バカとテストと召喚獣withグリモア! 〜君と僕で紡ぐ青春(いま)〜   作:ウォーズ -IKUSA-

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「前回のあらすじッ!」

試召戦争を起こすことに反対だったハルは、雄二から設備交換以外の報酬を要求するというアイディアに納得してくれた。今度はクラスメイトたちを説得する番だ!



第5話 士気高揚

晴陽side

 

 

僕たちが教室に戻ると、福原先生も新しい教卓を持って来ていた。中断していた自己紹介も特に問題なく進んでいき、最後の1人になった。

 

「坂本くん、君が最後の1人です。確かF(この)クラスの代表でしたね? お願いしますよ」

 

「了解!」

 

 

力強く返事した雄二は教卓の前に立つ。

 

 

「代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼ぶと良い。……さあ、お前たち。Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートを標準装備なのは知ってると思う。それらを踏まえて聞くぞ……、不満はないか?」

 

 

『『『『『大アリじゃあッ!!!!!』』』』』

 

 

クラスメイトたちの魂の叫び。こうして見ると、雄二の人心掌握術はすごいと感心する。

 

「だろう? 俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として、これは無視できない」

 

「いくら学費が安いからって、この設備はあんまりだ! 改善を要求する!」

 

「まったくだ! Aクラスだって同じ学費だろ? こんなの酷すぎるぞ!」

 

口に出さないだけで、みんな酷いって思ってたんだ。だったらちゃんと勉強して、上位クラスに行けば済む話なのにね。

 

「そこで代表として提案だが………。俺たちFクラスは、Aクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う!」

 

雄二が高らかに宣言するが、その言葉を無謀な挑戦と捉えてしまったらしく、

 

「無理だ……」

 

「勝てっこないよ……」

 

「これ以上設備を落とされるのはやだ」

 

「姫路姉妹がいてくれたらそれで良い」

 

「俺は宵宮さんだな」

 

「なら俺は南さんを選ぶ」

 

「じゃあ俺はノエルちゃんだ」

 

みんな沈んだようにこう言った。後半の4人がラブコール送ってるのは無視するとして、後でアキを落ち着かせなきゃね。智花にラブコールしてたヤツに殺気を送っていたし。

……とりあえずそれは置いといて、みんながそう言うのも理解できる。何せAクラスとFクラスでは、戦力差が大きいからね。『戦いは数』という言葉はあるけど、Aクラス1人に対してFクラス3人……いや、5人でも太刀打ちできないだろう。

普通なら、ね。

 

 

「安心しろ。大丈夫だ、必ず勝てる。俺が勝たせてみせる!」

 

「馬鹿なことを言うなよ」

 

「何の根拠があるんだ?」

 

自信有り気な雄二の言葉に、須川くんと横溝くんが疑わしげに聞いた。

 

「根拠ならあるぞ。このクラスには試召戦争に勝つ為の戦力……手札があるからな。それを今から説明する」

 

そして、次なる言葉にクラスメイトたちがざわつく。それから雄二は康太に視線を移した。

 

「おい、康太。いつまでも姫路のスカートを覗いていないで、こっちに来い」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

「きゃっ!?」

 

必死に顔と手を左右に振って否定する康太。またやってたんだね。姫路さんも少しは警戒した方がいいだろう。正直言って、無防備な気がする。

 

「まず1人目は土屋康太。コイツがあの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」

 

「…………!!(ブンブン)」

 

「ムッツリーニだと!」

 

「馬鹿な、ヤツがそうだというのか!?」

 

「だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……」

 

「ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ」

 

「「「???」」」

 

申し訳ないけど、恥じるべきだと思う。

ノエルと姫路さんと宵宮さんは、何のことだかわかってないようだけどそれで良い。何も知らない方が幸せなことは世の中にはあるからね。

 

「姫路姉弟と宵宮蝶影のことはみんなもわかっているだろう。F(この)クラスの主力の一角だ」

 

「わ、私ですか?」

 

「……ボクが?」

 

「ちかげも〜?」

 

「ああ。期待してるぞ」

 

雄二の言葉を聞いて照れたのか、和希くんが俯いた。そんな彼を姫路さんと宵宮さんがフォローしている。ともあれ、この3人がいるのは実に頼もしいだろう。

 

 

「そうだ。俺たちには姫路姉妹と宵宮さんがついている!」

 

「3人がいれば怖いものなしだ!」

 

「姫路姉妹ラブリー!」

 

「宵宮さん、付き合ってくださいッ!」

 

 

だからさ、雄二の言うこと聞いてた? 和希くんは男だよ? しかもドサクサに紛れてラブコールしてるヤツもいるし。士気が高まるのは良いけどさ。それに、宵宮さんは想い人がいるから諦めようよ。

 

 

「そして蔵馬晴明は文系科目……とりわけ、日本史が優れている。Aクラスの連中でも上回れるか怪しいほどにな」

 

