全身に衝撃、これは、締め付け__?振り向こうとする、が、光るワイヤーが直ぐに手足を縛り、私は床に倒こむ__拘束用の、3角銃で、私を撃った?
ふざけ__
「んな!」
体を捩って横向きに転がり、首も捻って攻撃者を確認__全員、こっちに銃口を向けて__!?
何故__
全力で暴れる__スーツの強化を高める時の感覚を思い出さなければ_握ったままの重力銃とガトリングガンのトリガーを_縛られて体に密着しているんだ、足どころか全身が攻撃に巻き込まれる_!?ほどけた!?
転げ回り続ける__ガトリングが右手から転げ落ち、重力銃を握る左手に力を籠め、そして足を床に着けて跳び上がる__如何すればいいんだ?
追加兵器の部屋、味方、というか元味方が10人程ドアを背に此方を狙っている、狭いし__
「あっ」「おい!?」
「ヤバッてんそー!」
そうだ、私も転送が始まればここから逃げ出せる_相手の数は減った、動揺もしてる_反撃だ。殺して_いやでも__
足がつくと同時に、扉の前の人の薄い列に向かって壁を蹴り付けて飛び込み、スーツの強化も高められていない彼等を吹き飛ばす。人質に__だが銃にはロックオン機能が_私の内臓が既にロックオンされているとしたら!
膝を少し曲げるだけで予備動作を小さくしながら後ろへ__連続で短い間隔で、低く跳び、後ろ向きのまま、3角銃や刀柄を踏み姿勢を崩しそうになるのを立て直しつつ、トリガーを連続して引き絞りながら重力銃を左から右へと振る。
「前に出ろ!?」
ちぃッソウは対処が早いな__あいつから転送されてれば__アイツがリーダーだろこれ__
部屋の半分程に天井から重圧が掛かり、瞬間的に部屋の中の景色が歪みドドンッと音が重なる_床が窪んでない。スーツごと数人を仕留めて、しまった。
__重力で押し潰される範囲に入って自滅しない為には、刀で近接戦しかないか_右手で太腿のベルトから柄を外し2つのトリガーを同時に絞る。げっヨンノセも生き残ったか。5人、ソウもまあ避けたか。
潰れた銃や刀、それと赤黒い人体が散らばり無事な部屋の反対側にも転がって行く中、足を滑らせない様に腰を落としながら動き回る。
鉄錆みたいな匂いと、ゲロの様に酸っぱく生ゴミと同じく苦い臭気が漂う、こんな中でビチャビチャ歩き回りながら強化スーツを身に纏った5人の敵と睨み合うなんて人生最悪の経験だ。
室内で重力銃を使ったが、倒壊して居ない__ここの部屋は破壊不能オブジェクトってところか。この部屋で飛行バイクをぶつけても引っ掻き傷1つ付かないからそうかなとは思ってたが黒球が保護でもしてるのだろう、人間以外は。
「どっ、んんっ、どうする!?」
「しねっアイツまた殺しやがった!」
「落ち着けって!」
口を挟んでみるか。
「落ち着けるのか?こっちを背後から撃って来る様なヤツラに?協力はほぼしてこなかったが一応は味方ではなかったのか?」
「てめえよく__」「そっちが__」
また1人転送が始まった、か。もう私の勝ちだな。
「静かに!ソウさん、サクリ星人と戦う前に全滅したら__!」
「わかってんよ!!…ラッキー先輩、悪いっすけど、もらうっすよ」
ああ?何を言ってる?
「ああ?何__」
「黒球ぅっ!!!ラッキーの前に俺たちを先に転送してくれぇぇっ!!!」
思わず動きそうになった両腕を抑える__止めてしまった歩みを再開し__待て、ソウは何て云った?
