三和は追い込まれた。
あと一敗でもすれば負け。
葛木のドラゴン相手に、ネクロマンサーとヴァンパイアで二連勝しないといけない。
さらには葛木の盛り上げによって、場の空気までアウェイになりつつある。
(いい緊張感だ)
だがそれに反比例して三和の神経は研ぎ澄まされた。
(この前の大会もそうだった)
一つのミス、一つの不運が負けへと直結する土壇場。
それに三和悠平という人間は、表現し難い高揚を得るのだ。
(運が味方しないというのならプレイで引き寄せるのみだ)
「俺は引き続きネクロマンサーにする」
「わかった」
2戦目、開始。
先行は三和ネクロマンサー。後攻葛木ドラゴン。
1ターン目はお互いにカードをプレイせずにパス。
2ターン目先行、三和のターン。
『死の夢の少女』をプレイ。
「いいカードを引くじゃないか」
葛木が賛辞を上げる。
『死の夢の少女』はラストワードで3コストの『深淵の夢』というアミュレットを供給する。
手札が少ない先行ネクロマンサーの2ターンの動きとしては理想的だ。
2ターン目後攻、葛木のターン。
『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』をプレイ。
3ターン目先行、三和のターン。
プレイしたのは『怪物の少女・フラン』。チョイスしたのは『フランの従僕』。
「む」
葛木の顔が歪む。1/3の『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』では『フランの従僕』を倒すことはできない。
三和は『死の夢の少女』で葛木を直接攻撃。ライフを18点にまで削る。
3ターン目後攻、葛木のターン。
スペルか何かを使って『フランの従僕』を除去するかというターンだが、3PPを使って『ドラゴニック・コア』をプレイする。
『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』は三和を直接攻撃。体力を19点にする。
「葛木はランプドラゴンみたいだな」
「うん。純粋なランプドラゴンかサタンドラゴンかはわからないけど」
哲夫の言葉に美鈴がうなずく。
今葛木が場に置いたアミュレット『ドラゴニック・コア』は味方フォロワーが進化した時に破壊され、最大PPを増やす効果がある。
俗にPPブーストと言われるこれらのカードで、早いターンに大型フォロワーを展開する。
そんなランプと言われる戦術が今のドラゴンの主なアーキタイプだ。
三和のライフは19、場には2/2の『死の夢の少女』、0/1の『怪物の少女・フラン』、3/2の『フランの従僕』。
葛木のライフは18、場には1/3の『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』とアミュレット『ドラゴニック・コア』。
4ターン目先行、三和のターン。
三和はまず『ソウルコンバージョン』をプレイ。『怪物の少女・フラン』を破壊し2枚手札をドローする。
残る3PPでプレイしたのは『心眼の双葬女・レディグレイ』。
場にある『死の夢の少女』は葛木を直接攻撃。ライフを16点まで削る。
そして『フランの従僕』は『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』を攻撃、破壊する。
1PP余らせてターンエンド。
「ふーん、僕だったらリーダーを攻撃するけどね」
葛木が唇の端を歪めながら言う。哲夫も「三和、やけに慎重だな」と今のプレイに不服そうだ。
「たぶん、『ドラゴニュートの吐息』を警戒したんだと思う」
「でも次は4PP……あ、そっか」
《ドラゴニュートの吐息》
スペル コスト3
相手のリーダーと相手のフォロワー全てに1ダメージ。
[エンハンス:5]『1ダメージではなく2ダメージ』
今葛木のPPは4だが、場に置かれアミュレット『ドラゴニック・コア』にはPPブーストとともにPPを2回復する効果がある。
もし『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』を場に残していた場合、『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』を進化させることで『ドラゴニック・コア』が破壊され、使用可能なPPは5。
『銀氷のドラゴニュート・フィルレイン』の進化時1ダメージを与える効果と合わせて『ドラゴニュートの吐息』を使えば、三和の盤面が全て空になることになる。
「攻撃力の高いフランの従僕と進化時能力を持つレディグレイは相手にとってどっちも残したくないフォロワーなはず。今リーダーの体力を詰めるよりも、相手に除去を強要することを三和君は選んだんだ」
着々と強力な盤面を構築することで相手の選択肢を奪う。
三和らしいプレイだ。
後攻4ターン目、葛木のターン。
進化権が解放される。
「悠長にしていると、飛ぶよ」
プレイしたのは『アンネローゼ』。
《アンネローゼ》
コスト3 攻撃力2 体力3
[ファンファーレ]『覚醒状態なら相手のフォロワー1体に1ダメージ。』
[進化時]自分の最大PPを+1する。
葛木は『アンネローゼ』を進化。『ドラゴニック・コア』が破壊される。
これで葛木の最大PPは6、使用可能なPPは残り3。
