バカとテストと召喚獣withグリモア! 〜君と僕で紡ぐ青春(いま)〜   作:ウォーズ -IKUSA-

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「前回のあらすじッ!」

工藤さんや久保くんを中心とした先遣隊を差し向けたAクラス陣営に対してCクラスは月詠と焔、浅梨を軸に攻めて来た。
結果、Cクラス陣営が前哨戦を制して幸先の良いスタートを切る。とは言えAクラス陣営からすればまだ小手調。ここからが本番であると共に時を同じくして、優子さんと矢坂さんが今まさに激突しようとしていた!


第12話 優子vs小夜子

No side

 

 

〜3年裏Aクラス教室〜

 

 

「むむむ……」

 

文月学園の制服にフードを被った薄い紫のセミショートヘアが特徴的な少女が、水晶玉から試召戦争の様子を伺っている。

彼女の名前は西原(さいばら)ゆえ()。一見小学生かと見紛う程小柄だがれっきとした高校3年生であり、戦闘向きの人材が多い裏Aクラス内では珍しいサポート向きの貴重な存在だ。

 

「ゆえ子。状況はどうなってんだ?」

 

「遭遇戦はCクラスが勝利しました。現時点ではそちらが有利ですよ、京くん」

 

京が話し掛けるとゆえ子はこのように答える。

新学期初日にDクラスに挑んだFクラスがそうだったように、中位レベルとはいえCクラスもまた、上位クラスのAクラスと互角に戦えているという事実を知った首脳陣は目を丸くする同時に嬉しくもあった。

当然だ。自分たちの後を継ぐかもしれない後輩たちが下の学年に集い、持てる力をぶつけ合っているのだから。

 

「そうか。今戦っている連中で、私を満足させてくれるヤツはいるのだろうな?」

 

「滾っているな、つかさ。アタシも後輩たちと手合わせするのが楽しみだから気持ちはわかるぞ」

 

「ですが会長、生天目さん。あなた方2人と草薙くんと八神くんは『四英傑』と称される裏Aクラスの中心。軽はずみな行動は自重してください」

 

虎千代とつかさがこう言うと、腰まである黒い長髪をポニーテールに纏めた少女……水瀬薫子(みなせかおるこ)が2人を窘めた。

生徒会副会長を務めている彼女は、武闘派の虎千代を支える才女でもある。

 

「なるほど。……そういえばCクラスには月詠と焔と浅梨がいたな。師匠としての観点から、アイツらはどうだエレン、メアリー、レオナ?」

 

ここで会話に混ざった緋炎が、3人の少女に声を掛けた。

眼帯をつけた少女……エレン・アメディック、金髪が特徴的な少女……メアリー・ウィリアムズ、青髪をポニーテールに纏めた少女……レオナ・ハイデルン。彼女たちは1年次に来日して来た、海外からの留学生だ。

 

「うむ。守谷は直接戦闘よりも指揮の仕方を中心に鍛えているな」

 

「ワガツマはアタイに近いタイプだから、遠距離での効率的な攻めをレクチャーしてるぜ」

 

「そうね……。来栖さんには、基本的なこと以外は自由にさせているわ。私のやり方はあまり人に勧められるものじゃないから」

 

「まだ足並みが揃っていない感はあるが、訓練を積めば今よりも連携の精度が上がっていくだろう」

 

「ふむ……、そうか」

 

3人がこう答えると緋炎は嬉しそうな顔で頷いた。彼にとっても、優秀な後輩たちが台頭して来るのが楽しみで仕方ないのだろう。

 

「ところでキョウ。ちょっと聞きたいんだけどよ」

 

「なんだよメアリー」

 

「クルスのヤツ、結構前からだけどオメーのとこにも来てるだろ? ヨシイとかヤブキもいるのに、苦労しねぇのか?」

 

「それは私も思ったぞ草薙。近頃はお前の真似までしだすからな」

 

ふとメアリーが京に尋ね、エレンもそれに便乗する。直接鍛えている身としては気にもなるだろう。

 

「去年の2学期の後半から押し掛けて来たんだよ。メアリーの言う通り、明久も真吾も鍛えているからどうしようか迷ったけど、必死だったから断るのも悪いと思ってそのまま受け入れたのさ」

 

「そう……」

 

「なんだかんだで、後輩の面倒をちゃんと見るのが京の良いところかな。モテる男は辛いねぇ」

 

