ウィッチをまわす上で数名の方のデッキを参考、アドバイスをもらいました。
ありがとうございました。
一方そのころ。
「はいこちらが優勝賞品です」
「どうも」
安原たちは会場内の催しものを回っていた。
今しがた4人フライト式トーナメントでメンバーが募集されていたので、安原が飛び入り参加し優勝をさらってきたところだ。
「優勝賞品って何がもらえるんだ?」
観戦していた剛が覗き込んでくる。
「リアルプロモーションカード。シャドウバースのカードを実際にカード化したものだよ」
安原が手に入れたものは『希望の女王・リチュエル』だった。
安原はそれを楓子に差し出した。
「戸尾さんいる?」
「いいんですか?」
「うん。気晴らしに参加しただけだから」
「ありがとうございます」
戸尾が顔をほころばせる。
「あの……もう一回さんかいいですか?」
「ああ、戸尾さんも参加する?」
「はい。もっとカードほしいので」
「それじゃ人を集めないと……」
と、剛が携帯端末を取り出した。
「おい、三和から連絡きたぞ。勝ったってさ。合流しようかって話あるけど」
「そうだね。それなら合流しておこうか。戸尾さんいいかな?」
「はい」
ほどなく三和が現れた。
「おっ、三和こっちこっちー!」
「よ」
三和は楓子の手に握られているプロモーションカードに気づいた。
「お、何に参加したんだ?」
「4人フライト式トーナメントって奴。人が足りないらしかったからさ」
「戸尾が勝ったのか? やるな」
「あ、いえ。安原せんぱいがとったのを私にくれたんです」
「安原か。やるじゃないか」
「伊達に三和の壁打ちはしてないよ」
こそばゆそうに安原は返す。
「それにしても二勝したんだって? 今回は調子よさそうだね」
「ああ。まだ油断はできないけどな」
「三和って最高どれぐらいまでいったんだ?」
「前回はあと1勝で二日目ってところで負けちゃったな」
何か月も前の記憶だが三和は覚えている。幸運な引きに救われたことも、一つの判断ミスによって負けにつながったことも。
「うーん。やっぱり簡単じゃねぇんだなぁ」
「ああ。有名な実力者でも予選敗退は珍しい事じゃないしな」
「永瀬たちはどうなんだ?」
剛がたずねてきた。
「永瀬は勝ったらしいぞ。名前見たらあった。葛木は登録名を知らないからわからないけど」
「一回全員で合流しないか?」
「そうだな……次の試合まで時間あるし、一回皆で集まるか」
三和は葛木に連絡を入れた。集合場所は美鈴もいるであろう撮影スタッフの待機所にした。
三和たちがついたころにはすでに葛木が先についていた。美鈴に自慢げに話している。
(後ろの女子生徒たちが睨んでいるぞ)
葛木が連れてきたソフトウェア研究会の女子生徒たちが剣呑な視線をむけていた。
もっともその視線の矛先は美鈴にむけられていたが。
「あ、三和君お疲れ様!」
葛木の自慢話と女子生徒たちの視線に閉口していたのだろう。話題を転換するように美鈴が声をかけてきた。
「3人とも今のところ負けなしだってね!」
「ああ、お互い健闘できているようで何よりだな」
順当、とは思わなかった。僥倖という意味だ。一日目とはいえ、大会に挑戦しようという人間は基本的に猛者揃いだ。それに美鈴も三和もやや安定性に欠けるデッキを選択していた。ちょっとした不運で負けることはありえる。葛木は知らないが、葛木は一緒に参加した去年のRAGEでは早々に敗退していた。
「よぉ三和。お前ウィッチを握っているんだって?」
葛木が笑う。三和は教えてはいないので美鈴が話したのだろう。
「また土か? お前土ウィッチ好きだものなぁ」
一年生で葛木と同じクラスだった時、一時期三和は土ウィッチを研究していたことがあった。もっとも、アンリミテッドでコントロール系の土ウィッチだったが。
「いや今回はスペルブースト系だよ」
