タイムスリップ令和ジャパン   作:QgkJwfXtqk

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49.1938-8 満州事件とその余波

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 チャイナ共産党が誘導して発生したチャイナ軍とアメリカ/フロンティア共和国軍の衝突は、両軍共に戦意と名誉欲に不足の無い指揮官が揃って居た為、最初は両軍ともに連隊規模での火力の応酬であったのが最終的には6個師団が正面からぶつかり合う大会戦へと発展した。

 全面戦争への忌避は、アメリカもチャイナも共有して居た為、両政府は軍事衝突の情報が上がる共に図ったかのように同じ指示 ―― 現地部隊へ戦闘の拡大を抑止する様に指示を出すのだが、その時点で既に師団規模での戦闘に発展していた。

 この為、アメリカは陸上戦力の少なさを補う為、航空部隊を大規模に投入した。

 その中には新鋭の対地攻撃機材である制圧攻撃機、AB-17とAC-47の姿があった。

 対してチャイナは、アメリカを刺激しない様にと演習に参加させていなかった機甲部隊の投入を決意し、C型Ⅲ号戦車を主力とする機甲旅団をドイツ人教導隊と一緒に前線へと放り込むのであった。

 シベリア独立戦争以来の、正規軍同士の戦闘は、世界中の耳目を集める事となる。

 

 

――アメリカ

 戦闘自体はアメリカ/フロンティア共和国合同軍の優位に推移した。

 陸戦に於いてはアメリカ軍期待の重戦車である40t級のM24戦車は当然ながらも、M2戦車を基にシベリア独立戦争の戦訓を反映して開発された30t級主力戦車であるM3戦車もチャイナ軍が装備している戦車群を圧倒し続けた。

 Ⅲ号戦車C型は走攻防といった戦車の基本的な性能的ではM3戦車にそこまで劣るものではなかった。 だが、組織戦闘能力が違い過ぎていた。

 グアム共和国軍(在日米軍)から無線を介した集団戦闘を徹底的に叩き込まれ統制された戦闘が可能となっていたアメリカ軍戦車部隊は、個の戦車の集団でしかなかったチャイナ軍戦車部隊にとって別次元の相手であった。

 又、チャイナ軍の誇りである独自開発したC型Ⅲ号突撃砲も、その初陣は散々なものとなった。

 それは性能によるものが原因では無く運用、元々が待ち伏せての戦闘が主である筈の突撃砲で名前通りの突撃を、アメリカ軍への積極的な戦闘をやってしまった事が原因であった。

 突撃を図ったC型Ⅲ号突撃砲部隊は、アメリカ軍M3戦車部隊よる側面攻撃 ―― 機動力と無線による連携によって効果的な運動を行い側面を取っての攻撃を受け壊乱したのだ。

 歩兵砲兵も、通信機による効果的な連携と恩恵をアメリカ軍に与えていた。

 あるアメリカ軍大隊指揮官は、一連の戦闘を指して“演習の様な実戦”とすら言っていた。

 この様に、陸戦に於いてはアメリカ軍は極めて高い戦果を挙げた。

 問題は航空部隊であった。

 別に制空戦闘で問題が出た訳では無い。

 アメリカ陸軍航空隊の主力であったP-36戦闘機はチャイナ軍航空隊の数的な主力であったドイツ製のAr68に対して優位に戦闘を進めたし、試験的に採用していた日本製のF-6(※1)部隊もすばらしい勢いで撃墜数を稼いでいた。

 問題は対地攻撃、制圧攻撃機であった。

 4個の歩兵師団を投入しているチャイナ軍の数的優位性を打ち消す為、アメリカ軍は航空優勢を握るや即座にAB-17制圧攻撃機とAC-47制圧攻撃機の2機種を投入したが、大損害が発生したのだ。

