どーなつみたいなバイク型武器の座席部分に肩掛けバッグを掛ける。肩紐の長さを短くする。重力銃を拾い上げてバッグに入れて、座席に座る。正面の一番大きい画面に触れてみる。お、起動した。バイクは免許がまだ取れないから練習不足だよなあ。こんなバイクはないだろうけど。部屋から持ち出せれば1ヶ月、いや期末テストがあったから2週間くらいは練習出来たのにな。
低音が響き、飛行バイクが近くに寄って来る。ヤマダさんをはじめ何人かまだ残ってるのか?ミナトさんも私を待っていた?地図だと赤い光点は1箇所、拡大してもたった1つしかないのに?
「一緒に行きましょう?今回はたぶんかなり強いと思うわ」
なるほど。あの海星の化物みたいな感じか。単独の敵が強かった事が何回もあったのだろうか。黒球にも強いという表示があったな。
「前の海星みたいなヤツとどっちが強いですかね?」
「…?ああ…さあね、どうかな」
「そろそろ行きませんか?先に行った人達もいますし」
ヤマダさん、心配しているのか?…着いて行ってないから違うか。
地図のボタンを押し、ミナトさんに合わせて透明化する。見えるようになった飛行バイクは道の上に滞空してしている。 ヤマダさん達の身体の周囲にも電流の様な物が音を立てて走る。見覚えの無い人達も居るな。
バイクの握り手を回し発進する。右手を軽く引くと傾かずに滑らかに右に曲がって行く。
「結構楽しいなこれ」
独り言が漏れてしまった。
「なんだー!?」
走りながらヤマダさん、青年の方が反応する。
「のぞき星人の方はどうなっています!?」
バイクを操作しながら聞く。のぞき星人仕留めた後部屋に戻される前に他の画面の機能とか試したいな。…残って性能を確かめてからの方が安全__
「うおっ!」「やばいどんどんやられてる!」「まずっ」「うえっ消えてってる!」
悲鳴と特殊な銃声と破壊音が微かに連続して聞こえる。
「近い!その向こう!」
分かっているよ。あれ、普通の人がいる__
不自然に人の少ない駅前の開けた場所が見える。地面に転がる人達、破壊された道路や壁、倒れた自転車__敵は?
何処だ、表現の違う声が幾つもずれながら重なる。
バイクを止める。座席の下のバッグから銃を引き抜き、構えながら地図を見る__視界の上端辺りでミナトさんが透明化、もう消えてるのに!?透明化に段階でも__そうか、透明化を変化させれば敵が見えるかも__青い光点の塊に近付く赤い光点__
「慣れてない人は透明化をいじるのは止めて!一般人に見られるようになると死ぬわ!」
ヤマダさん!?ならどうすれば__
「撃ちまくれ!」
っそうか!トリガーを引いていく。奇妙な音と破壊音が木霊し始める。
地図上ではもう赤と青が殆ど重な__冷たい感触が左手を通り胸へ__バイクから後ろに跳ぶ__左手前腕に激痛__浮遊感、バイクにぶつかる__
衝撃で覚醒する。地面に叩きつけられたの__痛い痛い痛い!!腕の途中から赤い筋の絡まった骨が飛び出ている__は?
___痛みを無視しろ_イタイイタイイタ__立って武器を構えるんだ__私のバイクが傍に倒れている__銃声と破壊音は続いてる、地図を見ながら走る数人がいる__右手で柄を太腿から外し刀身を伸ばす。
くそがっ、触りたくない__柄ごと右手で左手から__ぐううぅぅぃぃー__動き回る青い光点が複数、動かない青い光点のすぐ横に赤__刀身を伸ばしつつ横薙ぎ、体ごと回転__軽い手応え。
飛びずさりながら叫ぶ__
「当たったっ!」
地図では私の進む方向の左近くに敵、なら右だ!何度も右手を振るう__着地。激痛が思い出したように__反対側で3人銃を構えて__右に横っ飛び__空中で地図を見る、止まっている青に赤が__顔を上げる__端の2人が頽れ後ろに血塗れの背骨__着地。
あそこにいる!__駆け出し__残りの1人も飛びのいた後向き直って撃っている__宙に浮かぶ2本の骨が地面に押し潰される__円形に出来上がった窪みの前で急停止、尻餅をつく__右手も使って後ろへ__空間が押し潰す音が連続してゆく。
終わりか__?ミナトさんいいとこどり、いいや囮にされていたのか__?
