真壁瑞希のお兄さん   作:黒村白夜

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 超お久しぶりです。黒村です。

 更新が遅くなり申し訳ございません!(全力土下座)

 実のところ、かなりスランプ気味で、そこにさらに他のことも重なり、中々筆が進んでおりませんでした。大学の講義や公務員試験の勉強、論文の作成(まだ先だけど)、別サイトで別の名義(黒村白音です。よろしく)で出していた短編の書籍化に伴う確認作業、ミリシタの周年イベントの走り(一番重要)等々があって⋯⋯、もう大変でした。

 今回の部分も、まだ納得ができていないところもあるのですが、付け加えるとさらに伸びるはめになるので、あえてこの状態で出します。読んで下さった中で展開に納得できない方には申し訳ございません、としか言いようがありません。

 ではしばらくの間、お付き合いくださいませ。
 



瑞希のアイドルデビューその2

「うーん⋯⋯これで良かったのか? なんだかんだ言って、結局プロデューサーさんに丸投げしちゃったからな⋯⋯」

 

 メールを打ち終わり、何とか瑞希の相談に答えてやれたが、俺の中ではまだもやもやとしていた。結局は未だ顔を見たこともない人に丸投げしてしまったこともそうだが、俺自身が瑞希の相談を解決することができなかったことが恐らく原因だろう。

 とはいえど、兄として人生の相談に乗ることはできても、芸能活動をしたこともない俺にアイドルについての相談を答えれるはずもない。それは確固たる事実だ。今まで瑞希の相談相手として色々な相談に乗ってきたが、もうそのポジションは卒業かもしれないと思うと少しだけ寂しさがこみ上げてくる。

 

 

「まあ、俺にできることをすればいいだけの話だな」

 

 

 その寂しさを振り払うように気持ちを切り替えて、自分の席へと向かっていった。

 

 

 ──────────────────────────────────────

 

 

「おー⋯⋯すごい広いな。ここで歌うのか⋯⋯」

 

 

 観客席へと行くと、そこには広々としたステージがあった。

 まだ幕は閉じられているが、そのステージの大きさは閉じられた状態でもよく分かる。正直、ここまで広いステージだとは思ってもいなかった。ここで瑞希が歌うことを想像すると、何だか俺まで心配になってきてしまった。

 実際のところ、俺自身も今回のライブにおいて不安要素があった。というのも実はライブというものに参加する経験が今までなかったのである。一応ネットで必要な物、例えばサイリウムやタオルなどを買ったり、今回出てくるアイドルについて調べたりしたのだが、それでも不安は残る。

 

 

「俺も瑞希のこと言えないな⋯⋯」

 

 公演に参加すると聞いてから勢いそのままにチケットを買ったので、一緒に参加する友人もいない。完全にボッチである。

 不安と緊張が心の中で渦まきながらも自分の席へと向かっていく。今回はアリーナ席の後ろ、その端っこだ。ステージからは少し遠いが気にすることはなかった。

 

「ここら辺か⋯⋯?」

 

 少し迷いながらも自分の席へとたどり着く。その横の席には既に人がいた。

 

 

 いたのだが──―

 

 

(おお、ガチの人か⋯⋯)

 

 頭にはハチマキを装着し、カラフルな法被を着こみ、極めつけにはサイリウムをどこからか「レッツパーリィ!!」という声が聞こえそうな持ち方を既にしている、見るからにアイドルオタクみたいな⋯⋯というかそのまんまの人だった。

 その人は精神統一でもしているのか眼を閉じたまま微動だにしない。とりあえずその人の邪魔にならないように静かに座る。

 

(まだ公演まで時間はあるか⋯⋯。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯暇だな)

 

 いつもの大学内なら喋る相手がいるのだが、今日いるのはライブ劇場であり、無駄話をする友人もいない。必然的に黙ることになるので、周りの人達の声がよく耳に入ってきた。

 周囲の人達は友人と一緒で来てるのだろうか、隣同士自由にお喋りをしている。少し耳を傾ければ、推しは誰だの、この子のここが可愛いだの、どんな曲がくるかだの、これからの公演を楽しみにしているのがよく分かる、元気な会話が聞こえてきた。

 

(みんな、楽しそうだ)

 

 会話の内容でなくとも聞こえてくる声の感情の乗り方で分かるほどに、観客の人達は公演前の時間を楽しんでいる。

 

 そんな楽しそうな雰囲気とは裏腹に、俺は不安と緊張に襲われていた。

 