 特にAC-47制圧攻撃機が尋常では無い被害を出したのだ。

 これは2つの理由があった。

 1つは、AC-47制圧攻撃機が元々は輸送機でありコクピットやエンジンなどに装甲が施されて居なかった事が原因であった。

 そしてもう1つは、AB-17制圧攻撃機でも被害を出す原因となった事であった。

 それは制圧攻撃機として搭載している火器に起因する問題であった。

 正確に言うならば照準である。

 制圧攻撃機は機関砲で地上を制圧する攻撃を行うのだが、機械的な補助も無く直接パイロットの目で照準しようとした場合、制圧攻撃機はかなり低空へと降りねばならぬのだ。

 これによって地上側からの反撃を簡単に受けたのだ。

 そもそも、攻撃すべき敵を発見する為に攻撃が可能な高度よりも更に低空に降りる事も多く、歩兵の小銃による被害すら出ていた。

 アメリカ軍は制圧攻撃機の投入を、投入開始から3日で緊急停止する事となった。

 

 

――チャイナ

 国境線で発生したアメリカ/フロンティア共和国軍とチャイナ軍の衝突は、最終的にチャイナ領内へと国境線が20㎞程入る形で終息した。

 チャイナ政府は、アメリカ政府に対して、今回の武力衝突は帝国主義的な拡張を目的とした許されざる侵略行為であるとして、即時、チャイナ領内からの撤兵を要求した。

 これに対してアメリカ政府は声明を発表する。

 チャイナ領内を一部占拠している事は自衛措置であると主張する。

 武力衝突がチャイナ領内からの攻撃によって起因したモノである為、アメリカ政府とフロンティア共和国政府はフロンティア共和国の国土に被害が及ばぬ様に安全確保する為の保障占領を行っているものであり、チャイナ政府が今回の武力衝突で発生した被害の保障と原状回復の為の賠償、そして責任者の処分を行えば即時、撤兵するとした。

 チャイナは激怒した。

 チャイナ政府の認識では、戦闘を終息させる為に一時的に戦力を後退させたのに、敗北し賠償金を支払えと言われるのは業腹であった。

 チャイナ人としては、一方的に攻め入って来た夷の蛮族が一方的に責任者の処罰 ―― 謝罪を求めて来る事は、嘗てのアヘン戦争を思い起こさせた。

 チャイナは政府から人民から、反アメリカの機運が一気に高まった。

 

 

――国際連盟

 チャイナ/フロンティア共和国の国境で発生した武力衝突の仲裁に国際連盟が乗り出す事となった。

 その際に問題となったのは、現地にて武力衝突の状況を調査し精査報告する調査団の人選であった。

 アメリカは国際連盟理事国である日本やブリテンを推し、チャイナはドイツを推していた。

 当然ながらも、共に相手の推薦国を利害関係国であると非難し合った。

 最終的には両国の関係国からやや中立的な立場にある列強国家と言う事で、イタリアが選ばれる事となる。

 

 

――チャイナ/ドイツ

 自国内に侵略し存在しているアメリカ/フロンティア共和国軍を外交的手段で追い払う事とは別に、物理的な復仇 ―― 軍事的な勝利を狙うチャイナ政府は、ドイツに対して更なる軍備の売却を持ちかける事となる。

 チャイナ政府のAr68戦闘機に代わる最新鋭戦闘機の売却要請に対し、ドイツ政府はBf109戦闘機の売却を提案する。

 但し、全機が完成品としての売却であった。

 対するチャイナ政府は、稼働率の問題とチャイナ国内の工業技術の涵養と言う面からチャイナの工場でのライセンス生産か、最低でも一部部品にチャイナ製を採用したノックダウン生産を求めていた。

 この為、数度の折衝が行われる事となった。

 最終的にドイツ政府は、Bf109戦闘機をチャイナが50機、完成品として購入すれば、Bf109の競合機であったHe112のライセンス生産を認めると言う形で決着する事となる。

 この他、注文してはいるが届いていない重戦車であるⅣ号戦車の早期引き渡しと、更なる売却を求める事となる。

 この大幅な軍拡に必要な原資の為、資源開発と売却に関して以前より要請のあった日本との交渉に向き合う事となる。

 日本が求めていたのはレアアースとタングステン、そして蛍石などであった。

 日本のチャイナ進出に関して、チャイナ人がセンシブルな反応を起こさぬ様に配慮が行われる事となり、日本はフランスを間に仲介させる事となった(※2)。

 