「へぇ……。コントロール系か。それでロイヤルどうにかできんの?」
「ロイヤルはまぁ何とか。聖獅子が案外厄介だけど」
「聖獅子? へぇ……なんかtier上がっているとは聞いたけど」
葛木の仮想敵にはまだ聖獅子の存在は入っていないらしい。
RAGE直前に評価を急激にあげてきたデッキなので、葛木はまだ把握していないようだ。
「そういうそっちはデッキに何を選んだんだ?」
「普通ならわざわざ明かしたりしないけど、さすがにフェアじゃないからね。ロイヤルとドラゴンだよ」
「前戦った時と同じか」
「ドラゴンはだいぶ見直したけどね。今の環境ロイヤル一強だからランプからのポセイドンが刺さるんだ」
やはり葛木の眼中にはロイヤルしかないらしい。
美鈴がロイヤルとネメシス。
葛木がロイヤルとドラゴン。
三和がヴァンパイアとウィッチ。
それぞれの選択の違いが表れた形だ。
「あ~コホン。ちょっといいかな?」
わざとらしく声をかけてきたのは、撮影スタッフの一人だった。男はディレクターの野田と名乗った。
「あのさ、ちょっと君たちの画を録らせてほしいんだけど」
「俺たちですか?」
「ああ、いいですよ」
ためらう三和とは対照的に、葛木は外向けのさわやかな笑みを浮かべて反応した。
「そう。ちょっとだけ。そうだね、こんなのはどうかな……」
野田が提案したのは円陣を組んで手の平を重ね合わせて、美鈴の「ファイト!」の掛け声とともに重ねた手を掲げ上げるというものだ。
ベタだが、奇をてらわず3人の団結力を示せるものだろう。
(俺としてはあまり目立ちたくはないけど……)
美鈴も葛木もノリ気だった。ここで一人辞退するわけにもいかない。
美鈴の女友達や安原たちも参加し、円陣を組んだ3人の背後で応援幕を広げる。
美鈴がかけ声を上げた。
「二日目を目指すぞー! ファイト!」
『オーッ!』
やぶれかぶれで慣れない大声を三和も上げる。安原たちが鳴り物を鳴らしたり拍手したりして盛り上げた。
「ううん、いいねいいね。ありがとう、助かるよ」
野田はさすがに人を持ち上げるのがうまい。
「がんばってね。もし一日目をいい戦績で勝ち残れたら3人でインタビューをするから」
「は?」
「いやぁ、もしかしたら君たちが未来のファイナリストになるかもしれないんだものね。がんばってね。応援しているよ」
そう言って景気づけるように肩を叩いてくる。
「い、いや俺はインタビューはちょっと……」
慌てて口を挟もうとすると、袖をひっぱられた。
美鈴だった。
「三和君、葛木君、3人でインタビュー受けるためにも、がんばろうね!」
美鈴は三和に目線で言っていた。インタビューを受けるべきだと。
(いいのか……?)
三和が目立ちたくないのは、美鈴のためを思ってのことだ。
だが美鈴は逆らしい。
その発想は三和の中にもあった。
(あるいは、俺が美鈴と並んでも遜色のない人間になれれば……)
三和がもし周囲のやっかみを引き起こさないほどの人間になれれば、交際していることが明るみになっても波風は小さくなる。
そうであれば、須賀と美鈴の負担も軽くなるし、なにより三和としてもコソコソしないですむ。
(そういう意味では今回の大会はチャンスになるかもしれないのか)
たかがゲームのプレイヤーと世間では一蹴されるかもしれないが、多少なりとも拍がつくにこしたことはない。
だがそれは宝くじを当てるような幸運と、繊細なプレイングの上に成り立つ可能性だ。
プレッシャーにもなる。だが三和の闘争心は逆に刺激されていた。
表情にこそ出さないが、闘志をみなぎらせて対戦エリアにむかった。
3回戦。
相手はビショップとネクロマンサーだった。
(ブローディアを持たれていると厄介だな……)
三和が自信を持っているのは蝙蝠ヴァンパイアの方であるが温存。ウィッチを選択する。
相手はビショップを選択する。
(さて何ビショップだ?)
