の剣士の物語   作:すぴかさん

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当作品のキバオウはんは心がきれいです。なので、乱入はしません。つまり何が言いたいかと言うと、キバオウはんは現時点ではMobに等しいのです。


~討伐~

 ゲーム開始から1ヶ月が経ち、その間に2000人が死んだ。

 あれから俺はディアベルと別れ、ユウキと行動を共にしていた。

 そして、今日。ディアベルのパーティーが第一層のボスの部屋を発見、討伐会議が開催されることとなった。

 

─12月2日16時30分 トールバーナ─

 

 トールバーナの街のとある広場に、ぞろぞろと剣や斧、槍などの武器を持った人々が40人ほど集まってきた。

 広場の中央で立っていた青髪の青年はメンバーが揃ったのを確認すると、声を上げて会議を開始した。

 

「はーい!それじゃあそろそろ始めさせてもらいまーす!今日は、俺の呼び掛けに応じてくれてありがとう!俺はディアベル!職業は、気持ち的に『騎士(ナイト)』やってます!」

 

 ディアベルがそう言うと、周りでは笑いが起こった。

 同じパーティーメンバーと思われる奴らは「この世界にジョブシステムなんてないだろ!」等と野次を飛ばしていた。

 そんな明るい雰囲気で始まった会議を、ディアベルは唐突に空気を引き締めさせる。

 

「皆をここに呼んだのは他でもない。今日、俺達のパーティーがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した。」

 

 今度は周囲にざわめきが起こる。

 

「俺達はボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームをいつかきっとクリアできるということをはじまりの街で待っている皆に伝えなくちゃならない!それが、この場所にいる俺達の義務なんだ。そうだろ、皆!」

 

 今度は周囲が喝采を起こす。このディアベルという男は、持ち前のコミュ力で場の空気をこう自由に変えられるのだから俺にとっては尊敬に値する。

 しかし、次の言葉で俺は絶望の底に落とされる。

 

「先ずは、6人のパーティーを組んでみてくれ」

 

 ──はぁ!?ゆ、ユウキは着いてきてくれるとして、あと四人は…

 

「ゆ、ユウキは着いてきてくれるよな?」

 

「当たり前でしょ?」

 

 笑顔で返された。良かった…

 

『あれ?貴方、もしかして木綿季?』

 

「はい?…え!?姉ちゃん!?」

 

 後ろから声をかけられたと思ったらユウキに良く似た女の子だった。

 その女の子はユウキの双子の姉らしい。

 

「もし良かったら私もパーティーに入りましょうか?」

 

「い、いや!是非頼む!そうだ、あと3人!」

 

 辺りを見回してみると、フードを被った人が左にいた。

 

「君も、溢れたのか?」

 

「溢れてない。周りがお仲間同士みたいだったから遠慮しただけ。」

 

 ──それを溢れたって言うんだろ…

 思ったが口にしなかった。理由?怒ったら怖そうだから。

 

「な、なら俺達とパーティー組まないか?今回だけの暫定だ。」

 

 頷いたので俺はパーティー申請をする。

 《Asuna》と言う名前が出てきた。名前と服装からして恐らく女性だろう。

 

 その後ボスの攻略法や注意点等が話され、その日は解散となった。

 ボス攻略は明後日…12月4日に行われることとなった。

 

 解散したあと、俺とユウキのお姉さんは自己紹介しあうことにした。

 

「じゃあ、貴方が二人目のメディキュボイド被験者の桐ヶ谷和人さんなんですね?」

 

「ああ。この世界では《ゼロ》だけどな。…ユウキと違って、そこまで重病って訳じゃないが。藍子さんは?」

 

「呼び捨てでいいですよ。あと、この世界では《ラン》。私は、SAOが始まったその日にメディキュボイドを使い始めたんです。」

 

 メディキュボイドを使う。つまり、そういうことなのだろう。

 

「そうなのか…」

 

「えっ!?聞いてないよ!」

 

「そりゃ、ユウキたちがSAOに入った直後に使い始めたからね。」

 

「そっか、あっ!」

 

「あれ、アスナさんですね。」

 

 見ると、そこには先程、解散するとそそくさと何処かにいってしまったアスナが、花壇の縁に座って黒パンをかじっていた。

 

「隣、いいか?」

 

 アスナは何も言わないが、無言を肯定ととって隣に座る。アスナには少し離れられたが。

 

「それ、結構美味いよな」

 

「本気でそう思ってる?」

 

「ああ、この街に来てから1日1回は食べてるよ。少し工夫はするけど。」

 

「「工夫?」」

 

「ああ、あれか。」

 

「ユウキ、ラン」

 

「こんばんは、アスナさん。」

 

「…どうして私の名前を?」

 

 ランが挨拶をすると、アスナは怪訝そうな顔をした。

 

「自分の視界の左上に自分以外の名前が見えるだろ?それが俺達の名前だ。」

 

「ゼロ…ユウキ…ラン?これがあなたたちの名前?」

 

「ああ。俺がゼロ。こっちがユウキとランだ。」

 

「よろしくね。」

 

「そういえばゼロさん。工夫、というのは?」

 

 おっと、忘れるところだった。

 

「ああ、黒パンにこれ使ってみろよ。」

 

 アスナ、ラン、ユウキ、俺の順番で使っていく。

 俺が使ったあと、耐久力が切れたのか瓶はポリゴンとなって四散する。

 瓶の蓋部分をタップすると、指先が青白く光るので、それをパンに塗るようにすると…

 

「クリーム?」

 

「ああ、食ってみろよ。美味いぞ。」

 

 俺とユウキが先に食べていると、2人が恐る恐る口に運ぶ。

 

「「「美味しい」」」

 

「だろ?」

「でしょ?」

 

 なんということでしょう!パサパサボソボソしていた黒パンがクリームを塗っただけでヨーグルト風味の田舎ケーキに早変わり!

