バカとテストと召喚獣withグリモア! 〜君と僕で紡ぐ青春(いま)〜   作:ウォーズ -IKUSA-

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「前回のあらすじッ!」

Bクラスとの試召戦争が始まる。
各所で激しく交戦する中、Bクラス最強戦力筆頭の綺羅星日和さんと姫路さんが火花を散らす!
圧倒されると思いきや互角に渡り合い、「いざ決着!」というタイミングで大文字代門の不意撃ちで姫路さんが戦死してしまうのだった……。


第18話 忍び寄る魔の手

梓side

 

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

『『『『チクショーッ!!!!』』』』

 

「お仕事完了ッス。いやぁ、ななっちが側に居てくれると大助かりッスよ〜☆」

 

「どういたしまして、アズちゃん♪」

 

自分とななっちは逸れたFクラス男子たちに奇襲を掛けて、順当に数を減らしているッス。

隠密担当の自分たちに相応しい配置だとは思うッスけど……、

 

「でも、いいのかなぁ……」

 

「どうしたッスか?」

 

「役目はわかってるつもりだけど、弱ってるところを闇討ちみたいな真似だなんて……。アズちゃん、わたしたちズルいって思われないかな……?」

 

「気持ちはわからなくはないッス。だけど、根本くんは自分たちを勝たせる為に手を尽くしているッスよ。たとえそれが卑怯だと言われるようなことだとしても……ね」

 

「アズちゃん……」

 

ななっちがちょっと不安そうに聞いて来たからこう返したッス。自分は奇襲が得意だから根本くんのことを否定しないし、何よりクラスの為にやっているって理解してるから。

 

「あ! もちろん召喚獣同士の戦いでの話ッス。現実に脅迫や恫喝をやろうとしたら、自分が全力で辞めさせるッスよ!」

 

「ん……、そうだよね」

 

 

〜♪♪♪〜

 

 

こんな話をしている中、通信機が鳴ったので対応することにしたッス。

 

 

「もしもしこちら服部ッス。はい、……はい。……了解、引き続き任務を続行するッス。……ええ、伝えておくッスよ」

 

「根本くんから?」

 

「(コクッ) どうやら大文字くんが姫路さんを討ち取ったらしいッス。彼のことだから、何か手品でも使ったんじゃないッスかね。……まあ、奇襲がメインの自分たちが強くは言えないッスけど……」

 

「瑞希ちゃんが? 大文字くん相手に負けるハズはないのに……」

 

「とりあえず大文字くんのことは後回しッス。自分たちは出来ることをやりましょう♪ 良いッスか、ななっち?」

 

「うん、どこかで夏ちゃんと土屋くんの2人と鉢合わせするかもしれないよね。気合い入れるよアズちゃん!」

 

「その意気ッス♪」

 

ななっちも奮い立ったようで安心ッスね。

思うところはあれど、一応姫路さんを倒したのは良しとしておくッス。

さて。今度は君たちと戦うんでしょうか……、心待ちにしてるッスよ。つっちー、なつみん。

 

 

梓side out

 

 

 

 

 

 

 

綾斗side

 

 

「もう終わり? 手応えがないなあ……」

 

「でもまあ、連中にしては頑張った方じゃないっすか? 俺っちらを相手したことは……ね」

 

俺っちはFクラスの戦死者たちが補習教室へ連行されて行くのを見送りながら、不満を言う望んを宥めていた。

実戦経験の方はあっちが有利とは言え、素の実力だと間違いなくこっちが上だから結果は見えていたっす。

 

「綾斗。これ以上ボクを満足させるヤツが来ないなら、中堅部隊の所に応援に行った方が良いんじゃないか?」

 

「それも良いっすけど……、もうしばらく留まっていくっすよ。今すぐに俺っちらが出張る必要はなさそうだし♪」

 

「オイオイ……。だけど綾斗がそこまで言うなら、ボクは文句言わないぞ」

 

「サンキューっす、望ん」

 

望んの提言にちょっとワガママ言っちゃったけど、何とか受け入れてもらったっす。

当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて……、次はどいつが挑んで来るっすかね?

まあ、誰か相手になろうとも俺っちと望んが一緒なら……、

 

 

 

 

「誰にも負けるつもりはないっすよ」

 

 

 

 

コイントスで表が上になった百円玉に目を向けて、そう言い聞かせたっす。

 

 

綾斗side out

 

 

 

 

 

 

明久side

 

 

最前線で戦う僕たち主力部隊は順当にBクラス部隊の戦力を削っていたけど、それ以上にこちらのアシスト要員の大半が補習室送りにされていた。

晴明、秀吉、ノエルが健在とはいえ結構消耗していたので、交代するタイミングは慎重に見極めなきゃいけない。

 

 

「よう、待たせたな!」

 

「遅れてごめんね〜、もう大丈夫だよ〜♪」

 

「「「「「アユ(歩夢) (くん)!!」」」」」

 

『『『『『『直美ちゃーーん!!』』』』』』

 

 

そう考えていた最中、アユと篠原さんが駆けつけて来る。

僕たち以外で生き延びている連中の声援は無視するとして、タイミング良く来てくれたのはありがたい限りだ。

 

 

「戦況はあまり良くないらしいな?」

 

「ああ。晴明たちは大丈夫でも、他の連中がな……。多少は粘ってたけど、地力の差は大きかったんだよ……」

 

「なるほど……。状況はだいたいわかった、ここからは俺と篠原さんが引き受けるぜ!」

 

「サンキュー、助かるよ。……と言う訳だ篠原さん。ここはアユと一緒に任せて欲しいけど……、良いかな?」

 

「はぁい、頑張りまぁ〜す♪」

 

ハルの呼び掛けに対して、篠原さんはちょっと気が抜けそうな返事をしたけど、本人がやる気になっているなら良いよね?

