新庄 湊は、もういない。わたしは自分が本物じゃないと知っている。
本物は、とっくに死んでいるのだ。白黒の部屋に初めて呼ばれた時か、少なくとも"のぞき”星人の時には殺されてる…
日本とアメリカの関係者が作った4つのネットサイトを読んで、自分のものじゃない記憶を含め、たぶん信頼できる情報はいくつかある。最初に呼ばれた時には、全員もうオリジナルは死者。つまり、雷木 太二の言う"黒球”が最初に表示する説明は事実。
彼に再生されてから、カタストロフィという語を言うとブラックボールに残り時間が出て来る、と知り、電子機器オタクのキタミが彼に色々と伝えてから試して事実と分かった。
彼が次に100点メニューの2番を選ぶと、得られるのは巨大な人型ロボット兵器。これもきっと事実。各地でごく数人、そこまで取っている情報がある。その先も_
「スグルを再生するのはもう止めた方がいいかな」
「わたしの意見がいるの?」
わたし達を対等な人間とちゃんと思っている…?
「さあ?もし手に負えない星人に連続で当たったらもう気にする意味はないけど_」
「きみは特別」
オリジナルに近い方の、もういないスグル君に巻き込まれて転送された雷木 太二は、色んな意味でホンモノだ。強いし賢いし、お金持ち(両親が、だけれど)、まだ大学生で、星人の狩りに時間を使える。
「それで…?」
「あ。うん、再生は、友達はやめた方がいいと思うわ」
「そっか、じゃあ湊はカタストロフィ向けに2番がお勧めなのか?」
頷く。
「ラッキーでもカタストロフィは厳しい気がする」
最近、戦いの度にどこかおかしい。前回はレーダーまで使えなくなった。武器、スーツ、戦闘終了後の転送がおかしくなったら、間違いなく全滅する。他の部屋、ブラックボールの不調は、報告だけでも多い。いくつかは荒らしだとしても、カタストロフィに近付くにつれて増加しているみたい。
「3番で強い奴を揃えてもいいんじゃないか」
苦笑いしてしまう。
「時間が足りないんじゃないかな。高得点星人が一気に出て来るのを祈る?」
彼もふき出した。
「まさか!」
再生前、彼と談笑したことがあっただろうか。
初めて来た彼を囮にビルから逃げ出した新庄 湊は、わたしじゃない。
わたしが殺されたら、仇の星人を必死に追ってくれる?
きみは星人に殺されたら、再生して欲しいのよね、でも死なせないよ。
…。
もし…。
…。
きっと…。
…。
あなたの身代わりになってわたしが星人にやられたら、
次のわたしを再生するの。
そうして。
再生した事を後悔してくれる?