タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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091 チャイナ動乱-10

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 チャイナ政府軍騎兵部隊による()()()()()()()()()は、アメリカに心理的衝撃を与えると共に、その戦争計画を大きく狂わせる事となった。

 アメリカにとってチャイナとの戦争は、攻勢で終始するものと考えられていたのだから。

 それが、開戦劈頭に20,000人規模、1個師団級の兵力による南モンゴル独立派 ―― 南モンゴル人への襲撃が行われたのだ。

 事前の戦争計画(イエロー・プラン)*1は完膚なきまでに破壊された。

 この時点でアメリカが即座に投入出来るのは、アメリカ第11機械化師団とフロンティア共和国の3個機械化師団だけであった。

 フロンティア共和国第4機甲師団は、戦車などの重装備が戦争前の大規模整備を行っている最中であり、とてもではないが動かせる状態に無かった。

 又、朝鮮(コリア)共和国軍やバルデス国軍の部隊は、装備への慣熟が十分では無いとの判断が下されていた。

 4個の機械化師団、80,000人を超える兵力は、軽装備の騎兵部隊でしかないチャイナ政府軍に対して圧倒的に優位ではあった。

 正面から戦うのであれば。

 チャイナ政府軍騎兵部隊が行っているのは、軽快を第1とした小隊規模以下の(グループ)に分かれての()()()()である。

 そこに戦闘を行おうと言う意思は無かった。

 それがチャイナ政府軍参謀本部の命令であった。

 南モンゴル独立軍(軍閥)が守る村や町は徹底的に避け、或は南モンゴル独立軍の騎馬部隊が捜索し攻撃を行おうとしても、逃げ切る事が困難な場合以外は応戦する事が無い程に、その命令は徹底されていた。

 チャイナ政府軍騎兵部隊が行っているのはゲリラ戦ですら無かったのだ。

 これでは()()()()()()になる筈が無かった。

 その上で問題となるのは、守るべき領域の広さであった。

 南モンゴル独立派が公式に()()と宣言している領域は1,000,000k㎡を超えていた。

 日本列島(本土)の倍以上の広大な大地であり、南モンゴル独立軍の小規模な(1000名にも満たない)騎馬部隊でどうにか出来る筈も無かった。

 南モンゴル独立派からの悲鳴のような支援要請に、アメリカ軍は即座に投入出来る部隊の全てを投入する事を決定した。

 だがそれは僅かに5個師団。

 グアム特別自治州軍(在日米軍)から駐フロンティア共和国アメリカ軍参謀本部に派遣されて来ていた在る米国系日本人参謀は、広げられた地図を前に「広大な南モンゴル(メニー メニー バスト)余りにも少ない兵力(メニー メニー フュー)」と呟き、この戦争の先行きに嘆息したのだった。

 

 

――南モンゴル攻防戦(D-Day+0~14)

 出来る限り急いで南モンゴルの大地へと進出した南モンゴル独立義勇軍(アメリカ軍)であったが、2週間を経過してもまだ掌握 ―― 安全を確保出来ているのは南モンゴルの1/3にも満たない領域であった。

 否、1/3()安全を確保出来ていたと言うのが実状であった。

 機械化師団の主要車両である半装軌車(ハーフトラック)の機械的信頼性や燃料の問題*2もあったが、何よりアメリカ側が掌握した南モンゴルの領域へチャイナ政府軍騎兵部隊が入り込まぬ様に、領域の外周に広く部隊を展開せざるを得なかったと言うのが大きかった。

 端的に言えば人手(ユニット)不足であった。

 この為、アメリカは開戦から一週間目には装備習熟の途上であった朝鮮(コリア)共和国軍とバルデス国軍の投入を決断していた。

 それぞれの国家から控え目ながらも否定的反応が出ていたが、アメリカはそれを押しきった。

 政治的な決断と言うよりも、それ程にチャイナ政府軍騎兵部隊による惨禍 ―― 先行したマスコミによって報道された状況が酷かったのだ。

 現場に居た両国将兵は、新聞などでそれらを知っていた為、早期参戦に対して積極的であった。

 「蛮行を許すな(ストップ・ソロー)!」を合言葉に、参戦命令を受けて速やかな準備を行って前線へと向かった。

 この都合3個師団2個旅団に側面を守らせつつ、アメリカは主力となる各師団を前進させた。*3

 