そう言い聞かせつつ、2人が召喚獣を呼び寄せようとしたそのときだった。

 

 

「あっ、見つけたの! おーい、明久くーん!」

 

「「吉井!」」

 

 

姫路さんと一緒にいたのであろう蝶影ちゃんと武藤くん、原田くんがこちらへ駆け寄って来る。

 

「はぁ、はぁ……。つ、疲れたの〜……」

 

「どうしたの蝶影ちゃん、武藤くん、原田くん! 君たちは姫路さんといたハズでしょう?」

 

「それがな吉井、別の部隊と交戦中に綺羅星さんと遭遇したんだ。俺たちと姫路さんを除いた連中はみんな倒されちまった!」

 

「姫路さんは大丈夫なの?」

 

「俺たちを逃す代わりに綺羅星さんと戦ってる。だけど向こうはBクラスのエース、それも2年生の四英傑(グレート・フォー)候補だ。もしかしたら今頃……」

 

「オイオイ、嘘だろ……」

 

「姫路さんは勝てるのか……?」

 

「やっぱ俺たちでは無謀だったんじゃあ……」

 

マズイ。みんなの士気が下がりそうになってるのを感じ取った僕が彼らに声を掛けようとすると、

 

 

 

「落ち着けお前らぁッ!!!」

 

 

『『『『『『はいいッ!!!』』』』』』

 

 

 

それよりも先にアユが周囲を一喝した。いきなりのことだったので、思わず僕たちも返事する。

 

 

「まだ戦争中なのにお通夜状態でどうすんだよ? 敵はこっちの事情なんて知ったこっちゃないぞ」

 

「そ、それは……」

 

「それにだ。Fクラス(俺たち)から戦争仕掛けてる以上、遅かれ早かれいつかはこうなることはわかっていたんだろ? 戦死が怖いならとっとと下がれ、勝ちたいと思うヤツだけ着いて来い……!」

 

「アユ……」

 

弱音を吐くクラスメイトに対してアユは厳しくも気遣い、そして前向きな言葉を彼らに送った。

 

 

「まあ、さっきも言った通りここからは俺と篠原さんで蹴散らす。アキたちは後退して補給試験を受けろ。残った連中はそうだな……、篠原さんも大事な戦力だってわかってるな? お前たちは篠原さんを戦死させないよう、壁になれ(守り抜け)!!」

 

「イエッサーッ!!」

 

「直美ちゃんの為にー!!」

 

「俺たち、頑張りまーす!!!」

 

 

えっと……。本音と建前が逆だよ、アユ。しかもこれ、遠回しに捨て駒扱いしてるしなぁ……。

ま、良いや。さっきまでと違ってやる気を取り戻したし、皮肉になっちゃうけど、しぶとさなら上位クラスに負けてないもんね♪

 

 

「……うん。初陣から大変な役目を押し付けちゃうけど、アユと篠原さんならできると信じてる。ここは任せたよ!」

 

「「ああ(はぁい♪)」」

 

『『『『『おおーッ!!!』』』』』

 

「そうと決まれば先ずは補給だ。行こう、みんな!!」

 

「「「「「OK(なの)ッ!!!」」」」」

 

前線の主軸を2人に託し、僕たちは一時後退する。

振り向き様に呼んでサムズアップを送ると、それに気付いたアユはVサインで返した。

 

 

 

アユたちの姿が見えなくなったタイミングでハルと目を合わせ、互いに合図をしながら立ち止まった。

それを不思議に思ったノエルと蝶影ちゃんがこう尋ねる。

 

「明久くん、晴陽くん?」

 

「どうしたの2人とも?」

 

「……4人は先に補給試験を受けてくれ。俺はアキと一緒に教室へ戻る」

 

「なぜじゃ?」

 

「大文字代門がいるのはわかるだろ? ソイツ、或いはソイツの息が掛かった連中が襲撃して来るかもしれねぇ。雄二と龍季のことも気になるしな……」

 

ハルの言葉に秀吉が疑問を投げ掛けると、このように返事する。

大文字くん(アイツ)の黒い噂を考慮するなら、何も起きないのはあり得ない。

 

「……良いぜ。そう言うことなら、雄二と龍季はお前たちに任せよう。秀吉、ノエル、蝶影、行くぞ」

 

「「「うん!(うむ)」」」

 

「ありがとう。補給が終わり次第、アユたちの援護に向かってあげてね」

 

「(コクッ) お前たちも気を付けろよ?」

 

「「わかってるって!」」

 

互いに頷き合うと、僕とハルは教室へ向かって行った。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

 

歩夢side

 

 

「さて……とッ。俺と篠原さんのデビュー戦だ、落とされたいヤツから先に来いよ……!」

 

アキたちが離れた後、俺はウォーミングアップしながらBクラスの生徒たちを一瞥し、クイクイと手招きする。

それを見た篠原さんも何となくマネしていた。

 

「い、言ってくれたな叢雲ォ! 行くぞみんな!!」

 

『『『『『『了解、試獣召喚(サモン)ッ!!!』』』』』』

 

 

最初の1人を皮切りに、7人くらいが一斉に魔法陣を展開して召喚獣を呼び出す。

……正直、ちょっと刺激しただけでこんなに乗って来るとは思わなかったから、案外楽勝かもな。

篠原さんのことをスルーしてたのは何て言えば良いんだろう……、「女の子って得だな」って思ったのは内緒だ。

 

 

「叢雲歩夢。お前はタダでは済まさん、じっくり甚振って補習室送りにしてやる!!!」

 

「ふん……。 獲物を前に舌舐めずりする三下ごときに、俺たちが負けるとでも思っているのか?」

 

「何言ってんだ、アイツ……」

 

「これからやられるってのにおかしくなったかwww」

 

 

へぇ……、未だに強気だな。そこまで言うなら見せてやろうじゃないの。その前に、連中の使用科目と点数を確認するか……。

 

 

 

 

英語

 

 

Bクラス

 

 

Bクラス一般生徒×7:平均350点

 

 

 

科目は英語、平均点が300点を軽く超えているな。流石Aクラスの次点だけはある。……でもこれは予想通り。400点以上がいないなら、篠原さんと壁役(数合わせ)要員だけでも何とか行けそうだ。

 

 

「ここまで強気に出たことは褒めてやる、だけど実力差を思い知っても後悔するなよ? 行くぜ篠原さん、騎兵隊諸君!」

 

「任せてくださぁい♪」

 

『『『『『サーイェッサーッ!!!』』』』』

 

「「試獣召喚(サモン)ッ!」」

 

『『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!!』』』』』

 

 