「ちょ……、やめろって鳴子」

 

京の答えにレオナは納得し、鳴子は茶化しながらも褒めるものだから、普段はクールを装う彼は照れている。

 

「へぇ〜、そうなんだぁ……」

 

「ん、なんだ……?」

 

一連の流れを聞いていた黒いロングヘアーの女子生徒が京をジト目で見つめてこう呟く。彼女の名は村正衣玖(むらまさいく)。裏Aクラスに相応しい実力を持つと同時に学園屈指の狂人とも評される少女だ。

 

「明久くんもいるのになぁ〜。草薙くんばっかりずるい……」

 

「……おい村正、見ただけで殺せそうな目で俺を見るのをやめろよ」

 

「良いのかなぁ草薙くん、焔ちゃんにまで手を出して。虎ちゃんと薫子ちゃんに言いつけちゃおうかなぁ〜?」

 

「変なことを言うな! 焔は弟子以上の感情は持ってねぇ……ってちょっと待て薫子! そんな顔で見るな、頼むから!」

 

「災難だな、京」

 

衣玖と薫子に睨まれる京を見て庵がこう言った。仲が悪い訳ではないハズなのだが、彼が困った状況に陥るのが面白いらしい。

 

「八神! 見てるんなら助けろよ!」

 

「俺が素直に助けると思っているのか。自分でなんとかして見せろ、それくらいは容易いだろう?」

 

「テメェ……!!」

 

「その辺にしろ庵、村正。薫子も落ち着け。アタシがいる以上は裏A(この)クラスで揉めごとを起こさせないから、そのつもりでいるんだ」

 

「フン……」

 

「代表……」

 

「わかったよ、虎ちゃん」

 

見かねた虎千代が庵と衣玖と薫子を宥める。衣玖の方はやや不満気な表情だったが、自分の中で折り合いを付けたようだ。

 

「大丈夫か、京?」

 

「サンキュー虎千代、恩に着るよ」

 

「アタシとお前の仲だ。気にするな」

 

そんな様子を暖かい目で見られていることに気付いた2人はすぐに元の席に戻って自習を再開し、周りもそれに倣った。

彼らの実力が見れるのはまだ先のようである……。

 

 

 

 

 

「ふふふ……、この戦争の勝者はどちらか。それを知るのは天のみぞ……です」

 

「まだやってたのか……」

 

 

 

No side out

 

 

 

 

 

優子side

 

 

アタシは今、Cクラスの部隊と向き合っている。それを率いているのはさよちん……矢坂小夜子だ。

 

「小夜子ッ、どうしてアンタは……!」

 

「前にも言ったでしょ? あたしは普通の学園生活を楽しみたいって。だからC(この)クラスに来たんだよ」

 

「だけど、Aクラスに来てもできることでしょう? やってく自信がないんだったら、アタシがついてるから……」

 

「優っこ……。気持ちは嬉しいけど、それだと優っこの負担になるよ……」

 

「そう……。言っても届かないのなら、やるしかないわね。福原先生、お願いします!」

 

「はい、わかりました」

 

「行くよ、優っこ……!」

 

話し合いが平行線になった以上は戦う以外にない。小夜子もそれを感じていたのだろう。福原先生に社会科のフィールドを展開してもらい、両クラスが臨戦態勢になる。

 

 

 

 

『『『『『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

現代社会

 

Aクラス

 

木下 優子:405点

 

Aクラスモブ×5:平均327点

 

 

 

Cクラス

 

矢坂 小夜子:389点

 

Cクラスモブ×5:平均224点

 

 

 

 

 

 

双方が召喚獣を呼び寄せた。アタシの召喚獣は黄緑色を基調とした鎧に大型のランスを携行している。対して小夜子の召喚獣は、怜とは違うデザインの巫女服に神楽鈴を持っていた。

 

「流石だね優っこ。辛い時期でも頑張れたのは優っこが一緒にいて、励ましてくれてたからだよ」

 

「……すごく惜しいわ小夜子。アンタとは今年も同じクラスで居られると思ってたから。でも今は、倒すべき敵……!」

 

「これは戦争だからね。恨むのはナシだよ!」

 

「ええ……! みんな、周りの部隊員をお願い! 隊長格はアタシがやるわ!」

 

『『『『『わかった(わよ)!!』』』』』

 

クラスメイトたちに指示を送り、アタシは小夜子との一騎打ちに臨んだ。

 

 

“キンッ!”