 ライブ劇場という未知の場所、未体験の場所で顔見知りがいないというのは、実際のところかなり不安だった。

 また、さっきまで連絡をしていた瑞希がこの舞台にちゃんと挑めるのか、大丈夫だろうか、とまるで自分事のように緊張してしまう。

 

 

 

 頭の中で不安と心配事を巡らしていたその時、ふと隣の人に声を掛けられた。

 

 

「突然の声掛け失礼。もしやすると初ライブ体験者、つまり初めてライブに来た方でござるかな?」

 

「え? あ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯まあ、はい。そうですね⋯⋯」

 

 急なことで驚いた。さっきまで話しかけるような素振りもしてこなかったのにいきなり話しかけてきたのだから応答が遅くなってしまった。

 

「いやはや、拙者ライブには良く行くのですが見慣れない顔が隣にいたのでもしや、と思い声をかけたのでござるよ」

「へえ⋯⋯⋯、どれぐらいライブには行かれたんですか?」

「765プロ開催のライブでしたらざっと全てですな」

「⋯⋯」

 

 それは「良く行く」ではなく「全て網羅している」と言った方が正しいのではないのだろうか、と内心思ったがそれは飲み込んだ。その代わりに評価をガチの人からやべーやつへと上方修正しておこう。

 

「此度は新しく765プロから39人のアイドルが出てくるということで楽しみで仕方ないでござるうう~~~~! 新たな39人の中からも一人推しを作りたいですな~~~。あ、ですが拙者の一番の推しアイドルは天海春香ですぞ!!! あの春の陽気のような笑顔がたまらないですからなあ~~~!!!」

「は、ははは⋯⋯」

 

 目の前の人(やべーやつ)の急激なテンションに思わず乾いた笑いが出てしまう。すると彼はなぜか優しい笑みを浮かべていた。

 

「……少しばかり熱量を込め過ぎた為引かれ気味でござるが結果は良し。どうですかな、緊張はほぐれましたかな?」 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯なぜ緊張していると?」

 

 内心で緊張だったり不安を抱えていてもそれを表に出さないのが俺の長所なのだが、あっさりばれてしまった。なぜ緊張しているのかつい尋ねてしまったほどに、心の中では衝撃だった。

 

「いやはや、拙者も初参戦のライブの際も一人でしてな⋯⋯。緊張していたのを思い出したのでござるよ」

「なるほど⋯⋯そういうことですか」

 

 要は経験則ということらしい。長所が崩れていなかったみたいで俺は内心安心した。 

 

「初参戦のライブ⋯⋯懐かしいですな⋯⋯。まだ765プロのアイドルが駆け出しの頃にですな──」

 

 その後、隣人の今までのライブについての思い出話や俺が深くは知らない765プロのアイドルの話、アイドル達が歌う曲についてだったり、彼は様々なことを話してくれた。ほとんどこちらが聞き手になっていたが、誰かと話すのはやはり気分が晴れるものだった。次第に打ち解けていき、いつの間にか敬語もなくなっていた。

 

 

 

 お互いに名前も知らない、今日初めて会った相手。

 

 それなのに、不思議と会話は途切れることはなかった。

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 二人で話しているうちに公演開始の時刻になったらしく、観客席側のライトが落ちていった。

 

「お、いよいよですな」

 

 隣の人の声に反応するかのように、女性のアナウンスが聞こえてくる。

 

『皆様、大変お待たせ致しました。本日は765プロダクションがお送り致します、39プロジェクトによる765プロライブ劇場のこけら落とし公演にご来場下さり、誠にありがとうございます。開演前に、いくつか注意事項を述べさせていただきます』

 

 その後は順々に注意事項が述べられていき、やがてそれも終わりとなった。

 

『────それでは、これより39プロジェクトによる765プロライブ劇場のこけら落とし公演を、開演いたします!』

 

 号令ような開演の合図と客席の歓声とともにステージの幕が上がっていき、全てが露わになる。

 

 

 そこには今日出演するアイドル達がずらりと並んでいた。

 

 アイドルらしい、華やかな衣装。

 それらを纏う、39プロジェクトとしてデビューする新しいアイドル達。

 

 そして、その中に俺の妹である────真壁瑞希がいた。

 

 顔はよく見えない。今いる位置からは姿は見えるが、遠い席であるために表情は分からない。多分いつも通りの表情のままだと思うが。

 けれども。恐らく瑞希は今、人生で一番緊張しているだろう。

 

 

 

 だから──

 

 

 

 

 ────オオオオオオオオオォォォ────!!!!! 