俺と篠原さんが魔法陣を展開して召喚獣を呼んだその直後に、武藤と原田を含めた壁……じゃなかった、騎兵隊の連中も続いて召喚獣を呼び出した。

 

 

 

英語

 

 

Fクラス

 

叢雲 歩夢:432点

 

篠原 直美:456点

 

Fクラス騎兵隊×5:平均98点

 

 

 

出て来た俺の召喚獣はパワードスーツを纏ったヒーローと言った感じで、例えるならフ○○ター○アみたいな姿をしてる。色はマゼンタがベースで髪の色も一緒だ。

篠原さんは「不思議の国のアリス」にありそうな青と白のワンピースを纏い、それとは不釣り合いなクレイモアを両手に持っていた。

もちろん、2人とも腕輪持ちだ。

点数が表示されるまでは笑顔さえ見せていたBクラスの連中は、当然ながら驚くことになる。

 

 

「ちょっと待て……。なんなんだよこれは!!」

 

「冗談だと思ってけど、まさか本当に……」

 

「そんなの聞いてない!!」

 

 

さっきまで見せていた余裕はどこへやら、連中にとっては想定外の事態に狼狽えるばかりだ。

 

 

「慌てるなよ。見たところ、点数が高いのは叢雲と篠原さんだけ。残りのヤツらは雑魚同然、ソイツらを倒せば数で押せるハズだ!」

 

「そうだな今江、それなら俺たちの方が有利だ。みんな、あの2人は無視して雑魚から倒すぞ!」

 

『『『『『わかった(わ)!!!』』』』』

 

 

そのような状況でも比較的冷静に対応していた生徒……確かこの2人は小坂と今江って言ったか。

多分だけど、もう少し鍛えたら強くなれるかもしれないな……。他の連中にも言えるけどさ。

小坂の号令で密集陣形を形成し、篠原さんを守るように構える武藤たちを攻め立てる。

 

「陣形を保ちつつ、騎兵隊を一気に叩く方向に来たか。悪くない判断だ」

 

『『『『『まだ死にたくないよー!!!』』』』』

 

「みなさん、大丈夫ですかぁ〜……?」

 

あ。いけねっ、冷静に解説してる場合じゃない。

流石に騎兵隊にはまだ倒れてもらう訳にはいかないからな。……仕方ねぇ、助けてやるか。

 

 

「雑魚は退場だ!!」

 

「違うな、先に退場するのはお前の方だぜ!」

 

「……え?」

 

 

 

英語

 

 

Fクラス

 

叢雲 歩夢:432点

 

 

Bクラス

 

初芝 清仁:0点

 

 

 

騎兵隊への攻撃に集中して、俺に対する警戒が薄かった生徒の1人にハンマーで急所をぶっ叩いた。

 

「初芝くんが倒されちゃったよぉ!」

 

「しかもたった一撃でだぞ?!」

 

「こんなことがッ!」

 

「仕方ない、予定変更で叢雲から先にやろう!」

 

倒した生徒はこの中でも腕の立つヤツだったらしく、小坂が率いる部隊は陣形が乱れて混乱状態になっていたが、俺に標的変更することで体勢を立て直した。

そこは良い。けどそれだけじゃあ、ダメなんだよな。

 

 

「喰らえ! ……ってアレ?」

 

「ど、どうしたの諸積くん! らしくないよ!」

 

「違うんだ、俺の意志と関係なく一瞬だけ召喚獣が勝手に!」

 

「そんなバカな! 代わりに俺がやる、てやッ! ……俺もかッ!?」

 

 

こうなることを見越して仕掛けた次なる一手。

それは篠原さんの腕輪……同調(シンクロ)によるものだ。内容を聞くに、消費点数に応じて相手召喚獣の操作権を奪うと言うシンプル且つ強力な能力(ちから)だ。

反面、超人的な集中力と膨大な点数消費を要求する上に、その性質上一対一には不向きで集団戦での連携がベストらしい。

仮にそうでないにしても、篠原さんの召喚獣は武器の派手さに対して攻撃能力は高くないので、攻撃向きのパートナーがほぼ必須なんだと。

 

 

「その分俺が仕留めれば良いだけさ!」

 

 

 

英語

 

 

Fクラス

 

叢雲 歩夢:432点

 

篠原 直美:406点

 

 

Bクラス

 

西岡 恵理子:0点

 

諸積 健太:0点

 

小林 匡孝:0点

 

 

「これで4丁上がりっと!」

 

「戦死者は補習ッ!!」

 

『『『『助けてぇぇぇッ!!!』』』』

 

 

続けて3人も撃破するとどこからともなく現れた西村先生が、先に戦死した初芝も含めて4人とも連行して行った。

つーか神出鬼没って聞いてたけど、生で見るのは初めてだ。いくら身体能力が高くて鍛えてるからとは言えこれは一体……。考えたら負けか。

 

 

「す、すげぇぞ叢雲!」

 

「直美ちゃんにだけ目が行ってたけど、なんだかんだで強かったんだな!」

 

「叢雲歩夢……、まさかこれ程だなんてな……」

 

「安田さん、代表に現状を伝えてくれ。お前が戻って来るまでの間、俺たちはここを抑える……!」

 

「わかったわ。何とか切り抜けてね小坂くん、今江くん! できるだけ早く援軍を連れて来るから!」

 

後ろにいる武藤たちの歓声を背に、安田さんが後退したのを見送ってすぐに残存部隊と対峙する。

 

「篠原さん、引き続きサポートを頼む。武藤たちは……、とりあえず死なないように立ち回れ。まだ戦闘は続くからな」

 

「わかりました〜♪」

 

『『『『『了解です、旦那!!!』』』』』

 

 

今の俺の役目は戦力削りと補給組の時間稼ぎ。ここからが本番だッ……!