 

――ドイツ

 チャイナの要請に応じる形で、ドイツ軍向けのⅣ号戦車の生産を一旦停止してチャイナへ送る分を揃えたドイツ。

 そんな配慮をする程に、ドイツにとってチャイナの存在は大きくなっていた。

 政府や軍のレベルの話だけでは無く、民間でもドイツとチャイナは接近していた。

 ドイツを苦しめている労働人口の不足に関して、チャイナ政府がチャイナ人のドイツへの労働者としての移住を斡旋しだしたのだ。

 それは、ドイツ内にチャイナタウンが出来上がる程のものであった。

 フロンティア共和国建国からアメリカとの関係が悪化し続けていたチャイナにとって、雄飛する先としてアメリカよりもドイツが人気になっていたのだ。

 そんな大事な顧客であるチャイナへと大量の戦車や野砲を輸送する際、ドイツはアメリカによる妨害を危惧する事となる。

 既にアメリカは、ドイツからチャイナへ武器を大量に売却する事に対して、戦争を煽る行為であるとの非難を繰り返している。

 もしも、チャイナへの武器を満載した船団がアメリカの海軍に拿捕されては大問題である。

 ドイツは装甲艦ドイチェラントを旗艦とする護衛戦隊を編制し、輸送船団を護衛させる事とした。

 傲岸不遜なドイツ人は、自らの行動がアメリカにどんな反応を起こさせるかを理解していなかった。

 

 

 

 

 

(※1)

 アメリカ軍は、試験的に採用したF-6戦闘機に対して“XPF-6”と言う名を与えていた。

 フロンティア共和国での実験的な運用で、XPF-6戦闘機は性能の高さと共に高い稼働率を実現していた。

 だが同時にアメリカ軍は、XPF-6戦闘機の大量導入には否定的であった。

 これは、他のアメリカ製の戦闘機とは別の整備用の機材や備品を必要とする事が原因であった。

 特に消耗品は、日本製の純正品が性能発揮の為に推奨されて居る為、性能を十全に発揮させようとすると全量を日本から輸入する事となる。

 それは安全保障上、如何なものかと言う意見が出たのだ。

 又、パイロットの問題もあった。

 操縦システムが、従来のアメリカ製戦闘機とは全く異なるのだ。

 操縦桿1つとっても、両足の間にある操縦桿で直接舵を動かすアメリカ式に対して、操縦席右側に殆ど動かない感圧式の操縦桿でFBWによるコンピューター制御で舵を動かす日本式は余りにも違い過ぎていた。

 これではパイロットの教育システムを2通り必要としてしまうのだ。

 負担が大きいと言うのがアメリカ陸軍航空隊の意見であった。

 尚、戦闘機を操るパイロットたちからは、XPF-6戦闘機の性能、扱いやすさ、機械的信頼性の高さから大量導入を求める声が上がってはいた。

 

 

(※2)

 日本とチャイナの資源売却に関する接近に、アメリカは日本との外交の場で不満を表明する事となる。

 アメリカ政府の中には、日本とチャイナの接近によってアメリカの極東権益が挟撃される事を警戒する向きがあったのだ。

 アメリカ政府内での動きを機敏に察知した日本政府は、アメリカを宥める為、様々な便宜を図っていく事となる。

 1つにはアメリカ軍が大被害を出した制圧攻撃機の運用に関する研究への協力があった。

 又、アメリカ国内での宣伝にも注力していた。

 アメリカの親しい国家である日本、利益を共有できる国家である日本、オリエンタルで興味深い国家である日本、即ち良き隣人である日本というイメージ戦略である。

 そこにはグアム共和国(在日米軍)情報部の協力もあった。

 民主主義国家であるアメリカは、有権者たちの世論の動向に逆らえない。

 故に日本は、アメリカの一般市民に日本へ敵対的な行動をする事を忌避する感情を植え付ける事に注力していたのだ。

 

 

 

 

 

 


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