天狐ビショップ、機械チェキババ、そして聖獅子。
三和が把握しているビショップといえばこの3つだ。
先行は相手。三和は後攻。
1ターン目はお互いにパス。
三和はほっとする。
(1コス置かれると除去がおいつかなくて結構なダメージもらうからな)
先攻2ターン目、相手のターン。
プレイしたのは『聖獅子の神殿』。
(聖獅子ビショップか)
後攻2ターン目、三和のターン。
(2ターン目神殿置きとは相手は強気だな)
アミュレットを破壊することができる『熾天使の剣』をプレイする絶好のタイミングだが、生憎と三和のデッキには入っていない。
プレイしたのは『マシンエンジェル』のアクセラレート。
2体の『プロダクトマシーン』が場に出現する。
先行3ターン目、相手のターン。
『聖獅子の結晶』をプレイ。2/2の『聖なる盾の獅子』が場に出る。
そして『レジェンダリーファイター』をプレイ。
後攻3ターン目、三和のターン。
(ウィズダムコアを引いたか)
アミュレット『ウィズダムコア』をプレイ。
場に出た2体の『プロダクトマシーン』は『レジェンダリーファイター』に当てて相打ちで破壊する。
先行4ターン目、相手のターン。
(エンハンス楽園の聖獣だとかなりきついが)
相手がプレイしたのは『平和の紡ぎ手』。さらに1PPで『救済の聖獅子』をアクセラレートでプレイ。
手札に2枚の『聖獅子の結晶』を加える。
場に出ていた『聖なる盾の獅子』で三和を直接攻撃。ライフを2点削って18点。
後攻4ターン目、三和のターン。
(『救済の聖獅子』をアクセラレートで使ったか。どう判断すべきか……)
『救済の聖獅子』は進化権を使って初めて意味があるフォロワーだ。
『救済の聖獅子』に進化権を吐くことはないという判断だろうか。
(とりあえず俺の手は……)
『蒼の反逆者・テトラ』をプレイ、進化。
(ここで毎回悩むんだが……)
相手の聖獅子ビショップは打点を刻んでいくカードだ。当然三和としては相手のフォロワーを除去したい。
だが相手は次5ターン目、『アサルトプリースト』をプレイできるターンだ。
(攻撃してしまうと『アサルトプリースト』の特殊効果でテトラが無傷でとられてしまう。ないのならいいが……あった場合……)
相手の場に6/6のフォロワーがまるまる残ることになる。
三和は手札を確認した。
(いや返し札がある。ここはあえて誘うべきか)
『ウィズダムコア』で回復した2PPを使い、『知恵の光』と『ソニック・フォー』をプレイ。
相手の『平和の紡ぎ手』を破壊する。
そして『聖なる盾の獅子』に攻撃。2点の反撃を受けて破壊。これで相手のフォロワー全てを破壊する。
攻撃時効果で回復したPPを使い、『リペアモード』を『蒼の反逆者・テトラ』に使う。これで『蒼の反逆者・テトラ』の体力は最大値まで回復する。
先行5ターン目、相手のターン。
プレイしたのは想定通り『アサルトプリースト』。進化権を切る。
《弾けろ神の筋肉!》
進化時能力により『蒼の反逆者・テトラ』を破壊。
6/6の状態で場に残る。
後攻5ターン目、三和のターン。
(よし、想定通りに進んでいる)
三和は『知恵の光』を1枚プレイ。ドローを確認して『マシンエンジェル』をアクセラレートでプレイ。2体の『プロダクトマシーン』が場に出現する。
そして『ウィンドブラスト』をプレイ。スペルブーストは6回溜まっているので7点ダメージで『アサルトプリースト』を破壊する。
先行6ターン目、相手のターン。
2PPを使って『レジェンダリーファイター』をプレイ。
そして『聖獅子の結晶』を2枚プレイ。2体の『聖なる盾の獅子』が場に出現する。
残った2PPで『愚神礼賛』をプレイする。突進必殺を持った『レジェンダリーファイター』が『プロダクトマシーン』を破壊する。
後攻6ターン目、三和のターン。
(2/2を並べて横展開してきたか)
三和はまず『知恵の光』をプレイ。ドローを確認して『マジックミサイル』。体力が1点削れている『レジェンダリーファイター』を破壊する。
(これで真実の狂信者のコストが0)
『真実の狂信者』は3/5疾走を持つフォロワーだ。
余った3PPで『メカゴブリン』と『真実の狂信者』をプレイ。
『真実の狂信者』は『聖なる盾の獅子』を攻撃して破壊する。
場に出ていた『プロダクトマシーン』はリーダーを攻撃。微々たるダメージだが1点削る。
相手の場には『聖なる盾の獅子』が一体残った。
(デッキはいい感じにまわっている)
先行7ターン目、相手のターン。
三和のライフは残り18点。
相手のライフは残り19点。
相手がプレイしたのは『聖騎士・ヘクター』
『行進せよ! 天の果てまで!』
勇ましく神々しい声と共に、2体の『聖騎兵』が出現。このターン中他のフォロワー全ての攻撃力を+2し、突進を付与する。
2体の『聖騎兵』はそれぞれ『メカゴブリン』と『真実の狂信者』を攻撃し相打ちで破壊。
攻撃力が2点強化された『聖なる盾の獅子』は進化。攻撃力6点で三和を直接攻撃してライフを6点削って残り12点。
相手の場には4/4『聖なる盾の獅子』、5/6『聖騎士・ヘクター』。
後攻7ターン目、三和のターン。
(ヘクターで顔面レースを急いできたか。この進化は厄介だぞ……)
三和は『真実の絶傑・ライオ』をプレイ。
《これが世界の真の姿!》
『真実の絶傑・ライオ』の能力は、ファンファーレでデッキのカード全てを9回スペルブーストする。
そして0コストにまで下がった『運命の導き』をプレイ。
(来い!)