 

 

歩夢side out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

大文字くん一派の奇襲を危惧した僕とハルは、一度Fクラスへと戻っていた。

近づくにつれて人の気配を感じた為、気付かれないように教室に入って行く。

 

 

「やぁ君たち、何をしてるのかな?」

 

「下手な言い訳は通用しねぇぞ……」

 

「げっ、吉井と真境名だ!」

 

「このタイミングで来たのかよッ!」

 

 

そこにはBクラス生徒が卓袱台含めた設備を弄る光景が広がっていた。数は4人。

さっきまでもう1人いた気がするけどそいつは後回し、今いる連中は現行犯だから退場してもらおう。

 

「もう一度言うぞ。……何をしていた?」

 

「あ、あの……これはその、えっと……、代表の指示でやれって言われて……」

 

「そうだ、俺たちは寧ろ被害者だ。見逃してくれよ、なっ?」

 

ハルの問いかけにしどろもどろになる小物連中。

終いには助かりたいが為に恭二に責任転嫁して来た。形はどうであれ、やったことの落とし前は付けてもらおう。

 

「違うでしょ、君たちに指示したのは大文字くんだよね? ご愁傷様とは思うけど、設備をめちゃくちゃにしようとするのは見過ごせないな。……ハル」

 

「OKアキ、……我妻先生ー! 真境名晴陽、吉井明久の両名がコソ泥生徒に総合科目で勝負を申し込みますッ!」

 

「承認するわッ!!」

 

 

ハルの一言で我妻先生が速攻で駆け付けて来た。西村先生の愛弟子だけあって初動が早い。

 

 

「う、梅先生だ!」

 

「いつの間に!?」

 

「落ち着けお前ら。これは先生の前で俺たちの実力をアピールするチャンスだ!」

 

「そ、そうだった。あの観察処分者コンビよりもこっちが優れているってこと証明しようぜ!」

 

「俺たちをコソ泥たぁ言ってくれたな。憂さ晴らしさせてもらうぞ吉井、真境名!」

 

『『『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』』』

 

 

 

総合科目

 

 

Bクラス

 

Bクラスコソ泥×4:平均2892点

 

 

 

コソ泥たちが召喚獣を呼び寄せた。確かに全体的に見れる点数だけど、コイツらはおそらくクラス内では下位ランクだろう。

 

 

「ほら、お前らも早く召喚しろよ」

 

「ボッコボコにしてやるぜー!」

 

「へー、まぁまぁやるよね。でも、この程度で満足したらダメなんじゃない?」

 

「今から現実ってヤツを見せてやる……」

 

 

「「試獣召喚(サモン)ッ!!」」

 

 

 

 

総合科目

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:3672点

 

吉井 明久:3594点

 

 

 

 

 

「な……、何じゃこりゃあ!?」

 

「3500オーバー……だと!」

 

 

観察処分者だからと高を括っていたヤツらはいざこちらの点数を見ると、あからさまに動揺している。これでも一応手加減はしてるけど。

当然その隙を僕たちが見逃すハズもなく、

 

 

 

総合科目

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:3672点

 

吉井 明久:3594点

 

 

Bクラス

 

Bクラスコソ泥×4:0点

 

 

 

「あ、あれ……?」

 

「いつの間に……」 

 

「隙を見せたら終わりだぞ」

 

「信じられないのはわかるけどね」

 

 

急所を突いて一瞬で終わらせた。

 

 

「戦死者は補習よ!」

 

「「「そんな〜!」」」

 

「でも、梅先生なら良いや……」

 

 

こうして連行されて行くコソ泥たちを見送る。

最後のは考えようによってはドM発言に聞こえるけど、ヤツらが良さげなら何も言わないでおこう。

我妻先生は高橋先生と並んで人気の美人だし。

 

 

 

 

 

 

「よう明久、晴陽。お疲れだったな」

 

「あ、雄二」

 

「無事だったか」

 

「俺もいるぜ?」

 

「ボクもー!」

 

我妻先生たちと入れ替わりで雄二が龍季とクルトを連れて教室に入って来た。

 

「クルトがいる理由は置いといて……、どこに行ってたんだい?」

 

「実は根本から提案があってな。これ以上やっても午後4時までに決着が付かなそうだから、翌日の午前9時から再開する……という内容の協定を結びに行ってたのさ」

 

「どうしてなの?」

 

「体力に不安があるヤツらに配慮した結果だ。特に姫路姉含めた女子生徒のな……」

 

「俺のことはいいって」

 

「ダメだ、これは決定事項だ。それにな龍季。お前も一応その……、女の子だし……」

 

「一応ってなんだよ、コラ」

 

「うぉッ。待て龍季、締まる締まる!」

 

 

〜♪♪♪〜

 

 

2人の漫才も頃合いを見て止めると、雄二の制服の内ポケットから通信音が鳴っているのに気づく。

 

「へい、こちら坂本雄二。おお岸田か、何があった? おう、……おう。……な、なんだと?」

 

通信機を手に通信主の夏海と会話を始める。しばらくして少し声を荒げていたが、終わるまで見守ることにした。

 

「 ……そうか。わかった、この件は首脳陣で共有する。ん……、もう一方はこっちで対処するから任せろ。協定の内容は康太にも伝えておけよ。……おう、油断なく頼むぜ」

 

通話を終えた雄二にそれとなく聞いてみた。

 

「夏海からの連絡だったよね。何て言ってたの?」

 

「そのことだが心して聞け、姫路姉がやられたそうだ。……大文字代門の手でな」

 

「「「「何(だって)!?」」」」

 

雄二の口から告げられた内容に僕たちは驚愕する。

我らがFクラスの主力の一角を担う彼女が戦死したなんて。しかも、大文字くん(アイツ)が仕留めたというのだから戸惑いを隠せずにいた。

 

「明日の作戦に姫路姉も必要だったが……、早急に作戦(プラン)の練り直しをしないといけねぇ。他のメンバーも明日に備えて欲しいしな」

 

「もう一個は何て言ってたんだよ?」

 

「これは康太が探ってたことだが、Cクラスの連中がおかしな動きをしている……だとよ。漁夫の利を狙ってると踏んでいるが、得があるとも思えんし、どうしたモンか……」

 

「とりあえず行ってみようよ。じゃないと対策のしようがないしね」

 

「そうだな」

 

Cクラスへ向かうべく教室を出ようとすると、クラスメイトの誰かが駆け込んで来る。

 

 

「吉井、真境名! 代表もいるのか、丁度良かった……」

 

「横溝くん!」

 

「どうした? そんなに慌てて」

 

「島田が人質に取られてな、相手は手負いなのに迂闊に攻めることもできないんだ!」

 