 

 

「⋯⋯⋯頑張れ、瑞希」

 

 誰にも聞こえないように、歓声に紛れて、俺は兄として、ファンとして、こっそりと応援したのだった。 

 

 

 

 やがて歓声がある程度まで収まった頃、中央にいた茶髪の女の子────―春日未来ちゃんが一歩前に出て、開幕の声を上げる。 

 

「みなさ──―ん!!! ライブ劇場開演、最初の曲はこの曲からスタートです!!! 聞いてください!!!」

 

 

『Brand New Theater!』

 

 

 そこから先は、衝撃の連続だった。

 

 765プロライブ劇場の完成に伴い、新たな765プロの門出として発売された新曲。

 それが今、ステージに立つアイドル達が歌い上げ、踊っていく。

 

「歌詞を覚えていこう」と思い何度も聴いた曲なはずなのに、聴こえてきたのは全然別物だった。

 

 今まで耳で感じていた音色を、今は身体全部で感じ内側まで響いていく。

 CDに収録されていた曲を、アイドル達はCDとは別のパートで歌うことで、そして周りのファン達のコールによって、全く別の曲を聞いているかのようだった。

 

 これがライブ。生でしか味わえない感覚。それらをつきつけられたような気がした。

 

 

「⋯⋯!」

 

 

 何も言葉にならなかった。それだけ衝撃的で、気分が高揚していた。

 開演前の不安も心配事も吹き飛んで、夢中で自分のサイリウムを降っていた。

 

 

 ────―ワワワワワワワワアアアアァァァァ──────―!!!!!!! 

 

 ふと気がつけば一曲目が終わり、大歓声が舞い上がる。地鳴りのような声はしばらく経っても鳴り止まない。

 

「どうですかな、初めてのライブは?」

 

 そんな中、隣の人が静かに問いかけてきた。

 その問いに対し前を向いたまま、端的に、簡潔に、一言呟く。

 

「⋯⋯⋯⋯凄い⋯⋯!」

「そうですな⋯⋯。ですがまだまだ始まったばかり。ライブはこれからですぞ~~!」

 

 心底から楽しみにしている声で、隣の人はまた改めて前を向く。

 その様子を横目で見ながら、俺もまたステージを見る。

 

 次も最初から最後まで余すところなく、心の底から楽しむために。

 

 そして、瑞希のアイドルデビューをしっかりと見届けるために。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

――プルルルル、プルルルル⋯⋯―――

 

 

『おや。電話です。瑞人兄さんから?⋯⋯もしもし』

 

『もしもし瑞希。そろそろライブが終わる頃合いだと思って電話してみたんだが⋯⋯。でたということは終わったのか?』

 

『なんと、瑞人兄さんはエスパーなのでしょうか。はい、つい先ほど終わりました』

 

『そっか⋯⋯。どうだった?楽しかったか?』

 

『はい。公演前はとても緊張しましたが、いざ始まってみると、楽しくてあっという間の時間でした。⋯⋯もう一度あのステージに立ちたいな』

 

『そうだな、俺ももう一度瑞希のステージを見てみたいな(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯もう一度、とは?⋯⋯はっ、まさか瑞人兄さん⋯⋯』

 

『あとで感想言うから心して待っていなよ。じゃあな』

 

 

 

―――――ピッ―――――――⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 

 

「これは⋯⋯⋯⋯まずいぞ。⋯⋯⋯⋯⋯恥ずかしい」

 

 

 

 




 いかがだったでしょうか。

 

 今回のテーマは、お兄さんの内面の掘り下げ、でした。書いては消し、書いては消しの繰り返しで、悪戦苦闘しました⋯⋯。

 瑞人は、普段は普通に感情を出すのですが、緊張や不安などのマイナスの感情が大きい時やカードゲームをする時は、ポーカーフェイスになります。無意識にできるのが瑞希で、意識的にするのが瑞人ですね。
 そして瑞人は寂しがり屋でもあります。ですがその感情はマイナスの方向なので表には出しません。その内に抱えた感情を打ち消すかのように、隣の人(名前は碓氷昌平)との交流や初ライブの衝撃を書き加えたのですが⋯⋯これが一番大変でした。

 あと瑞希の歌う部分ですが、単純に技量の限界でした。これについては皆様の想像にお任せします。
 ちなみに私はアマテラスを瑞希、麗花、ジュリア、百合子、琴葉で妄想しました。

 次回の更新は⋯⋯⋯⋯恐らくかなり先になると思います。これは今が忙しいというのもありますが、先に書き上げたいものがあるというのもあったりします。ご了承ください。

 では、また次回お会いしましょう。

 
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