テストかゲームか戦争か   作:シューズ

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カップルなんか片割れだけ赤点取ればいい

硬く、そして安いだろう椅子の座面から体を離す。下腹部が机、太腿が椅子の角とぶつかり軽く椅子を床と引き摺る。

「どうした?」

どうしたも何もそろそろ帰ろうかなと思ったのさ。

「そろそろ帰るよ」

隣に加えて、長テーブルの向かいからも視線が下から向けられ、彼等がそれぞれ少し違う方向に軽く首を振る。

「じゃあ」

荷物をリュックサックに放り込みながら私も頷き返す。次に会うとしたら__

「また道場で」

「ああ」「お疲れ」「またな」

3人を机に残して背を向けて、大きい本棚の間を抜け、階段を降りる。

学年も、そもそも学校も違う面子で勉強する意味はあんまり無かったな、大体殆ど黙って各自でやろうぜというカンジだったし…そこは図書館だし仕方ないか。ヒチが一応は紅一点だったが特に会話も無かったし、疲れた上につまらなかった…。

怠い足を持ち上げながら玄関を通り抜ける。

勉強なら可愛いカノジョと自室でしてセックスもセットで、が良かったのに。__こういう事を考えているから振られたのか?

別の事を考えよう。キナミと別れるのは惜しかった__違う、別の事を__。

顔にかかってくる陽射しはきつくはないが、心地良くもない。

女性の体は気持ちいい、1人しか知らないけど。他のひとはどうなんだろう。

他の強烈な事を考えよう__一昨日の夜とか。

気になる__不安な__点が複数。まず、私の点取りの協力者が消えた。思い返せばそこそこの美人だったし、祭りに男友達とじゃあなく彼女だけと参加して、練習は無しで口説けばもしかしたら__不毛だ、でも電話番号が消されてないんだよな。黒球の手抜かり?記憶を取り戻させてみる?キンナさんと話していると難しいと感じるが。直接消された記憶の内容に触れたら黒球のルール違反で死亡するかもしれない。彼女達が部外者と見做されていなくとも、私には判断出来ない__黒球と、その中身のつるつる全裸男と会話出来るだろうか?【100点メニュー】や【より強力な兵器】といったキーワードとそれを示す言葉には反応するが碌に意思疎通出来ないんだよな…解放を願った彼女達を戦力目当てで連れ戻したい私も、黒球並に身勝手か。

後、前回の敵の点数が変だった。私以外の生き残りの13人、ニッタチカの方は前から好意的では無かったが、ソウも含めて13人全員から冷たい対応をされた事も気になる。危ない、よなあー。私の見た1体は龍、それとも魚?水龍なんて格好つけた呼び方も出来るかな、それ以外の敵について聞いても教えてくれなかったし、私の『より強力な兵器』を貸せとももう言われなかった事はかえって不気味だ。

 

1体としか戦って居ないし点は止めを刺した人のみに付与される筈なのに、モチノにも点が与えられた。私の得点は48で、あのしぶとい怪物の点としては多分少ない。他の味方の私に対する態度、モチノの得点も教えてくれなかったし、結論として、推測ではあるが、きっとガトリングの光弾は距離で減衰し切らずに、飛行バイク無しで暗い山林の中で敵と戦っていた彼等に届いてしまっていたんだ。敵味方無差別に命中したんだろう。死者が出たとは思いたくないが、あの夜は考えが及ばなかったし、確認の為にソウに電話する気にはなれない。時間がある今からでも掛けるべきなのか。

 

私は殺人鬼だろうか。星人が作り物とは思えない。人と違うのか。知性や見た目に共通点がある。

人間同士の殺し合いも、あり得るとは考えていたが、私が強い事は分かっているのに、そこまで発展するだろうか。

強化スーツは無敵の防御装置ではないが、私の素顔はソウだってどうせうろ覚えだろうし、黒球の転送後には傷は無くなる。取り敢えず3週間は安全だろう。人生初ナンパでもしたっていいだろう、ソウとかニッタを探して先制攻撃で殺害なんて案よりは考慮に値する。

 

塾か。顔を正面に向け直す。横目で塾へと上がる階段を覗きつつ、通り過ぎる。疎らな歩行者、その1人とすれ違う。車の方が、自転車やバイクと合わせれば数が多いかなあ__

3週間ぐらい、学校や道場をサボりたい、休んでもいいだろうし。別に通い続けるけども。愚痴を誰かに言えば気が楽になるだろうか。友人にも家族達にも言えない戦いの事は、「サボりたい」を切実にしてる。切実さが伝えられないのならば、愚痴を言ってもストレスになりそうだ。

 

薄っすらと、遠くから電車の走行音が聞こえる__B駅の近く。そうだ__この近くに滝口家があるんだよな。もしも、スグルが殺されていなければ、愚痴を言い合えたのだろうな。疎遠になった友達と、親友とかいう都市伝説的な関係になれたかもな。

幅や外装が違う、塀や門や庭がついたりついていなかったりの、2回建てだろう家が両側に立ち並ぶ道が続いている。電柱や電線、マンホールの蓋とコンクリートの樋と同じ都市のライフラインだが、あれらさえ無ければ、そこそこ珍しく紫も混じった多様な色に染まった雲と空がもっと綺麗に見えると思う。

滝口家の前は私の考えていた道筋には無い。寄るべきか?家族全員がもう揃っているだろうか、母親と妹はきっと居るだろう__専業主婦と小学生だ。彼女達に、白々しく「スグル君は戻りましたか?」とは聞きたくない__偽善だな、親友でもないスグルを100点を費やして生き返らせるつもりは今はほぼ無いのだから。

 

私はスグルに巻き込まれたとも言える。

スグルは私を怪物からかばって死んだりした訳じゃあない。

彼は私とは違う、きっと死んでから黒球に再生された。私の視界内で死んだのは、本当にスグル本人と言えないかもしれない__私が生き返らせたとしても、本物とは違うかもしれない。

私だって、転送前後で、同一かははっきりしないが、スグルよりは本物に近いだろう。

…言い訳、かなあ。いいや、あの殺し合いの場では、誰でも殺すも身を守るも自己責任に決まっている。星人も、人間も何かをすべきという規範は存在しないだろう。道徳なんて、学校の授業の方も一般教養の方もあそこではくそくらえ、だ。

 

家出したのだとスグルの家族に言いに行った夜を思い出す。私は間違えたと思っていない。…寄って行くか。ま、運が良ければ美少女の妹さんと携帯電話番号を交換出来るかもな!何とか気分を上向きにしないとな…曲がろうと思っていた道を通り過ぎて道なりに直進して歩く。

 

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