これを聞いてまたしても唖然としたが彼女は僕たちの友達だし、クルトにとってはそれ以上に大切な存在だろう。

何より彼がいる手前、無視することはできない。

 

 

「一方はCクラスへ、もう一方は島田の奪還……。さて、どうするか……」

 

「ユージ。ボク、ミナミを助けに行きたい! ダメって言っても聞かないよ? ミナミの為なら1人でだって行くもん!」

 

 

誰かに言われるまでもなく立候補するクルトに、僕たちは暖かいものを感じた。こんな真っ直ぐに自分の想いを口に出せるなんて……。

見習わなくちゃあね。

 

「流石だクルト。けど流石に1人じゃ危ないだろ? 俺も一緒に行くよ」

 

「ハルヒ……」

 

「待ちな晴陽、それなら俺も行かせろよな」

 

「タツキ! ……2人とも、ありがとッ!」

 

 

悩むかと思われたメンバー選びだがクルトに続き、そこにハルと龍季が加わる形になった。

 

「それならCクラスには残ったメンバーで行く。理由はどうであれ、必ず助けてやれよ」

 

「了解。そんじゃ横溝、案内頼むぜ!」

 

「わかった、着いて来てくれ」

 

横溝くんを先頭に立てて教室を出て行くのを見送った残留組は一路Cクラスへ歩を進める。

美波のことも気になるけど、ハルと龍季がいるなら大丈夫だよね。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

晴陽side

 

 

「ここだ」

 

横溝の案内によって、俺たちは美波が捕われている地点の手前付近にたどり着いた。

 

「須川もいるのか……」

 

「美波を人質に取ってる連中は2人だな」

 

見たところどちらも手負いだ。だけど美波を盾にされている以上、あっちが有利か。褒められた手段ではないのは間違いないけどな。

 

「早速行こうよ」

 

「いや、クルトはここで待て」

 

「なんで?」

 

「連中は偽情報で美波を釣った。てことはだ、美波にとって大事なもの……クルトを餌にした可能性が高いって訳よ」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ああ。このまま突撃かますのも良いが、それじゃ返って逆効果だ。だから最初はクルト抜きで行く。で、丁度良いタイミングで出て油断したところを奪還……って寸法さ」

 

疑わしげな横溝に俺はこう返す。

助けること自体は難しくはない。が、今全員で行くと美波が戦死してしまうだろう。それを踏まえた上での行動だ。

 

「そーいうことだからよクルト。合図をした後来て良いから、今は我慢するんだ。できるだろ?」

 

「……うん、わかった。それでミナミを助けられるなら、ボクやるよ!」

 

ちょっと不満そうだったクルトも龍季の言葉に納得してくれたので先に龍季と横溝、俺とで美波の下へ向かった。

 

 

「来るな! それ以上近くと、この女を補習室送りにするぞ! 良いのか!」

 

「晴陽、龍季ッ!」

 

「浩二! それに真境名、朝比奈じゃないか! 来てくれて感謝するぞ!」

 

 

俺たちの姿を見るや、救世主を目の当たりにしたかの様に安堵する須川。それとは対照的に、Bクラスの男子2人は忌々しげにこちらを睨んでいる。

召喚獣の方も、美波の召喚獣を踏み付けながら武器を突き立てていたので悪役感は倍増だ。

 

「よう美波。俺と龍季は横溝に呼ばれて来ただけだからわからんが、差し支えがなけりゃなんで捕まったのかは教えてくれ」

 

「それは、その……」

 

もちろん知らないというのはウソだが、これくらいは良いだろう。何せあっちは人質を取っているのだから。

 

「ククク……、知りたいか?」

 

「もったいぶらねーで早く言えよ」

 

「わーったよ。 かわいくねー女だな、朝比奈は……

 

ああん?

 

龍季が続きを促すと、小声とは言え相方が地雷を踏んだようで、鬼の形相で2人組を睨み付けた。

俺は大丈夫だが、美波含めた3人もビビっていたので今後の為に慣れてもらう必要があるな。

 

 

「とにかくだ、コイツは『クルト・アードラーが捕まった』って偽情報流したらまんまと釣れてくれたのさ!」

 

「「へー……、ソーナンダー」」

 

「おい真境名、朝比奈……」

 

事情を理解してる俺と龍季は心底呆れたように棒読みで返事した。須川は心配そうにしてたが安心しろ、すぐに片を付ける。

 

「少しは動揺しろってんだ! マジでムカつくヤツらだな!」

 

「悪い悪い、あまりに見え透いたウソを吐くもんだから呆れちまってよ。……なっ、龍季?」

 

「まったくだぜ。……なぁ、クルト?」

 

「うん? ボクがどうかしたの?」

 

「「「……え?!」」」

 

「クルトッ……!」

 

俺たちの呼び掛けに応えて現れたクルトの姿を見た2人組(と須川)は唖然とし、美波は驚きと喜びが混じった様な声を上げる。

 

 

「今だ龍季、行くぜッ!」

 

「ああ、任せな!」

 

『『試獣召喚(サモン)ッ!!』』

 

 

 

化学

 

 

Fクラス

 

真境名 晴陽:316点

 

朝比奈 龍季:298点

 

島田 美波:41点

 

 

Bクラス

 

 

牛島 和寿:93点

 

加藤 康晃:87点

 

 

「さぁ、美波を返してもらうぜッ!」

 

「し、しまった!?」

 

そこからできた隙を逃さずに召喚獣を呼び寄せ、龍季が美波を奪還する。

 

「ミナミッ! 良かったぁ〜」

 

「クルトッ! 心配掛けてごめんね……」

 

「良し。さてお前ら……」

 

「覚悟しな!」

 

こうなってしまえばこっちのもの、俺と龍季の薙ぎ払いで勝負を決めた。

 

 

「戦死者は補習ぅッ!!」

 

「「勘弁してぇぇぇッ!!!!」」

 

 

「行ったか……」

 

「えっと晴陽、龍季。助けてくれてありがと……」

 

「良いって。オメーは仲間で友達……だからな」

 

「目的は達成した、早いとこ教室に戻ろう。良いな?」

 

「「「「「ああ(わかったよ(わ))!」」」」」

 

 

後10分もすれば戦闘終了になるだろう。

そう思った俺は戦死者を連行する西村先生を見送った後、アキたちの下へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「よう雄二。こっちは任務完了だけど、Cクラスの方はどうだった?」

