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G4体制が確立して以降の
G4の連絡部会でしきりにドイツに憤慨するフランスに対して、そこまで嫌うならばさっさと攻め滅ぼせば良いのにと思う程度であった。
東アジア経営と日本との交易によって、その圧倒的な生産力を消費する事の出来ているアメリカは、経済的な活況が著しい為に
又、景気の良さであればブリテンやフランスも同様であり、両国との交易も順調である為、猶更にドイツと関わる必要性が乏しかったのだ。
その風向きが変わったのは、ドイツとチャイナの接近、そしてチャイナとフロンティア共和国の度重なる紛争であった。
そして、アメリカの裏庭であるアメリカ大陸へドイツが手を伸ばした事が決定打となった。
アメリカにとってドイツは脅威では無い。
だが不快であった。
アメリカの有権者、或は企業を経営する富裕層は、金儲けの邪魔をする国家への制裁を声高に主張する事と成る。
民主主義国家アメリカは、国民の声を背に動き出す。
――対ベネズエラ
手始めとしてアメリカはベネズエラに対し、ドイツとの関係を再考する様に促した。
だがベネズエラ政府はこれを一顧だにせず拒否する。
古くからベネズエラを含む中南米、南米諸国を見下してきたアメリカの態度への不満が爆発した格好であった。
それどころか、アメリカへの意趣返しをするかの様に、ベネズエラ政府は新たにドイツとの交渉を始める事を公布する。
ドイツ製兵器の更なる導入と、
その上で、ドイツとコロンビアの関係を仲立ちしようとしていた。
この動きにアメリカは激怒する。
自国の裏庭に手を出したドイツに懲罰を与え、反アメリカの機運を醸し出したベネズエラも反省させねばならぬと決断した。
その為の手段としてアメリカは、ベネズエラの反軍事政権派に対して加勢し、軍事クーデターによる政権転覆を狙う事となる。
この時点でアメリカ軍内部には、グアム共和国(在日米軍)からの提案によって非公然任務向けの
アメリカ政府は秘匿特殊作戦部隊に対し、ベネズエラの反軍事政権派の実行部隊の訓練を命じる事となる。
そして作戦の際には、帯同し成功の一助となる様にも命じていた。
――対チャイナ/ドイツ
一度、ドイツは鬱陶しいと思ったアメリカは、チャイナ国内で活動する事にも敵意を覚えた。
この為、アメリカは比較的チャイナで自由に動く事の出来るフランス人を情報収集に使う事となる。
アメリカと同じ言語を使うブリテンは、警戒される。
チャイナに似ているコリアの傭兵達は、軍務は兎も角として情報収集には不安が残る。
日本はチャイナに積極的に関わろうとは絶対にしない。
現地チャイナ人は、信用できない。
故に、第3者的なポジションを維持しているフランスが協力相手として選ばれたのだ。
その対価として、アメリカはフランスに対する再度の
対してフランスは要望された情報収集工作に、
1つは、輸送力の問題で時間の掛かっているアフリカ駐留フランス軍のフランス領インドシナへの移送協力。
もう1つは、フランス領インドシナに展開する部隊の休息先としてアメリカのフィリピン自治領の提供を要請した。
アメリカは、その程度であればと快諾した。
日本と並び世界第1級の海洋輸送力を誇るアメリカ海運業界にとって、フランス軍の移送程度は余裕であったし、アメリカの自治領であるフィリピンに関しても
これによってフランスは、チャイナにてアメリカの手先として動き出す。
――国際連盟
跳梁するドイツを包囲し締め上げる為の手段として、アメリカは国際連盟への正式加盟を決定する。
以前からオブザーバーとして参加はしていたが、正式加盟と共に常任理事国へ選出される事となる。
アメリカの常任理事国入りに合わせて、理事会が改編される事と成る。
拒否権を持った常任理事国4ヵ国と、イタリア、ドイツ、ブラジル、ソ連という地域強国から選出される非常任理事国から成る8ヵ国体制だ。
尚、チャイナがアジアの代表であるからと常任理事国入りを声高に主張するも
又、ドイツがスペインの選出を要望するが、此方も国力が理事国に相応しからざると一蹴されている。
国際連盟は、日本などのG4を軸とした国家間の平和と利害調整を行う場として機能しており、そこに国家間は平等であるなどと言う理想主義の入り込む余地など存在しなかった。
この点を指して、チャイナは
正式に常任理事国となったアメリカは、即、理事会の開催を要求する。
理事会でアメリカは、ドイツの不見識な国際的活動によって戦乱の芽が出ていると批判し、ドイツの国際社会での活動を監視し、必要があれば制限しなければならないと主張した。
特に批判したのは、無差別に行われている武器の売却であった。
当然ながらもブリテンとフランスは賛成に回る。
これにドイツは大きく慌てる事と成る。
アメリカの提案に
ソ連が好意的中立を保っているだけの苦境となった。
とは言え、武器売却はドイツの貴重な外貨収入源であった為、素直には頷けない。
国家の独立性その他の詭弁を用いてドイツはアメリカの主張に対峙していく事となる。
(※1)
秘匿部隊である事から命名されておらず、その移動手段として用意された小型空母の名前からラングレー部隊と渾名されている。
尚、空母が供されている理由は、本秘匿部隊が移動用に、在日米軍の技術支援を受けて開発した実用的なヘリコプターを装備している事が理由だった。
日本以外では初となるヘリコプター展開部隊であるのだ。
武装型と輸送型の併せて11機が配備されていた。
非公然任務向けとして、海外での運用が予定されていると言うのも大きい。
後の時代には、「急行せよ! 特殊作戦部隊ラングレー」としてTVドラマ化され人気を博す事となる。
(※2)
フィリピンの独立運動は既に終息段階にあった。
とは言え、アメリカへの反発は根強い為、ある程度の独自権限を持った自治州となっている。
フィリピン経済は、作る農作物をほぼ全て買い取っていく日本と言う