バカとテストと召喚獣withグリモア! 〜君と僕で紡ぐ青春(いま)〜 作:ウォーズ -IKUSA-
戦後に黄昏ていた十波くんの回想と立華さんとの語らいの中で、見たことも聞いたこともない女子生徒の名前が出てくる。
飛彩は何か知ってそうだけど、いつかは会うときが来るのか……。
一方の僕たちは、道場へ向かう。そこで研吾先輩から蒼祐のことを頼まれたのだった。
明久side
Aクラス対Cクラスの戦争から一夜明けて、僕とハルは昨日と同じ時間に登校した。
いつもなら多目的道場で体を動かす所だが、恐らく今日はBクラスとの戦争だろう。それに備えて勉強するべく校舎へ向かうと……、
「よぉ明久、晴陽」
「「雄二、龍季!」」
「俺たちが一番乗りだ」
既に雄二と龍季が教室で予習をしている。今日も僕たちが一番乗りだと思っていたので軽く驚いた。
「Dクラス戦はオメーらに任せてた所もあったからな。俺たちも少しは貢献しようと思って勉強しに来たのさ」
「そうなんだ?」
「ああ。今度の戦争はDクラスのときのようには行かないから少し本気を出すつもりだ」
「なるほどね。じゃあ一緒に勉強しよっか♪ ハルもそれで良い?」
「「「うん((良いぜ))」」」
こうして僕たち4人は一ヶ所に集まって互いに確認し合いながら勉強を進めて行った。
その後HRも終えて、クラスメイトたちには回復試験を受けてもらう旨を伝える。次にやるべきことはBクラスへの宣戦布告だけど……。
「今回も僕とハルで行くよ雄二。どうせ使者は碌な目に合わないだろうから、あしらい方を心得ている僕たちの方が都合良いんだ」
「それはありがたいが……、良いのかお前たち?」
「大丈夫だよ雄二。それに研吾先輩からある生徒の現状を確認して欲しいって頼まれたからね」
「研吾って……、『五剣』の小嶋研吾のことか!」
研吾先輩の名前を聞いて思わず声を上げる雄二。一部を除いた
五剣……文月学園に於いて生徒会及び風紀委員会に並ぶ3大組織の一角で、所謂自警団だ。
メンバーは先に出た研吾先輩以外では加州則宗先輩と
活動内容は風紀委員会と似ているけど、学園全体を見据えた風紀委員会と異なり『一般生徒の庇護』、『問題生徒の矯正』等に特化している。
基本的に良い人揃いの組織だけど、村正先輩だけは僕とハルにとって因縁の人だから、正直好きになれそうにない。
魂鋼先輩はハルと一緒に何処かで会ったことがある気がするけど……、何だったっけ。
……まあ、良いか。
「知ってるんだ雄二?」
「俺の戦闘技術を見込んだのか、中武研に誘われているんだ。……とりあえず今は断っているがな」
「そう……」
「まあ、この話は後だ。で、その目当ての生徒がBクラスにいるという訳か?」
「(コクッ) だから確かめようと思う。もし“アイツ”が関わっているなら何とかしたいんだ」
「雄二、僕からもお願い。研吾先輩はお世話になっているし、何よりも“彼”は友達だから」
「わかった。なら、宣戦布告はお前たちに任せるぞ」
僕とハルの申し出に雄二は2つ返事で了承した。早速Bクラスへ向かおうとすると、
「待ちなさい明久、晴陽。行くならあたしも連れて行って」
「「夏海?」」
夏海が呼び止める。前に綺羅星さんと接触したハズだから用はないものだと僕もハルもそう思っていた。
「あんたたちに会いたい人がいるように、あたしにも顔を会わせたい子がいるの。嫌とは言わないわね?」
「いいの夏海? 僕たちは使者として行くわけだから、それなりの対応はされるよ?」
「大丈夫。報道部のゴシップネタ班副班長として、康太と色んなトラブルに遭遇しては切り抜けて来たから心配無用よ!」
「そうなのかのう?」
「……問題ない」
「「「「「「本当(に)(ですか)(なの)(〜)(か)?」」」」」」
秀吉の疑問に対して、康太が自信有り気に肯定した。首脳陣も含めてみんな不安がっていたが、本人たちが言うのだから大丈夫なのだろう。
……多分。
「まあいい、岸田も一緒に行きな。くれぐれも用心しろよ?」
「「「了解(よ)!」」」
こうして僕たちはBクラスへと向かった。
「綺羅星さんから現状はだいたい伝わってるんだろうけど、実際に見ないとわからないから気を付けようねアキ、夏海」
Bクラスの前にして僕たちは改めて互いに確認し合っていた。対処法をわかっているとはいえ、緊張するものである。
「「うん(ええ)」」
