の剣士の物語   作:すぴかさん

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いや、結構疲れた。てか気が付いたらこんな時間だったんですけど、このあと学校行かなきゃいけないのに…
もう寝る時間もないしなぁ…まぁどうせ今日は午前中だけだしいいか。
はい。圏内事件です。正直書くのくそだるいです。色々端折っちゃいますが、許してください


~圏内事件~

─第59層主街区 ダナク とある木の下─

 

「何やってるの?」

 

 俺たち四人が気持ち良く昼寝をしているというのに、何処かから邪魔をする声が入ってきた。

 今日はアインクラッド最高の気象設定だ。暑くもなく寒くもなく丁度良い気温に、柔らかな日差し、そしてそよ風。

 これほど外で昼寝をするに最適な気象設定があるだろうか!

 だというのに──

 

「ああ、アスナか」

 

「迷宮区で皆が必死に攻略に励んでいるのに、なんで貴方はこんなところで昼寝なんかしてるのよ」

 

「今日はアインクラッドで最高の季節、最高の気象設定だ」

 

「はぁ?」

 

「ほら、こんなに日差しも風も気持ちいい。それに、ユウキもランもユイもぐっすり寝てるぜ」

 

 自分の右隣を見るとぐっすり眠っているユウキとラン、そして二人に抱きつかれて眠っている愛娘、ユイの姿がある。

 

「そうかしら。天気なんていつも…え?ランさんまで……。」

 

「ほら、君も横になってみれば分かるよ。」

 

 そう言って俺はもう一度目を閉じた。

 

 ──数時間して。

 

「ふぁぁぁ…ん?」

 目を覚まし、あくびをした後、左側に赤と白の何かが見えた。そちらに顔を向けるとそこには眠っているアスナが。

 

「本当に寝ちまうとはなぁ…」

 

 悪態を吐きながらストレージから飲み物を取り出して近くにあった塀の上に座り、ユウキたちを見張る。

 最近は睡眠PKなんて物騒な事件が起きているから気を付けなければならない。

 よって先程は熟睡することができなかったのだ。

 暫くして日も傾き、寒くなってきたので四人にコートでもかけてやろうかと思ったとき、

 

「くしゅんっ」

 

 と控えめなくしゃみが聞こえた。

 見るとアスナが「うぅ~ん」と身動ぎしてから起き上がったと思えば、

 

「うにゅ……ん?……へ?……ほへ?」

 

 と謎言語を発した。

 

「おはよう。良く眠れた?」

 

 すると、彼女の顔は羞恥からか赤く染まり、次に困惑からか青くなり、そして怒りからかまた赤く染まった。全く、見ていて飽きない。

 

「……なっ!……あん……どう!?」

 

 「なんで、あんた、どうして」と言おうとしたのだろうか。

 困惑からかしっかり言葉を発せていない。

 すると、彼女は腰の細剣に手をかけた。

 

「ひっ!?」

 

 ダメージはないと分かってはいるが反射的にブロック塀の後ろに飛び退いてしまう。

 

 すると彼女は震える手で抜きかけた細剣を鞘に納め、

 

「……ご飯一回」

 

「え?」

 

「ご飯!なんでもいくらでも一回奢る!それでチャラ!どう?」

 

 なんと攻略組トップレベルの実力者である《閃光》サマが晩飯を奢ってくれるというのだ。

 

「おっ、おう。……おーい。ユウキ、ラン、ユイ、起きろー。アスナが晩飯奢ってくれるってよー」

 

「ホント!?」

 

 真っ先に飛び起きたのはユウキだ。流石の食い意地である。

 ランとユイはこちらも「「うにゅ…」」と謎言語を発してゆっくり起き上がった。

 

「……かじゅとしゃん、おはようごじゃいましゅ…。ふぁぁぁ」

 寝惚けているのか、俺をリアルネームで呼んだ上、呂律が回っていない。

「ふぁぁぁ。パパ、おはようございます!」

 ユイはすぐに目を覚ますことができた。流石、AIと言ったところか。

 

