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対して、
そしてフィンランドの戦意は天を突かんばかりとなった。
武器弾薬、義勇兵。
それらがソ連の妨害を越えて届いたと言う事は、世界はフィンランドを見捨てて居ないと言う証拠であったからだ。
だが、フィンランド政府はソ連との交渉に於いて常に慎重であった。
小国と言って良いフィンランドにとって、どの様な形であれ戦争の負担は大きいからだ。
フィンランドとソ連の外交交渉は続いていく。
――ソ連
潜水艦部隊の完敗は、スターリンの戦意に大きな傷をつける事となった。
ソ連上層部に、この状況下に於いてフィンランドとの戦争を行う事へ深刻な危機感を持たせる事にも繋がった。
とは言えソ連としても拳を振り上げた以上は何の成果も無く下ろしてしまっては、徒に己の権威を傷付ける結果にしかならない。
この為、落としどころを得る為の果実 ―― 勝利が望まれた。
レニングラードの安全を確保する為の国境線の押し上げでは無く、政治的な敗北を印象付けさせない為の紛争と勝利とを狙った作戦を、ソ連軍上層部は決断する事となる。
ソ連国内の体面を維持する為の政治的勝利。
国内向けの宣伝は少しづつ変更されていった。
――フィンランド
ソ連の情報収集に手を抜いていないフィンランド政府は、ソ連側の意図を誤る事無く理解していた。
その上で、被害を出来るだけ抑える為の
国境線での紛争に勝利し、だがその後の外交交渉にて紛争再発の抑止策として、レニングラード湾口の島嶼をフィンランドがソ連に割譲する事を提案するという腹積もりであった。
国境線の変更よりも被害の少ないモノを
尚、併せてこの様な国境線の変更に関わる要求を再度出せない様な条約の締結も狙う事とした。
そしてそれ故にフィンランド政府は軍に対して、国境線で戦闘が発生した場合、絶対に退くなと厳命する事となった。
又、TF-391を派遣している日本政府に対して、ソ連との紛争が発生した場合に即座に武力を伴った紛争を停止させる為の行動を行って欲しい旨を、要望する事となる。
日本政府は、フィンランドの目的を了解し、紛争勃発時の素早い行動を約束する事となる。
――カレリア地峡紛争
ソ連側国境線沿いに展開していた歩兵連隊に対しフィンランド側より発砲を確認、その制圧の為にソ連軍歩兵部隊は国境線を越えた。
カレリア地峡紛争の勃発である。
フィンランド側もソ連側も大規模な戦闘、戦争に発展する事を自制する姿勢であった為、この戦いに投入された戦力は両軍併せても1万人にも届かない規模であった。
だが同時に、投入された部隊は共に最精鋭であり、戦いは短くも苛烈であった。
ソ連は新鋭のIS重戦車を前衛に前進し、フィンランドは歩兵部隊が日本製の対戦車装備で迎撃した。
使い捨ての対戦車ロケットや対戦車地雷等は絶大な効果を発揮したが、充分な戦車などを有しないフィンランド部隊は、ソ連部隊の突進に抵抗しきれずに国境線を押し込まれる事となる。
この為、フィンランド軍上層部は自陣営にあって近代戦に対応しうる戦車 ―― 38式戦車を保有するシベリア共和国軍戦車部隊に出動を要請した。
激突するIS重戦車と38式戦車。
シベリア共和国軍が持ち込んでいた38式戦車は、38式戦車B型という90㎜砲を搭載した輸出モデルであり、その砲口径ではIS重戦車の122㎜砲に比べて劣ってはいたが威力ではそん色なく、発砲速度で優越していた。
又、装甲面では日本製の高品位装甲板が使用されている38式戦車はIS戦車に完全に凌駕していた。
だが個々の性能差を補う以上の数をソ連側は投入していた。
