テストかゲームか戦争か   作:シューズ

56 / 68
ながら勉強は悪!ー4

 痛む肩をなるべく無視して、両手を動かす。

 どうして未だ転送されない?制限時間はいい加減過ぎているだろう、が、しかしあの大型肉食獣みたいな100点の星人が残って居る限り、今回は終わらないという事?

 

 漸く装甲服を完全に脱ぎ捨てられた…。顔と肩の傷口も包帯とガムテープで圧迫したし、痛いからゆっくりだったがこれでやる事は終わりだろう。暗い薬局内を見渡す。食べ物もあるかな?時計だ、3時40分、やっぱり味方はあの化け物を殺せなかったかぁ。

 …もし殺せていたら、が最悪のパターンだな!星人を殲滅しても転送されないなら、私は死にかねないし、病院に行っても怪しい怪我だし助かるにしても警察沙汰だろ。器物損壊罪も、窃盗罪も、殺人罪もこの戦い関連で犯しているし、自業自得ではあるのかな。

 

「痛い…」

 喉が乾いてる。ペットボトルは……あるな。余罪を増やすぞ!

「はは…」

 静かで、寒くて、体調も悪く、当然気分も良くない。水も冷たいし…温かいコーヒーの方がいいかもしれないな。どっかにないかな…。

 

 床に座り、棚に背中を預ける。

 強化スーツの左腕についた機器の画面には乱れたぐちゃぐちゃの線だけで地図も制限時間も映らないし、味方と、残こっているとしても、合流は難しい。制限範囲も表示は見えないが、最初よりは狭まっていたから、敵は多分移動していけば見付けられるだろう。星人がボス以外にも残って居るとしたら、無事に、頭に煩い警告音の鳴らない範囲内でここに来れた、ここが在った、私の強運は並じゃない…が、あの獣に見付かって今の状態で傷つけられるかは、運に頼れないよな。

 再確認する。強化スーツは、体に力を入れれば未だ強化を強められる。ダメージはあるだろうが機能している。両太腿のベルトに留めた刀の柄は、両方とも上下のトリガーを押し込めば刀身を出し入れさせられる。肩が痛いから刀の振りは鈍くなりそうだ。ボスの星人は弾力があって斬り始めが厳しかったよな…不安だ。

 

 ボス星人が残っていて欲しいと感じているのだろうか?未だ捕まっていない私は、いつまでこうしていればいいのだろう。

 武装をまた確認する。

 

 菓子パンを齧る。虫歯は転送の際に治らない気がするけど、いっか。

 腕を回、痛みが強くなるし止めておくか。横薙ぎに刀を振る方がマシか…?これも痛いな…

 

 瞼を閉じていると、額と鼻と頬の包帯とガムテがひきつれて、気になる。

 強化スーツの強化を高めてみる。

 

 状態をまた確認する。

 

 反復する。

 

 また、確認。

 

 動作を確認する。銃があればいいのに。腰巻バックは落とさせられたし____そういえばPCも買い直しか!?壊れて無かったら私が特定されるんじゃ_

 

 物音___入り口か__悲鳴が聞こえる_中腰で立つ_1つの柄を両手で保持する。

 モノの位置を脳内に浮かべる。ドア、棚、照明、窓。

 

『 い つ ま で の こ て い る い ち じ か ん で か え る と き い た が 』

 

 何処だ?ていうかまともに意思疎通出来るのか…。

 

『 き づ お し て い る だ ろ う ど う ぞ く の た す け お よ ん だ だ ろ う あ き ら め ろ ど う ぞ く わ こ な い 』 

 

 なに?

