テストかゲームか戦争か   作:シューズ

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流血

 

流血ー1

 

 

  床に座り、両手をガトリング型の銃と湊さんの重力銃ごと床に下ろす。窓から風が少し吹いているからか、クーラーを消したが未だ涼しいなあ。部屋のドアには鍵が掛けてあるし、部屋にある見られて不味いモノはエロ本と湊さんの荷物だけだ__見つかったら変態だと思われるな。

 

 おっ、きた__視界が切り替わる。

 

 

 透明化をしていないから目立っているな__というか、今回は人が多いな?私の転送の順番が遅かったとしても、10人以上居るぞ?集団自殺か大規模な事故でもあったか?

 

「あっ、ラッキーさん、ちょおっといいっすか」

 

 私みたいなケースは珍しいだろうし__。

 

「何か用?」

 

 ソウはこの人達の死因を知ってるかな。

 

「物は相談なんっすけど、あのっすねえ、武器を貸してくんないかなあ、って」

 

 どういう事だ?強化スーツはもう着ている様に見えるが__100点メニューの兵器の事か。

 

「重力銃とか強力な兵器が欲しいなら、自分で100点取りなよ」

 

 渡したら前回みたいに点を盗られるかもだし、大体ソウってもう直ぐ100点届くだろうに、何を言っているんだ?

 

 

「おい、あんたらこれがどういう状況かわかってるのか?」

 

 どっちが対応する?__ソウと目を合わせる。

 

「転送が終わったら雑な説明がそこの黒い球に浮かぶんで、その後詳しく説明しゃっすよ」

 

 殆どいつもソウに説明を任せちゃってるなあ。あれ、覆面をしている私にも声を掛けて来るなんて度胸があるのかもしれないな__

 

「おいおい、今直ぐ説明を__」

 

 話し声を意識から外そうとする__黒球が展開して銃とスーツを出し、音楽を流し追加兵器の部屋の鍵を開けるまでボーっとしてよう……

 

 

 

「ラッキーさん!いいじゃないですか、強い武器貸して下さいよ使わないのぜってーあるでしょ!?」

 

 うわっ、五月蝿いし、しつこいなあ…紅潮したソウの顔を見上げる__周りの人々にも語りかけているのかこいつ?

 

「いのちがけなんすから、くれるべきっすよ!毎回説明を聞いてくれてちゃんと武装してくれててももう殆ど死んでるんですよ!?」

 

 うーん…でも渡したくないし、それに__

 

「スーツの強化と透明化と敵味方の位置把握があれば、逃げ隠れすれば最低限生き残れるだろう?武器無しで戦ったら私も死ぬかもしれないしな、悪いけど渡す気は無いよ」

 

 点数の事もあるしなあ。

 

「こんだけ多いの、チャンスでしょう!」

 

「点の取り合いになると困る」

 

「…それが本音っすか…」

 

言い方が悪かったかな?あ、未だ転送されて来てる。本当に多いな、20人いってるか?

 

 

 

 

 

流血ー2

 

 

 

 しぶとい!武器を替えるべきか__この思考何回目だ?

 

 腕が疲れてきた__後ろのモチノとの会話が無くなって結構経つ気がする。ガトリングガンのトリガーは引きっ放しで、輝く攻撃の殆どが当たっているしモチノの射撃で内臓も破壊している筈なのに、身に纏った水が飛び散って中の身は未だに元気一杯に見える。

 

 川ごと浮かび上がった長大なコイツの周りを飛行バイクで廻り始めてどれ位だ?

 

「モチノ!!」

 

「…なに!?」

 

「左手の機器で、残り時間見てくれないか!!」

 

「えーっと…後14分!!」

 

 46分も掛かり切りかよ!!ホントこのぼやけた黄色とオレンジと灰色のバカでかい蛇、タフだなあ!?

 

 片手で飛行バイクが同じ位太い胴体や大口に捕まらない様に操作しつつ、片手はトリガーを引き絞りながら巨体に向け続ける。飛び散る水は黒ずんでいるんだ、血が混じってる、攻撃は効いている、が__

 

「1度離れる!!」

 

  元々そこまで接近していないが。久し振りにガトリングのトリガーから人差し指と中指を、ちょっと強張っているが浮かし、同時に反対の手で飛行バイクのハンドルを傾けて空飛ぶ怪物に背を向け、ハンドルを保持して逃げる。星も見えるが雲がかかった昏い空と、一方向に眩い灯りが密集している街がある一面に広がる山林がかわるがわる正面になる状態から、漸く解放されて、平衡感覚が正常になる様な気がする。

 

「追って来てるよラッキー!?」

 

 休憩にはならないか、ちぇっ。いい加減集中力が切れていつかみたいに撃ち落とされたら拙いのだけどな。なら__

 

「さっきより距離を取って攻撃するぞ!」

 

そういえば制限範囲の境界線に近付いていないだろうか?飛行バイクの速度なら警告音が聞こえてからでは引き返すのも間に合わない__

 