その上、シベリア共和国軍義勇部隊が持ち込んでいた38式戦車は1個中隊分のみ。
それ以外の部隊が装備していたアメリカ製のM2戦車ではIS重戦車に対抗できぬ為、シベリア共和国軍義勇部隊は苦戦を強いられる事となる。
又、ソ連が補助戦力として期待し投入していたT-34戦車も、その軽快さを利用した機動を行ってフィンランド軍を苦しめる事になる。
良い所もなく負けたシベリア独立戦争であったが、そうであるが故にソ連軍に数多の戦訓を与え、その進歩を促していたのだ。
この為、戦車の少ないフィンランドは対戦車装備を持った歩兵部隊による肉薄戦闘を敢行し対抗した。
イギリスの観戦武官は、その様を“寸土を血で染め合う様な戦闘”と報告書にしたためていた。
空中での戦いは、お互いが本格的な戦闘へと陥らぬ様にと細心の注意を払って戦力を投入していた。
この為、ソ連側の数的優位性が失われ、フィンランドは日本製のF-7戦闘機とF-6戦闘機によって航空優勢の確保に成功していた。
とは言え、航空優勢を掌握しても対地支援攻撃を行える程の余裕はない為、偵察を行うのが精一杯であった(※1)。
――日本
事前の取り決め通り、日本は行動を開始する。
G4のみならず国際連盟参加各国にも根回しまで行っていたお蔭で、カレリア地峡での戦闘の勃発から3日で国際連盟安全保障理事会の戦闘の停止命令を引き出すや、素早い戦力の展開を行った。
TF-391からむさしを旗艦とする戦力を抽出し
併せてずいかくが搭載するF-35B戦闘機部隊を紛争地帯上空へと展開させた。
目的はフィンランドとソ連の戦力を引き離す事である。
無論、フィンランド側は停戦命令を受け入れ、速やかな戦力の後退に応じる事を宣言した。
ソ連側も紛争の拡大は想定していなかった為、戦闘の停止を受け入れる旨、宣言した。
だが、ソ連軍前衛部隊の一部将校が功を焦り、戦闘停止命令の発効前にフィンランド側が後退した地帯への進出を図った。
この行為を止める為、前線のTF-391.4はむさしの主砲による警告射撃を実施した。
だが、警告の為の射撃であった為、砲弾は警告先の部隊より離れた場所に着弾したのでソ連軍は警告の意図を把握せず、前進した。
ソ連政府は前線部隊の暴走であると日本、フィンランドに対して遺憾の意を表明するも、その前進がソ連にとって利益であると判断し停止命令を出す事は無かった。
それ程に大きく出る積りも無い為、日本もフィンランドも受け入れるだろうと言う判断であった。
日本を甘く見ていた。
だが、日本はこの行為を座視せず、国際連盟安全保障理事会が出した停戦命令を違反する部隊への実力行使を行うと宣言した。
部隊の暴走とは、即ち、ソ連軍司令部の統制外と言う事であり、であれば相手はソ連軍でなく、野盗の類である。
よって日本政府は野盗の殲滅を実行する、と。
国際連盟と安全保障理事会の、平和を守護する存在としての権威を守る為に出された日本の宣言であった。
その苛烈と言って良い宣言に、ソ連は慌てて突出中の部隊に停止命令を出すも少しだけ遅かった。
宣言と同時にむさしは行動を開始していたのだから。
象徴的な意味でむさし単独で行われた艦砲射撃。
完全な自動化と水冷システムを組み込まれたブリテン製の
雨霰と降り注いだ13.5in.砲弾は、上昇意欲の強いソ連軍将校とその部隊を消滅させた。
むさしの艦砲射撃が、カレリア地峡紛争の終焉を告げる鐘の音となった。
(※1)
航空優勢の確保と自由な偵察が可能となった事が、ソ連部隊の情報をフィンランド側が充分に得る事に繋がり、戦力的に劣勢な戦車部隊の効果的な運用に繋がっていた。
2019/11/15 題名変更