 

「上手いこと小山と不可侵条約を結べたからな、心配無用ってヤツだ」

 

「でもやっぱりというか、大文字くんと取巻き連中はいたよ。まあ、そいつらは恭二が抑えたけどね」

 

「マジ?」

 

「マジだ。去年までとは別人かと思うくらいに凄みがあった。お前らにも見せたかったぞ」

 

再び教室に戻り、互いに目標達成の報告をする。Cクラスとの不可侵条約締結の際には恭二の力添えもあったことを素直に感心した。

最近では自らも強くなるべくユリ先輩やつかさ先輩等、裏Aクラスの先輩たちから武術を習っているのを本人から聞いていたので尚更だ。

 

「えっと坂本……。偽情報とは言え、クルトの名前を出されて正気じゃいられなかったの。その結果持ち場を離れた挙句、人質にされてごめんね……」

 

「……そうだな。偽情報に踊らされて須川たちを危険に晒しただけじゃなく、晴陽と龍季にも迷惑を掛けた。組織として見るなら問題だな」

 

美波からの謝罪に対して淡々とこう告げた雄二。それを見たクルトと龍季が何か言おうとすると、

 

「とは言えクルトを助けようと行動したことだが、俺個人としては嫌いじゃねぇよ」

 

(同じような状況になったら、多分俺だってそうする。……翔子の為にな)

 

このように続けた。雄二が胸中に何を思ったかは知らないけど、余計な詮索はしないでおくか。

 

「だが、このまま無罪放免って訳にも行かねぇ。島田、根本攻略にお前も協力しろ」

 

「えっ?」

 

「俺は明久や晴陽含めた首脳陣には何かしら秀でている部分を買っている。それは島田(お前)も例外じゃない。明日朝一番にはなるが、とりあえず回復試験で補給に専念しろ。……クルトも一緒にな」

 

「……ええ。それで名誉回復になるなら、ウチは全力を以って任務を全うするわ。クルト、明日はお願いね?」

 

「うん!」

 

 

 

そして……

 

 

 

「ここまでか……。みんな、今日のところはゆっくり休め。明日で勝ちを掴み取るぞ、いいな?」

 

『『『『『『『おうッ!!!』』』』』』』

 

 

戦闘行為を終えて戻って来たクラスメイトたちに雄二がこう告げると、元気よく返事する。長丁場でもへばらないタフっぷりは流石だ。

その後は多くが帰り支度をして教室を出て行ったが、僕とアキはまだやるべきことがある。

 

「アキ」

 

「わかってるよ、ハル。これからだよね?」

 

「うん。行こう、蒼祐のところへ」

 

研吾先輩に頼まれていた件だ。大文字代門の手下のような状態でいるのは何故か。何故中武研に来なくなったのか。それを確かめに行く。

 

「一応蒼祐には連絡入れたけど……、なんて言ってたの?」

 

「指定した場所に来いって。友達だから信じるけど、とりあえず警戒はしとこうか」

 

「(コクッ) そうだね」

 

「智花、用事ができた。終わるまでちょっと待ってくれるかな?」

 

「わかったよ、アキくん」

 

大文字くん(アイツ)の影が頭をよぎりながらも、僕たちは蒼祐の待つ空き教室と思われる場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「やあ。宣戦布告のときはあんな感じだったから、来ないと思ってたんだ。でも、君たちは俺を信じて来てくれた。ありがとう……」

 

穏やかな表情でこう言う彼を見て確信する。まだ堕ちてない、僕たちが知ってる蒼祐のままだ。

 

「どういたしまして♪ それはそうと確認なんだけど、ここって盗聴されたりしない?」

 

「ここを知ってる生徒は限られる。大文字ですら知らないから、盗聴の心配はしなくていい。仮に盗聴器(そんなもの)があっても俺が回収してる」

 

「そうなんだ?」

 

アキの質問に蒼祐がこのように返す。とりあえず、心配だったことが杞憂で済んでよかった。

 

「わかった、じゃあ本題に入るね。僕たちが来たのは……」

 

「知ってる。研吾先輩に頼まれたんだろう? あとは今朝のことも知りたい……と」

 

「気付いてたの?」

 

「もちろんだ。俺個人としてだけど、君たちは文月学園一わかりやすい人だと思っているからね」

 

そんなにわかりやすかったのか……。今度サプライズとかやる機会があるなら気をつけなきゃ。

 

「話が逸れそうだから結論を言うよ。俺が大文字代門の傍にいるのは天文部……、ミナと恋の為だ。中武研に来てないのも大文字(ヤツ)の存在が関わっている」

 

「大文字くんが?」

 

「ああ。あの男が大きな顔をする限り、天文部とBクラスは危険だ。研吾先輩たちの手を煩わせる訳にはいかない」

 

「「蒼祐……」」

 

大文字くんのことを口に出してから締まった表情になるのがわかる。彼に対する怒りがこっちにも伝わって来た。

 

 

「大文字代門は目の上の瘤だけど、Bクラス(俺たち)から見れば君たちも敵であることに変わりない。目の前に来るなら遠慮はしないつもりだから覚悟はしててくれ明久、晴陽」

 

「大丈夫だ。僕らもそのつもりで戦うから、変な気遣いはいらないよ」

 

ある程度話し込んだ後、蒼祐が耳元で何かを囁いた。それを聞いた僕たちは多分悪い笑顔になっていたことだろう。

 

 

「じゃあね蒼祐。明日の戦い、期待してるよ」

 

「どっちが来るかはお楽しみ♪」

 

これに人差し指と中指をくっ付けたVサインで応えた蒼祐と別れ、智花の待つ教室へと戻った。

 

 

晴陽side out

 

 

 

 

 

蒼祐side

 

 

「さて。出てきたらどうだい誠也くん、神山くん。そこにいるのは最初からわかっているよ」

 

明久と晴陽を見送った後、ある一点を見つめて2人を呼ぶ。

実は話をしていたときから気配を感じていたが、聴いてもらった方が都合がよかったのでそのままにしていた。

 

「やはり気付いてましたか。私としては自信があったのですが……、まだまだですね」

 

