タイムスリップ令和ジャパン   作:◆QgkJwfXtqk

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093 チャイナ動乱-12

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【挿絵表示】

 

 

 戦力の集積と再編成に取り掛かったアメリカの東ユーラシア総軍であったが、とは言えその主力である第1軍団の前進が止まる事は無かった。

 一年後には戦力が数の上で倍以上、質と言う意味であれば倍とは言わない戦力となる事が決まったにも関わらず出血の継続する(戦力を消耗し続ける)前進を継続する事は、戦力の逐次投入と評する事の出来る、ある意味で愚策とも言える選択であった。

 その事を東ユーラシア総軍司令官と参謀団も自覚はしていた。

 だが、アメリカは南モンゴル人への()()()()()()()()()()()を掲げて開戦(応戦)したのだ。

 であればこそ、南モンゴルへとチャイナが行い続けている守勢攻撃的焦土戦術へ対応しないと言う選択肢を、例え軍事的にどれ程に愚かしくとも政治的に選べる筈が無かった。

 第1軍主力は、柔らかな下腹部を第2軍に守られつつ一途に前進を続けた。

 目標は南モンゴル独立派の本拠地だ。*1

 

 

――国際連盟/国際社会

 チャイナの手で積極的に拡散された南モンゴルでの惨状に、国際連盟は大きく反応する事となる。

 国際連盟加盟国の大多数が、民主主義国家であるが故に。

 本部(スイス・ジュネーブ)から見れば地球の反対側であり、大多数の国際連盟加盟国にとって辺境と言って良いチャイナの出来事であるが、情報にとって地理的な距離は問題では無かった。

 特に写真が重要な役割を果たした。

 南モンゴルで撮影された数々の写真は、劇的に向上したフィルムの質も相まって、遠く離れた街路で読む新聞であっても現地の惨劇の生々しさがそのままに伝わっていた。

 それが多くの人々の心に刺さり、それぞれの政府を動かす事に繋がったのだ。

 その集大成が国際連盟の総会であった。

 議論の主となったのは、チャイナの期待した()()()()()()()()()()()()()()()()()()では無く、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

 そして議題となったのは、南モンゴルの地で行われ続けている非国際連盟加盟国での非人道的な事態にどう対処するかであった。

 この状況に慌てたチャイナは駐スイス・チャイナ大使を特命国際連盟特使として、国際連盟へ接触を図った。

 チャイナ特命国際連盟特使はチャイナへの国際世論を改善させろと言う本国からの大命を胸に秘め、オブザーバー資格で国際連盟総会に臨んだ。

 だが、チャイナ特命国連特使に出来たのは、国際世論の改善(宣伝戦)などでは無く、只の釈明であった。

 目を合わせる事も無いアメリカ大使、鼻で笑っているブリテン大使、嗤う事を止めないフランス大使。

 そして日本大使は無表情(ブッダ・スマイル)であった。

 概して言えるのは、チャイナ特命国際連盟特使を相手にしないと言う姿勢であった。*2

 だがG4の大使たちは()()だった。

 大多数の国際連盟大使は国際連盟総会の後ろに居る自国の有権者を見ており、チャイナの特命国際連盟特使が1つ発言すると10を優に超える非難を競う様に発していたのだから。*3

 チャイナを吊るし上げる場となった国際連盟総会。

 それでも必死にチャイナの立場を主張したチャイナ特命国際連盟特使であったが、非情にもその眼前で、国際連盟安全保障理事会に於いて南モンゴルでの()()()()()()()()()()()()を要求する議決が行われたのだった。

 国際連盟安全保障理事会では全会一致で、国際連盟加盟各国全てがアメリカに対して可能な限りの支援行動を行い、早期の南モンゴルでの()()()()()()()()()()を図る事が決議された。

 

 

――日本

 国際連盟安全保障理事会の議決(1942.EY05議決)と、アメリカからの非公式な外交ルート(G4秘密協議会)で受けた協力要請に基づいて、日本も支援内容を議論した。

 アメリカが希求していた地上戦力 ―― 日本国自衛隊の派遣を含む日本連邦統合軍のチャイナ派遣は非現実的であると早々に却下された。

 令和(タイムスリップ)以前に比べて緩くなっているとは言え、それでも日本国憲法の軍事力の行使に関する縛りは決して緩いものでは無いのだから。

 その代わりシベリア共和国が行っている派兵への支援が行われる事となった。

 具体的には、日本連邦統合軍から少なからぬ規模の航空部隊をシベリア共和国軍へと移管し、フロンティア共和国へ派遣すると言うものであった。

 つつがなく国会でも審議され、()()()()()()()()()()()と言う付帯条件付きで承認される事となった。

 派遣される航空部隊は第11戦術航空団に所属するF-5C戦闘機*4を装備する攻撃飛行隊とAC-2極地制圧用攻撃機の部隊であり、補給機部隊ごと派遣される。

 F-5C戦闘機でアメリカ空軍爆撃機が行う捜索任務を護衛し、捜索中に発見したチャイナ政府軍騎兵部隊をAC-2極地制圧用攻撃機が撃滅する予定であった。

 その他、モンゴル国*5と交渉を行い、その領空上でE-767早期警戒管制機(AWACS)による()()を行う権利を獲得していた。

 無論、空中警戒訓練中に得た軍事情報は、通信訓練として()()()()()()に送られる予定であった。

 東ユーラシア総軍は、事、空中に於いては万全の支援が得られる事となる。

 

