タイムスリップ令和ジャパン   作:QgkJwfXtqk

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51.1939-1 戦雲

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 ドイツの野放図な艦隊建造計画が引き起こした海軍休日の崩壊は、同時に、国力を涵養していたブリテンとアメリカにとっては老朽化した主力艦群の更新を行う好機であった。

 その上でG4はドイツとソ連との戦争を極めて可能性の高い未来であると判断し、4ヵ国による共同での戦争遂行計画が立案される事となった。

 対ドイツ戦争案(ケース・ブラック)対ソ連戦争案(ケース・レッド)対チャイナ戦争案(ケース・イエロー)と言う、現時点でG4と対立している3ヵ国との総合的な戦争計画が作られて行く事になる。

 戦争計画は、最終的に新秩序(デイ・アフター)と名付けられる。

 但し、この戦争計画は本質的には防衛的なものとなっていた。

 是は、日本との交流以降、平和である事のメリットを享受し経済的繁栄をしてきた4ヵ国には積極的に戦争を仕掛ける理由が乏しかったからだ。

 資源地帯と市場とのアクセスが平穏に維持されていれば金が常に生み出され続ける形が出来上がっているのだから。

 だからこそ、統合戦争計画新秩序(デイ・アフター)の内容は苛烈なものとなっていた。

 金稼ぎの邪魔をする相手に手加減をする必要など一切認める必要が無い為である。

 

 

――日本

 日本に要求されているのは、シベリア共和国方面での対ソ連戦備の維持と西太平洋-インド洋間での海洋交易路の保全であった。

 この為、日本はシベリア共和国への軍需物資の支援と共にシベリア共和国軍の錬成に着手する。

 有事に際しては50個師団100万人体制が構築出来るだけの戦争準備だ。

 ソ連との戦争が行われなかった場合、欧州への戦力派遣も前提とした条約を日本とシベリア共和国は締結する事となる。

 シベリア共和国はその対価として、日本が日本連邦の6ヵ国に与えている優先的立場と同等のモノを得られる立場を獲得した。

 日本連邦の準加盟国となったのだ。

 シベリアのロシア人は、形式的とは言え天皇を戴く事に内心では複雑なものを抱えてはいたのだが、ソ連の圧力に対抗する為には日本の助力が必要であり、それを担保する為に同盟以上の確約を日本から引き出す対価として受け入れたのだ。

 海の戦備に関しては、主要な脅威は潜水艦である為、15000t級の対潜指揮艦(※1)と5000t級汎用護衛艦と3000t級の対潜哨戒艦による海上護衛ユニットを編制すると言う腹積もりであった。

 又、戦争準備としての人員の確保準備にも着手する事となった。

 これに合わせて海上自衛隊は、人手を喰う旧世代艦の更新を推し進める事となった。

 特に、それまでは御座なりにされていたあめ・なみ型汎用DDの更新は急務となった。

 省力化ネットワーク戦対応の5000t級汎用艦(ワークホース)での更新である。

 海上自衛隊は、この状況に合わせる形で大規模な部隊の再編成を行う事となる。

 最終的には16個の任務部隊(ユニット)を編制する事が目標とされた。

 2個の航空ユニット。

 12個の海上護衛ユニット。

 2個の両用戦ユニット。

 航空ユニットに関しては、想定される脅威がマリアナ海戦(マリアナ・キャンペーン)に於ける米海軍航空隊級の攻撃として編制される事とされた。

 1波300機の攻撃を捌けるだけの防空力が求められたのだ(※2)。

 技術的な格差も勘案して100機の防空機(※3)を用意出来るだけの空母と防空と対潜の護衛艦、そして潜水艦が必要とされた。

 この結果1個航空ユニットは、しょうかく型航空護衛艦1隻に2隻の30000t級航空護衛艦、防空護衛艦4隻、汎用護衛艦6隻、潜水艦3隻で構成するものとされた。

 これだけでも海上自衛隊の人員を大きく喰う事となる為、非常措置として海上自衛隊は人手を日本人のみならず日本連邦人に開く事となる。

 海上護衛ユニットは上述の様に3種類の艦で構成される。

 旗艦であり、対潜戦闘システムの中枢を担う対潜指揮艦1隻と独自に戦闘可能な2隻の汎用護衛艦、対潜指揮艦とのネットワーク下でその手足として走り回る4隻の対潜哨戒艦だ。

 両用戦ユニットは、各完全機械化された1個師団を輸送できる部隊として大型輸送艦を手配する事とされた。

 この結果、今後日本は30000t級航空護衛艦4隻、15000t級対潜指揮艦12隻、5000t級汎用護衛艦36隻、3000t級対潜哨戒艦48隻、都合100隻を整備する計画となった。

 これに戦時消耗を前提とした予備艦の建造が入るのだ。

 試算した防衛省も精査した財務省も、政治によって決断された膨大な建造計画を呆然と受け入れていた。

 この他、両用 ―― 着上陸作戦に備えた10000t級対地支援護衛艦6隻の建造も検討されていた。

 本来、この手の任務にはやまと型護衛艦が充てられる予定とされていたが、その防空力が評価され航空ユニットへの編入も検討されている為、その代替として予定されていた。

 無論、あめ/なみ型汎用護衛艦の代艦建造の優先順位は低い為、一度に建造される訳では無い。

 それでも平時であれば野放図と言って良い一大建艦計画であった。

 日本はこれを、1939年度中期防としてまとめ上げる事となる。

 この他にも水上戦力を世界中に展開させる為の各種支援艦の整備も推し進める事となり、この事はタイムスリップ後、低調であった日本造船業界に大きな活況を与える事となる。

 

 

