先日の適正検査の結果により、上記の者を艦娘とする。
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中学の卒業式の帰り道。
小学校から一緒だった友人たちと別れ、一人家に帰る途中のことだった。
「えーと。ああ、君が例の子だね
話は聞いてる。今日付で君はこの、肥前鎮守府への配属が決定した。」
「はあ、おはようございます。
今日もいい天気ですね、昨日の雨がまるで嘘みたいだ。そうは思いませんか?」
「私は、君と同じで肥前鎮守府に配属が決まった者だ。
君と違うのは、私は司令官として。君は特型駆逐艦吹雪型の5番艦叢雲として私と一緒に着任するということかな」
だめだ…この人は
自らを軍人だ、と名乗り?名乗ってはないよな。
軍人だと告げた男が独壇場で話し始めたのを聞くしかなかった。
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全ての始まりは、先月。
この国では、中学を卒業すると海軍の適性検査を受けることが義務付けされている。
男子は指令官としての、女子は艦娘としての適性検査が行われている、筈だった。近年では、深海棲艦と呼ばれる化け物たちの動きが活発化しているらしい。それに対し、艦娘並びに司令官の数が足りないことが問題視されていた。
ここで政府は、賭けに出た。
適性検査の男女差別化の撤廃。簡単に言うのであれば、司令官の適性検査しか受けることのできなかった男子でも、艦娘の適性検査を受けることが出来る。その逆もしかり、その功も奏してか女性提督の数は増えているらしい。もっとも、今まででは男性艦娘の存在が確認されることはなく、男子高校生を目前とした健全な男子諸君は男子禁制だった
もちろん、元々は俺もその口で検査に参加した。そして、見事俺だけが適性検査に合格したのであった。
ちなみに艦娘としてだけでなく、司令官としての適性も出てたらしいが近年では司令官も増えてきており、艦娘の需要があがりその数が足りなくなってきた(俺らはモノじゃねぇぞ)という勝手な理由で艦娘に就職先が決まってしまった哀れな俺なのだ。
【
今、俺の目の前にいる男は見るからに軍人。新品同様なシミ一つ無い軍服に身を包み、腰には軍刀を帯刀している。男の一歩後ろには、眼鏡をかけている女性も立っている。
適性ありとされた者は、ほぼ強制的に従軍することが義務とされている。司令官としてならまだしも、艦娘。俺は生まれてきてから15年間男として生きてきた。今更、女として。それもいつ死ぬかも分からない艦娘としてこの先生きていくなど、耐えれるわけがない!
というわけで、
ツバメ ハ ニゲダシタ 。
兵法三十六計逃げるに如かず。ってな!
ダッ!
ガッ!!
「申し訳ありませんが、逃がすわけにはいきませんので。
ご了承してください」
最後に見たのはアスファルト。きいたのは眼鏡の女性の声だと思わしき女性の声だった。