10/12夜
ガリガリに痩せその上襤褸雑巾を纏った男達を容易く挽き肉に変えながら、血が出ない枯れ木の様な肉体に何故か安堵を感じつつ、スーツの効果で超人の如く戦う筋肉や内臓が詰まった人間達を重力銃で狙う。
サクリ星人は黒球の情報通り弱く、強化スーツ無しの人間みたいで、強化が高まった私の邪魔にはなり得ない。背の高さはまちまちだが人間と変わらない。この道路上で何十体も疎らに動き回るコイツラは、ハンドガンやライフル型の銃への盾に丁度いい。
1人、重力銃の攻撃範囲に入り屋根ごと崩れ落ち視界から消えていく__そこそこ広い、サクリ星人が多い範囲で道路を行き来し続ける。残りは__両脇の2階や3階の建物の上で、強化無しではあり得無い跳躍をする人影_
「たくろー!?」
「もうやめようぜ!?」
動きが鈍った_跳躍を一旦やめた人影が複数_右腕の球を起動して黒い3、4人の集団が乗っている建物の壁に投げ付け_掲げっ放しの左腕の重力銃の照準を別の人影に合わせトリガー2つを同時に絞る。
跳躍する先や空中を重力銃で狙うより何倍も簡単だ__また力任せにサクリ星人を弾きながら動き続ける。
_爆弾が起爆しうるさくてたまらない轟音が耳をつんざく。アスファルトの地面が揺れ、空いた右手で星人を押してバランスを取る。今のヤツ、流石にバラバラにはなってないな、まあ無視だ無視。膝を曲げ、壊れていない屋根に向かって跳躍する。屋根から更に離れた屋根へと跳び、惨状を背に距離を取るべく大跳躍を繰り返す。左腕にくっ付いた機器を右手で操作し残りの青い光点の位置を確認する。縮小した地図では青が6つ、赤は沢山。残り38分43秒ずっとこんなの続けてられない。この機器に地図から私が消える機能があればな…。
正面の背の高いマンション。飛び越えられそうに見えていたが、跳躍していると急速に大きく見えてくる__避けようかな、いやスーツの強化が高まっていれば__宙を風で切りながら胸元を見ると丸い小円が青白く発光している。着地して傾いた屋根上で短く助走をする__手足を振りつつ足下を壊しつつ跳躍、やばっ届かない、ベランダに滑り込めるか?__右太腿に指を伸ばし、柄の2つのトリガーを同時に引き_逆手で持つべきだったか__腰の横に刀を構えて出っ張りのベランダの壁にぶつかる。宙で私の体が揺れるが、刀のトリガーにちゃんと2指はかけてある。両足と左腕をずしっとした重力銃ごと振って、壁に刀身を更に食い込ませながら1つ下のベランダに落ちる。トリガーから指を離し柄を腿の帯で留める。カーテンで奥が見えない窓を、割るか?振り返って後ろの住宅街を見下ろす。左腕を持ち上げてレーダー図を見る。…近くにある輝点は全て赤…白い枠内に、赤い点と青い点が地図上で疎らに存在してる。
私と枠の間に敵は居ない。白い枠、制限範囲ギリギリまで行って建物内に入れば安全に休憩出来そうだな。このままマンション内を通って反対側から飛び降りる。先ずは窓に突っ込むぞ_上半身にカーテンが絡むが、両腕を広げて布を引き裂く高い音を出す。もたつく足を立て直し、顔を上げる。右の壁と左奥にドアがある。左に斜めに、何かを踏んだ_左足底で何か壊した感覚がある。気にしない、机と数脚の椅子を右に避けて扉へ歩き、ドアノブを回して、引く。リビングルームより暗い廊下の先に、多分玄関が見えている。
小さい段差を降り、チェーンを外して取っ手についた鍵も回す。やや重い金属音を立てつつ廊下に出る。向かって左右にドアがある。…左のドアにダッシュし右肩を激突_弾かれる、尻餅をつくが、肩に痛みは無い。立ち上がりながらドアを見上げると上部が歪んで全体的に奥に倒れ込み、大きく隙間がある。スーツの強化高くなってなかったかな…ドアを蝶番からちぎって玄関内に倒す。
暗くて物にぶつかりつつ、廊下を直進して扉を開き、奥の面にベランダに続くと思しき両開きの窓、カーテンがかかっている、を見つける。
右手で中央のレースカーテンの接続を外し、開く。窓の鍵を上に捻って解除し網戸のない右側の窓を左に滑らせる。外に歩み出て、手摺りに右手をついて飛び出す。落下していく飛行バイクとは違う頼りない浮遊感、膝を体に引き付け足を地面に向け続ける。
深夜α
赤い光点が幾つも重なって近くにあり、青い光点は1箇所にかたまって赤い点を減らしていっていた。数分前に見たきりだから現状は変わっているかもしれないが、左腕の動きを止める訳にはいかない。大体の位置まで、コイツを誘導出来れば、あいつ等に押し付けられるか?