 陸上部隊の前進に併せて戦闘機や爆撃機、連絡機に輸送機までも投入した空中からのチャイナ政府軍騎兵部隊捜索に乗り出す事となる。

 だが、その状況 ―― 騎兵部隊が狩り出されるのを座視するチャイナ政府軍では無かった。

 即座に投入できる戦闘機を前線に張り付けて対応するのだった。

 熾烈な航空戦が勃発する事となる。

 とは言えアメリカ側は状況を楽観視していた。

 フロンティア共和国に配備されていた戦闘機の数的な主力は、制空戦闘機として優秀なF-1(セイバー)戦闘機であったのだ。

 旧式のレシプロ戦闘機しか保有していないチャイナの航空戦力など鎧袖一触である筈()()()のだ。

 だが現実は非情であった。

 戦闘の開始からアメリカ空軍機の被害は続出し続けていた。

 別に、チャイナの戦闘機がF-1戦闘機と戦える訳では無い。

 ドイツ人教官に鍛えられたチャイナ人パイロットが殊更に優秀であった訳でも無い。

 1対1だろうが2対1だろうが、余裕を持ってアメリカのパイロット達は勝利する事が出来ていた。*4

 だが、ここでも距離の問題 ―― チャイナの大地の広大さがアメリカの足を引っ張る事となる。

 食料と共に燃料も枯渇した南モンゴルでは、前線に航空基地を設営する事が不可能であったのだ。

 否、基地の設営自体は出来ていた。

 問題は航空基地が航空基地たる為に必要な燃料であった。

 後方からトラックなどで燃料を輸送しようにも、その輸送力は陸上戦力の補給と南モンゴルへの人道支援とで分け合う事となっている為、とてもではないが燃料消費の大きいジェット戦闘機を運用するのに必要とする量を備蓄出来ずにいたのだ。*5

 この為、結果として足が長いが鈍足な爆撃機や輸送機、連絡機などが捜索の為に単独で前線を飛ぶ事態が多発する事となってしまい、チャイナ戦闘機に襲われ撃墜される例が多発したのだ。

 

 特に爆撃機は大きい被害を受け続けており、爆撃機部隊指揮官は空中からの哨戒作戦の一時中断を上申する程であった。*6

 だが()()()()()()、この時点で空中からの捜索任務が南モンゴル独立派を見捨てないという姿勢の象徴となっていた為、作戦中断の上申は却下される事となった。

 とは言え、何の対応も取らないと言う訳では無い。

 単機での任務が危険であるのだから、捜索効率が落ちても戦闘編隊(コンバット・ボックス)が組める複数機による捜索へと切り替えられる事となった。

 アメリカ空軍は塗炭の苦しみを味わいながら、戦いを続ける事と成る。

 

 

――渤海攻防戦(D-Day0~+10)

 チャイナの思惑通りに事態が推移し、アメリカの陸空は悪戦苦闘にまみれていたが、事、海に関してはそうはいかなかった。

 チャイナ海軍は、機雷の散布は勿論、魚雷艇による襲撃も出来ず、ただ軍港で逼塞するだけであった。

 理由の1つは、開戦前からアメリカが駆逐艦や哨戒艇を渤海から黄海に至る公海に展開させ、チャイナによる攻撃的機雷戦を抑止していたと言うのが大きい。

 そしてもう1つは、日本の偵察衛星による情報であった。

 チャイナ軍港の状況と動向、その詳細を把握したアメリカは、開戦して以降は燃料の補給や人員の移動などがあれば即座に攻撃機を飛ばす等の妨害活動を継続していた。*7

 ある意味で、アメリカはチャイナ海軍に対しておざなりな対応をしているとも言えたが、これには理由があった。

 ちょうど開戦の日、アメリカの東シナ海分艦隊の主力は、フィリピン近海(南シナ海)にてブリテンの東洋艦隊と合同訓練を行っていた為だ。

 開戦の報告を受けた東シナ海分艦隊指揮官は、急遽、演習を打ち切りフィリピンで補給と休息を取った。

 参謀の中には渤海へと急行する事を主張する者も居たが、指揮官は主張を退けた。

 燃料と食糧の不足、そして兵の疲弊を重視したのだ。

 又、渤海に残っている東シナ海分艦隊の戦力でもチャイナ海軍の()()()()()を抑止する事が可能だと言う冷静な計算もあった。

 果たせるかな、東シナ海分艦隊主力が戻るまで渤海のチャイナ海軍は動けずにいた(フォウニー・ウォー)

 そして開戦から8日目、帰還した東シナ海分艦隊は全力でチャイナ海軍に襲い掛かった。

 空母2隻戦艦3隻を主力とする東シナ海分艦隊の無慈悲な攻撃は、只の1日で渤海のチャイナ海軍を殴殺した。

 チャイナが営々と育て上げた魚雷艇部隊は、大きな戦果を上げる事もなく消滅した。

 当然だろう。

 2隻の空母 ―― エンタープライズとヨークタウンによる100機を超える航空攻撃なのだ。

 東シナ海分艦隊の接近に気付かぬまま軍港に逼塞していた30隻程度の魚雷艇に出来る事などある筈も無かった。

 ただ偶然にも哨戒に出ていた魚雷艇2隻は無事であったが、反撃をしようにも相手は空母の航空隊だ。

 必殺の魚雷を抱えて突進しようにも、相手がどこに居るかすらわからないというのが現実であった。

 この為、魚雷艇は一目散に逃げだした。

 その判断の正しさは、翌日に証明される。

 東シナ海分艦隊の砲戦部隊が、チャイナの軍港へと殴り込んで来たからだ。

 コロラドを旗艦とした戦艦巡洋艦併せて8隻の砲戦部隊が振りまいた16in.砲弾と8in.砲弾は、軍港を石器時代の荒野へと強制的に変容(タイムスリップ)させていた。

 