葛木は『侮蔑の炎爪』をプレイ。
『アンネローゼ』に1点のダメージを与える代わりに、『フランの従僕』に3点ダメージを与えて破壊。
『アンネローゼ』は『心眼の双葬女・レディグレイ』を攻撃し破壊。
2PP余っているが葛木はターンエンドする。
これで場に残ったのは、三和の盤面が2/2の『死の夢の少女』。
葛木の盤面は4/3の『アンネローゼ』。
ライフは三和が19で、葛木が16。
「次のターンには覚醒状態かよ」
哲夫がうめく。ドラゴンは最大PPが7を超えると覚醒状態に入り、一部のカードの能力が強化される。それとは別に、単純に先行の三和と2ものPP差をつけているのは大きい。
「定石だと次のターンはセレスか……?」
哲夫がうめく。
先行、三和の5ターン目。
三和がプレイしたのは『冥界の番犬・ケルベロス』だった。
『冥界の番犬・ケルベロス』を進化して場の他のフォロワー全てに『ランダムな敵のフォロワーに1点ダメージを与える』という能力を付与する。
そして『アンネローゼ』を攻撃。4点の反撃を受ける。
「ケルベロス? セレスはひけなかったのか?」
哲夫が声をうわずらせる。
一方、葛木は哄笑を上げた。
「ははははははは。僕のPPが数えられないのか? 次は7PPだよ」
三和は葛木の哄笑を意に返さず『死の夢の少女』で葛木を直接攻撃。ライフを14まで削る。
三和の盤面には2/2の『死の夢の少女』、5/1の『冥界の番犬・ケルベロス』、2/1の『番犬の右腕・ココ』、1/2の『番犬の左腕・ミミ』。
葛木の盤面は無し。
後攻5ターン目、葛木のターン。最大PPは7。
ノータイムでプレイ。
《世界は私の下にある!》
プレイされたのはエンハンス効果の『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』。
ファンファーレが発動する。
《私の下で、千切れ飛べッ!》
『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』自身も含めて全体に1点ダメージ。この効果で『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』は進化。
三和の盤面の体力1だった『冥界の番犬・ケルベロス』と『番犬の右腕・ココ』が破壊される。
『番犬の右腕・ココ』のラストワードにより再び『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』に1点ダメージ、葛木自身に2点ダメージ、葛木のライフは残り12。
『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』は進化状態でダメージを受け破壊されなかった場合、1ターンに一回場のランダムな敵フォロワーと敵リーダーに3点ダメージを与える効果を持つ。
《愚かすぎる!》
ランダム3点ダメージは『死の夢の少女』に当った。『死の夢の少女』を破壊し、三和のライフを3点削り16点まで減らす。ラストワードで『深淵の夢』が三和の手札に加わり、『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』に1点ダメージを与える。
体力2残した『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』は『番犬の左腕・ココ』を攻撃。反撃とラストワードの1点を受けて『侮蔑の絶傑・ガルミーユ』は破壊される。
もうひとつ『番犬の左腕・ココ』のラストワードの効果で三和のライフが2点回復。三和のライフは残り18点。
お互いの盤面が0となった。盤面はイーブンだが、三和の進化権を葛木は進化権を消費せずに返した。
「ターンエンドだ」
哲夫が額に手を当てる。
「ガルミーユケアは常識だろうに。また手札が事故っていたのか?」
「ううん。たぶん三和君は、『異界を統べる者』を警戒したんだと思う」
「異界を統べる者?」
《異界を統べる者》
コスト7 攻撃力6 体力6。
[ファンファーレ]『相手のリーダーのクラスのベーシックカードの中から、ランダムに異なる2枚を手札に加え、それらのコストを-3する。』
「異界を統べる者が手に入れるカードはランダムだけど、ネクロマンサーのベーシックカードには強いカードが多いんだ。セレスをプレイしても異界を統べる者だったら上からとられるし、それに葛木君は手札に『銀氷の吐息』を残している。セレスを出してもたぶん楽に処理されたと思う。だからわざとガルミーユを撃たせたんだよ」
「な、なるほど……。ってか永瀬、お前本当に勉強しているんだな……」
「え? あ、たまたまね」
6ターン目先行、三和のターン。
3PPを消費してアミュレット『深淵の夢』をプレイ。『ゴースト』を1体呼び出す
『ゴースト』で葛木を直接攻撃し、ライフを11点に減らすと、『ソウルコンバージョン』で『ゴースト』を破壊、2枚ドローする。
残った2PPで『死の夢の少女』をもう一枚プレイ。
「あれ? なんだかんだで葛木のライフ減ってきてねぇか?」
「そうね。アーカスを置ければ一気に即死圏内だわ」
6ターン目後攻、葛木のターン。最大PPは8。
(さすがに回復しないとまずいか……?)
