型は半数が撃破されてしまう事となる。

 面目躍如たるブリテン戦車部隊に対し、ドイツ戦車部隊はヒトラーから痛烈に怒られる事となる。

 チャイナからは、ドイツから購入したⅢ号戦車C型の性能 ―― ドイツの戦車技術に対する憂慮が伝えられた。

 30t近い中型のⅢ号戦車が、20tを切る小型のバンク機動砲車に負けるのはドイツの戦車技術が劣るからではないか? という事である。

 バンク機動砲車の大戦果は、バンク機動砲車の単純な性能によるものと言うよりも戦術 ―― 隠蔽されたバンク機動砲車の陣地に、ドイツ戦車部隊指揮官がⅢ号戦車D型を頭から突っ込ませた事が原因(※2)であったが、部外者にその様な事が判る筈も無かった。

 ドイツは救急の対応として敵陣地突破用の60t級の重戦車、Ⅳ号戦車の派遣を決定する。

 又、Ⅲ号戦車の改修も決定した。

 全周に傾斜装甲を採用した新しい中戦車、Ⅴ号戦車の開発も進んでは居たが高価格となる事が予想された為、ドイツ陸軍に安価なⅢ号戦車系を捨てると言う選択肢は無かったのだ。

 尚、ヒトラーはVK6505(P)が何故活躍しないのかと激怒しドイツ陸軍を問責したが、ドイツ陸軍機甲科の上層部からVK6505(P)が1度に10kmしか動かない(※3)守勢任務向けの車両の為、ドイツとスペイン革命派は優勢であって常に攻勢であるので活躍の場が無いのだと説明を受けた。

 己が愛した車両が活躍できないのは不満であったが、ドイツが優れているが為と説明されたヒトラーは大いに満足した。

 ドイツはブリテンへの報復に燃え上がる事となる。

 

 

――ブリテン

 やる気に燃えたドイツに対し、ブリテンは同時期にスペインからの撤収を決定していた。

 ブリテン航空基地を巡る戦いにてドイツ戦車部隊もだがスペイン革命派も誘引し、これを撃破出来て居た為、戦場にはスペイン革命派の武器が大量に遺棄されていたからだ。

 即ち、当初目的 ―― ドイツがスペインに売却した、本来はイタリア領東アフリカへ売却予定であった武器の鹵獲に成功したのだから。

 その上でバンク機動砲車の実戦での運用実績を積めて、航空部隊に至っては数的不利をモノともしないシステム化された運用が実戦で試せたのだ。

 しかもドイツの最新の戦車であるⅢ号戦車D型の鹵獲にも成功している。

 これ以上ないと言う成果を上げていた。

 であれば、社会主義者をこれ以上支える義理など無いと言うのが実際であった。

 本国からの命令であるので、と一言、スペイン政府軍に連絡したブリテンはそそくさと撤兵した。

 

 

――フランス

 ブリテン同様にスペインに陸軍を義勇部隊として派遣していたフランスは、持ち込んでいた増加試作型のB38戦車での十分な実戦テストを果たせた事もあり、撤兵を決める。

 形としては、ブリテンに手を回して「民族自決という国際連盟の大義から撤兵すべきである」と言う提案をブリテンに行って貰い、その提案を受けてフランスは撤兵を実行した。

 

 

――終結

 スペイン内戦は、ブリテンとフランスというG4の2大国に逃げられた政府軍の敗北に終わった。

 ドイツは国家社会主義の勝利であると大々的に宣伝した。

 ソ連はスペインの旧政府は、社会主義を標榜しては居たが、人民の為の社会主義では無かったが為に敗北したのであり、これが社会主義の正しさを否定するものでは無いとコメントを発表した。

 

 

 

 

 

(※1)

 ブリテンが参戦する目的は、ドイツの装備であった。

 正確に言えば、ドイツがイタリア領東アフリカへ持ち込もうとして失敗し、それを糊塗する為にスペインに押し付けた武器弾薬である。

 ブリテンはこれを捕獲し、イタリア領東アフリカや中東で暴動から押収した武器と比較検証する事で、ドイツの暴動への関与を把握しようと言うのであった。

 尚、政府が反対すると言う形が取られているのは、ドイツが売却した武器をある程度接収したら、即座に政府命令(・・・・)という形で撤収する為である。

 

 

(※2)

 ドイツ戦車部隊が大損害を受けた戦いの目的が、ブリテン戦闘機部隊の根拠地を叩くと言う作戦であり、ドイツ戦車部隊の指揮官にブリテン戦闘機に手を焼いていた上級司令部から「如何なる犠牲を払っても航空基地へと進軍し、コレを叩くべし」との命令が出ていた事が原因であった。

 ドイツ人らしい生真面目な戦車部隊指揮官は指揮下の戦車全てをすり潰す覚悟で突進し、実際に半数を超える戦車を喪失した。

 その上で、作戦は失敗した。

 戦車の余りの損耗に目を回したドイツ上級司令部が、航空基地の20㎞手前で作戦の中止を命令したのだから。

 スペイン内戦屈指の戦車戦は、ドイツの戦車に対する自負に深い傷を与える事となる。

 とは言え、ブリテンはこの戦いでのドイツの遮二無二な攻勢に警戒し部隊を後退させた為、ドイツは戦略的な目的は達成したとは強弁する事は出来た。

 

 

(※3)

 1度である。

 1時間でも1日でもなく、1回である。

 整備を完了させた後に1回、10km動かすだけで足回りは故障を頻発し、整備を必要とするのだ。

 これでは攻勢任務にとてもではないが使えるものでは無かった。

 開発したスタッフが現地で改修作業なども行っては居たが、技術的な熟成が出来ていない事や、そもそも設計の甘さなどがあり、使える車両へとなる見込みは殆ど無かった。

 この為、VK6505(P)駆逐戦車の運用実績を基に、設計を改めたVK6507(P)の開発がドイツ本国では行われていた。

 

 

 

 

 

 


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