「おいおい! 安原! 戸尾!」
安原が楓子とともに会場内の催し物に参加していると、突然剛が大声で叫んできた。
「映っているぞ! 三和と永瀬が!」
「え?」
「ほらあのモニター!」
剛が指さしている先のモニターには、確かに三和と美鈴の姿が映っていた。
「え、二人とも配信卓で!?」
安原は逡巡する。今、楓子と安原はフライト式トーナメントに参加中だ。
「これとこれで、リーサルです」
ぽかんとする相手と審判を置き去りに、安原は「戸尾さん、景品受け取っておいてよ」と言い捨てて駆けだした。
モニターには確かに美鈴と三和の姿があった。わずか遅れて楓子も到着する。
解説は『黒帯』、実況は『ポッポル』というシャドウバース界隈ではおなじみの二人が実況解説していた。
『むかって左の凪咲理江選手が、現役アイドルの卵、右手のWIZE選手はそのクラスメイトという面白い組み合わせとなっております』
『資料によりますと、何と凪咲理江選手がシャドウバースを始めたのは鋼鉄の反逆者が発売されてから。それから一ヶ月足らずでビギナーからグランドマスターまで駆け上がったという、とてつもないホープです。一方、WIZE選手はJCGの優勝経験もあり、お互いに実力者であることが伺えます』
『高校生ですけど、大人びて見えますね。特に凪咲選手。あれはディオネの衣装ですよね?』
『はい間違いないと思います。衣装から気合の入り様が伝わってくるようですね』
心なしか観戦エリアもざわついている。携帯端末を取り出している人が何人かいるのは、アイドルと聞いてネットで検索しているからだろうか。
『それでは第4回戦、スタートです!』
『使用リーダーは凪咲選手がロイヤルとネメシス、WIZE選手がヴァンパイアとウィッチです』
WIZEとは三和の登録名だ。美鈴は芸名で登録したようだ。
「すごいです、あの二人がモニターに映っているなんて……」
楓子が感嘆していた。安原も同じ思いだ。
「うん……これは永瀬さんもいい宣伝になるね」
(三和が緊張しなければいいけど……)
安原であれば皆の前でプレイするなど無理だ。普段通りのプレイングをする自信なんてない。
一試合目。
三和はウィッチを選択。
美鈴はロイヤルを選択した。
「なぁ、これどっちが有利なんだ?」
剛が安原にたずねてくる。
「ロイヤルは環境最強と言われている。特に潜伏リオード剣舞をされるとウィッチ側は肝心のスペルブーストができなくて相当つらい勝負になるね。7ターンにしっかりとライオを着地できればウィッチが有利になるけど、それでもリーシャとかで一気に盤面を返される可能性があるから油断できない」
「永瀬有利かぁ」
先行は美鈴。
後攻は三和。
最初の手札交換、美鈴は『白翼の戦神・アイテール』と『簒奪の従者』を残して1枚交換。
三和は『ウィズダムコア』を残して2枚交換。
お互いに何度も練習試合をしていたので、お互いのデッキ内容はほぼ知っていた。
三和のデッキには『マシンエンジェル』が入っているので交戦時効果で攻撃力1に対して圧倒的に有利な『簒奪の従者』が活躍する可能性は高い。また『簒奪の従者』は終盤に引いてもあまり嬉しくないカードなので2ターン目の動きとしてキープした。
1ターン目はお互いにパス。
先攻2ターン目、美鈴のターン。
『簒奪の従者』をプレイ。
後攻2ターン目、三和のターン。
『マジックミサイル』を撃って『簒奪の従者』を破壊する。
『おおーっと! WIZE選手はマシンエンジェルを握っていましたが、マジックミサイルももっていました! 簒奪の従者が裏目に出た形ですね!』
『交戦時能力が働けば実質2/2なものの、基礎の体力は1でマジックミサイルにとられる。簒奪の従者の弱いところがでましたね』
美鈴のデッキには『簒奪の従者』が一枚しか入っていない。そのことを三和は知っているはずだから、裏をかいて『マジックミサイル』をキープしていないだろうという予測だったが裏目に出た。
先行3ターン目、美鈴のターン。
『白翼の戦神・アイテール』をプレイ。
手札に『スカイセイバー・リーシャ』を加える。
後攻3ターン目、三和のターン。
アミュレット『ウィズダムコア』をプレイ。
先行4ターン目、美鈴のターン。
プレイしたのはエンハンス『キャノンスマッシャー』。
《隊列完成!》
2体の『プロダクトマシーン』が場に出現する。
場に出ていた『白翼の戦神・アイテール』はリーダーを直接攻撃。三和のライフを18点に削る。
後攻4ターン目、三和のターン。
進化権が解放される。
プレイしたのは『蒼の反逆者・テトラ』。進化したので『ウィズダムコア』が破壊され、2PP回復する。『リペアモード』、『ソニック・フォー』に2枚の『知恵の光』が手札に加わるはずだが、手札上限枚数の関係で1枚の『知恵の光』があふれて墓地に送られる。