「おはよう。良く眠れたか?」

 

「「「はい!(うん!)」」」

 

「じゃあ行こうか。」

 

 

─第57層 マーテン─

 

「あれ、血盟騎士団のアスナ様とラン様じゃないか?」

 

「あと《絶剣》のユウキもいるぞ」

 

「じゃああの黒いのは《黒の魔剣士》か!」

 

「……あのちびっこは誰なんだ?」

 

 周りがとても騒がしい。俺達も有名になったもんだ。因みに俺の《黒の魔剣士》という二つ名は真っ黒な服装と黒と赤のオッドアイから来ているらしい。そしてアスナには《閃光》。恐らくスピードからだろう。

 そしてユウキには《絶剣》、ランには《舞姫》という二つ名がつけられている。

 ここまで有名になると逆に困るというものだ。

 

「ゼロ君」

 

「ん?」

 

「今日は、その、ありがとう」

 

「ああ、良いよ別に。ユウキたちも熟睡してたし、睡眠PKなんてされたらたまったもんじゃないからな」

 

「そうだね。まあ、アスナ最近疲れてたみたいだし良い発散になったんじゃない?」

 

「そう──」

 

 ──キャアアアアアアアッ!!!

 

 レストランの外から悲鳴が聞こえた。

 俺達は迷う暇もなく席を立ち、悲鳴が聞こえた方へ駆けていった。

 

 店から出ると、店の目の前にある建物の前にかなりの人だかりができていた。その人だかりの目線の先には──

 

 首を吊られ、腹に短槍を刺された鎧のプレイヤーがいた。

 そして槍が刺さった箇所からは出血を思わせるダメージエフェクトが出ていた。

 

「何してる!早く抜け!」

 

「ゼロ君とランさんは下で受け止めて!私はロープを切るから!」

「「了解!」」

「アスナ!ボクも行くよ!」

 

 俺が叫ぶとそのプレイヤーはハッとしたように槍を抜こうとするが、槍の返しが引っ掛かって上手く抜けず、悪戦苦闘しているうちに──

 そのプレイヤーはポリゴン片となった。

 

 ──ん?死亡エフェクトとは少し違うような……ああ、そういうことか。

 

「パパ、あのプレイ──」

「ああ、分かってる。でも今は言うな。事情が知りたい。」

「分かりました。」

 

 ランとユイと俺で建物の中に入るとアスナとユウキが悔しそうにしていた。

 

「何か分かったか?」

 

「ダメ。手がかりも何も無かったよ」

 

「そう。なら聞き込み、ね」

 

 

「誰か!この中にさっきの一件を最初から見てた人いませんか!」

 

 ユウキが持ち前の大声で呼び掛けると一人の女性プレイヤーが周りを見て少し躊躇ってから出てきた。

 

「さっきの悲鳴は、君か?」

 

「はい。私はヨルコって言います。さっきの人と一緒にご飯食べに来てたんですけど、急にいなくなったと思ったら…」

 

「辛いこと思い出させてごめんなさい。取り敢えず場所、移動しましょうか」

 

 その後、場所を移動し、詳しい話を聞いた。

 ギルド《黄金林檎》のリーダーが殺されたこと。レアドロップの指輪のこと、それをどうするかで揉めたこと等、かなり詳しく話してくれた。

 

「幻の復讐者…か」

 

「ゼロ?」

 

「いや、なんでもない。取り敢えず俺はこの事件からは手を引かせてもらうよ。邪魔しちゃ悪いしな」

 

「!」

 

「「「?」」」

 

 ヨルコさんは一瞬驚いたような顔をしていたが、微笑を返してくれた。

 

 ──取り敢えず、オレンジが関わっている事だけは、調べておかないと。




次回、《幻の復讐者》

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