「じゃあ、行こうか」
“ガラッ”
「失礼します、Fクラスの真境名晴陽と」
「同じく吉井明久と」
「岸田夏海よ」
呼吸を整えて扉を開けると、待っていたのは……。
「おお! 久しいな、我が友よ!」
「待ってたっすよ、“双龍”」
それぞれ女子生徒と男子生徒が声を掛ける。
右目に眼帯を着けた少女の名は
天文部部長であり、『疾風の魔法使い:ミナ・シルビィアンド・ウィンドスピア』を自称する、謂わば中二病の女の子だ。
長身でバンダナを巻いている少年は
文月学園屈指の腕前を持つゲーマーの1人で、『アヤトン』というオンラインネームで活動しているとアユから聞いた。
「相変わらずだね、ミナ。 綾斗も元気そうで何よりだよ」
「そりゃそうっす。君たち2人は振り分け試験で一悶着あったと噂になっているからね。……ま、様子を見る限りじゃ大丈夫そうで安心っす」
「ふふ……、我には全てお見通しよ!」
「「あ、ありがとう……」」
「まさかあんたが
「わたしもだよ夏ちゃん。御剣くんも言ってたけど、振り分け試験は災難だったね明久くん、晴陽くん」
「心配してくれてありがとう、虹遥香ちゃん。僕たちは大丈夫だからさ」
僕たちが会話に華を咲かせる隣で、夏海も
夏海とは幼馴染であるらしく、中学生の頃に彼女を通して出会ってからの友人だ。また、竜弥の彼女でもある。
更に周囲を見渡すと、綺羅星日和さんが僕たちに気付いて微笑み返すのが見える。実はもう1人、誰かの視線を感じるのだが心当たりがないのと、周囲に溶け込んでいるのとで見つけることができない。
「なるほど、
「「「恭二(根本)!」」」
そんな僕たちの様子を見て、Bクラス代表
「ようこそBクラスへ。……と言いたいところだが、お前たちの目的は友人に会いに来ただけじゃないだろ? 話は後でならやっても良いから、まずは要件を聞こう」
「やっぱりわかってたの?」
「当たり前だ。初日にDクラスに挑んだ時点で、俺たちのところに来るのは想定済みだからな」
それ程までに
「なら遠慮なく言うよ。良いよね、2人とも?」
((コクッ))
ハルがこっちに目を向けると、僕と夏海はそれに応えた。
「「「僕(あたし)たちFクラスは、Bクラスに試召戦争を申し込むよ(わ)!」」」
それを聞いたBクラスの生徒たちは様々な反応を見せる。
ミナや綾斗のように嬉しそうにする生徒もいれば、驚いたり、呆れたりする生徒もいた。
更には話で聞いていた反根本派の集団が見下すような目で見つめており、その中心に大文字代門がいる。側に神山くんと風花くんと崎山くん。そして……、蒼祐もいた。
「んー? オイオイオイオイ、今試召戦争を挑むって言ったかぁ? ザコの分際で俺様たちとやり合おうだなんてよぉ。身の程を弁えろカスどもが!!」
(わかっているけどやっぱムカつくわね、コイツ)
(落ち着いて夏海。アイツは僕たちの実力を知らないんだから)
(とりあえず今は堪えよう)
大文字代門が僕たちを見るなり下品な物言いで挑発して来る。まあ、去年から悪い噂や言動は知れ渡っているのでこれは想定内だ。一々反応するのもアレだし。
だがそれでもヤツは罵詈雑言をやめようとしない。
「あ。そう言えば吉井、真境名、岸田。聞くところによると、お前らは南智花を助ける為に退室したそうじゃないかぁ? もったいねぇことするよなぁ、あんな馬鹿女なんぞ無視して試験受けてりゃ良いとこ行けたかも知れねぇのによぉ」
「「「なに(なんですって)……?!」」」
「そのチャンスを捨ててお友達を優先するなんてよぉ……、やっぱカスはカス同士お似合いってヤツか! キーキキキキキキッ!!」
野郎。僕たちだけならまだ我慢もできたけど、智花のことまで悪く言いやがった。 流石に僕もハルも夏海も限界に来て言い返そうとすると……、
「いい加減にしろ、貴様ら! さっきから黙って聞いていれば勝手なことを! 私の友達を悪く言うな!」
「そうだぞ大文字、アンタごときが夏ちゃんたちを悪く言う資格はねぇ! 早く土下座しやがれ、
先にミナと虹遥香ちゃんが激怒してこう言う。なんか虹遥香ちゃんの言葉は荒くなっているし、ミナは途中で素に戻っているしで少し戸惑ったが心強かった。
「ななっちの言い方は兎も角、大文字くんのさっきの発言は自分もあり得ないと思うッス。訂正を求めるッスよ?」
「なんだぁ服部。お前もあのカスどもに絆されたかぁ?」
