の剣士の物語   作:すぴかさん

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いや、漸く令和ですねぇ…
本当は記念番外編でも作りたかったんですがアイデアが浮かばず…

今回は和人の過去をに触れるお話です。
ユウキsideから始まります。
文字数少なめかな?


~記憶~

 27層迷宮区にあった隠し扉の先はトラップで、ボクたちは今、幾つか上の層のレベルのモンスター達に囲まれてしまっている。

 黒猫団の皆を部屋の真ん中に集めてボクとゼロで上位剣技も惜しみ無く使って戦っているけど、数が多すぎてどうしても何体か溢してしまう。

 

 自分の分を全部片付けて振り替えると溢したゴーレム2体に黒猫団が苦戦していて、そこにゼロが走っていくのが見えた。

 

 ゼロがヴォーパル・ストライクを使ったからもう安心だ。

 

 そう思ったのも束の間だった。

 

 剣先がゴーレムに当たる寸前、ゼロの顔が歪み、綺麗な赤い瞳を持った左目は大きく見開かれた。

 

「があああああああっ!!!!」

 

 ゴーレムがポリゴンとなると同時にゼロは剣を取り落として膝をつき、頭を抱えて叫んだ。

 

 黒猫団の皆もボクも、何が起きたのか全く分からず、呆然としていると、

 

「うっ、ああああ…」

 

 ──ドサッ

 ゼロが呻き、倒れた。

 

「あっ…………和人!!!」

 

 慌てて抱き起こすけど、和人の意識はなかった。

 

「死なないで!死なないで!死なないで!」

 

 パニックになって揺さぶったりしてみるが和人の意識は戻らない。

 そこで、話しかけてきた人物がいた。

 

「大丈夫だよ、ユウキ。アバターが消えてないから死んじゃいないよ」

 

 ケイタだ。そうだ、この世界で死んだらポリゴン片となって消滅する。

 動揺のあまり、その事を忘れてしまっていた。

 

 取り敢えず、和人を連れて宿屋まで帰ったけど、その日、和人は意識を戻さなかった。

 

 一晩寝れば元に戻るだろう。そう思って明日に期待するが、次の日も、また次の日も、和人の意識は戻ってこなかった。

 

 ──和人…早く戻ってきて…

 

 

 ──和人の昏睡状態は一週間続いた。目を覚ましたことにユウキと黒猫団のメンバーは喜んでいたが、それは関係と日常の崩壊に過ぎなかった。

 

───────────────────

 

「ぅ、ぅうん…ここは…」

 

 体を起こすとそこは4日間泊まっていた宿屋の一室だった。

 置いてある荷物からして恐らくユウキの部屋だ。

 メニューを開いて現在時刻を確認すると

《2023/4/19(Wed) 12:16》

 と、表示されていた。

 

 ──俺、一週間も眠ってたのか…

 

 そう思いながら、今までの事を思い出す。

 

 ──1週間前、黒猫団と隠し部屋に閉じ込められて俺は頭痛で倒れたと。うん、覚えてる。それから……そうだ、俺…

 

 その時、部屋のドアが開いた。

 

 艶があって紫にも見える黒い長髪に赤いカチューシャリボン、紫を基調とした戦闘服───ユウキだ。

 

 ユウキは両目を大きく見開き、涙目になりながら体をプルプルと震わせた。

 

「…おはよう、ユウキ。心配かけてごめんな」

 

「か、か、か、」

 

 ユウキが何か呟いている。俺が頭の上に?マークを浮かべると、

 

「かずとーーーーーーっ!!!」

「ぐふっ!」

 

 俺の胸にダイブしてきた。

 俺は受け止めきれずに後ろに倒れてしまい、ユウキに押し倒される体制になってしまった。

 

「心配したんだよ!?……何か、思い出した?」

 

 ユウキは何かに勘づいたのか急に空気を引き締めて聞いてきた。

 

「どうして?」

 

「いつもと雰囲気が違うっていうか…それとこの間のあれが関係してるのかなって」

 

「…ああ。事故直前の事が思い出せたよ。」

 

 ──これは紛れもない嘘だ。本当はほとんど全て思い出していた。

 けれど、こんなことを言ったら俺は──

 

─2021年6月 桐ヶ谷邸─

 

 2年半ほど前、この家の本当の家族ではないと知った時から、俺は家族とどう接していいのか分からず距離を置いてしまっていた。

 それでも父さんや母さんは前と変わらない態度で接してくれているし、妹の直葉も俺と仲良くしようと接してくれている。

 ──が、俺は人を疑う癖がついてしまい、次第に学校でも必要最低限の会話しかしなくなり、終いには学校とご飯の時以外は自分の部屋に引きこもるようになっていた。

 

 だが、俺にも趣味はあった。オンラインゲームとプログラミング、そして家にあるガラクタを使った物作り。

 それを2年半、ずっとやっているので技術もかなり上がって、プログラミングでは某リンゴ社の何でも教えてくれるAIと同レベルのものが作れるようになったり、物作りの面ではAIを利用した家の空調をスマホから自由に遠隔操作できる仕組みも作ったりした。

 

 そんな日常の最中、家にある人物が訪ねてきた。

 

 その人物の名は、

 

 

 

 

 

 ────茅場晶彦。

 

 聞いたところによると茅場はあるゲームを作ろうとして行き詰まり、俺の母さんに相談して、俺の事を紹介されたようだ。

 

 母さんはかなり名の売れた雑誌編集者で、茅場…というよりアーガス社にツテがあったようだ。

 

 茅場さんからの依頼は、《Cardinal system(カーディナル・システム)》の一部との作成と、モンスターや武器、技などのアイデアを出すのを手伝って欲しい、とのことだった。

 

 俺はそれを快く了承し、カーディナルの一部を作成、そして、色々なアイデアを出していった。βテスト時点でのステータススキルの約1/4とソードスキルの約1/7、モンスターの約1/5は俺がアイデアを出したものだ。

 

 これを半年で完成させ茅場さんに全て提出し、そのまた半年後の7月、そのゲームのβテストが開始された。

 

 そのゲームのタイトルは《ソードアート・オンライン》。

 

 βテスト中はとても楽しかった。偽りの身体で、現実のコミュ症を発することもなく、自由に剣を振るえた。

 

 βテストが終わって2ヶ月後の2022年11月2日。俺はあと4日でSAOの正式サービスが開始されることに浮かれていた。

 漸く自分の努力が形になるのだと。

 

 ──だが。

 

 公園からサッカーボールを追いかけて飛び出してきた少年を庇い、俺はトラックにはねられ記憶を失った。

 

 それから3日後の11月5日に目を覚ました俺は、メディキュボイドで治療することになった。

 

 そして、その治療で使うソフトが《SAO》だったわけだが、俺は何も覚えちゃいなかったので、どんなところなのか、という興味しか無かった。

 

 そしてログインしたあとの茅場さんからのデスゲーム宣告───────

 

────────────────────

 

 今ここで記憶を取り戻したところで死んだ約2500人は帰ってこない。

 俺は間接的に2500人もの人間を殺し、そんな中でのうのうと生きている。

 

 なら、俺がやることはもうひとつだけだ。

 

 ──木綿季には、もう会えない。

 

 俺はユウキに事故直前のことだけ話し、部屋を出て、自分の部屋に戻った。

 

─────────────────

 次の日の朝、部屋に彼の姿は無かった。

 

 ゼロ──桐ヶ谷和人は、紺野木綿季と月夜の黒猫団の前から姿を消した。




次回、《黒の魔剣士》
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