――アメリカ

 チャイナとの戦力の衝突が続いている為、陸軍の装備と編制に関しては戦時を見越した形と成っているので、今回の戦力整備に於いて重視されたのは海軍であった。

 東太平洋 ―― 日本との海洋交易路の保全と、北大西洋の掌握である。

 とは言え、どちらも困難と言う訳でも無かった。

 太平洋方面で言えば先ず敵が居ない(・・・・・)ので、万が一のドイツ潜水艦部隊への備えと言う程度であった。

 大西洋方面も、ドイツとの正面に立つのはブリテンであり、此方も対潜が主体ではあった。

 故に、中心となるのは対潜部隊であるが、アメリカ海軍とアメリカ政府は、この状況で戦艦を含めた大型艦の建造を行わないと言う選択をする積りは無かった。

 強大な海軍はG4の中の勢力争いに於いて優位に立ちうる道具であると認識していたからだ。

 とは言え無思慮に建造する訳でも無く12隻の大型正規空母と8隻の戦艦に抑える(・・・)予定であった。

 その分、ドイツの装甲艦に対抗する為の大型巡洋艦や護衛空母に関しては恐ろしい勢いでの建造が決定した。

 

 

――ブリテン

 戦争準備として、欧州の大地でドイツ人を屈服させる歩兵部隊、その数的な主力となるインド人の師団編制に着手する事となる。

 又、海洋戦力に関して言えば、ブリテンの国力の象徴として先ず12隻の高速戦艦の建造を決定した。

 その上で戦後を見据えての航空戦力の拡張を重視する事となる。

 これは空母の建造であり、同時に対艦攻撃機の開発であった。

 ドイツが建造している大型艦を殴殺する為の航空機を、日本と共同で開発する事を決定したのだ。

 対潜に於いては、日本からの対潜戦術及びソナー類の導入が大きかった。

 それまでは独自技術の育成を重視していたブリテンであったが、戦争が近づけはそのような事は言っている余裕は無くなった。

 

 

――フランス

 政治的混乱から大規模な軍拡計画を策定は出来ずにいた。

 とは言え、海洋戦力はブリテンとアメリカが居り、この上で有事に際してイタリアもG4側に立つ様に秘匿交渉を行っており色よい返事を貰えている現状で、特に大きな問題となる事は無かった。

 陸上戦力も営々と育ててきており、戦時体制への移行を行いさえすれば問題は無かった。

 問題は国内の混乱である。

 宣戦布告を受けるまでは、親ソ連/ドイツである平和派による政治的な妨害が続くであろう事が予想されていた。

 その意味においてフランスの政権与党にとって平和派は最早、売国奴と同義であったが簡単に弾圧してしまう訳にはいかなかった。

 現時点ではデモなどの平和的な抗議や主張で収まっているが、警察や軍を用いて鎮圧を始めれば必ずや武力闘争を行うであろう。

 又、平和派以外の野党勢力も、平和派が弾圧されれば次は我もかと判断し、平和派に加担するであろう事が推測された。

 この状況でフランス政府が出来る事は少なかった。

 それでも尚、出来る事を探していた。

 

 

――ドイツ

 E艦隊計画を発端としたG4による戦争準備に、ドイツは恐怖した。

 ドイツが何とか整備しようとしているZ艦隊計画の大型艦群よりもはるかに巨大な艦隊群が生み出されようとしている事を恐れた。

 故にドイツは、対G4戦争計画を策定する事となる。

 フランスとイタリアを下し、欧州を統一する事で大国家を生み出し、その国力を背景にブリテンと和平を行うという腹積もりであった。

 如何に強大な海軍があろうとも、内陸にある帝都ベルリンまで攻め寄せる事は不可能であろうというのがその判断の背景にあった。

 

 

――ソ連

 己の関与しない所で勃発した戦雲に、ソ連は敏感に反応する事となる。

 フィンランドとの国境変更交渉である。

 ソ連にとって重要なレニングラードが余りにも国境線に近い為、その安全性を確保する為にフィンランドに対して領土の割譲要求を出す事となった。

 割譲要求と言う極めて高圧的な態度にソ連が出たのは、シベリア独立の影響であった。

 シベリアでの敗北により、ソ連指導者スターリンの権威が低下した為、それを少しでも補う為の外交的な勝利が必要とされたのだ。

 しかしながらフィンランド側は、その要求を拒否する。

 この時点でポーランドやシベリアとの対ソ連携を行っていたフィンランドは、簡単に折れる事は無かった。

 小国に逆らわれると言う、面子を潰されたソ連はフィンランドとの戦争を欲する様になる。

 

 

 

 

 

(※1)

 15000t級対潜指揮艦は、ヘリ及びドローンの運用を主目的とした空母型護衛艦であった。

 徹底的な自動化を推し進めた15000t級対潜指揮艦は、極めて少数での運用が前提となっていた。

 

 

(※2)

 この想定を聞いたグアム共和国軍(在日米軍)は、腹を抱えて笑った。

 アメリカとブリテンは、何と戦う積りかと戦慄した。

 日本としては、万が一にもドイツが空母機動部隊を作り上げた場合への備えであったのだが、ある意味で過剰であった。

 

 

(※3)

 艦載防空機は、F-5戦闘機をベースにした艦載型(F-5S)が投入される予定であった。

 新開発の航空機用ミサイル ―― ネットワーク化にも一部対応した近距離ミサイルを最低でも8発搭載出来るF-5S戦闘機は、ネットワーク下で効果的な迎撃に成功すれば倍以上の敵機と交戦し得ると言うのが海上自衛隊上層部の判断であった。

 

 

 

 

 

 




2019.09.11 修正実施

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