まずは『知恵の光』でドロー。
確認してから『蒼の反逆者・テトラ』で『白翼の戦神・アイテール』を破壊。
残り2PPで『ソニック・フォー』で『キャノンスマッシャー』を破壊、『リペアモード』で『蒼の反逆者・テトラ』の体力を回復。
これで三和の場には5/6『蒼の反逆者・テトラ』。
美鈴の盤面には2体の『プロダクトマシーン』。
ライフは三和が18。
美鈴が20。
先行5ターン目、美鈴のターン。
『凪咲選手には色々な択がありますが……』
『悩ましい択ですねぇ。リーシャではテトラと相打ち、簒奪の使徒では芸がない』
美鈴は2体の『プロダクトマシーン』を『蒼の反逆者・テトラ』に当てて攻撃。体力を4点に減らし、『不撓不屈の騎士・ヴェイン』をプレイ。
進化して『蒼の反逆者・テトラ』を攻撃して破壊。
ターン終了効果で攻撃力を1上げて体力を3点回復。5/5で『不撓不屈の騎士・ヴェイン』が残る。
後攻5ターン目、三和のターン。
《我こそは天外の華!》
プレイしたのは『天外の華・エレノア』。進化して『美麗なる術式』を手札に加える。
そして『マシンエンジェル』をアクセラレートでプレイ。2体の『プロダクトマシーン』が場に出る。
『天外の華・エレノア』は『不撓不屈の騎士・ヴェイン』と相打ち。
『黒帯さん、うまく除去できましたね』
『WIZE選手はまだライフを18点残しています。この段階でロイヤルが攻めきれないのは中々苦しいでしょう』
先行6ターン目、美鈴のターン。
『白翼の戦神。アイテール』と『魔弾狙撃手・ワルツ』をプレイ。
『おっと。凪咲選手は散らしてきました』
『三和選手は美麗なる術式を手札に加えましたから、中途半端な中型フォロワーを立てても破壊される、それなら横並びをしようという判断でしょうか』
後攻6ターン目、三和のターン。
2体の『プロダクトマシーン』で『魔弾狙撃手・ワルツ』を破壊。
そして『メカゴブリン』をプレイし、残ったPPで『美麗なる術式』で『白翼の戦神・アイテール』を破壊する。
3PP残してターンエンド。
『おおっと、ここで美麗なる術式を撃ちましたね』
『スペルブーストを進めようという判断でしょう。これで導きのコストが0。次のターンにライオからの0導きができます』
『このターンに導きを撃って2コスト3コストを探すという動きもありますが、やはりライオ後に打ちたいと?』
『はい。今引いても最大3コストの動きですし、ライオはデッキのカードしかスペルブーストしません。ですからライオを使うまではデッキの中で眠ってもらっていて、ライオ後に導きでドローした方が高いバリューが見込めるでしょう』
先攻7ターン目、美鈴のターン。
『空の指揮官・セリア』をエンハンスでプレイ。『希望の戦術家・セリア』をチョイスし横ならべをする。
『レイサムに備えて横並べ! レイピアマスターは温存でしょうか』
『今2PPで使うよりもレイサム後の疾走必殺役としての役割のために温存した形かと思われますね』
後攻7ターン目、三和のターン。
『真実の絶傑・ライオ』をプレイ。
《これが世界の真の姿!》
デッキのカードを全て9回スペルブーストする。
『メカゴブリン』で『シールド・ガーディアン』を破壊。
最後の進化権を切り『真実の絶傑・ライオ』を進化、『希望の戦術家・セリア』を2点の反撃を受けて破壊。
ターンエンド。
『まだ導きを撃ちませんね』
『手札にだいぶスペルブーストのたまったフレイムデストロイヤーがいます。小出しにするよりも、一度に大量展開して除去できない盤面を作ろうという判断でしょう』
先行8ターン目、美鈴のターン。
『高潔なる騎士・レイサム』をプレイ。
『誓いの刃をここに掲げよ!』
進化し、『真実の絶傑・ライオ』を相打ちで破壊。場に『ナイト』が出る。
『ナイト』で『メカゴブリン』を破壊しつつリーダーに2点ダメージ。これで三和のライフは16点。
後攻8ターン目、三和のターン。
まずは『リペアモード』を使って手札のスペースを開け、0コストとなった『運命の導き』をプレイ。2枚ドロー。
手札に引いた『マジックミサイル』をプレイ。相手の『ナイト』を破壊する。
『知恵の導き』でさらにドロー。
『WIZE選手、ここにきてドロー連打!』
『ライオ後のウィッチのデッキは宝の山ですからね。1枚のドローが大きなバリューのカードに化けます』
『引いたのは……真実の狂信者!』
三和がプレイしたのは『真実の狂信者』が2枚に『フレイムデストロイヤー』。
3/5、3/5、7/7。
『相手の場には1/2のヘヴィーナイトと1/1ナイトがいますが無視して顔面疾走! 凪咲選手のライフが14点まで削れます!』
先行9ターン目、美鈴のターン。