葛木は4PPで『白亜の竜騎士』をプレイ。ファンファーレでチョイスしたスペルを手に入れる。
チョイスしたばかりの『白亜の瞑想』を2PPで使う。
『白亜の瞑想』の効果は6点のリーダーのライフを回復する。これによって葛木のライフは残り17。
「カーッ! インチキかよ!」
一気に回復されたライフに哲夫がうなる。
葛木は『白亜の竜騎士』を進化。死の夢の少女を破壊。
場には5/4の『白亜の竜騎士』が残った。
7ターン目、三和のターン。
「アーカスのターンだけど、アーカスを着地させるかしら」
美鈴はつぶやく。
『深淵の夢』の効果で『ゴースト』が一体生まれる。
その『ゴースト』は葛木を直接攻撃。ライフを16にまで減らすと、『グール』をプレイ。2枚ドローする。
残った5PPで『悪意の憑依』と2枚目の『深淵の夢』をプレイ。『悪意の憑依』の2点と2体の『ゴースト』で『白亜の竜騎士』を倒すとターンエンド。
7ターン目後攻、葛木のターン。
最大PPは9。
プレイしたカードは9コストニュートラル・フォロワー『氷獄の王・サタン』。
《嘆きの河より世界を沈める》
門が開き、葛木の山札が全く異なるデッキへと変貌する。
『氷極の王・サタン』の能力は、デッキ自体を『コキュートスデッキ』という『氷獄の王・サタン』専用の強力なデッキに入れ替える能力だ。
「ふん。進化するまでもないか」
三和の貧弱なフォロワーを見て、葛木はそのままターンエンド。
三和の盤面には1/1の『グール』とカウントダウン2の『深淵の夢』とカウントダウン3の『深淵の夢』。ライフは残り18。
葛木の盤面には7/7の『氷獄の王・サタン』。ライフは残り16点。
先行8ターン目、三和のターン。
プレイしたのは『幽霊支配人・アーカス』。
「さっきのドローで引きやがったな」
度重なるドローカードで今の三和には7枚もの手札がある。
三和はプレイした『幽霊支配人・アーカス』を進化。『氷獄の王・サタン』を攻撃。
《冥界で会おう……》
不気味な言葉を残して『氷獄の王・サタン』は破壊される。
そして残った『グール』と『深淵の夢』で生み出された『ゴースト』2体で攻撃。
葛木のライフを14点に削る。
後攻8ターン目、葛木のターン。使用できる最大PPは10。
葛木は『蒼の少女・ルリア』をエンハンス効果でプレイ。ランダムなコスト7以上のニュートラル・フォロワーを1枚手札に加える。
コキュートスデッキは全てニュートラル・カードで構成されるが、コスト7以上のカードは2枚、『貪り食うベヒーモス』か『異端なる冥獣』だ。
葛木が引いたのは『貪り食うベヒーモス』だった。
葛木は手札にこれまで温存していた『銀氷の吐息』を使って『幽霊支配人・アーカス』を破壊。
『貪り食うベヒーモス』をプレイし、進化して『グール』を破壊、ターンエンド。
『貪り食うベヒーモス』のターン終了時効果によって三和は9点のダメージを受け、ライフは残り9。
「相変わらずえげつねーぜ。コキュートスデック」
哲夫がうめく。コキュートスデッキはあらゆるカードが強力だ。
中でも注意すべきなのが『アスタロトの宣告』。10コストスペルと重たいが相手のリーダーのライフを1にする効果がある。
盤面に一体でも残して葛木にターンを回してしまうと、即座に負けになる可能性がある。
先行9ターン目、三和のターン。
6ターン目に置いた方の『深淵の夢』が最後の『ゴースト』を生み出し破壊される。
三和は『深淵の夢』で生み出された2体の『ゴースト』で『蒼の少女・ルリア』を破壊し盤面を開けると『ビッグソウルハンター』をプレイ。墓地6を消費して『貪り食うベヒーモス』を破壊し場に3体の『ゴースト』を呼び出す。
3体の『ゴースト』で葛木を直接攻撃。
葛木のライフを11点まで削ると、空いた場所に『永遠の花嫁・セレス』をプレイ。
ターン終了。
『永遠の花嫁・セレス』の効果で三和のライフが3点回復、残り12点。
「墓地は消費してよかったのか? ニコラは手札にきていないのかよ?」
「えっと……もし『怒り狂う氷魔』と『貪欲なスコーピオン』があったらそれでリーサルだからセレスで回復したかったんじゃないかな」
「おいおい、そんな悠長にしている場合かよ」