長い刀身を小刻みに振るい牽制するのにも疲れて来た、もしかするとダメージの蓄積でスーツが壊れかけているのか?目の前の重力銃を右左に取り回す左腕に付いた丸い機器からは、特に液体は漏れていないし、あっ__
左後ろに倒れ込み銃ごと肩と腕をついて転がり、立ち上がる。
骨ばった裸体が大きく露出した着こなしのドレス姿の怪物は今停止していて、その背から横に並んで生えた、薄く電灯の光を反射する3枚の羽が、ゆっくりとした動きに変わる。
私をかすめていった電柱の上にとまる彼女は、羽無し共とで挟み撃ちにする気か。後ろの集団に追いつかれる前に、殺せるか?殺せれば残りは雑魚だけだ__今直ぐロックオンしても振り切られる予感がある。刀でも捉えられた事が無い、背中を見せやがって余裕のつもりか…止まっていて不利なのは私だろう。普通のサクリ星人達でもしがみつかれると脅威なのはもう分かっているし、羽ありの方は透明になっても捕捉されているし、逃げ出すにも逃げ出せない。
肩越しに後ろを一度窺う_もう追いついてきたのか、鈍間の癖に…。何発か食らうのを覚悟して雑魚の集団を突っ切るか?だが抜けても頭にふざけた警告音が鳴る境界線まで近い…
横のビルに飛び込むのはどうだ?ガラス戸なら減速せずに入れるし屋内だと上手く飛べないだろうけれど、また邪魔して来るよな、いや、もう試すしかないか。
横っ飛びに跳躍しながら刀をめちゃめちゃに振り回す。
左脇に痛みが走る_刀も弾かれた_痛む右肩と頭がガラスを突き破り_届いた_柄ごと手と片足をつき、エレベーターの2枚の扉に向かって駆ける。そうだ_振り向かずに背後に重力銃を伸ばしトリガーを引く。腕を少し動かしつつ2度、3度_エレベーターのボタンを、上行きを右手で押し、振り向く__追って来ていない?!嘘だろ__天井が部分的に崩れ落ちる__やってしまった。
エレベーターは動いていて特に影響はないな。横にスライドした分厚い金属戸の横を通って中に入り【閉】のボタンを押す。___既に【8階】が点灯している。
持ち上げられる感覚に逆らう様に尻から座り込む。重力銃を置き全身をまさぐる。出血はしていないか、良かった。左腕を持ち上げ機器を右手で操作し、現在地付近を拡大し敵の位置を探す。1つの赤い輝点、建物の、上空にいるのか?
エレベーターが8階につき、ドアが開く。長袖ジーパンの住人がサッサと入ってきて私の投げ出した左足の脛
に躓き倒れ掛かって_両腕で暴れる体を抑えて右に持ち上げてどけ、重力銃を拾ってエレベーターから飛び出る。
深夜β
青い光と共に視界が_椅子に座ったまま右手を脇に下げる。湊さんの重力銃の短い握り手を探り、掴む。トリガーを握らない様に人差し指と中指を這わしつつ持ち上げる。制限時間は未だ10分はある、いやあったが__左手にも武器を持つか?目線を奔らせる_ニッタと知らない女性_後ろにも居るとしたら_
「私たちは貴方と戦おうとはしてなかったわよ?」
前傾姿勢で動きを止める…うん?ニッタさんと目を合わせる。真顔だ。__罠なら_
「こっちは降参っす」
_振り返る_男性の上半身が転送されつつある_重力銃を向け口を開く。
「ロックオンはするぞ?」
台詞からするとこいつは私を襲った1人だろう。
「物騒ね」
壁際へと距離を取りつつ横を見る。
「グル、じゃないって、本当に?」
馬鹿な質問をした、取り消したい__
「ほんとう。ニヤモト君達が襲った理由は知ってるけど、私とそこの2人は加担してないわよ」
彼女が腕を横に薙ぎつつ2人を指す__部屋の中のメンバーを見渡す。両腕も下げ棒立ちだな。転送は続いているが、これ以上戦闘は無い、で良いんだよな。
重力銃を下ろす。中指に意識を向けつつ、考えながら口を開く。
碌に思考が回せない。
新たに青い光線が人間を形作ってゆく__顔__ヨンノセ__銃口を向け人差し指で上トリガーを引く。
「オレたちの__」
「もう話した。仲直り、っすよね?」
また重力銃を下ろしつつヨンノセと目を合わせ、取り敢えず頷く。聞いてみる、か。
__音が鳴る__採点の時間、生き残りはこれだけ、か。私が減らした…
「採点の後…話を聞かせてくれるか?」
「私も?そっちと揉めた人達だけでいいでしょう?」
「私が倒せなかった星人の事も聞きたいんだけど…」
「あ、チカちゃん…」
黒球を見やる。キロ―、6点?…剣の才能無さすぎ、と書いてあるのかこれ。下らねえ…
表示が変わり黒い球面の表面に強化スーツを着たニッタさんの簡易化された頭胸と、新たな数字と文字が現れる。3点って少なくないか?うじゃうじゃいた方の星人は弱かったけど、だからこそ沢山倒してもおかしくないのでは…
次は、誰?ニッタさんの横のひとか。クルミって黒球の付けた綽名だな多分。彼女が9点ということは、雑魚のサクリ星人は1体で3点だろうなあ。
ラッキー、9点、計97点。自爆は私の点にはならなかったのか。ふん__ま、いいさ星人の殲滅がクリアされて点が初期化されないだけ得だ__もしかして1体1点だったりするのか?