『さて、ロイヤルも苦しくなって参りました! この大量展開、どう抗するのか!?』
美鈴がプレイしたのはエンハンス『簒奪の絶傑・オクトリス』。
進化して手札に『黄金の首飾り』と『黄金の杯』を手札に加える。
『おおっとこれは………!?』
『簒奪の絶傑・オクトリス』に『黄金の首飾り』を使用。これで能力は7/8。
『フレイムデストロイヤー』に攻撃して破壊。上からとる。
そして……
《花が如く舞い踊る!》
『オクトリスのPP回復を利用しての白刃の剣舞! WIZE選手のフォロワーを一掃!』
『いやぁ、お見事でしたね。この勝負、まだわかりません』
『ヘヴィーナイト』で三和のライフを1点削り、残りライフは16点。
後攻9ターン目、三和のターン。
『ウィズダムコア』をエンハンスでプレイ。進化権を回復させる。
残った2PPで『メカゴブリン』をプレイ。
『ウィズダムコア』が破壊され、『知恵の光』2枚を追加でプレイする。
進化した『メカゴブリン』は体力1残っていた『簒奪の絶傑・オクトリス』と当たって破壊。
ターンエンド。
『WIZE選手、0コストの炎の握撃を持っていましたが温存しました』
『凪咲選手の手札にはアイテールからひっぱってきたスカイセイバー・リーシャが確定で残っています。あえて盤面を開けることで、トワイライトソードを手札に加えさせないという判断でしょう』
先行10ターン目、美鈴のターン。
10PPエンハンスの『レイピアマスター』をプレイ。
《美に焼かれて果てよ!》
6/6疾走必殺突進守護。
『ナイト』と『ヘヴィーナイト』と合わせて三和のライフを7点にまで削る。
後攻10ターン目、三和のターン。
まずプレイしたのは『開闢の預言者』のアクセラレートで1枚ドロー。
『ここで開闢の預言者をデッキに戻します。あとプレイしていないカードは……』
『6コストですね。真実の宣告をプレイすれば開闢の預言者が直接召喚されます』
『炎の握撃』をプレイ。『レイピアマスター』を破壊。
リペアモードでリーダーのライフを1点回復。
『WIZE選手、よどみなくプレイを進めます!』
0コストになった『フレイムデストロイヤー』をプレイする。
残ったPPで『真実の宣告』をプレイ。
溜まったスペルブーストは14。
美鈴のライフに6点、ガーディアンゴーレムの能力を+5、三和のライフを3点回復。
これで三和の盤面には7/7『フレイムデストロイヤー』と8/8『ガーディアンゴーレム』、直接召喚される20/20『開闢の預言者』。
美鈴の盤面には1/1の『ナイト』と1/2『ヘヴィーナイト』。
三和のライフは残り12点。
美鈴のライフは残り8点。
『WIZE選手、手札には0導きもありますが、ここは開闢の預言者で勝負を決しようと判断! 手札に温存してターンエンド!』
『ガーディアンゴーレムの守護にライフは12点残っています。無理してドローして開闢の預言者を引いてしまう必要は無いという、実に冷静な判断です』
先行11ターン目、美鈴のターン。
(さすがだね、三和君)
美鈴は心の中でため息を漏らす。
プレイしたのは『ドラゴンナイツ』。守護を持つ『竜殺しの英雄・ジークフリート』と『炎帝・パーシヴァル』をチョイス。
しかしこのカードでは、『フレイムデストロイヤー』と『開闢の預言者』の攻撃を止められない。
攻撃せずにターンエンド。
後攻11ターン目、三和のターン。
『フレイムデストロイヤー』で守護を持つ『竜殺しの英雄・ジークフリート』を破壊し、『開闢の預言者』で美鈴のライフを削りきる。
『一戦目、ロイヤル対ウィッチ、勝者はWIZE選手!』
『ドローカードを巧みにコントロールした見事なプレイでした。ウィッチの力強いプレイングを見ることができましたね』
(負けちゃったかぁ……)
美鈴はほうっと息を吐いた。
やはり最初にもっと強気に手札交換して『月の刃・リオード』と『白刃の剣舞』を探しに行くべきだっただろうか。
(9ターン目、オクトリスで首飾りを引いた時は勝ったと思ったんだけどなぁ)
やはり三和は強い。
(気分を切り替えて……次は三和君のヴァンプか)
三和のヴァンパイアは蝙蝠ヴァンパイア。
三和が最も得意とするデッキだ。ミッドレンジロイヤル相手にも高い勝率を維持している。
(……どっちを使おうか)
負けた美鈴には引き続きロイヤルを選ぶか、ネメシスを選ぶかの選択権がある。
(うん。こっちだな)
美鈴が選んだのは………
使用デッキ
・美鈴ミッドレンジロイヤル
https://twitter.com/fet_light/status/1133393181675065345
・三和開闢ウィッチ(14話と同じ)
https://twitter.com/fet_light/status/1133180611588370432