テストかゲームか戦争か   作:シューズ

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英雄がいて欲しいー1

 黒球が音を出し開始を宣告する__湊を一瞥し、強化スーツ左腕付属のコントローラーのボタンを押して透明化を解除し、初参加者3人にごつい装甲服を見せて威圧する。前回の生き残り9人全員で説明すれば強化スーツを着せられるだろうが多分この方が早い。

「あッラッキーさん!?もういらっしゃたんですか?」

「あの女もいるのか?ちっ、誰かにバレて頭の爆弾でやられたかと思ったぜ」

 

「初めての人達を説得するのにこのやり方を試してみたかったんだ」

 初対面のパンツスーツ姿の女性2人と緑のジャケットとジーパンを合わせた男性に、装甲服の右腕を操作して振って見せる。

「見ての通り、良く分からない技術で作られた兵器を与えられる。貴方達にも、だ。その上で、そこの黒球が指定する怪物を殺さないといけない。球の表面に出てる説明を見てくれ、誤字だらけだけど」

 

 

 

 死人を呼んでいるからその使い道は黒球のモノ(私はスグルの転送に巻き込まれただけだと思うけど?)

 星人を倒せ(失敗時のペナルティや、他人に知られてはいけない、制限範囲から出ないとかのルールも表示しろ)

 マガツサマくん つよい こわい(もっと情報出せ。後なんで星人が今回に限って付いてない?)

 

 

 

「それじゃ、先に行くから」

「おいいッ待てよ!」「ちょ…ッ」

 周波数の変更とか分かるような分からないような技術を使用しつつこれまたよく分からない仕組みの飛行バイクを飛ばす。

 鬱屈した感じがとれない。大学入試始めてるのに殺し合いかー、殺伐とし過ぎなんだよなあ。これがマウンとリキとオビサンに一応キノシタさんも最後の戦いになるかもしれないし、体調も悪いしいつもより下がり気味でやるべきかもな…コレと病気が重なるのは2度目だけど、前は確か星人が弱くて1人で終わらせられたんじゃなかったかな…あの時の方が怠かった覚えがある。星人は”弱い”って書いてはいなかったが今回と違って”強い”とも表示されてなかった…。いつも通りに先行するのは間違えだとは思わない、が。

 

 __全身が震え始める。飛行バイクのハンドルを上手く握れない__並ぶ一軒家の1つに落ちていく__

 

 何なんだ?

 

 

 

 全員、動きが悪い。家の屋根上からの湊の狙撃はまともに機能してないし、私は装甲服のお陰で未だ五体満足だがキノシタさんまでもう死んでる。動きはギリギリ反応出来ているのに、肉体が付いてこない。殆ど無視してきて生き残りを追っては殺していくこの輪郭がぼやけた大男に、追い縋るのも無駄な気がするのを抑えきれない…

 

 湊はもう逃げに徹するのか?私も_

 灰色の1つの眼窩が此方を向く。震えが酷くなり、全身の力が抜け、倒れそうに_巨大な両腕を横向きに前に揃え__動きの鈍い腕の間から伸びた首ごと細長い頭が胸の装甲に食い付く。久し振りに_私を殺しに?両腕を必死に動かして化け物の頭部を胸に押し付ける。開いた掌を押し付け、光線を放っていく。

 電灯の光で照らされているのに滲んだ絵具のような曖昧な身体の、頑丈さはもう分かっている。装甲服でも引き裂けないし光線もほぼ効かない。

 そもそも狙いがずれて範囲攻撃以外碌に当たらない。体の一部を削っても体液も出ない、でも頭部を潰せれば__

 

 __怪物の身体の大半は2本の腕を脇に垂らし近付ても来ていない。仮面の内側の画面にまた、さっきよりも酷いノイズが走り出す。

 

 倒せない/嘗めやがって

 

 如何すればいい?このまま戦って死ぬ?今の攻撃は脅威に感じられてない、でも頭をどうにかしないと体勢も替えられない__装甲服を脱ぎ捨てるか?だけど強化スーツなら簡単に抜いてくる攻撃をしてくる。身体のこの倦怠感で、まともに動けない。刀でも通常の銃でも当てれば多少効くのは分かってる、なら…やる!

 

 首周りが外れ胸の中央が縦に開き足と腕を引き抜いて装甲服から飛び出す__左脇腹と右腿に熱が走り空中で姿勢が崩される__もう肉眼なのに視界が明滅する。地面にうつ伏せに、背中の圧迫で叩きつけられ、出所の分からない激痛と共に亀裂の走るアスファルトにめり込む。喉から粘つくものがこみ上げる_いやだ_何処なら動ける?右腕は、動かせる_右の腿に未だ柄は付いてる、というか右太腿はあるのか?左の銃ならある、左腕は感覚がない、懸けるしかない_目に伸ばした刀身を差し込む_

 首を擦りながら左に回し黒っぽい左目の視界で、近付いてくる頭部を捉えた__小指で逆手に持った柄のトリガー1つだけを押し込む。

 

 間に合った、頭が止まった。というか、離れて__逃げないと。右手は柄を握ったまま腕を畳んで腰に引き、顔の右側を引っ掻きながら何とか自分の足側に動く。立て、ない…これ以上移動出来ない。

 

 ……。

 

 遠くの切っ先からいつアイツは外れる?

 足音。

「…なんとかにげきるわよ…」

 湊?

「あ…」

 自分でも分からない。感謝?愛欲?

 柄はまだ握り、トリガーも絞っていた。

 

 刀身を引っ込めた柄を握りながら、止血も無しに数分間、薄い胸に抱かれて、見えなくなった両目を閉じて破壊音や風切り音、鼓動と息を聞く。居る_体を時計回りに捻ってから、湊の後ろに刀身を突き出す_

「ちょっと!?」

 彼女の腕が私を抱え直す。

 

 

 

 

 結局、私は生き残った。2人だけで。どっちも0点。スグルもキノシタさんも、100点を取る人間でも簡単に消える。私も含めて。

 高校の間は、消えずにいられそうだけど…

 

 

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