後攻9ターン目、葛木のターン。PPブーストしても最大PPの限界値は10なのでこのターンに使えるPPは10。
(次は三和君の10ターン目。フェリでの爆発的な打点に備えておきたいところだと思うけど……)
葛木は『ポセイドン』をプレイ。
そして余った2PPで『暴竜・伊達政宗』をプレイする。
《独眼竜の咆哮に震えよ!》
《暴竜・伊達政宗》
コスト2 攻撃力2 体力2
必殺
[ファンファーレ]『自分のPP最大値が10なら、自分のドラゴン・フォロワーすべては、突進 と、ターン終了時まで「受けるダメージは0になる」を持つ。』
「伊達ポセかぁ」
「伊達政宗の効果で全員が突進能力を持つ。圧倒的な盤面差も1ターンで覆すドラゴンの切り札ね」
このターン中限定だがあらゆるダメージを無効化するため、『永遠の花嫁・セレス』の交戦時能力も無効化し破壊する。
2/2必殺、1/3守護、1/3守護、5/7と強烈な盤面が残った。
(ルリアとフェリの両方が揃っていれば守護も突破して勝てるけど、もしなかったら……)
いくらアーカスであろうと、全処理するには苦労する盤面だ。1枚でも残せば『アスタロトの宣告』で決まってしまう。
そう、すでに葛木は『アスタロトの宣告』を引いているのだ。
運命の先行10ターン目、三和のターン。
『深淵の夢』が最後の『ゴースト』を吐きだし破壊される。
三和はカードをプレイする。
たった一枚のカードを。
《我が吐息、天地を焦がす……》
『屍竜・ファフニール』だ。墓地を消費し、葛木のフォロワー全てを破壊する。
「くぅ⁉」
葛木が表情を歪ませる。『銀氷の吐息』はすでに使ってしまった。『屍竜・ファフニール』の処理を強要される状況だが、果たして処理できるか。
後攻10ターン目、葛木のターン。
ドローを見て、葛木の表情が変わる。
プレイしたのは『サタンの波動』。
1コストスペルで効果はカードを3枚引く。
ただでさえ強いコキュートスデッキを一気に3枚ドロー。これで複数枚のコキュートスカードを組み合わせることができるようになる。
そして、一転して葛木の表情が喜悦に変わった。
『欲望を纏う者』。
能力は『自分のターン終了時、ランダムな相手のフォロワー一体を破壊し、破壊したフォロワーの攻撃力分の値、リーダーのライフを回復する』。
さらに『悪意の炎帝』をプレイ。疾走能力により、三和のライフを5点削って三和のライフは残り7点。
ターンエンド。『屍竜・ファフニール』は『欲望を纏う者』の効果で破壊され、葛木のライフを8点回復する。これで葛木のライフは19点まで回復する。
相手の場に守護が無いとは言え、葛木のライフは遠い。
三和に打つ手はあるのか。
先行11ターン目、三和のターン。
三和は『永遠の誓い』をプレイ。手札のネクロマンサー・カードのコストを2下げる。
そして0コストとなった『禁絶の腕・ニコラ』を2枚プレイ。4体のゴーストで『欲望を纏う者』の体力を残り1点まで減らす。
残り4PP。1PPで『怪物の少女・フラン』をプレイ。チョイスしたカードは『フランの呪い』。
『フランの呪い』と2体のゴーストで盤面を全除去し、葛木のライフを1点削って残り18。
そして『永遠の花嫁・セレス』を3PPでプレイ。
ターンエンドで3点回復。三和のライフは残り10。
『貪欲なるスコーピオン』の即死圏内を免れた。
「しぶといねぇ」
葛木の表情が憎々しげに歪む。
『永遠なる誓い』を撃たれてしまった。これでもし2コストフォロワーがもう1枚コストが下がっていたら、『グレモリー』と『幽想の少女・フェリ』で葛木のライフ18点削ることも不可能ではない。
(守護を立てるしかないか……)
葛木は8PPで守護を持つ『異端なる冥獣』をプレイ。
『異端なる冥獣』は他のフォロワーの数と同じダメージを自分のリーダーに与える代わりに、他のフォロワーすべてを破壊する効果を持つ。場には『永遠の花嫁・セレス』があるので葛木のライフが1点削れて18点、代わりに『永遠の花嫁・セレス』が破壊。
そして残った2PPで『怒り狂う氷魔』をプレイ。進化権を2回復する。
回復したばかりの進化権を使って『怒り狂う氷魔』を進化。
場には8/8守護の『異端なる冥獣』と6/6の『怒り狂う氷魔』が残った。