 

――チャイナ

 東ユーラシア総軍第1軍団の包囲殲滅を目的と定めたチャイナ政府軍は、チャイナ共産党との停戦合意成立と共に総兵力約800,000、44個の師団と旅団の軍勢から約半数を引き抜き、それまでアメリカ軍に応戦していた部隊 ―― 北京鎮護軍や騎兵部隊も編入し、2つの北伐軍集団と2つの軍から成る北伐総軍を編制した。*6

 この時点で東ユーラシア総軍第1軍団は4個の機械化師団しか居ない為、その戦闘力が如何に優れて居ようとも倍以上の戦力で包囲攻撃を行えば勝つ事は難しくない。

 それがチャイナ政府軍参謀団の判断であった。

 ドイツの軍事顧問団も、同じように判断していた。

 ドイツの誇るⅣ号戦車を装備するチャイナ政府軍戦車師団への自信もあっての事であった。

 だが、問題があった。

 チャイナの広大さである。

 チャイナ共産党討伐の為、西征総軍としてチャイナ西方域に集中していた戦力を北伐総軍として転用するのだ。

 その主力である2個の軍集団の再配置に時間が必要となるのも当然であった。

 この為、既に作戦行動を行っていた第1騎兵軍に対して、更なる時間稼ぎを下命する事となる。*7

 

 

 

 

 

 

*1

 南モンゴル独立派の拠点は、現時点では無事だった。

 これは、この場所が連隊規模以上の軍閥が防衛していたと言う事と共に、チャイナ政府軍の思惑が絡んでいた。

 南モンゴル独立派の拠点を敢えて攻略しない事で、アメリカに退けない理由を与えると言う。

 チャイナは南モンゴルでの騎兵部隊の活躍によって生まれた状況を最大限に活用する様に対アメリカ作戦を変更していた。

 目標は、現時点での東ユーラシア総軍の主力たる第1軍。

 この包囲殲滅を図る事で、チャイナ政府軍参謀団はアメリカとの早期戦争終結を図る積りであった。

 

*2

 G4の国際連盟大使は外交官で在り()()()()()さを知悉する専門家たちだ。

 そうであるが故に、今はチャイナと友好的接触を行わない事こそが外交(チャイナへのメッセージ)であると一致していたのだった。

 

*3

 尚、チャイナ特命国際連盟特使が友好的発言を期待していたソ連国際連盟大使は、総会の間、常に目を瞑って口を閉じ、腕を組み続けていた。

 

*4

 1940年代に入ると共にG4を含めた諸外国でジェット戦闘機の実用化が進む(性能寿命の問題が発生した)為、F-5戦闘機は防空任務を解かれていた。

 但し、機体寿命自体はまだまだ残っていた為、対地攻撃能力を向上させる為の改造が施されている。

 この改造に併せて、C型(F-5C)の名前が与えられた。

 尚、C型の元となったB型(F-5B)は、シベリア独立戦争での戦訓を基に行われた空対空戦闘能力向上モデルであり、最大の改良点は主翼の大型化と空中受油装備の設置である。

 広大なシベリアの空で運用するには、A型(F-5A戦闘機)では航続性能 ―― 滞空性能が不足ぎみであったのが理由だった。

*5

 ソ連の隣国時代には社会主義国家であったモンゴルは、シベリア共和国の成立からしばらくして国名から人民共和国の名前を削った。

 又、シベリア共和国やフロンティア共和国との関係を深める方向に政治の舵を切っていた。

 中小国家としての正しい選択を選んだと言える。

 その上で国際連盟への加盟も交渉中であった。

 この為、日本やアメリカからの投資も始まっており、チャイナやソ連からは親G4国と見られていた。

 

*6

 歩兵主体の第1北伐軍集団と、最低でも自動車を装備した機動力の高い第2北伐軍集団、そして軍とは名ばかりで1個師団しか所属していなかった北京鎮護軍には歩兵師団及び機械化師団、嚮導団まで編入し北京鎮護()と言う体裁を名実ともに獲得させる事となった。

北伐総軍

-第1北伐軍集団

--4個軍

 歩兵師団:28個

 機械化歩兵師団:2個

-第2北伐軍集団

--3個軍

 機械化歩兵師団:4個

 自動化歩兵師団:6個

 戦車師団:2個

-北京鎮護軍

 歩兵師団:3個

 機械化師団:1個

 嚮導団:1個(増強戦車旅団規模)

-第1騎兵軍

 騎兵師団:3個

 

*7

 時間稼ぎの一環として、モンゴル国を経由した形で南モンゴル東方域 ―― 東ユーラシア総軍第1軍団の制圧した地域への騎兵部隊の突入を下命していた。

 目標は、南モンゴル東方域での騒乱と、可能であれば東ユーラシア総軍の補給線への攻撃を行って混乱させる事であった。

 




2020/04/02 文章修正
2020/04/04 文章修正
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