の剣士の物語   作:すぴかさん

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……なんだこれ


Aincrad-アインクラッド-
~剣の世界~


 ─2022年11月7日13時02分─

 

 「ここが、浮遊城アインクラッド…」

 

 俺が目を開けると、そこには大きな広場があり、その周りには中世ヨーロッパ風の町並みが並んでいた。

 記憶にはないけれど、懐かしい感じはする。

 さて、ここからどうするかだが…

 

「かーずとっ!」

 

「木綿季…」

 

 リアルの名前で声をかけられ、振り向くとそこには俺と同じでメディキュボイドに入っている紺野木綿季がいた。ただ、メディキュボイドの中と違って髪は長かったが。

 

「ここでは俺は《ゼロ》だ。周りに人がいるときはそう呼んでくれ」

 

「分かった。ボクはこっちでも《ユウキ》だから宜しくね」

 

「了解」

 

 ユウキとも会ったし、フィールドに出てみるか。

 

「ユウキ、フィールドに出てみないか?」

 

「お、いいね!行こう!」

 

 俺達はフィールドへ向かうため走り出した。大通りに出て、細い路地裏に入り、曲がって、また大通りに出て…覚えてない筈なんだけどな…

 

「ねえ、ゼロ」

 

「ん?」

 

「なんで道覚えてるの?記憶がないはずじゃ?」

 

「なんとなくだよ。なんて言うか…懐かしい雰囲気がする方に行ってるみたいな」

 

「ふぅん…」

 

 取り敢えずユウキは納得してくれたらしい。ここ、アインクラッドで何か切っ掛けさえあれば記憶は…

 

「そこの兄ちゃんたちちょっといいか!」

 

 考えに耽りながら走っていると後ろから声をかけられた。振り向くと趣味の悪い赤いバンダナにピンクの髪の毛、そして顎髭を備えた男がいた。

 

「なんだ?」

 

「その迷いの無い走りっぷり、あんたたちβテスターじゃないのか?」

 

 確かに俺はβテスターだ。だが、記憶を失っていてほぼ初心者同然。ここは…

 

「悪い、俺はβテスターじゃ…」

 

「俺はβテスターだよ。」

 

 クラインの更に後ろから声がかかる。

 みると青い髪のイケメンの男だった。

 

「あんたは?」

 

「俺はディアベル。βテスターを探しているってことはレクチャーをしてほしいとかそんな感じかな?」

 

「ああ、その通りだぜ!俺はクラインだ!」

 

「俺はゼロ」

 

「ボクはユウキだよ!」

 

「なら、君たちさえ良ければパーティーを組まないかい?レクチャーはするよ」

 

「勿論だ!願っても無いからな。お前らは?」

 

「「お願いするよ。」」

 

─第一層フィールド─

 

「おわぁ!!ま、股ぐらが…」

 

「おいおい、仮想世界なんだから痛みはないだろ?」

 

「あ、そっか」

 

 クラインが猪に吹き飛ばされ、股ぐらを抑えているが、俺が痛みはない、と突っ込む。

 

「ゼロくんとユウキさんは筋がいいね。クラインさんはもう少し練習しよう。カタナだから少し難しいけど、こう、それぞれの技のモーションをとってスキルが立ち上がる感じがしたら体を動かす感じで。」

 

「モーション…モーション…」

 

 俺とユウキは既にこの世界に存在する剣技、ソードスキルを使えるようになっていた。俺は覚えていなくても体に染み付いているから自然に放てたし、ユウキは完璧に感覚派だからコツをつかむとすぐにできるようになっていた。

 

 すると、不意にクラインが肩に担いだ刀がきゅいいいいいん──という音と共に光を帯びる。

 

「うおりゃーーーー!!!」

 

 クラインが体を動かすと目の前の猪──フレンジー・ボアを刀が貫き、ポリゴン片させた。

 

「おめでとう。といってもこの猪、某有名RPGで言うところのスライムレベルだけどね。」

 

「うえっ、マジかよ。俺ぁ、てっきり中ボスくらいかと…」

 

 ディアベルがそう言うと、クラインはがっくりと肩を落とした。

 

「そういえばスキルってよ、武器を作ったりするのとか色々あんだろ?」

 

「そうだね。スキルの種類は無数にあると言われてる。その代わり、魔法はないけど…」

 

「RPGで魔法なしたぁ、大胆な設定だよな」

 