動けるデブ?酷いな__12点、か。首を回し肥満体系の男子をチラ見する。コイツ12体も倒せるもんかなあ
。
黒球の上からの物言いは、喋ってはいないが、ムカつきがする…
80?こいつが羽根つきに止めを刺したのか__私以外で囲んで倒したのだよな?
どうやってアイツと取り巻きを倒したのか直ぐにでも聞きたい。が。
「おいおいヨンノセぇ逃げ出すのはやめてくれよ?」
「口を挟まないで?彼の自由でしょ」
「あ…」
うーん…。【もっと強力な武器】を欲して2番を選ぶなら、まあ、いい気はしないかもな__ニッタさん、ちゃん付けだと睨まれるかな、の言う通りだとは思うが……ちょっと話してみるか__
「よく考えてから選べよ。時間かけてもいいからさ。口を閉じてからの方がいいとは思うが」
「あ、ど、どうも…?」
「残るなら100点まではまた長いけれど取れない事はないし、解放なら、これに関係ない記憶も多少消えるらしいがヨンノセならそこまで長期間の記憶は消されないだろうし生活に問題は生じない筈だ」
かなり良い助言じゃなかろうか。早口にもなってなかったし。
「俺は、メモリーからミヤイ君を生き返らせて欲しい」
誰だって?__ソウじゃなければ誰でもいいか。
青い光線が黒球から照射されて童顔が出現し始める。ギョッとした?
「ヨンノセ、因みに何でこの人を?」
気に障る質問だったか?
「その、えーっと、あっミヤイ君もう攻撃は無しね。…終わったんだ」
「え?え?」
「そうよ、いい加減にして欲しい」
「すいませんっしたチカちゃん…先輩も。ミヤイ、こっちの負けだ、ヨンノセに生き返らせてもらっただけ儲けモノだぜ?」
ミヤイって私が殺した1人っぽいな。黙ってよ。顔を伏せる。…もううんざりだし。
「ラッキーさん、解散の前に、銃のロックオンて、その…」
ああ其れか。2人の目を見る。まあ不安になるよな。
「気にしなくとも、距離が開けば解除されるみたいだ。私は追加兵器、ああ、より強力な兵器を試してから帰るから、そっちが家まで帰れば自然に解除されるさ」
羽根つきが数度ロックオンから逃れたのは多分そういう事だろうから、まあきっと大丈夫だろう。断言しておけば安心だろうさ。別に大丈夫ではなくとも即死だろうし私はむしろ__いや、人死にはもう御免だな…
「解散の前に、羽根つきをどうやって殺せたか、聞かせてくれるか?」
「あ、はい」
「…私達はもう帰っていい?」
緩衝材とか話の補強とか居てくれた方が良いな_
「出来れば残って話してくれるか?手短でいいから」
体を女子2人に向けて軽く頭を下げる。上げる。
「…はい」
「じゃあ、いいわよ」
「誰から話します?」
「あのっ!…ヨンノセ、その、ありがとうございますッ!」
「いいって…俺のせい_」「__さて、じゃあオレから行きます!」
うん?なんか_
「あの羽の女はホームレスみたいな星人達と戦ってる時に飛んできて、チカちゃん達もいたんだけど、他の星人になんか指示とかしててさ、何人か怪我させられたよな?」
「ああはい、そうだった。数が減ってきたら急に参戦してきて、それで…」
「一気に2人やられたわ。そこの男も」
彼女はキローを示す。
「生きてたみたいだけど」