「言っただろう神山、小嶋研吾直々の弟子であるこの男を侮ってはいけないと。まあ、私程ではないだろうが」

 

「言うじゃないか。だけどその割には、俺と実力は大差ないと草薙先輩と八神先輩から評されてたらしいけど?」

 

「そこはどうでもいい。それよりも私が知りたいのは話していた内容だ。キミは大丈夫代門の手先になっていたのではなかったのか!?」

 

「少々早合点が過ぎたということさ誠也くん。君が双美さんのことを守りたいと想うように、俺もミナが大切なんだ」

 

挑発には動じなかったのに、さっき話していた内容について掴みかかる勢いで俺に迫った誠也くんに努めて冷静に返答する。

 

「本当か?」

 

「(コクッ) 逆に聞くけど、ここで嘘を言って何の得になると言うんだ?」

 

「……わかった。納得できるかは別だが、そこまで言うならキミを信じることにしよう」

 

「助かるよ」

 

少々疑っているみたいだけど、目線を逸らさず真剣に答えた。これには誠也くんも想いを感じ取ったらしく、一応信じてもらえた。

 

 

「あの……。盛り上がっているところ悪いのですが、私もいますよ?」

 

「忘れてた。神山くん、君にも余計な気遣いをさせてすまないね。今まで聴いてた内容が全てさ。ヤツの傍にいても俺は俺だ」

 

「万が一があれば実力行使も考えたのですが、これで懸念事項が1つ減りました。ありがとうございます青空くん」

 

「構わない」

 

なんだかんだで神山くんはちゃんと見ていたんだと感心する。理解の早い人がいるのは助かるな。

 

「いいですか2人とも。明日の後半戦、勝敗はどうなるかわかりませんが、分裂しているBクラスを纏め上げる絶好の機会となるハズです。私も手を尽くしますので頑張りましょう!」

 

「「……いいだろう(わかった)」」

 

神山くんの言葉に誠也くん共々頷き合う。

明久と晴陽(あの2人)がいると正直勝つのは難しいだろう。だがもう1つの目的は意地でも達成してやる。そう思い、俺たちはこの場を離れるのだった。

 

 

蒼祐side out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

蒼祐と別れてからFクラスへ戻ると、教室に残っている人数も数える程度になっていた。

 

 

「待たせちゃってごめん、智花。怜たちを迎えに行こう」

 

「あ、アキくん。……わたし、急用思い出したから、それを終わらせて来るね!」

 

「大丈夫? ハルもいるし、必要なら手伝うよ?」

 

「そんなに時間も掛からないし、人手も足りてるから大丈夫だよ。……蝶影ちゃん、直美ちゃん、行こ?」

 

「「わかったの〜……(はぁい)」」

 

そうして2人と一緒にどこかへ行くのを見送ったけど……、どこか引っ掛かる。

 

「正直不安だよ……。なんか無理して明るく振る舞ってるようだったし、蝶影ちゃんと篠原さんもテンションが違って見えるんだよね……」

 

「アキが気になるのはわかるよ。だけど、本人たちから話してくれるのを待つしかないんじゃないかな? 無理に聞き出そうとしても『大丈夫』の一点張りになるからさ」

 

「……うん。それなら、僕たちは明日に向けてできることを真剣に考えようか」

 

「そう言うこと♪」

 

 

どうしても気になってしょうがなかったけど、ハルの言うことも正しいから気にも留めずにAクラスへ向かった。

でも……、この時点で気付くべきだったのかもしれない。大文字代門が智花たちへ脅迫行為をしていたことに……。

 

 

明久side out

 

 

 

 

 

智花side

 

 

わたしは蝶影ちゃんと直美ちゃんと一緒にある男子生徒の元へ向かっていた。行き先はスマホのL○NEに届いている。

 

 

「南、宵宮、篠原ァ。逃げずに来てくれて俺は嬉しいぜぇ」

 

「別に喜ばれる為に来た訳じゃありません、本当にわたしたちが『大事にしてるもの』を持っているのか確認する為に来たんです。あなたが嘘を吐いている可能性もありますから」

 

「そーだそーだ!」

 

指定した場所で待っていた大文字くんに対して毅然とした態度で向き合うわたしたち。直美ちゃんも口には出してないけど同じ気持ちだろう。

 

「おっと、口の利き方には気を付けることだ。お前らの対応次第では『大事なモン』がなくなるかもしれねぇからよォ」

 

「「「ッ!!」」」

 

そう言うと手元からある物を見せた。

確かにそこには小学生の頃にアキくんからもらったわたしの黄色いリボン、蝶影ちゃんが玲泉くんからもらったペアリング、そして直美ちゃんのクローバーの形をしたアクセサリーがある。

 

 

「手駒連中をFクラスへ潜入させてたときにオメーらの棚から失敬させてもらったぞ。まさか、本当にあるとは俺様も思ってなかったがな」

 

「ちかげの指輪……。それ、返して……!」

 

「わたしもアクセサリー返してください……!」

 

「そいつは無理な相談だ。本当ならお前らを拉致したいくらいだが、根本の野郎にどやされるからなァ。謂わばコレは人質代わりってヤツよ」

 

涙目になっている蝶影ちゃんと直美ちゃんの訴えを無情にあしらう大文字くん。

拉致したい発言は論外として、あろうことか他人の所有物を盾に揺さぶりを掛けてくる態度に怒りが込み上げてくる。

 

「卑怯ですよッ!」

 

「ああ? 何言ってんだ南智花。そんなに大事なモンなら持って来なけりゃ済む話だったろ? こんなことになったのは自己責任。つまり、テメーらが悪い」

 

爪が手のひらに食い込む勢いで握り拳を作っているのがわかる。本音を言うと一発殴ってしまいたいくらいに。

でもダメだ。先に手を出したらFクラスのみんなと……、アキくんに迷惑を掛けちゃう。

 

「何を求めるんです?」

 

「簡単だ、明日の試召戦争に参戦しないことよ。そうすりゃ俺の手元にあるモンは返してやってもいいぞ?」

 

「本当に返してくれますかぁ〜……?」

 

「騙されちゃダメなの直美ちゃん! ちかげ、この人が約束守れると思えないの! 昇瑠も『ウソつき野郎』って言ってた!」

 

「信用されてねぇな俺。まあいい、コレがある以上オメーらは実質無力化同然だ。どうするべきかよぉーく考えて決めることだ、じゃあな〜♪」

 

(まっ、簡単に返す訳ないケドな! キーキキキキキキッ!!)