引いたのは『蒼の反逆者・テトラ』と0コストになった『炎の握撃』。
『真実の絶傑・ライオ』を進化。『聖獅子・ヘクター』を破壊し、『炎の握撃』で『聖なる盾の獅子』を破壊する。
先行8ターン目、
『愚神礼賛』のカウントダウンが終了し、ラストワード効果で『真実の絶傑・ライオ』が破壊される。
相手は2枚目の『聖獅子の神殿』をプレイ。手札に『聖獅子の結晶』を加える。
そして2枚の『聖獅子の結晶』をプレイ。結晶カウントは3だったので、4/4の『聖なる鎧の獅子』が2体出現する。
後攻8ターン目、三和のターン。
(2枚目の神殿か。いよいよ猶予はなくなったな)
三和は『天外の華・エレノア』をプレイ。
《我こそは天外の華!》
最後の進化権を使用して『美麗なる術式』を手札に加える。
そして『知恵の光』をプレイ。
(PPを余らせるが、仕方ない)
進化した『天外の華・エレノア』で『聖なる鎧の獅子』を破壊、残った片方を『美麗なる術式』で破壊する。
場に出ていた『プロダクトマシーン』でリーダーを直接攻撃。ライフを18点に減らす。
先行9ターン目、相手のターン。
相手は『聖獅子の結晶』をエンハンスで2回プレイ。1回目は『聖なる鎧の獅子』が、2回目は疾走を持つ『聖なる王の獅子』が出現する。
そして『聖なる王の獅子』はリーダーを直接攻撃。三和のライフを8点にまで削る。
余った3PPで『プリズムスイング』をプレイ。『天外の華・エレノア』を破壊し、手札に『聖獅子の結晶』を加える。
後攻9ターン目、三和のターン。
(相手は聖獅子の結晶を手札に加えた。この盤面を除去しても確定で20点は出せる)
猶予はない。
ドローは……『真実の掟』。
《世界の本質!》
《真実の掟》
コスト7 スペル
カードを自分の手札が9枚になるまで引く。
このカードのスペルブースト が9回以上なら、自分のPPを7回復。
『真実の掟』は『真実の絶傑・ライオ』の効果でスペルブーストされている場合、ノーコストで手札上限までドローできるカードだ。
三和の手札が9枚で埋まる。
そして……
(揃った!!)
まずは『知恵の光』を使用。1枚ドロー。
(0コスト導きはあるが……)
ここは温存する。
『あのカード』を引きたくないからだ。
『ウィンドブラスト』と『炎の握撃』を使い、相手の場に存在した『聖なる鎧の獅子』と『聖なる王の獅子』を破壊する。
残ったPPで『真実の宣告』をプレイ。
《世界に宣告する!》
たまったスペルブーストは17。ランダムに効果が割り振られる。
相手のリーダーに7点、『ガーディアンゴーレム』の能力を+5、リーダーのライフを5点回復。
相手のライフは残り11点、場には8/8の『ガーディアンゴーレム』、三和のライフは13点まで回復する。
(よし、そして……)
三和は0コストにまで下がった『フレイムデストロイヤー』をプレイし、場に存在した『プロダクトマシーン』で相手のリーダーを直接攻撃して残り10点まで減らす。
ターンエンド。
……だがこれだけでは終わらない。
《予言の時だ。約束の日さ》
直接召喚、『開闢の預言者』。
元のコスト1から10のカードを全てプレイすることで、ターン終了時にデッキから直接召喚する。
今しがたプレイした『フレイムデストロイヤー』の元コストは10。それで最後のピースがおさまり、『開闢の預言者』の召喚条件を満たした。
『開闢の預言者』の能力値は20/20。選択不可で破壊不可。
元コストは20もするフォロワーだ。直接召喚以外で召喚することは事実上不可能だが、召喚できれば一枚で勝負を決するカードだ。
先行10ターン目、相手のターン。
時が凍り付く。
(神殿が2枚あるから結晶がある限り攻撃することができる。だけど、神殿を置いたせいで場にはフォロワーを置けるスペースが3つしかない。結晶が何枚あろうと出せる最大打点は12点までだ)
三和のライフは13点まで回復している。ギリギリ届かない。
となると相手がとりうるのは『開闢の預言者』を取り除くか、守護を立ててリーダーへの直接攻撃を避けるかだ。
しかし三和の手にはスペルブーストの溜まった『真実の掟』があり、次のターンに大量ドローを見込める。守護をたてられても『炎の握撃』や『真実の狂信者』で除去できる公算は高い。
(開闢の預言者を取り除くとしたら……『テミスの粛清』ぐらいか)
対象指定でも破壊でもなく、場の全てのフォロワーを消滅させる『テミスの粛清』なら『開闢の預言者』を場から取り除くことができる。
だが聖獅子ビショップのデッキにはまず入らないカードだ。
相手が動いた。『聖獅子の結晶』の連打だった。
まずは守護を持つ『ガーディアンゴーレム』を破壊。そして次には『開闢の預言者』の除去に入る。
(まさか除去しきれるというのか?)