 

『 か り う ど の の こ り わ お ま え か ら し と め』

 居た_壁に貼り付いている_上トリガーを放して刀身を伸ばす。

「やぁあああああああ!!」

 建物に磔にしてやる__柄から両手を放しつつもう1つの柄を掴みトリガーを上下2つとも絞る。

 

 前転しながら跳躍した怪物の下をくぐる。

 痛い__背中に爪が当たったなこれ…

 

 _すれ違いながら斬る。向こうの方が速いが、その分頑丈な身体も斬り裂ける__いつまで続けていられるか知らないが。

 

 立ち並ぶ背の高い家と、電柱。灯りで、ゆっくりと歩く4つ足の怪物のでかい体躯の傷の奥に、薄黄色の骨っぽいモノが見える。低い鼻づらが此方に伸びだし、人に似た顔が犬に似始める。口が開き、いや…開き続__歯を飛ばす気か_全力ダッシュ、右にステップして突き、左に横っ飛びしながら3度刀を振る。

 

 こんなものだったっけ?違うな__あの口が、凄く伸びたんだ__逃げる!制限範囲から出ない様に、それでも追いつかれない様に、無理か。100点の怪物相手に、優先的に狙われているんだから、距離を取る事はあっても、殺す気で戦うか__星人に向き直る。

 

 この星人は柔らかい。殴るのは無駄だろうからこの刀を手放したら終わりだ_左に跳躍する。痛みを無視して全身を連動させて斬りつける。

 

 道路に這いつくばって飛来物を躱す。

 

 結構静かに戦ってるよなあ。私は武器が刀だから兎も角、ボスの方はゾウ型程じゃないが大きいのに__あ、__…

 

【明け方の陽光と陰】【湊のどちらかの太腿が食いちぎられる様子】【キタミの頭部が踏みつぶされて吐き気がする】

【怪物が自らの顔を変形させて人の様に喋り、後退りで去っていく滑稽な姿】

【私の右半身がズタズタで、麻痺している。脹脛と二の腕から先は、無くなった】

 

 青い光で埋まった視界、瞬きをすると黒球が見える。腕を伸ばしたら肘が当たる距離、斬るなら1歩後ろに__頭の中が痛い。大声が響いて、はいないのに、なんだ__おさまっ、た…?

 

 何が、起きた__転送直前の記憶がほぼとんだ、のか?切れ切れの繋がりの無い映像と感覚は覚えている__誰か__湊と、カタが居る。青い光で今転送されてきつつあるのは_カギンか。名前の分からない初参加が、これ初参加者が全員居るの?

 

 顔が露出してる__多分今更だよな?最後味方と共闘してた筈だ…装甲服は追加兵器の部屋で直った状態で回収出来るし、先ずは採点か。記憶の抜けた所は帰ってから湊に、いや湊も腿を欠損してた情景を、前後の記憶はないが見たから、その後は聞けないか。今聞くか?私がラッキーだと敵になり得るコイツラに明示したくないし、黙っているか。

 

 黒球の前からどく。俯きながら、黒球の方を向いて立つ。湊に目配せを、よし。部屋の中が静かだな。話してる奴が少ない。

 

 今回の星人、強い方から殺していこうとしてたという訳?なら、一緒に転送されていた別の部屋の奴等も、多く生き残って__黒球が音を出す。採点を始める、という表示が黒い湾曲した面に浮かぶ。

 

 

 …全員0点。9人居るから、135点分の星人が出ないと、殺し合いもあり得る。そういやノートパソコン、結局紛失か。

 「___」「____」「___」「_」

 まともな話し合いは無理だな__帰るか。湊と目を合わせる。強化スーツの左の二の腕にコードで繋がっている機器を操作して、透明になる。電気が弾ける様な音と光が、今初めて気に障る__

 

 次の戦いで別部屋のミカタと合流したら、今回とは更に別の部屋から来ていても、星人を直前の戦いで殺し切れていなかったら、良くて競争で、普通に殺し合いになるだろう。さっさと2番を選んで次の巨大人型ロボットを取っていれば良かった…。点を取るには微妙そうだが身を守るには装甲服より良いだろうし。

 ネットで最近の変化の情報を集められるといいけど、キタミは死んだし、別の部屋との戦闘時の合流の事例数位しか解らないかなあ。それでも充分か、変化が全体で起こっているか判断できるし。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。