あれ、か?手下げ袋を握り直し、膝を軽く曲げて跳躍__着地。
「透明化しているか?モチノ」
くるっと回転しつつ艶やかな薄着の女子がこちらを向く。一応は強化スーツを一部、服の下に着てはいるよう見えるが。
「うわ!…おー、すっごいカッコ…」
「さっきまで祭りに居たんだ、そんなに変じゃないだろう」
透明化している私が見えるのだから、この人も透明化をしているな。彼女の横を通り抜けて川沿いの道を歩き始める。
「人が来なさそうな所まで移動しよう」
「じゃあそのお面取ったら?遊び心は評価するけどさあ」
安物のお面だ、いいモノじゃ無い。
「格好はどうでも。軽く打ち合わせしたいだけさ」
「あっそ、助かるわね」
苛ついてる、かな?
「蒸し暑い中来てくれて有り難う」
アイスでも買ってくれば良かったかな。
「人混みから抜けてる今はそうでもないわよ?」
確かにさっきよりはましだが__というかモチノもさっきの人混みに居たということ?
「下に強化スーツを着ているのに、モチノの方は暑くないのか?」
「全部は着てないしね…ラッキーもそうでしょ」
ちょっとした広場が近付いて、歩みを止める。
「軽く動いてみるか。もう強化込みの動きも慣れた?」
「まあそこそこ?けど、君とモギセンは絶対にしないわよ」
モギセン?模擬戦、か。そんな事したら危ないだろう。
「そんな危険な事やる訳が無い。このスーツ、短期間でハンドガン型の銃や刀で5回程攻撃したら機能を停止するんだ。内臓を直接ロックオンした場合は試せて無い上に、斬り方に因っては1撃で切断も可能だ」
別に共有する必要は無い情報だが、モチノには言っても大丈夫だろう。
「え、試したんだ…」
引かれたか?
「ああ、自分に攻撃した訳じゃなくスーツを一部外してね。だから強化を高めた状態での限界も分からないな。でも、何というか、つまり手合わせをしても早々大怪我はしないだろうけど、危険だって事だ。別に敵も人型が多い訳でもないし、そういう練習はしなくてもいいと思う」
「ふーん。なるほどねー、それじゃあさ、ラッキーはスーツが壊れた状態であれに参加した事があるの?」
「スーツを着ずに参加する方が無謀だと思う」
「ちょっとぉ、その話はやめてよ…その節は大変お世話になりましたー」
「ははっ。ああ、話を戻すけど、転送時に修復されると思っていたし、実際直ってた、それと飛行バイクに乗っていれば多少のスーツの不具合も問題にならない」
話すなら電話でも__いや、もしかするとこの内容を話すのは拙いかもな、少しでも盗聴を気にするとか偏執狂染みてるけど、人の生命を弄れるあの黒球なら、盗聴もしてるかも。ま、今ここで話さなくてもいいだろう。
「さて、どれ位、跳躍出来る?」
低く跳ぶ__地面を少し滑りつつ着地。広場に立ち、振り返る。跳び過ぎ、かな?頭上を越えて行ったモチノに近寄る。
「わたしの方が跳べたよ~」
「こっちはわざと低く跳躍したんだ。空中では碌に動けないから」
「言いたいことはわかるけど、はやくて攻撃を当てるのは難しくない?」
「いやでも、うーん、そうかもしれないが…」
「たしかに、飛行バイク?落とされた事あるものね…馬鹿にするつもりじゃないけど、さ。自分のスーツで実験するのは、やっぱりやめときなよ」
さっきの話か。
「スーツの耐久力は気になるだろ?これ以上試す必要はまあ無いから、耐久実験、はもうしないと思うが」
一応この強化服について分かった事を全部伝えておくか。
「そういえば、スーツは一定のダメージを受けると先ず透明化が解除されて、液体を流して強化が無くなるだろう?ちょっと休むと強化が戻って透明化も可能になる。完全に破壊する事も可能かもしれないが、そこまでは試してない」
「100点メニューの武器で攻撃したり、ってこと?」
それは試していないな。首を横に振る。
「それは試してない。さて、じゃあ今回も強化を意図的に高める練習だ。荷物はそこのベンチにでも置いておこう」
左前方に水面に向き合うように置かれた背もたれの無い幅のあるベンチが見える。水面にぼんやりした光が揺れている。
「手を離したら透明じゃなくなるから、傍から見たら心霊現象だよね」
夏だけに、ってか。
「涼しくなっていいじゃないか。それこそ、この心霊現象を見れるのは幽霊ぐらいだろうけど」
後は何種類かの星人も、透明化した状態のこちらを把握してくるか。そいつらが透明になって周りにいたりして__ゾッとしないなあ…。