「どんな理由があろうとも、最下層に落ちたヤツはクズでしかないんだよ」
「そうだね風花くん。俺からしたら彼らを庇う君たちの方がおかしいのさ」
「認めてください服部さん、風槍さん、新莊さん。残酷な言葉ではありますが事実なのですから」
梓と風花くんと崎山くん、そして神山くんも加わってヒートアップしていく。蒼祐は沈黙を守っているみたいだけど……。
「蒼祐! お前も私の友のハズだ! 聞こえているなら、なんとか言え!」
「くっ、俺は……!」
「残念だなぁ風槍。青空は俺らの味方だとよぉ!」
「卑怯だぞ、大文字!」
「卑怯で結構! これこそ俺のポリシーだぁ!」
見た感じ、言いなりを強いられてるみたいだ。余裕があるとは思えないけど、何とかできたらなぁ……。
その間にも喧騒は増して行き、Bクラスの内部抗争勃発寸前になっていた。
「力不足を晒すようで申し訳ないが、これが今のBクラスの現状さ。俺を慕って着いて来てくれる生徒、反発する生徒、傍観する生徒。3つに分かれちまってるから統制もままならないんだ……」
「「「恭二(根本)……」」」
力なく言う恭二を見て、僕たちは彼に同情した。
「おやめなさい!!」
「きゅぅ!!」
綺羅星さんの声が聞こえたかと思うと同時に、彼女の頭上で眠っていた召喚獣が教室の真ん中に立ち上がって反根本派と擁立派の両方を制している。
すると、さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
「皆さんお静かに。下位クラスだからという理由で無下に扱ってはBクラスの印象が悪くなりますよ。ここはわたくしに免じて収めてくださいな?」
「「「「「「わ、わかったよ。綺羅星さん……」」」」」」
「ちっ……」
殆どのBクラス生徒たちはもちろん、あの大文字代門でさえ渋々ながら彼女に従っていた。
康太の言ったことは間違いないようだね。
「では代表、続けて大丈夫です」
「ありがとう綺羅星。……待たせてすまなかったな明久、晴陽、岸田。お前たちの申し出、受けよう」
「開戦は午後1時で良いよね?」
「構わない」
「じゃあよろしくね、恭二!」
「ああ。タダでは負けんぞ?」
僕は恭二と握り拳を合わせ、健闘を誓い合った。
「戦場で出会ったら力の限り戦おう、我が友よ!」
「夏ちゃん! わたし、絶対負けないよ!」
「あなた方2人の内、誰かと手合わせするかもしれません。期待しています吉井明久くん、真境名晴陽くん」
「きゅぅ!」
最後にミナと虹遥香ちゃん、綺羅星さんから挑戦を申し込まれ、僕たちは指で合図してBクラスを後にした。
「ねぇアキ」
「どうしたの、ハル」
戻る道中、ハルに声を掛けられる。
「宣戦布告するとき……、って言うかBクラスに入ったときから誰かの視線感じなかった?」
「あ、そう言えばそうだ。確かオールバックの子がいたような……。でも見たことないんだよね……」
「夏海。そいつのこと、何かわからない?」
「そうね……。あまり見たことないなら、転入生ね。 一応去年の2学期後半辺りからいるみたいよ」
「どちらにせよ、情報が少な過ぎる。一度康太にも確認してもらう必要がありそうだよ」
「うん。じゃあ、早いとこ行こうかアキ、夏海」
「「わかった(よ)(わ)!」」
こんなことを話しながら、Fクラスへ戻った。
See you next stage……
「第16話でした♪ 楽しんでくれたかな?かっこ
「次回からBクラス戦な訳だけど……、最初で言うね。噛ませになる子が多数出ます」
「……マジで?」
「うん。A対Cのときもそうだったけど、どうしても割りを食っちゃうキャラが出るのは避けられないらしいよ……」
「その場合、ストーリー展開の都合によるものだからご了承ください……と」
「もちろん、後のエピソードではちゃんと見せ場を作るから気長に待ってくれるといいなぁ」
「今日はここまで! また次回に会おう!」
「シーユー!」
明久「今度のBクラス戦は、前の戦争と違って首脳陣以外の生徒たちの実力もFクラスの倍以上だ。
それでもDクラスに勝った僕たちにはそこまで苦にはならないハズ! そして、Bクラスの最大戦力たる綺羅星さんに姫路さんが挑もうとしていたけど、どうなっちゃうの〜?!」
明久「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『対Bクラス戦、