こんな話でも物語と呼べるのだろうか?

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それは1人の男の物語、1人の女の物語

男の話をしよう、その男はしがない物書きの1人だった

 

その男は人よりも人に敏感で、観察力、洞察力に長けていた

 

物書きの書く世界には…夢は無かったが

 

希望を欲している、そんな気がする物語を書いていた

 

万人は物語を悲劇だと嘆き、物書きが書く作品に期待した

 

新たな物語をと、新たな希望をと

 

そして…新たな絶望をと

 

男はきっとその希望を見出す読者がいるのではないかと期待していたのではないか?

 

そう思うほどに彼は一途な作家だった

 

ーーー

 

女の話をしよう

 

人を救おうとすると食い物にされ

 

人を惑わせば漏れ無く悪性に取り憑かれる

 

つまるところ、女は生まれながら悪性を持ち歩く

 

そんな女だった

 

彼女が夢を見たのはいつだろうか?

 

幼き子供の日々か?恐らくは違う

 

では健やかに過ごした少女の時か?まずあり得ない

 

では淑女とされる年数の中か?恐らくは全て間違いだろう

 

彼女は救われた事はないそんな人生で夢など

どうやれば見れたのか

 

それを不憫とは言わない、それを憐れとは言わない

 

何故なら『感情とは人並みの夢を知らなければ意味すら理解できない』

 

つまりは『知らないものを理解する事はあり得ない、故に憐れとすら思えない』

 

……その女は愛を知っていた、だが恋の在り方は知らなかった

 

『愛とは求め心、恋とは夢見る心

 

恋とは現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み

 

そして愛は、恋の前では無力になる』

 

ああ、どこか遠くで聞いた魂に刻みつけた大切な言葉

 

その女にとって生涯最後の答えにして最高の答え

 

これを聞いた女は最期に得た答えは残酷な現実だった

 

何故なら

 

『そんな当たり前のものを知らなかった事が敗因』

 

全知万能、万能の願望器を取り込んだ神になってすら

 

女は余りにも世を知らなかった

 

ただ、最後に得た答えと同じ時に彼女は恋を知った

 

それが誰に向けての恋なのかは解らない

 

恋に恋をしたのか、夢に恋をしたのか、…それともその答えを教えてた男に恋をしたのか

 

こればかりは第三者には解らない

 

『愛してやるのも一興だ。』…か

 

そうだな、きっと君は心から彼女を愛したのだろう

 

地獄の底までついていくのがサーヴァント?違うだろう?

 

地獄の底までも愛した者を護りたいと思ったからついていったのだろう?

 

サーヴァントは裏切る者も多くいる

 

言い訳が上手いひねくれ者のキャスターはきっとこう言うだろう

 

『俺は物書きだネタのためになら既に死んだ体なら地獄へ行ったところで何も変わらん!』

『ならば、世界の終わりをネタにするのも一興だろう?』

 

ーー

 

あぁ、きっと嘘は言ってないのだろう

 

だが本当の事の全ては語っていないのだろう

 

なんせ捻くれ者だ、捻くれ者と世間知らず

 

実に良いコンビだと俺は思うよ

 

ーー貴方のための物語か、たまには自分のための物語でも作れば良いのにと思わず微笑んでしまう

 

 

いや…彼女に対しては『貴方に捧げる物語』…なのかな?

 

さて先生へのコーヒーブレイクの時間だ

 

あの物書きはきっとまだ書き続けているのだろう

 

永遠に自らの筆を止めるような、そんな人間ではないだろうから

 

甘い物と、コーヒーと休憩を適度に与えて

 

また出来上がった作品を読ませてもらう事にしよう

 

我々が愛すべき偏屈で、捻くれ者で、皮肉屋のあの毒舌な下に毒と油でコーティングしたような

 

そんな愉快な物書きの物語を

 

ーーー

 

俺の話をしよう

 

人理、そんなものを元に戻す為の旅に三流ザーヴァントを連れて行く

変人マスターとの話だ

 

長くはなるだろう、だが確かに青臭い物語であろうとも

 

俺の見て描いた物語で唯一のハッピーエンドを飾った一作だ

 

平凡な主人公、三下の最初の仲間、次々と増えていく仲間たち

 

まさに少年漫画の主人公のようなマスターだった

 

この物語に名前をつけようとは思わない

 

仮につけねばならなくなったならタイトルは…そうだな

 

『全てを繋ぐ物語』と言ったところか?

 

 

さて、物語の終わりは近いだろう

 

あの牛女が来るとは夢にも思わなかったが…あれと今の俺は無関係だ

 

それこそ触れることすら野暮なほどにな

 

ーー

 

私が恋を知ったのは、一体いつだったのでしょうか?

 

夢に見るのに解らない

 

目の前に立つその男の声は聞こえない、顔を見ることも叶わない

 

だけど今まで何よりも欲した言葉が、あった気がする…

 

サーヴァントになっても答えは出ない、しかし退屈はしませんね

 

ハンス・クリスチャン・アンデルセン

 

何故だか懐かしい男、そして美しい物語を書く男

 

…皮肉屋なところは腹が立ちますが物語については認めています

 

かつての私には得られなかったもの、夢見ることすら出来なかったものがこの本には詰まっていた

 

ところで…彼と私はどこかで会ったのでしょうか?

 

どこか胸の奥底が温かくなるのです、優しげにポカポカと。

 



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