まあ、気晴らしの番外編だからねぇ…
この《ゴミ捨て場》という章は番外編やボツにした話を置いておく場所です。
一番先頭に置いてありますが、本編を読んでからこっちを読んでくださいね!
それにしても季節外れにも程があるよこれは。
あと、アインクラッド編第7話は後で大幅にリメイクします。本当にあれは酷すぎてpixivに投稿できてないですからねぇ…
リメイクは、最新話の投稿と同時にする予定なので、リメイクしたら前書きに書きますのでよろしくお願いします。
では、番外編どうぞ。
~番外編・Silent Night~
─2023年12月24日─
今日は12月24日。世間ではクリスマスイブと呼ばれる日だ。
だが、俺はあの日以来殆どソロで活動し、人との関わりを避けてきたため、一夜を共にする相手は当たり前として、パーティーをする相手も、談笑する相手すらいない。
それで暇なわけだが、外に出る気にもなれない。
今よりもっと、彼女に会いたくなってしまう気がして。
「木綿季……」
でも俺は人を求めてはいけない。折角紡いだ友情を、愛情を、絆を、全て踏みにじってしまうだろうから。
95層を攻略するまでに茅場を"殺す"、そして"殺される"覚悟が出来なければ俺は…
友人に、愛した者達に、俺を殺せと、俺に殺されろと、言わなければいけなくなる。俺の大切な人達と、殺し合うなんて俺には出来っこない。
……静かだ。"聖なる夜"の名の通り。
街にはたくさんの人がいるはずなのにシステム的にそれらも全て遮断されているので当然なのだが。
ふと窓を覗くと白い影が無数にちらついていた。
「雪…」
思い起こせばひとりきりのクリスマスイブなど初めてだ。
いつもクリスマスには家族や友人がいて、去年も隣にはユウキがいて…
寂しい。苦しい。ユウキや、皆に会いたい。でもその感情を満たすことは"理性"が許さない。
こんなに悲しくなるくらいなら、あの時全てを話して拒絶されてしまえば良かったではないか。
そんな後悔の念が押し寄せる。
「だめ…だな……そんなこと俺が……一番良く分かってたはずなのにさ………」
でも、過ぎたことを後から悔いたって何かが変わるわけでもない。
だから今、俺にできるのはただ静かに涙を流すことだけ。
仮想世界では涙は我慢できない。ナーヴギアが感情を読み取ることで顔にはっきりと出てしまう。
だから、涙を止めようと思ったら、気持ちを切り替えることだけ。
「狩りでも……行くか」
俯き、長く伸びた前髪で涙に濡れた顔を隠すようにして宿を出た。
そして向かった。"何か"を求めて、
35層・迷いの森へ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日は12月24日、世間ではクリスマスイブと呼ばれる日。
今、ボクはアスナのホームでアスナ、そして姉ちゃんとクリスマスパーティーをしている。
……パーティーと言うには些か静かすぎるけど。パーティーというか食事会だよねぇ、これ。
本当は和人にも来て欲しかったけど、あの日以来フレンドもパーティーも解除されて、ボス戦以外ではボクの前に姿を現さなくなった。
それはアスナたちも同じのようで、唯一分かっているのがフレンド登録しているのがKoB団長のヒースクリフと情報屋のアルゴだけだということだけ。
この二人のフレンドを解除しないのは攻略に必要だったからだろう。
──ボク、嫌われちゃったのかな……
そんな考えが脳裏を過ると同時に、視界が歪む。
「…………ボク、酔っちゃったから少し夜風に当たってくる」
「う、うん」
「え、ええ」
SAOでは基本的にお酒には酔わない。だから、外出する言い訳としては苦しいけどあの二人も色々察してくれているのかもしれない。
ホームに向かってとぼとぼと歩いていると路地裏から出てくる一人のプレイヤーが見えた。
その人の服装は黒を基調として、白と赤のラインが入ったコートとズボン。
そして背中には一本の黒い剣を帯びて、長い前髪で顔を隠しながら歩いている。
「和人…」
半年以上探し続けてきた桐ヶ谷和人その人だった。
ようやく会えた嬉しさに身を任せ駆け寄ろうとするが、ある異変に気が付いた。
彼は、唇を引き締め、静かに涙を流して泣いていた。
それを見て、ボクは立ち止まってしまった。
話しかけちゃいけないような雰囲気だったから。
もうひとつ、今まで気が付かなかった変化に気が付いた。
コートの肩の部分に、見慣れたマークがあった。
それは、つい数時間前…食事会が始まる直前に見た。
アスナと姉ちゃんの戦闘服にも描かれていた、十字剣のマーク。
「血盟…騎士団…?」
そう呟いた時にはもう、もと来た道を駆け出していた。
─アスナのホーム─
アスナの家の扉を勢い良く開いて中に入る。
すると、二人が笑顔で
「「おかえりなさい」」
と言ったので頭に血が上って強い言い方をしてしまった。
「知ってたの!?ゼロのこと!」
「「え?」」
「ゼロの行方を知らないって嘘だったの!?」
「待って待って、落ち着いて。最初から話して。」
そこで、はっと我に帰り深呼吸をする。ある程度落ち着けたところで話を始めた。
「……さっき街でゼロを見かけたんだ。ボクもう嬉しくって駆け寄ろうとしたんだけど、ゼロ、泣いててさ。近寄るに近寄れなかったんだけど……」
「「うん」」
「……それでボク、見ちゃったんだ。彼の肩のところに血盟騎士団のマークが描いてあるのを」
「「え?」」
「強い言い方してごめんね。二人はKoBの副団長だから何か知ってるんじゃないかと思って……」
「そんな話聞いたこともないわよ…。」
「うん。新しく団員が入ったら真っ先に私たちに報告が来るはずだから……え?」
姉ちゃんとアスナが答えたけど、ウィンドウを操作しながら答えたアスナは驚いたような声をあげた。
「どうしたの?」
「こ、これ見て…」
アスナはウィンドウを可視化させ、ボクたちに見せた。
「これは…メンバー表か…え?」
そこにはしっかりと、《Zero》というプレイヤー名が記載されていた。
そして、プレイヤー名の横には銀色の王冠マーク。それが意味するのは、
「「「副団長!?」」」
静かな夜の街に、3つの叫び声が木霊した。
その時、何処かの黒い剣士が寒気を感じたのは言うまでもない。
本当に…なんだこれは…