「地図の制限範囲、境界線に近付き過ぎてないかまた確認してくれ!」

 

 ハンドルを傾け、乗り物ごと体も傾いているが、怪物の顔の左に向かって飛行する。

 

「新しい腕でも100点メニューでもらってよ!!えーっとぉ、あー、うん、境界線から今は離れていってる!」 

 

 前門の龍、後門の三途の川、ってところか?ガトリングの2つのトリガーをまた絞り、駆動音が風の音に混じり始め、視界中央の龍に武器から吐き出された連続する光弾がぶつかって、身を捩る龍を銃口では追いつつ、ハンドルの方の腕で大きく距離を空けて旋回する。

 

 

 

 いつまでかかるんだろうか?他の敵を先に狙っていた方が点数が取れたか、いやだけど、コイツにさっさと取り掛からないと殲滅が出来ずに得点の初期化を喰らうかも__そもそも今の状態で、このまま時間内にコイツを殺せるかちょっと怪しいよなあ。他の敵の方も、ソウとかが上手く殺し切れるかも定かじゃないし…

 

 

 

 

流血ー3

 

 

 

 もう1人新しく、青い光が人間の体に変わっていく__多いな。良い事だが、意外だ、私が戦ったヤツは1体だけだったろうが、他のはそこまで強くなかったのだろうか?あれは龍、ドラゴンだった、一緒に居た星人が弱かったなんて違和感がある…。

 

 全員が__いや、黒球が音楽を流し始めた。採点だ__短い音楽のフレーズが終わった。白い小円のついた黒いスーツを揃って着た変な少数集団だが、いつもメンバーは入れ替わって行く。腰を捻って周囲を確認する。モチノ他3人と視線が交わる。10人位か、生き残りは。

 

 私が1番、長く居て、強い。死者の中には7回以上100点を取った者も居ただろうか。

 

 

 黒球の前に歩く__見覚えの無いメンバーが私を見て避ける__何だこの反応は?

 

 歩みを緩めながら黒球の表示に目を凝らす。

 

 やえば、0点、”顔こわすぎ”、計0点。

 

 足を止める。生き残りの人数の割には黒球の近くに余り人が寄って無いな、怖い顔のやえば、って近くに居るのか?

 

 たろー、0点、”銃おとしすぎ”、計0点。

 

「ははっ…言われてんぞ」

 

「えっこれオレ?」

 

「左の絵、あれお前だろ」

 

 肩越しに会話していた後ろを振り向くと、彼等が後退り、口を噤んだ__睨んだつもりはなかったのだが。声を掛けようか__覆面をしているからか、普通に怖いかもな。顔を前に戻す。

 

 じろー、0点、”ビビりすぎ”、計0点。

 

 太郎と次郎とは安直だな__気が緩み、今まで微妙に苛立っていた事を自覚する。何だか居心地が悪いのか、そういえば…

 

 はなこ、0点、”さわぎすぎ”、計0点。

 

 でぶ、0点、”なきすぎ”、計0点。

 

 かたの、0点、”けいさつきどり”、計0点。

 

 全部悪口なのかな。

 

 チカちゃん、13点、”つめたすぎ”、計51点。これって…恋人を生き返らせたい女、愛は強いってか?

 

 ソウ、13点、計87点。黒球のコメント無しか。長く居るのに不甲斐ない、とか。言われたら理不尽だな__

 

 ヨンノセ、26点、”さけびすぎ”、計80点。この人結構強いよな、前回のトンネル戦も含めると。あ、私の番か__48点、計88点。1時間の殆どを掛けて攻撃しないと殺せなかったんだし、100点いってて欲しかったなあ…

 

「点取って満足かよ」

 

 誰が言った?__手に力が入りグリップを意識する__探すのは堪える。平静な声を意識して黒球に声を掛ける。

 

「飛行バイクを出してくれ」

 

 落ち着け…呼吸を一定に保つ。怯まず、怒らず、追加兵器の部屋に入ろう__ぶつからない様に避けながら歩き始める。

 

 ちゃんと追加兵器の部屋の方に出すよな?

 

 

「あっ!…ラッキー、わたし、100いった…」

 

 振り向く。モチノが?今回私と彼女で戦ったのって、あのしぶとい龍だけだろ?どういう__

 

「命がけの戦い、続けるんすか?」

 

「いや…わたしは、もう…1番で!」

 

 別に意外でもないな、だけど、もやもやするな。ガッカリ?イライラ?ああいや、最後に挨拶しておくか__

 

「お疲れ様、モチノ」

 

 目が合うが、直ぐに青い光が肉体の断面を覆いながら滑り落ちてゆき__

 

 

 12、3人程の残留者から目を離して踵を返す。暫定の殺しの相棒は綺麗さっぱり転送された。私は追加兵器の部屋へと歩き、左手で入り口のドアノブを掴んで回す。

 

 

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