 

「こんなもの何処で?」

 

「前の村で受けられる《逆襲の雌牛》ってクエストで手に入るよ。わりと簡単だからやってみたらどうだ?」

 

「気が向いたらやるわ」

 

「私もですねぇ」

 

「そっか」

 

「じゃあ、これ食べたら今日は解散にしよう!明日陣形とかの練習と話し合いをして、明後日の本番に望もう!」

 

「「「おう!」」」

 

 

─12月5日迷宮区 ボス部屋前─

 

「俺から言うことはたった1つだ。勝とうぜ!!」

 

「「「「「「おうっっ!」」」」」」

 

 ディアベルの言葉に、攻略組のほぼ全員が気合いを入れる。

 

 そして、扉を開いて部屋の奥。そこに《イルファング・ザ・コボルドロード》と取り巻きの《ルインコボルド・センチネル》がいた。

 

 攻略組とコボルド組、双方が同時に駆け出し、ぶつかった。

 

 俺達溢れ組はセンチネルの担当だが、ディアベルが俺達の力量を知っているため、いざとなったら前衛に出てもいいことになっていた。

 

 だが、ディアベルの指揮は凄まじいもので、コボルドロードのHPはどんどん減っていった。

 

 そして、ボスのHPがレッドゾーンに入ったとき、ボスが武器を投げ捨て、背中にある武器に手をかけた。情報通りならここで曲刀を出してくるはずだ。

 

「みんな下がれ!俺が出る!」

 

 ディアベルが一人前に出た。だがここは、パーティーメンバー全員でかかるのがセオリーのはず。──まさか。

 

 そして、ふとボスが抜きかけている武器を見ると明らかに曲刀ではなかった。

 ──タルワールじゃない!情報と違う!

 

「ディアベル!武器が違う!全力で後ろに跳べえええええええええ!!!」

 

 叫んだがもう遅かった。ディアベルは既にソードスキルを発動させてしまい、もう攻撃をするしかなかった。

 

 そこに情報と違う武器の──《野太刀》と呼ばれる武器での攻撃が始まった。

 カタナ重範囲攻撃技《旋車》。

 それが、ディアベルを襲おうとした途端、世界が止まった。いや、途徹もなくスローモーションになったと言うべきか。

 そんなことも気にせず、俺は駆け出す。

 そして、射程内に入った瞬間、片手剣突進技《ソニックリープ》を使って更にスピードを上げて一気に間合いに入る。

 その瞬間、世界が動き出した。

 なんとか《旋車》をパリィすると、叫ぶ。

「ユウキ、スイッチ!!!───ぅっ」

 

「…………………っ!うん!」

 呆然としていたユウキだが、その叫びによって意識が戻り、駆けてくる。

 そして、アスナも同様に駆けてきた。

 

 ユウキが片手剣水平斬2連撃技《ホリゾンタル・アーク》を発動させ、確実にダメージを与えた。

「アスナ、スイッチ!」

 

「はぁぁぁぁっ!」

 アスナの《リニアー》で更に大きくコボルドロードのHPが削れるが、残ってしまった。

「ランさん、、スイッチ!」

 

「はいっ!」

 ランもユウキと同じ《ホリゾンタル・アーク》だ。だが、これでも数ドット残ってしまう。次で止めは刺せるだろうが、やはりボスなのだ。

「ゼロさん、スイッチ!」

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 止めに《バーチカル・アーク》を確実に入れたところでボスのHPは全損、ポリゴンと化した。

 

 空中には《Congratulations!!》の文字と、俺の目の前に出現したウィンドウには《Your get the Last Attack Bonus!》の文字。

 LAのアイテムは《コートオブ・ミッドナイト》という防具のようだ。

 

「「「「「「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」

 

 場は歓喜に包まれた。デスゲーム開始から1ヶ月かけ、漸く第一層をクリアできた喜びだ。

 その中で、俺は集団の隅で息を切らしていた。

 そこに近づいてくる5つの影。

 

「やったね!ゼロ!」

「お疲れ様」

「お疲れ様でした」

「見事な剣技だった。Congratulations!この勝利はあんたのもんだ!」

「すまなかったな、ゼロ君。迷惑をかけてしまって。」

 

 上からユウキ、アスナ、ラン、エギル、ディアベルだ。

 5人とも称賛の声をくれたが、ランが怪訝そうな顔をしている。

 

「それはそうと、なんですか?さっきの。」

 

「さっき?」

 

「ディアベルさんを助けにいったときの瞬間移動?みたいな?」

 

 その言葉に、他の攻略組メンバーも黙ってこちらを向いた。

 正直言って、あの時何か特別なことをしたかなんてよくわからないので、曖昧に答えておく。

 

「いや、よく分からないんだ。気づいたらディアベルの前にいた、というか…」

 

 とりあえず適当な言い訳をしてやり過ごす。

 それより俺は早く横になりたい衝動に駆られているのだ。何故なら──

 

「…とりあえず俺は先に行く。第二層のアクティベートはやっておくよ。ユウキ、アスナ、ラン、行くぞ」

 

 そして、俺は入ってきた方とは反対側の扉へ向かう。

 歯を噛み締め、事故で赤く染まった左目を大きく見開き、あるはずのない痛み──激しい頭痛に耐えながら。




次回、《月夜の黒猫団》
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