 

大文字くんはそう言い残して去って行く。

 

「智ちゃん……」

 

「どうしましょう〜……」

 

「2人とも……、大丈夫だから。きっと、何とかなる……、ハズだから……!」

 

不安そうに見つめる蝶影ちゃんと直美ちゃんに対して、わたしはこう言うしかないのだった……。

 

 

智花side out

 

 

 

 

 

明久side

 

 

「昨日の続きだが、歩夢と篠原は引き続き戦線を維持してくれ。主力組は補給が終わり次第、随時向かわせる。それで、直近の補給完了予定者が南と宵宮だと聴いてるが……、行ってくれるか?」

 

「「あ……、はい(うん)……」」

 

翌朝。戦闘再開前に首脳陣によるミーティングで雄二が指示を飛ばした際、智花と蝶影ちゃんの返事に違和感を感じた。

昨日の放課後に見せたあの顔だ。一瞬しか見てなかったけど、篠原さんも同じ顔をしてたと思う。

 

「本当どうしたの、智花?」

 

「蝶影ちゃんもだけど、昨日何かあった?」

 

「わたしたちは大丈夫! 本当に何もないの! ねっ、蝶影ちゃん?」

 

「そ、そうなの!」

 

一応聞いてはみるものの『大丈夫』の一点張りだ。コレはおかしい、絶対何かある。そう思った僕はハルと顔を見合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

AM 9:00

 

 

「連中もこっちを突破しようと必死か……! 絶対に抜かれるなよ! 騎兵隊諸君!」

 

『『『『『承知ッス!!!』』』』』

 

「いい返事だ! さて。朝から一体どうしたんだ、篠原さん? 調子悪いのか?」

 

「あ……。い、いえ。大丈夫ですぅ……」

 

始業のチャイムを合図に戦闘再開した。のだが、どうも篠原さんの様子が変だ。アユが言うように体調が悪い訳でもなさそうだけど、只々Bクラスを見つめているだけ。

 

「流石のアユでも多勢に無勢だと危ないね。誰か援護に行ける人はいる?」

 

「吉井、俺と浩二が行く!」

 

「少しは役に立ってやろうぜ、亮!」

 

「お願いね須川くん、横溝くん!」 

 

「「任せとけ!!」」

 

そろそろ援護が欲しいと思っていたタイミングで須川くんと横溝くんが参戦する。それから程なくして智花と蝶影ちゃんも駆け付けて来た。

 

「お待たせアキくん、晴陽くん!」

 

「ちかげたちもやるのー!」

 

「「あ……」」

 

勢いよく来たのも束の間、篠原さんの様子が変だったときと同じでBクラス内に視線を向けたまま動けずにいた。

 

「「智花(蝶影ちゃん)ッ!」」

 

「アキくん……、その……」

 

「ごめんなさいなの……」

 

やっぱり昨日、何かされたな? そう思いつつ2人の視線に目を合わせると……、大文字代門がいた。

どうやらヤツも僕たちに気付いたらしく、醜悪極まる笑みを見せてくる。更に、手元を凝視すると智花にプレゼントしたリボン、蝶影ちゃんのものと思われるペアリング、クローバー状のアクセサリーを持っている。

 

「ふーん……、なるほどな。……アキ」

 

「わかってるよ。やってくれたな、あの野郎……」

 

ハッキリわかった、元凶はアイツだ。『いくら卑劣だからってここまではやらないだろう』と少しでもヤツの良心に期待した僕たちが馬鹿だったと思い知らされた。

 

「アユ、聞こえる!?」

 

「どうしたアキ!」

 

「僕とハルは今からやることがある! 指揮権を君に渡すけど、いいかな?」

 

「それはまた急なお願いだな! ……もしかして篠原さんが戦えないことと関係あるのか!?」

 

「ああ! 戦いながら全体を指揮するのは正直無茶なお願いだと思ってる! でも、今いるメンツでそれができるのはアユだけだよ!」

 

「仕方ないな……。……了解だ、アキ!」

 

「ありがとう、アユ!」

 

そして僕たちは再び智花と蝶影ちゃんと向き合う。

 

「智花、蝶影ちゃん。2人は下がって」

 

「後のことは俺たちに任せろ」

 

「「で、でも……」」

 

「大丈夫、絶対大丈夫だから……。ね?」

 

「「……うん」」

 

それでも不安そうだったから優しく諭すように言うと、少しは落ち着いたようだ。

 

「一度教室に戻ろう。雄二に一言入れなきゃ」

 

「ああ……」

 

昨日考えていた内容を実行に移すべく、雄二から了承を得る為にその場から離れて行った。

覚悟しろよ大文字代門(クズ野郎)。『後の祭り』って言葉の意味、身をもってわからせてやる……!

 

 

See you next stage……




「第18話でした♪ 楽しんでくれたかな?」

「ちょっといい? 17話投稿したのっていつだよ?」

「2021年1月6日……」

「休止期間長いよ! 一体何があったのさ!?」

「うん。アレだ、『納得いく展開が書けない』かな?」

「『かな?』じゃないよ! そうだとしても待たせ過ぎにも程があるよ!」

「まぁ、そうカリカリしないのアキ。プロの作家さんだって長期休載するんだから大丈夫だよ、……多分」

「確かにそうかもしれないけどさぁ……。今回久々の投稿を機にもうちょっと頑張ってほしいよね」

「そーゆーこと♪ だから作者さん、次回話は本っっっっ当お願いダヨ?」

「ちょっと不安だけど、次回も気長に待ってくれると嬉しいぞー!」

「シーユー!」



昇瑠「FクラスとBクラスの戦争が後半戦に突入! Fクラス(彼ら)と同盟を結んでいる俺たちDクラスに、明久と晴陽から支援要請の依頼が来た! 行くぜ真吾、真理佳! 思う存分暴れるぞ!」


昇瑠「次回ッ!『バカとテストと召喚獣withグリモア!』、『助っ人参上! 〜風と弾丸と昇り龍〜』。 Let's go……fight!!」

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