「腕、大丈夫?止血手伝おうか?」
ヤマダさん、有り難い__あれ、何か変だ…
ミナトさんはまだ撃ち続けている。
「一定の距離を取って!一気にやられるかも!」
重力銃の音と被って妙な音が聴こえる__伸びたコードの先の地図を掴み柄ごと顔に寄せる__敵の声か、耳鳴りか__赤が1つ、輝いて__赤い光点が移動しつつ点滅している?短距離の瞬間移動でもしているのか?
__轟音が響く。顔を動かすと正面奥のビルの壁に穴が開いている__連続する小さい音がクリアに聴こえる。少し鈍い音、ミナトさんが左の方に現れ、倒れる。__彼女が飛んで来た方に敵はいるはず、刀を握って、あれ?
膝をつく。激痛が薄らいでる__力が入り難い、刀を落とさない様にしないと__視界がチカチカする。全身に力をいれる__ミナトさんが膝立ちで重力銃を正面の宙に浮かぶ小さな肉塊1つに向けている、地上階の明りに照らされた眉を顰めた彼女の紙みたいな横顔が綺麗だ__ピンク色の肉塊が地面に落ちていく、そして彼女も不自然な挙動で地面に体の前面から突っ込み__後ろに居るのか!集中だ__私のスーツの強化が高まる。私は前に動き出す。
彼女の体からナニカが引き抜かれる__彼女の体が痙攣する__更に1つ__全身を使って宙に浮かぶ深紅の塊2つの間を斬り裂く。重い風切り音__上か__刀を持ち上げる__衝撃に耐え切れず地面にくずれ_.......
「うつった!?あてられる!!」
女性の声で目が覚__痛い。右手を付いて上体を起こす。耳鳴りもするし目も霞むが、特徴的なぎよーん、という銃声と肉の破裂音、そして直ぐ近くでうつ伏せのミナトさんは判る。振り向くと、胸の出た人影が1つライフルみたいな銃を虚空に撃ち、その虚空から何か飛び散っていっている。いけそうだな…顔を戻す。私の右手の傍に柄、ミナトさんの両手の前に重力銃が転がっている__ミナトさんの背中の中央と尻の上に穴が空いて糸が数本出て、それと丸い袋が載っている。
血はもう流れていない様だし、何より内臓が抜き取られているらしい。息を引き取ってるな。__銃声が止む。振り返るのも億劫だ…左手の血塗れの地図に目を凝らす、赤い輝点は、無い、よな。息を吸い、両足と右手でミナトさんの所まで体を運び、覆い被さる。右手が彼女の銃に当たる。目を__死んでいても私ごと転送されれば、纏めて損傷が修復されるのではないか、死者達を簡単に生き返らせれたのにと悔やむべきか、試せる__閉じる..........................................
うん?立っている、のか。目を開ける。右手に重み。ミナトさんの体は、無い。あーあ、まあうん、当然か.......。他の生き残りは、2人?あ、もう1人現れ始めた。
「おお、生きてる…!」
「よかったわねっ!」
「まったくだ。ラッキー、お前死んだと思ってたぜ」
「ちょっとー、攻撃当ててたの彼くらいよ。多分。ね、手応えあったでしょ?」
「ええ…でも、倒したのヤマダさんですよね、助かりました。死ぬところでした、ありがとうござい__」
短く音楽が流れる。
「もう、キンナでいいわよ、前に言ったでしょ?」
「ありがとうございました、キンナさん」
凄く魅力的な女性だな…
「どういたしましてっ」
「あ、俺も、ありがとうございましたっ」
「おい採点始まってるぞ」
「戦闘狂だって、ラッキー?」
「…はあ?」
何だと?
やまだくん、0点、きょろきょろしすぎ、計55点。
そう、0点、しんだふりうまい、計37点。
次か。
「いや違うっすよ!」
うるさいな。
やまだちゃん、90点ー
「ごめん、1番、あたしを自由にして」