 

 

 

 

 

*1

 開戦劈頭で第1軍はチャイナ北部の主要都市である北京市を強襲し包囲する。

 攻略は行わずに降伏を呼びかける事でチャイナ政府軍主力を誘出し、決戦を強要すると言うものであった。

 決戦によってチャイナは軍の主力を殲滅し、講和につなげ、南モンゴルを独立させるとされていた。

 兵員の差は圧倒的であったが、爆撃機や攻撃機を大量に揃えた空軍と海軍の航空戦力によって差は埋められる計算であった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

アメリカ/対チャイナ戦争計画

>司令部:東ユーラシア総軍 ―― 東ユーラシア総軍参謀団

第1軍団

 第11機械化師団/アメリカ

 第1機械化師団/フロンティア共和国

 第2機械化師団/フロンティア共和国

 第3機械化師団/フロンティア共和国

 第4機甲師団/フロンティア共和国

 

第2軍団

 第101義勇師団/朝鮮(コリア)共和国

 第102義勇師団/朝鮮(コリア)共和国

 第103義勇師団/朝鮮(コリア)共和国

 第3自動化旅団/バルデス国

 第7自動化旅団/バルデス国

 

*2

 アメリカは彼我の国力差から、開戦は己がイニシアティブを握るものだと認識しており、その認識に立って戦争に必要な物資の備蓄計画を立てていた。

 即ち、民需へ過度な負担を与えない速度での備蓄である。

 この方針の為、開戦時点でフロンティア共和国に集められていた燃料は、5個もの機械化師団が縦横に走り回れる程では無かった。

 この為、民需用の燃料の徴発と共に、緊急避難的措置として日本からの燃料輸入を行っていた。

 これで一息つく予定であったが、簡単には予定通りとなる事は無かった。

 今度は焼き討ちを受けた南モンゴルの人々向けの救援物資輸送にトラックを大規模に使用する事となり、此方でも大量の燃料を消費する羽目に陥ったからである。

 燃料は、高度に自動車化されたアメリカ軍の泣き所であった。

 当然、アメリカとしても自軍の弱点は自覚しており、シベリア独立戦争での戦訓を基にした燃料の備蓄や、前線への燃料輸送計画なども立案されてはいたのだが、チャイナの守勢攻撃的な焦土作戦等と言う想定外にも程がある()()を受けては、事前計画が破綻するのも当然であった。

 家も食料も燃料も失って丸裸となった南モンゴルの人民を守る事の負担は、アメリカにとっても決して軽いものでは無かった。

 

*3

 この時点でアメリカは、当初予定していた作戦の中止と共に部隊編成を再編していた。

 第1軍として主要5個師団を管理していたものを、軍司令部の隷下に2個の軍団司令部を新設し、併せてアメリカ第11機械化師団は軍司令部直轄とした。

 とは言え、軍団司令部は新設を決定したからと言って、即座に湧く(ポップ)様なものでも無い為、当座は各軍団の師団長で先任の者が担当する事とされた。

 尚、新設された各軍団司令部の要員は、急いでアメリカ本土から派遣される事となった。

 朝鮮(コリア)共和国軍とバルデス国軍に関しては、元より補助戦力 ―― 占領地の治安維持が主任務とされていた為、当初の予定通り第2軍として管理される事となった。

 

*4

 実際、空戦が始まってから多数の撃墜王(5機撃墜のエース)がアメリカ空軍に生まれており、地上の陰惨さを糊塗するかの様にマスコミは盛んに宣伝していた。

 アメリカはその動きに乗り、気分を盛り上げる為に5機以上の撃墜を成したパイロットに対して()()()()の許可を出した。

 

*5

 実際、撃墜王と祭り上げられた戦闘機パイロットは、その全てがフロンティア共和国の基地から出撃した者たちであり、戦場はフロンティア共和国付近の空域であった。

 

*6

 爆撃機がこれ程に被害を受けた理由は、爆撃機自体の()()()にあった。

 他の空中捜索任務に充てられた飛行機たちとは違い、装甲があり自衛火力もある為、最前線での捜索任務に投入され続けた結果であった。

 そして爆撃機クルー達は、その結果をある意味で誇っていた。

 チャイナ空軍機に襲われればひとたまりもない輸送機や連絡機などに代わって、前線に立ち続けた名誉であると。

 爆撃機クルー達は自らの義務に忠実であり献身的であった。

 

*7

 本格的な爆撃を実施していない理由は、南モンゴル領域での捜索任務に戦力を取られている為である。

 又、同時にアメリカにとって渤海周辺のチャイナ海軍戦力が、さして脅威では無いと言うのも大きい。

 この為、アメリカ空軍が無理をして攻撃を行う必要性が乏しかったのだ。

 




2020/03/27 図面挿入
2020/03/27 文章修正
2020/04/04 文章修正
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