「そうだね。じゃあ、次行こうか。」

 

「「「おう!」」」

 

─同日17時20分─

 

「何度見ても信じられないよね。ここがゲームの中だなんて。」

 

「だよなぁ。作った奴は天才だぜ。この時代に生まれて良かったぁ…」

 

「大袈裟だな」

 

 確かに大袈裟だが、一理はある。ただ楽しむだけじゃなく、俺とユウキみたいに治療にも使えるのだから。

 そんなことを考えていると、急にクラインが叫びだした。

 

「って!!もうこんな時間じゃねえか!俺は一回落ちるわ!」

 

「飯か?」

 

「ああ。5時半アツアツのピザ頼んでんだ!」

 

「準備万端だね」

 

「おう、じゃあな…あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「ログアウトボタンがねえ。」

 

「そんなはずないよ。メインメニューの一番下に…ないな。」

 

「「俺(ボク)もない。」」

 

「おかしいぞ…」

 

「何がだ?」

 

「確かに。こんなの今後の運営に関わる一大事だ。なのにアナウンスも強制ログアウトも何もない。」

 

「そうだよね…ディアベルの言う通りだよ…」

 

 その時、何処からかゴーンゴーンという鐘の音が聞こえた。それと同時に俺達四人は青い光に包まれる。

 

「「「「うわああ!!」」」」

 

─同日17時30分─

 

 気が付くと、俺達がこの世界に来て一番最初に来た場所…始まりの街の広場にいた。

 周りは混乱に陥っている。

 

「おい、上!」

 

 と、誰かが叫ぶとほぼ全員が上を向いた。

 

 そこには、赤いシステムメッセージで

《WARNING》《System Announcement》

 と表示されていた。

 

 そして、そこから血のような赤い液体がダバダバと流れ出て、ローブを着たの人の形を型どった。

 

「なんだ、ありゃあ…」

 

 クラインが呟くと、そのすぐ後に赤いローブが話し始めた。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。』

 

「…私の世界?」

 

「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。」

 

 周囲の人物たちは「本物だ!」等と言っているが、茅場の声はとても低く冷たい。

 これは、何かある。

 

「プレイヤー諸君は既にメインメニューからログアウトボタンが消えていることに気が付いていると思う。しかし、それはゲームの不具合ではない。

 繰り返す。不具合ではなく《ソードアート・オンライン》の本来の仕様である。」

 

「仕様…?」

 

「諸君らは自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間によるナーヴギアの停止、解除もありえない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアが発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる。」

 

「何言ってんだあいつ。頭おかしいんじゃね?なあ、ゼロ、ディアベル、ユウキ」

 

「いや、信号素子のマイクロウェーブは電子レンジと同じだ。リミッターさえ外せば人間の脳の限界の42℃なんて簡単に…」

 

「じゃあ、電源を抜くとかは?」

 

「いや、ナーヴギアにはバッテリーがあったよ。」

 

「残念ながら現時点で、プレイヤーの家族・友人が警告を無視してナーヴギアを強制解除しようとした例が少なからずあり、結果、213名のプレイヤーがアインクラッド及び、現実世界から永久退場している。」

 

「213人も…!!!」

 

「信じねぇ!信じねえぞ俺は!」

 

 ここにいる殆どの人間はクラインと同じ考えだろう。しかし茅場はそれを認めさせるように現実のニュースが書かれているモニターを開く。

 

「ご覧の通り、多数の死者が出たことを含め、あらゆるメディアが繰り返し報道している。よって、すでにプレイヤーがナーヴギアを強制解除される心配は低くなっていると言っていい。諸君らは安心してゲームクリアに励んでくれ。」

 

「しかし、十分に留意してもらいたい。今後、このゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HPが《ゼロ》になった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に──諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される。」

 

 それからは殆ど覚えていない。

 

 気がついたときには俺はユウキとディアベルと、ホルンカという街の宿屋にいた。

 俺もユウキもディアベルも現実の姿に戻っていて、驚いたが。

 デスゲームになって本当なら恐怖に陥っても仕方ないはずだが、俺の気分は高揚していた。

 俺はこの状況を楽しんでいる。

 

 ──俺ってとんだ戦闘狂だな。

 

 そう思いつつ、今日は床につくことにした。




 ゲーム開始1ヶ月で2000人が死んだ。

  ──いまだ第1層はクリアされていない。

              2022年12月2日








次回、《討伐》

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