転送中は碌に身動き出来ない__転送が始まる場所での損傷は修復されるが転送されていく場所での怪我は多分直らない__
「待てッ和か…い…」
私の持つ柄から、長い刀身を左側の壁へぶつけた衝撃が伝わってきた。
喋る前に、右足を踏み出して重力銃を左手で背中へと引きつけながら、右腕で刀身を伸ばし1振りで4人の胴を薙いで、左側の壁へぶつけていた。__我ながら言動が矛盾している。
でも1撃ではスーツは壊れないんだし未だ__ああ、転送先には既に何人も待ち構えているだろうな__それに残っている3人が私に銃口を向けた__また体が精神を置き去りに動き出していた。刀を捻り斬り返し_ヨンノセは屈んで避けたが、棒立ちの2人の顔を刀身が通過した。体勢を崩した3人のスーツは健在で、右へと刀を振り切ったから自然に前に出る伸ばした左腕の先の重力銃を連射した。
両手のトリガー、計4つから指を離す。部屋をゆっくり見回す。残っているのは残骸だけか。兵器選択の端末は、破壊可能だったんだな…
それで…次は…如何する?隣の部屋には、もう黒球があるだけだろう…私が最後…私も、先に転送してくれ、と黒球に叫ぶべきだったのか?ていうか、そーゆう要望が通るなんて…。
どうして__いや、それよりも如何する、だ。英語の授業で3か4Wとか習ったな…。離れた場所に転送されれば、だが私の飛行バイクとロケットランチャーをきっと狙って来るよな?私の武装は、先ず、水銀みたいな液体を多分全ての白く丸い付属部品から垂れ流す、壊れた強化スーツ。これは転送後に直ってないと詰みだが__まあ大丈夫だろう。ひどく重い重力銃を見下ろす。後はハンドガン型と三角の銃2挺と、爆弾、刀が1つずつ。強心剤を飲んだらドーピングになるか?星人と強力な武装をした人両方を相手取るのは、無理じゃないか?…持ち越した88点が勿体無いなあ。いやそれよりも、転送中はどう生き残る?転送までどの位、考える猶予がある?ガトリングガンの破片を転送時に持っていれば再生されるんじゃないのか?
もしも、肉片から人も再生されたら__?
転送に因る再生の事は忘れよう。もっと大事な事柄__
そうだ、透明化がある。私だけがしていれば、奇襲や残りの兵器も回収して一方的に戦える。向こうがしているなら、こっちもしておかないと危険だ。左前腕についた機器の、透明化ボタンに柄を握ったまま人差し指を添える。に_
青い線が私の全身を抜けていく__周囲の確認を首を回して_パッと見では居ない_転送されてきた機器の小さい画面に映る地図を見る_近付いて来ている2種類の輝点群_人差し指でボタンを押し込む_小画面に【周波数変更中】の表示が出る_ここから離れないと_柄のトリガーを引いて刀を準備しつつ走り出し__停まる_コンクリートの地面を少し浮いたりしながら滑る。ロケットランチャーを拾い飛行バイクに乗って行けるかも____囮にして近くの民家にでも隠れて攻撃する方が良いかな_振り返らずまた走り出す。
駐車場と思しき広場の出口から道路に出て、右に曲がって道路沿いに進みながら立ち並ぶ民家とアパートを物色する。ライフル型の銃を持って来ればもっと良かっただろうが_刀の柄から人差し指と中指を浮かして腿のベルトで留め、腰に巻いたバッグのファスナーを開けて中を探り、爆弾を探り当てて取り出す。
駐車場に面しているだろう2階立ての民家の玄関の前で立ち止まる。音を出さぬ様に気を付けながら右肩を扉の右縁に当てて押し入る。
背中を当ててこじ開けた扉を閉め、左腕を重力銃ごと顔に引き寄せて敵達の位置を確認する__急がないと。2階の駐車場側に窓があればいいが。先ず階段は何処だよ、普通は入口から見える場所にある筈だろ…
そういえば生臭い匂いからもう解放されていた__疲れは無いが上がった心拍数を抑える為に無臭の空気を吸い込む。
機器上で輝点は個人の特定は出来ない、多分。万が一出来るとしても、ソウかニッタくらいで全員ではない。私の表示も、合流や私の発見を目指す輝点にきっと紛れる…確実に、強力な兵器を餌に、数人は潰す。出来れば運動神経が優れているヨンノセも。
あ、階段__駆け上がる。
重力銃は複数の地点をロック出来るから、爆弾と合わせなくとも駐車場全体を1度に攻撃出来る__爆弾は建物ごと圧殺するのに使いたいな__
部屋、いや膨らみのあるベッドがあるから寝室か、向かって奥の窓に近付くとそこから飛行バイクと黒い人影が4人見える。間に合ったか?左腕のレーダー図で私が回り込まれていないかチェックしておく。
真後ろには居ないが__。急いで飛行バイクと4人とロケットランチャーを重力銃の照準画面に映して上トリガーを引いてゆき、駐車場全体を大体攻撃範囲に入れる。中指に力を入れる__スーツがあってもペシャンコになり地面に浅く沈み込んでいる。血は、ここからは分からない__飛行バイクは原型を留めている。未だ使えるのか?まあいい窓を破って外に出よう。