16点、12点、8点、4点。
『開闢の預言者』の体力が削られていく。
だが、そこで相手の『聖獅子の結晶』が尽きた。
ターンエンド。
後攻10ターン目。
(悪いな。こっちも負けられないんだ)
三和は『開闢の預言者』でリーダーを直接攻撃し、ライフを20点削りきる。
続いてのネクロマンサー戦も、得意とする蝙蝠で勝利した。
(こんなところで負けられないしな)
まだまだ3戦目。折り返し地点だ。
(さて……次の試合までどう過ごそうか)
人前では美鈴とは会わないと決めた。安原たちはプロモーションカード目当てに対戦企画に参加するので、会いに行っても中途半端だろう。
(一人で休憩するか)
疲れた頭をクールダウンするために、コーヒーでも飲んでぼうっとしておくのもいいかもしれないと思った。
自販機で缶コーヒーを買い、休憩エリアの椅子に腰を下ろす。
と、携帯端末に通知が来た。
美鈴からだった。
勝利報告と葛木も勝ったという報告だ。
それだけにとどらまらず、美鈴からは話が矢次早に繰り出される。
(まあ、これならバレないか)
次の試合まで、三和は美鈴と他愛もない話をして過ごした。
次の試合時間が迫り、三和が試合エリアへと赴くと、スタッフから思わぬことを告げられた。
「配信卓でお願いします」
「俺がですか?」
「はい。こちらへどうぞ」
スタッフはうなずく。
参加規約には、メディアに出演することを同意する旨があった。基本拒否はできないものだろう。
(ちょっと恥ずかしいけど、まあいい経験になるかもな)
そんな軽い気持ちで配信卓に赴く。
配信卓の試合は、LIVEで大会公式配信で流れる。手札もプレイヤーの表情も含めてだ。それ以外は通常の試合と特に違いはない。
(さて、相手は誰だろうな)
配信卓の試合は、たいていの場合、対戦者のどちらかが有名人であることが多い。三和の知名度はさほどないので、あるとしたら相手側だろうか。
「あちらの席で端末をスタンバイさせておいてください」
舞台袖でスタッフがそう指示し、三和も舞台上へと上がる。
そこで仰天した。
(美鈴!?)
美鈴もまた、驚いた顔でこちらを見返していた。
美鈴が立っているのはちょうど対面。どう見ても相手選手の入場口だ。
察するに、3回戦の相手は美鈴で間違いないだろう。
咄嗟のリアクションをとれず、固まっていると、美鈴が不敵に笑んだ。
グッ! と親指を突き出してガッツポーズをする。
意図はさしずめ、『全力で戦おう』だろう。
思わず苦笑が漏れた。
心境は同じだったが、ガッツポーズはキャラではないので、大きくうなずいて返した。
「スタンバイお願いしまーす!」
せっつくようにスタッフが声をなげかけてくる。
三和は、一礼して席へとむかった。
シャドバ用語
・tier
デッキの強さを段階的に評価したもの。
主観に基づいたものなので、誰がつけたtierかによって順位が異なることがある。
またデッキ相性もあるので、あくまで大まかな評価にすぎない。
使用デッキ
・三和開闢ウィッチ
https://twitter.com/fet_light/status/1133180611588370432
・相手聖獅子ビショップ
https://twitter.com/fet_light/status/1133181072844382209