そう、晴明の日本史の成績は学年トップだ。僕とアキの得意科目の1つに日本史(この科目)が加わったのは、彼の指導の賜物である。

 

「それに南智花、岸田夏海、朝比奈龍季、冬樹ノエルも訳あってFクラスだが、Aクラスに対抗できるだけの実力を持っている!」

 

「南さんもいるんだった!」

 

「岸田はムッツリーニと同じで、“あの人”の弟子だよな?」

 

「朝比奈はじゃじゃ馬だと思ってたけど、スゲーらしいぜ」

 

「ノエルちゃんは冬樹イヴの双子の妹だからな!」

 

「……おい。誰か失礼なこと言わなかったか?」

 

「抑えて龍季ちゃん! ここは我慢だよ!」

 

「……フン」

 

微妙に貶された龍季は不機嫌そうだったけど、ノエルが宥めたので一応静まった。

 

「木下秀吉は古典、島田美波は数学、クルト・アードラーは世界史……と、それぞれ個々に強みがある!」

 

「おお、すごいな!」

 

「なんか行けそうな気がするぞ!」

 

「もちろん、俺もベストを尽くす」

 

「坂本は昔『神童』って呼ばれてたよな」

 

「Aクラスレベルの実力者がたくさんいるって訳か!」

 

「やる気が出て来た!」

 

大きな戦力がいるとわかって、クラスの士気は最高潮に達する。

 

「そして、俺たちのジョーカー……。吉井明久と真境名晴陽だっている!!」

 

 

……シーン―――

 

 

僕とアキの名前を告げた瞬間、さっきまでとは打って変わって静かになった。

 

 

「誰だ、吉井と真境名って?」

 

「そんなヤツらこのクラスにいたか?」

 

いや待って。さっき自己紹介したクラスメイトのことを忘れるって、どうなの? ギャグだよね? もし本気だったら、冗談抜きでコイツらの頭が心配だ。

 

 

「諸君、思い出すんだ。吉井と真境名は我らの何かな?」

 

あ、須川くん。なんだかんだで彼は……。

 

『『『『『我らの敵! 反逆者だ!!』』』』』

 

「うむ。わかっているではないか」

 

前言撤回、須川くん(コイツ)も同類だった。

 

「コイツらがジョーカーの根拠は?」

 

「わかった、そこまで言うなら教えてやる。コイツらの肩書きは……、『観察処分者』だ!」

 

横溝くんの疑問に、雄二は僕とアキの肩書きを伝える。

 

「それって馬鹿の代名詞だったか?」

 

「こんなのが切り札だなんて……」

 

「『神童』も地に落ちたか……」

 

「期待ハズレだぜ」

 

好き勝手言うクラスメイトたちに、僕たちが観察処分者になった事情を知ってるメンバー(特に晴明)が険しい顔になる。僕とアキの為に怒ってくれるのは、とても嬉しかった。

 

「ねぇねぇ、坂本くん」

 

「どうした、宵宮」

 

「観察処分者ってなぁに?」

 

 

宵宮さんが無邪気に聞いて来る。彼女は意図してなかったが、結果的に重々しい空気を変えてくれたようだ。

 

「基本的には教師の雑用係だな。力仕事といった雑用を、特例として物に触れる召喚獣でこなすのが役目だ」

 

「そうなんだ〜。召喚獣は力持ちって聞いたし〜、吉井くんと真境名くんすご〜い♪」

 

宵宮さんが、尊敬の眼差しで僕とアキを見る。ちなみに、智花がヤキモチを焼いてるように見えたのは内緒だ。

 

「あ、ありがとう……。でも、そんな大したものじゃないよ? 召喚獣の負担の何割かは、僕たちに返ってくるからね」

 

「うん。それに教師の承認がないと召喚できないから、デメリットの方が多いんだ」

 

「と言うことは、気軽に召喚できないヤツが2人もいるってことか?」

 

横溝くんの言うことは尤もだ。2人もまともに戦えないのは、不安だろう。……僕とアキが正真正銘の馬鹿だったらの話だが。

 

「少ないが、ちゃんとメリットもある。観察処分者であるということは、召喚獣の扱いは学年中の誰よりも優れているということだ。 ……わかっているな? だから明久と晴陽は切り札(ジョーカー)だ!!」

 

「そうか! それなら問題ないな!」

 

「わかれば良い。……みんな。この待遇は、大いに不満だろう!」

 

『『『『『当たり前だぁッ!!!』』』』』

 

「ならば全員(ペン)を執れ! 出陣の準備だ!」

 

『『『『『おおーッ!!!』』』』』

 

「俺たちに必要なのは卓袱台じゃねぇ! Aクラスのシステムデスクだぁ!」

 

『『『『『おっしゃぁーッ!!!』』』』』

 

「「「「お、おーっ!」」」」

 

 