 

“ガギィッ!”

 

 

「えいッ!!」

 

「むううッ!!」

 

 

アタシのランスと小夜子の神楽鈴がぶつかって金属音が響く。リーチと点数だけならアタシが有利だけど、小夜子はどの攻撃にも落ち着いて対処している。

 

 

「なんで当たらないの!?」

 

「あたしを軽く見ちゃいけないよ優っこ。キミの癖は全部お見通しなんだからさ」

 

「小夜子ッ!!」

 

 

早く仕留めたい気持ちが先走って攻めが単調になっていくアタシ。小夜子も小夜子で着実にダメージを稼いでいくが、いかんせん決定打に欠けていた。

 

 

 

 

現代社会

 

Aクラス

 

木下 優子:328点

 

 

 

Cクラス

 

矢坂 小夜子:341点

 

 

 

 

それでも地道な攻めが功を奏したのか、点数差は逆転していた。このままではアタシが負けてしまう。

 

 

「一か八か、やってみるわ……」

 

ランスに力を込めて小夜子へ特攻を掛ける。その間に点数を減らされていくが関係ない。勝つ為には迷ってなんていられないのだ。

 

「てやぁッ!!」

 

 

“ガギンッ!”

 

 

「武器が……!」

 

 

神楽鈴を弾き飛ばし、小夜子の召喚獣が丸腰になった。このチャンス、逃さない!

 

 

「腕輪発動! 行くわよ、小夜子!!!」

 

「くぅッ……!」

 

すかさず腕輪を発動し、ランスに暴風を纏わせる。それによって増した突進力で小夜子を捉えた。

 

 

「“スパイラル・クラッシュ”!!」

 

 

 

 

 

現代社会

 

Aクラス

 

木下 優子:102点

 

 

 

Cクラス

 

矢坂 小夜子:0点

 

 

 

腕輪の力で増した攻撃力を以って、小夜子を撃破し勝利する。

 

 

「アタシの勝ちね小夜子。どう? 悔しいでしょう?」

 

「ふふっ……、やっぱり優っこはすごいなぁ。あたしじゃちょっと敵わないや」

 

小夜子にあの頃の気持ちを思い出させる為に挑発したのに、悔しがるどころか素直に褒め称えている。まるで子か兄弟の成長を喜ぶように。

 

「な、なによそれ……!」

 

「戦死者は補習よ!!」

 

アタシが怒りに震え始めると同時に、我妻先生が戦死した生徒たちを担いでいた。その中にはCクラス生徒と自分のクラスメイトも混じっていたので、そちらの戦闘も終わったようだ。

 

「お疲れ様木下さん。いい戦いだったようね」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

我妻先生が労いの言葉を掛ける。無下にする訳にもいかなかったので丁寧に答えた。

そして小夜子も担いで補習室へと連行して行くのを見送った。

 

「木下さん、終わったよ」

 

残ったクラスメイトの1人がこう言った。彼女ともう1人しか生存者がいなかったらしい。

 

「お疲れ様。あなたたちはこのまま回復試験を受けて来なさい。アタシは後から合流するわ」

 

「「了解」」

 

 

2人はそう答えてこの場から離れて行った。残ったのはアタシだけ。

 

 

「なんなのよ! 負けたのになんであんな風に笑っていられるの? アタシが認めたライバルで親友だと思ってたのに……。小夜子のバカ…………ッ!!」

 

 

勝ったハズなのに、なぜか負けたような気持ちだ。やり場のない苛立ちをアタシはぶつけることしかできなかった……。

 

 

See you next stage……




「一応優子さんが勝った訳だけど……。なんか後味が悪いと言うか、スッキリしないね」

「すれ違う2人……、和解……或いは元の仲良しに戻るには時間が必要かなぁ……」

「これに関する話は機会があればまたそのうち、ってとこだね」

「次回のバトルも好カード……なハズ! 多分……」

「そう言うことで……、またねー!」

「シーユー♪」



ディセ「ビショップくん含めた戦友と共に進軍した私たちを待っていたのはCクラス陣営の主力の一角…… 十波義行くんでした。『2人でなら行ける』。そう信じていたのですが、その考えは誤りであることを思い知ることになります……」


ディセ「次回。『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『ディセ&ビショップVS義行』。 Let's go……fight!!」

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