「ターンエンドだ」
先行12ターン目、三和のターン。
「長いな」
哲夫が思わず漏らした。
「うん」
美鈴もうなずく。
しかし。
「使ったな?」
三和が眼鏡の位置を直しながら言った。
「うん? 何をだ?」
葛木には三和の問いの意味がわからなかったようだ。
三和は答えることなくカードをプレイする。
まずは『ビッグソウルハンター』。
「ち、うざいカードだ」
破壊されたのは『怒り狂う氷魔』。場に3体のゴーストが並ぶ。
残り7PP。
三和がプレイしたのは『飢餓の絶傑・ギルネリーゼ』。
場に並んだ『ゴースト』全ての攻撃力を+2し、9点の攻撃力で『異端なる冥獣』を破壊する。
「そうか! 潜伏状態の『ギルネリーゼ』を破壊できるのはランダム除去だけ! でもランダム除去を持つ『異端なる冥獣』も『欲望を纏う者』も使ってしまった! 葛木君のデッキにはもうギルネリーゼを破壊するカードがない!」
「それだけじゃない」
三和が冷静にいった。
「葛木、お前の手札はまわっていたが、おかげでライブラリアウトだ」
「ライブラリアウト……って何?」
美鈴がきょとんとする。教えてくれたのは哲夫だった。
「シャドウバースには相手のライフを0にする以外にも勝利する方法があるだろ? 相手のデッキを空にするっつー」
「あっ」
デッキが空になった状態で追加の1ドローをすると負けになる。それがシャドウバースのルールだ。
「それがライブラリアウト?」
「そう」
コキュートスデッキは強力なカードばかり揃ったデッキだが全部で13枚しかない。
葛木はその内8枚を引き、デッキは残り5枚。
『飢餓の絶傑・ギルネリーゼ』には『自分のターン開始時、このターンが10ターン目以降なら、自分と相手はカードを5枚引く』という効果がある。
次のターン、いかなる盤面を構築しようと、三和にターンがまわれば葛木も強制的に5枚のカードを引かされ、ライブラリアウトで負けだ。
「ら、ライブラリアウトだと⁉ くそっ……」
後攻12ターン目、葛木のターン。
葛木に残された手段はなかった。
6PPで『貪欲なるスコーピオン』をプレイ。7/6疾走・必殺・ドレイン持ちというコキュートスデッキでも屈指のフォロワーだ。それを進化させて三和のライフを9点削り、葛木自身のライフを9点回復する。
三和のライフは残り1。
葛木のライフは残り20。
葛木は残った3PPで『氷獄の王・サタン』をアクセラレートでプレイ。デッキに3枚のコキュートスカードを加える。
これでライブラリアウトだけはまぬがれたが、盤面には『飢餓の絶傑・ギルネリーゼ』が残ったままだ。
ターンエンド。
三和へとターンがまわる。
先行13ターン目、三和のターン。
『飢餓の絶傑・ギルネリーゼ』の効果により、三和と葛木両方が5枚のカードをドローし手札が溢れる。
今ひいたのか、それとも三和の手札では初めから完成していたのか。
「0コストで『幽想の少女・フェリ』をプレイ。そして『グレモリー』をエンハンス効果でプレイ」
5/7、3/3、3/3、1/1。
そして『飢餓の絶傑・ギルネリーゼ』は3回攻撃を持つ。
22点のワンターンキルだ。
場がどよめいた。
丁寧に相手のカードをケアし、完封で抑え込んだ三和の勝利だ。
「ふん、まあ元々ドラゴンはネクロに不利がつくからね。よくやれたものさ」
葛木は少し言い訳めいた言葉を口にする。確かにネクロマンサーの10ターン目以降の爆発力はドラゴンをも凌駕するし、『ビッグソウルハンター』のように対策カードも多い。
しかし葛木のカードの引きはかなりよかったはずだ。三和はそれらをしっかりとケアし、丁寧に勝ち切った。
「さて、最終戦だ」
葛木のサタンドラゴンと、三和のヴァンパイア。
どちらが勝つか。
BO3は最終戦までもつれ込んだ。
シャドバ用語
・OTK
One turn Killの略。1ターンで20点以上の打点を出して勝負をつけること。
厳密にはOTKではなくても1ターンに高打点を出すことをOTKということもある。
使用デッキ
三和
3話と同じ
葛木
https://twitter.com/fet_light/status/1122007462926643201