やっぱり雄二の統率力はすごいや。どん底だった士気を、最大まで持っていったのだから。

智花たち(と一部の男子)も何とかついて行ってる。

 

「まずはDクラスから攻めようと思う。明久、晴陽。Dクラスの宣戦布告に使者として行ってくれないか?」

 

「「うん。わかった」」

 

「頼んだぜ」

 

 

僕とアキは宣戦布告の為Dクラスへ向かった。

 

 

 

 

 

〜Dクラス教室〜

 

 

“ガラッ”

 

 

「「失礼します」」

 

「Fクラス大使の真境名晴陽と」

 

「吉井明久です」

 

「え? 晴陽くんと明久くんじゃない!」

 

扉を開けると、1人の女子生徒が出て来た。

彼女は松島(まつしま)みちる。智花と同じ部活に所属していて、智花を通して仲良くなった女の子だ。

 

「やあ、みちる」

 

「Dクラスだったんだね」

 

「今Fクラスって聞いたけど、どういうこと? Aクラスを目指したんじゃなかったの?」

 

「それは俺も知りたいところだな」

 

近づいてきたこの男子生徒は玲泉昇瑠(れいせんのぼる)。宵宮グループの次期総帥にして、宵宮蝶影の想い人。つまり、婚約者である。

 

「昇瑠もいるのか。それなら説明しなきゃね」

 

 

 

〜事情説明中〜

 

 

 

「……という訳なんだ」

 

「なるほどね。智ちゃんは大丈夫かな?」

 

「(コクッ)夏海もノエルも一緒だよ」

 

「そうか。蝶影様はどうだ?」

 

「姫路さんと和希くんもFクラスだから大丈夫だよ」

 

「良かった……。礼を言うぞ明久、晴陽」

 

「「どうも♪」」

 

 

おっといけない、つい話し込んじゃった。僕たちは一応使者として来ているからね。

 

「それはそうと、代表は誰なんだい?」

 

「俺がD(この)クラスの代表だ」

 

そう言って現れた男子生徒は平賀源二(ひらがげんじ)。去年はクラスが違ったが、中学生の頃からの付き合いになる。毎回って訳じゃないけど、たまには遊んだりする仲だ。

 

 

「源二! 君だったのかい?」

 

「そうだ。晴陽、明久。だいたいわかってるが、あえて聞くぞ。用件はなんだ?」

 

「話が早くて助かるね」

 

僕とアキは呼吸を合わせてこう告げる。

 

「「僕たちFクラスは、Dクラスに試召戦争を申し込むよ!!」」

 

「やっぱりな。Fクラス(そっち)には坂本がいるだろ?」

 

「わかってたんだ?」

 

「ああ。初日から仕掛けてくるのはヤツ以外にいないからな。それで、開戦は何時からだ?」

 

「午後1時からで良い?」

 

「構わないぞ」

 

「じゃあ、また後でね♪」

 

そう言って僕たちがFクラスへ帰ろうとしたとき。

 

「ちょっと待ちな!」

 

「下級クラスのくせに生意気だぞ!」

 

やっぱりこうなるよね。まあ、予想通りではあるのだけど。

 

「仕方ないか。……ハル」

 

「OK、アキ」

 

襲い掛かって来たDクラス生徒の背後に一瞬で回って、気絶させた。

 

「それくらいにしておけ。お前たちでは明久と晴陽(あの2人)に勝てない」

 

「ありがとね源二。助かったよ」

 

「礼には及ばないぞ。こんなヤツらでも大事な仲間で、戦力だからな」

 

「ちゃんと代表できてるじゃない」

 

「褒めても何も出ないぞ?」

 

「ううん、本心だよ? 戦い甲斐があるからね」

 

僕の言葉に源二は嬉しそうな顔をした。

 

「それじゃあ今度こそ、また後でね」

 

「明久くん、晴陽くん! 智ちゃんと夏海ちゃんとノエルちゃんによろしくね!」

 

「蝶影様にも言っておいてくれ!」

 

「わかってるよ♪」

 

こうして僕たちはFクラスへと戻って行った。下克上は、ここから始まる……。

 

 

See you next stage……




「第5話でしたー♪ ここから試召戦争に突入だ!」

「でもその前に、Aクラスsideの話も挟むよ。というわけで、次回は飛彩とAクラスメンバーが中心になる(予定)だよ♪」

「そろそろAクラスメンバーも見たい! という読者様もいらっしゃるかと思われるので頑張ってね、作者!」

「次回も楽しみにしててね☆」

「シーユー♪」




飛彩「Fクラスが試召戦争を起こす少し前。Aクラスでも自己紹介が始まる。見慣れた顔ぶれが集う中、癖のある生徒もまた在籍していた。
……面白い。だからこそ代表になった甲斐がある……!」


飛彩「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『自己紹介! 〜in Aクラス〜』。 Let's go……fight!!」

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